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雨の日に聴きたいアルバム3選を紹介します(ニール・ヤング/ELO/The Who)

 アルバムを聴く際は、聴く時間と場所、そして気分が大切です。特に雨の日は何かと憂鬱な気分になりがちですが、そんな雨の日は、実はアルバムを聴くのにうってつけです。
 
 心も曇りがちな雨の日に少しだけ彩りを添えてくれる、そんなアルバムを3枚紹介します。


はじめに ~アルバム選びについて~

 皆さん、こんにちは。てんていと申します。

 私は洋楽のアルバムを聴くことが多いのですが、アルバムを聴く前に一つだけしなければならないことがあります。

 それは、アルバムを選ぶということ。このアルバム選び、単純に見えて実は大事なことなのです。
 たとえ選んだアルバムがどんなに名盤だったとしても、聴く時間や場所、その日の気分次第では全く心に刺さらないということが往々にしてあります。

 つまり、効率的に音楽を聴くためには聴くシチュエーションに応じて最適なアルバムを選ぶ必要があります。
 そして、それは雨の日とて例外ではありません。

 雨と聞いてイメージするのは、じめじめ、憂鬱、センチメンタル、…などなど、どうしても暗い印象が付きまといます。

 ですがそんな雨の日、私にはご褒美のように感じられます。なぜなら、私には雨の日に聴くアルバムがいくつかあり、それらを聴くという楽しみがあるからです。

 そこで本noteでは、私が雨の日に聴きたくなるアルバムを3枚紹介します。

 もし皆さんが雨の日に聴くアルバムをお持ちであれば、私のものと比較しても面白いでしょう。お持ちでなければ、これを機に自分なりの雨の日アルバムを選んでみてはどうでしょうか。本noteがその一助となればこれ以上のことはございません。

 それでは、アルバム1枚目から見ていきます。

1.『Harvest』(ニール・ヤング)

 雨の日アルバム1枚目はニール・ヤングの『Harvest』です。

 …雨とは関係ないと思いますか? その通りです。
 正直なところ、このアルバムはあまり雨とは関係ありません。

 こちらはアメリカのシンガーソングライターであるニール・ヤングが、1972年に発表した大ヒットアルバム。このアルバムを一言で表すと「静と動」です。アコースティックギターやオーケストラを聴かせる前半の「」と、エレキギターが轟く後半の「」の対比は見事という他ありません。

 グランジの元祖と呼ばれることもあるこのアルバム、それを知った耳で聴くと、確かにそのエッセンスが感じられます。

 続いて、幾つかの曲を解説いたします。
 まず④「Heart Of Gold」。このアルバムのハイライトであり、知名度も高い名曲です。この曲だけでも聴く価値があります。

 ⑧「Alabama」。この名曲の中でも「静と動」が感じられます。盛り上がりが最高潮に達したところで、突然落ち着いた雰囲気になり、「Oh, Alabama」とニール・ヤングが静かに歌う構成は美しいです。

 ラストは⑩「Words (Between the Lines of Age)」。変拍子ですが決して違和感のない、むしろ変拍子だからこそ良いというような、これも名曲です。最後は余韻を残しながらアルバムを締めくくります。

 このアルバムは雨と直接的なつながりはないですが、個人的には非常に雨が似合います。アルバム前半、静かに幕を開ける様子がしとしと降る雨を想起させ、アルバム後半にかけて徐々に盛り上がる曲構成は、雨が強くなり嵐が吹き荒れるような印象を与えます。

 この『Harvest』というアルバムの性格は、雨を忘れさせてくれるというよりも、逆に雨の日に抱く憂鬱さを存分に味わわせる、といった性格のアルバムです。グランジの元になったと言われる楽曲群は、アルバムで連続的に聴くことによって味わいを増し、自分を憂鬱の海へと連れ出してくれます。

 一見すると、ただ心を暗くさせるだけのような印象を持たれるかも知れませんが、その逆で、このアルバムは自分が憂鬱を強く感じるときにこそ力を発揮するのです。

 人は、楽しい気分の時には楽しいアルバムが聴きたくなるのと同様に、暗い気分の時には暗いアルバムが聴きたくなるものです。そして、暗いアルバムを聴けば、音楽が心にひっそりと寄り添ってくれます。

 雨が降る日とはまさに憂鬱が心を支配し、暗い気分になる日です。そんな日に、この『Harvest』を聴いてみてください。『Harvest』はきっと憂鬱なあなたに寄り添い、明日への活力をくれることでしょう。

2.『Out of the Blue』(エレクトリック・ライト・オーケストラ)

 続いて、雨の日アルバム2枚目はエレクトリック・ライト・オーケストラ(頭文字をとってELOと呼ばれます)の『Out of the Blue』です。

 リードシンガーで作詞・作曲も行うジェフ・リンのバンド、エレクトリック・ライト・オーケストラ。ビートリッシュでポップな楽曲群と隙のないオーケストラアレンジが光ります。
 そんな『Out of the Blue』はELOが1977年に発表した2枚組のアルバムです――。

「2枚組の法則」

 ――ところで、2枚組(あるいは3枚組)のアルバムは、そのアーティストの最高傑作の一つとされることが多いです(勝手ながら「2枚組の法則」と呼ぶことにします)。そして、そのアルバムは名盤の中の名盤とされ、音楽史上最高のアルバムの一つとされることもあります。

 というのも、単純にそれだけ多い楽曲を高クオリティで生み出し、アルバムとして売り出せるということは、そのアーティストが「乗りに乗って」おり、また並みの天才にすら到達することができない、いわば「天才の中の天才」ともいえる領域にまで達してしまっているということの何よりの証明なのです。

 例を挙げれば分かりますが、ビートルズの『The Beatles(通称「ホワイトアルバム」)』は当然のこと、ザ・ローリング・ストーンズの『メインストリートのならず者』、スティービー・ワンダーの『キー・オブ・ライフ』、エルトン・ジョンの『黄昏のレンガ路』など、枚挙に暇がありません――。

 
 ――さて、ELOの『Out of the Blue』も決してその法則の例外ではなく、聴けば誰もが名盤だと直感するような大作アルバムであり、ELOの最高傑作の一つであることを疑う者は一人としていないことでしょう!

 …まあ、何を名盤とするかは人の価値観の数だけありますから、それは言い過ぎであるとしても、このアルバムが名盤であることは多くの人が同意するところだと思います。

 やや前置きが長くなりましたが、この『Out of the Blue』は、私が雨の日に聴きたいアルバムのうちの一つであり、それはC面にある「Concerto For A Rainy Day(雨の日のコンチェルト)」と名付けられた一連の楽曲が、このアルバムのハイライトだからです。
 
 そしてC面の最後にはELOの代表曲でもある「Mr. Blue Sky」。この曲に差し掛かると、まるで大雨が止んで青空がふいに顔を見せたような、そんな爽やかさを聴く者にもたらします。

 先ほどの『Harvest』が雨の中で覚える憂鬱さを堪能するアルバムならば、こちらは外で雨がふりしきる中、ほんの少しでも雨を忘れさせてくれる、心にひと時の晴れ間を与えてくれる、そんな性格のアルバムだと言えるでしょう。

 また、『Out of the Blue』の壮大なサウンドは、ジャケットからも分かる通り「宇宙」を想像させます。この「宇宙」の真っ暗なイメージとも相まって、このアルバムは昼よりも夜の印象が強いです(⑥「Starlight」もそうさせます)。

 そう、私は雨が降る夜にこそ、このアルバムを聴きたくなるのです。

 想像してみてください。雨が降る夜、部屋に一人でいる自分を。外ではひたすら雨がふりしきる。この雨がいつ止むのかも分からず、一抹の不安があなたを襲う。
 そんな夜にこのアルバムを聴いてみてください。きっとたくさんの楽曲が不安がるあなたを勇気づけ、「Mr. Blue Sky」を聴けばひと時の青空が心に広がることでしょう。

 アルバムが終わってしまえば、元と変わらない雨が降る暗い夜のままかも知れません。しかし、不思議と胸に暖かさを感じ、「いつか雨は止むさ」と自分に言い聞かせながら明日を迎え入れられるはずです。そしていつしか、そういったアルバムが人生において大切な存在だと気付くはずです。

 そう、この『Out of the Blue』は、雨の日に誰もが感じるであろう不安を忘れさせてくれる、まさに雨の日にこそ聴くべきアルバムなのです。
 聴いたことが無いという方は、是非勇気を出して再生してみてください。「百聞は一見に如かず」とも言いますが、一聴すればきっと私の伝えたいことがお分かりになるかと思います。

3.『Quadrophenia』(ザ・フー)

 雨の日アルバムの最後は、イギリスのロックバンド、ザ・フーが1973年に発表したロックオペラであり、2枚組のアルバム『Quadrophenia(邦題:四重人格)』です。

 先ほど「2枚組の法則」を紹介しましたが、こちらもその例にもれず、『四重人格』はザ・フーの最高傑作の一つです。前々作の2枚組ロックオペラ『Tommy』、前作の『Who’s Next』、今作『四重人格』とつらなる一連のアルバムはどれも甲乙つけがたい傑作ですが、中でも、『四重人格』は雨の日に聴くことが多いです。

 このアルバムは四重人格の少年ジミーを主人公にした、ロックオペラの2作目であり(1作目は『Tommy』)、一つの物語を軸にしたコンセプトアルバムになります。

 白眉は①「I Am the Sea」から②「The Real Me」、表題曲の③「Quadrophenia」の流れ。特に「The Real Me」は、ベーシスト「ジョン・エントウィッスル」ここにあり、とでも言うべきベースが楽しめる良曲です。続く、④「Cut My Hair」はピアノの旋律とボーカルのメロディが美しく、⑤「The Punk and the Godfather」はとにかくギターがカッコいい。①~⑤のA面を目当てにこのアルバムを聴くという側面もあります。

 しかし、一番の聴きどころはラストの「Love, Reign O’er Me」です。
 ちなみに自分はこれを誤訳して「愛よ、俺に降り注げ」という意味だと思っていました(Reign = Rainと解釈)。誤訳とはいえど、なかなかキマってません?

 ちなみに、①「I Am the Sea」などの曲では、この「Love, Reign O’er Me」のメロディが伏線として登場するので、そういった点でもアルバムのコンセプト性を感じさせてくれます。

 さて、このアルバムの一つの特徴は、随所に聞こえる波や雨の音。雨の日に聴くと、これらの音と雨の情景が重なって一層アルバムの世界観に浸ることができます。まさに雨の日にこそ輝く名作です。

 ところで、ザ・フーのロックオペラである『Tommy』と『四重人格』。どちらも聴いたことがある方にお聞きしたいのですが、皆さんはどちらの作品の方がお好きですか?
 
 『Tommy』はかの名曲「Pinball Wizard」が入っており、『Tommy』の再現バージョンは色々なライブ盤で聴くことができます。
 一方、『四重人格』はそれぞれの曲のクオリティが比較的高く、雨の音といった効果音も楽しめます。

 どちらが好きかは好みの問題だと思いますが、私の評価はやはり『四重人格』の方が僅差で上回っています。それは、雨の日に本領を発揮するという個人的な特徴も含めて、アルバムのコンセプトが直観的に分かりやすいからなのかな、と考えています。もちろん『Tommy』も好きなアルバムですので、その日の気分次第では『Tommy』に軍配が上がることもあるでしょう。

 ちなみに、1枚目『Harvest』は暗い気分に寄り添うアルバムで、2枚目『Out of the Blue』は暗い気分を忘れさせてくれるアルバムと紹介しましたが、この『四重人格』は前者に分類できるでしょう。
 雨の効果音含め、アルバム全体が作り出す曇りがかった世界観に浸れば、雨の日の暗い気分に音楽が寄り添ってくれることを実感できるはずです。

おわりに ~雨の日アルバムは2種類ある~

 雨の日はとにかく気分が暗くなりがちです。そんな中でも、暗い気分に寄り添ってくれるアルバムもあれば、暗い気分を吹き飛ばしてくれるアルバムもある、ということを見てきました。本noteで言えば、前者には1枚目『Harvest』や3枚目『Quadrophenia』、後者には2枚目『Out of the Blue』が当てはまります。

 私が選ぶ雨の日アルバムはこれら3枚になります。

 世界にある数多のアルバムの中には、きっと私が選んだ3枚以外にも雨が似合うアルバムが多くあると思います。ぜひ皆さんで、自分だけの雨の日アルバムを探してみてください。

 良き音楽との出会いがあらんことを…。

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