【名盤】スティーリー・ダン『Katy Lied』
私がスティーリー・ダンと最初に出会ったのは『Aja』を聴いた時のことでした。『Aja』を初めて聴いた時は何だかよく分からず一度挫折したのですが、時を挟んで聴いてみると大いに気に入り、他のアルバムを聴きたいと感じます。そして次に聴いたのが『Katy Lied』。本noteでは、私とスティーリー・ダンの思い出や、アルバムの中で特に好きな曲についてお話します。
1.スティーリー・ダンとの出会い
スティーリー・ダンとの最初の出会いは『Aja』でした。
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」には、悪役のスタンド使いである「スティーリー・ダン」というキャラクターが登場します。そもそもは、ジョジョを通じてこの「スティーリー・ダン」に出会い、スティーリー・ダンという存在を知ります。
次に、みのミュージックという方がYouTubeにアップしたこちらの動画で、実在する方のスティーリー・ダンという存在に出会いました(ジョジョの方の元ネタにあたります)。
この動画は、ローリング・ストーン誌が選ぶソングライターのランキングを紹介するというものです。ランキングの71位にスティーリー・ダンがランクインしており(3:13~)、これを見た私はスティーリー・ダンのアルバムに挑戦しようと意気込みます。
2.『Aja』、そして挫折
そして手を出したのがスティーリー・ダンの最高傑作とも呼ばれることのある『Aja』。グラミー賞も獲得しています。『Aja』が最高傑作だということを耳にした私は、2022年の夏ごろに初めてこの『Aja』を聴いてみることにしました。ベッドに横になりながら、眠気と戦いながら再生します。
1曲目は「Black Cow」。イントロの「ピロ~ン」という音にやや拍子抜けします。そして「イン・ザ・コーナー、オブ・マイ・アイ」とボーカルが入ってきます。しかし歌に入ってもあまりピンとはきませんでした。とにかく奇妙な曲だなと感じました。
2曲目は表題曲「Aja」。ボーカルのメロディが全く予想できず、「これはロックなのか?」と困惑します。まるでジャズのようだなと感じました。これも奇妙な曲です。
ここで記憶が途切れています。私はあろうことか『Aja』を聴きながら眠ってしまったのです。やがて次の日を迎えますが、それ以降『Aja』を繰り返して聞くことはなく、再生しないまま1年ほど経ちます。私のスティーリー・ダン初体験は眠気に始まり、挫折とともに終わったのでした。
3.『Aja』に再挑戦
約1年後のこと、2023年11月、再びみのミュージックのソングライターランキングの動画を見て、スティーリー・ダンにまたも興味が出てきました。
そこで駄目もとで1年越しに『Aja』を聴いてみることにしました。最初に聴いて挫折したことが脳裏に浮かんで、今度は大丈夫だろうかと不安になりましたが、兎にも角にも聴いてみないと始まらないと思い、再生します。
1曲目は当然「Black Cow」。イントロの「ピロ~ン」という音にまたも拍子抜けします。しかし歌に入ると、なかなか良いメロディだなと自分の中で高評価です。「ユ~~・ア~・ハイ!」という部分のコード進行や「ビッグ・ブラック・カウ!」というコーラスにビビっときます。
2曲目は当然、表題曲「Aja」。イントロでは優しいピアノが迎え入れます。ボーカルのメロディはジャズっぽいです。浮遊感のある不安定なメロディですが、それが妙に癖になります。特に「チャ~~イニ~ズ・ミュ~ジック」や「エイ~~ジャ~」のところが気に入ります。
白眉は中盤から終盤のドラム。どこか狂気に満ちたようなドラムプレイに圧倒されます。けれども曲中には、ピアノがリードするお洒落で落ち着いた雰囲気が漂っています。
3曲目は「Deacon Blues」。こちらはR&Bのような曲調ですが、コーラスの「ラン・トゥー・ワーク、ザ・サクソフォンッ♪」や「コール・ミー・ディーコン・ブルース!」という軽快なメロディに初耳ながらも心をつかまれました。これも名曲です。
そんなこんなでアルバムを通して聴き終えると、満足感でいっぱいになりました。1年前の自分には難解に感じた、眠気に負けて集中して聴けなかった曲たちが、今の自分には輝いて感じられる。自分の成長に喜ぶとともに、私はこう思います。
「もっとスティーリー・ダンの曲を聴きたい」
と。そして、インターネットで名盤とされるアルバムを調べたり、Apple Musicの必聴アルバムに入っているアルバムを聴いたりしてみました。
4.『Katy Lied』の初体験
そのうちの一つが、今回紹介したい『Katy Lied』です。
『Aja』の前作にあたるアルバムで、邦題は「うそつきケイティ」。
私はまずジャケットに惹かれました。バッタが印象的な緑色の写真。そしてタイトルは『Katy Lied』と意味深長です。『Aja』の虜になった私は、続いてこちらの『Katy Lied』を聴いてみることにしました。再生します。
1曲目は「Black Friday」。最初は無音ですが、徐々にシンセサイザーの音が聞こえてきて、曲が始まります。ドラムがドコドコとなっている中、ボーカルの一言目「ウェン・ブラ~ック・フライデー・カ~ムズ♪」にすぐに心をつかまれます。つくづく、スティーリー・ダンは少ない言葉で聴き手の心を魅了するのが上手いなと感心します。「サティスファイ・マイ・ソウ~ル」と伸びやかな歌い方も気に入ります。
3曲目の「Rose Darling」が個人的に好きです。「ローズ・ダーリン・カム・トゥ・ミー…」と滑らかに歌い、どこまでも優しい曲調です。特にコーラスの「ローズ・ダーリーン(ローズ・ダーリーン)、マーイ・フレンド!」が好きで、そこから一気に盛り上がるところは聴き入ってしまいます。
5曲目は「Doctor Wu」。「ケイティ・トラ~イ」や「ケイティ・ラ~イズ」とアルバムタイトルにかけて歌われるため、この曲がアルバムのハイライトなのかな、と感じました。束の間、「アー・ユー・ウィーズ・ミー、ドクター・ウー」というキラーフレーズが胸に刺さります。とにかくコーラスが美しい曲です。
続いてB面2曲目が「Your Gold Teeth II」。この曲も個人的に好きです。イントロはカッコいい感じですが、その後曲調が変わって穏やかな雰囲気に移ります。曲調が変わった後のこのジャズっぽい優しい感じが好きで、一緒に歌いたくなります。「ライフズ・アン・リーアル」と、つい曲を聴きながら体を揺らしてしまいます。
また最後から2番目、9曲目の「Any World (That I’m Welcome To)」も終盤をかざる良い曲です。タイトルの「Any World (That I’m Welcome To)」というフレーズが曲を盛り上げ、「イズ・ベター、ザン・ザ・ワン、アイ・カム・フロム♪」と告げるコーラス部分。最後は転調し、曲もアルバムも盛り上がりは最高潮を迎えます。
そんなこんなでアルバムは幕を閉じます。どの曲も良いですが、中でも上で挙げた曲は際立っていて繰り返し聞きたくなります。
5.『Katy Lied』の特徴
スティーリー・ダンの特徴は、R&Bやジャズ、ロックを基にしてそれらをミックスした独特のサウンドや、洗練されたサウンド・プロダクションにあります。
腕利きのミュージシャンを何人も登用して完璧ともいえるサウンドを構築するその姿勢は、このアルバム『Katy Lied』に始まり、『Aja』はもちろんのこと、その次作の『Gaucho』でも見られ、いずれも聴いて損はない名盤ばかりです。ただ、そのサウンドは悪く言えば、カッチリしていて遊びのないという印象も受けます。
もちろん、それ以前のアルバム、例えば『Can’t Buy A Thrill』なども名盤ですが、まだ粗削りな印象があります。これは決して悪い意味ではなく、良く言えばラフで自由な作風で、リラックスして聴けるといった感じです。
さて、こちらの『Katy Lied』は、いわば「スティーリー・ダンの良いとこどり」ができる作品なのです。『Aja』のような洗練さも持ちつつ、『Can’t Buy A Thrill』のようなラフな感じも残っているという、スティーリー・ダンの良いところを存分に感じられる点で唯一無二の作品です。一方で中途半端な作風と言えるかもしれませんが、いずれにせよ良曲が詰まった名盤であることには変わりません。
おわりに
以上、スティーリー・ダンの『Katy Lied』でした。
最近このアルバムにかなりハマっており、好きなアルバムの一つですので、紹介できるだけでも嬉しかったです。
聴いたことがないという方は、『Aja』でも『Katy Lied』でも構いません、とにかくスティーリー・ダンのアルバムを聴いてみて、その奥深さの一端に触れてみてはいかがでしょうか。
聴いたことがあるという方は、これを機に再び聴いてみると新たな発見があるかも知れません。
それでは、またどこかでお会いしましょう。