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グランシャトーはピサの斜塔、江戸っ子はパリっ子

「せやから。大阪はイタリアで東京はフランスなんや。」

大阪の場末、じゃないけど、どこか場末感漂う京橋グランシャトー側の商店街。
ズボンのチャック全開のおじいちゃんと何百年かぶってるんだくらい色褪せた農協の帽子を被ったおじいちゃんの2人組がほろよい上機嫌で聞き捨てならない言葉を口にしながらわたしの横を通り過ぎた。

気になる。もっと解説が聞きたい。

歩幅をゆるめ続きに聞き耳を立てていたところ、

「せやせや!&&)&¥;@gjslfてな!」

恐らく歯が一本くらいしか残ってないおじいちゃんが喋りだして解析不能。

歯もうちょっと残してろや。
お酒の注文も通らんやろそんなもん。

理不尽な怒りを向けてしまったことを少し反省しながら千鳥足のおじいちゃんたちが愉快に立ち飲み酒場に入っていくのを振り返り様に確認して、大阪はイタリアな余韻に浸っていた。

遥か彼方、イタリアの街。
残り少ない歯を気遣いもせず、帽子は色が果てるまで使い古す職人気質なアモーレ老人たちが裸の紙幣をポケットにしまい猛々しいけど繊細な声で歌いながらバルへと繰り出す姿が一瞬見えたような気がした。

おじいちゃんたちはどこからイタリアのイメージを作り出したんだろう。
これまでの人生でイタリアと触れ合う機会がどれほどあったのだろう。
デートでイタリアンのお店に行ったりしたのだろうか。
帰る家はあるのだろうか。
待ってる人はいるのだろうか。
チャックの締め忘れに気づくだろうか。

イタリアとフランス、大阪と東京についてあれやこれや考えたけど、最終的にわたしの脳内にはけばけばしく暗く輝くグランシャトーのふもとで千鳥足のステップを踏むおじいちゃんたちしか残らなかった。

イタリア人はクセが強い。
行くならフランスにしようと思った。

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