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ミュージシャンの突発性難聴について思うこと
以前からSNSでぽつぽつと「突発性難聴になりました」という報告を目にしてはいたのですが、最近また目にする機会が増え、改めて気になっています。同じミュージシャンとして、心が痛むと同時に、これは他人事ではないと強く感じるわけです。私たち音楽家にとって、耳は言うまでもなく命そのもので、耳にトラブルが起きると音楽活動だけでなく、生活全般に大きな影響を及ぼします。
私たちミュージシャンは、音の聞こえ方に対して凄く敏感ですし、繊細に感じとる必要があります。何年もかけて、幅広い周波数帯の音をきちんとモニタリングできるようにする能力を身につけてきたにも関わらず、ある日それが失われるリスク(場合によっては永久的に)を考えると、突発性難聴になるリスクを極力下げたいと思うのが本音ではないでしょうか。
以下、そんな突発性難聴に対する自分なりの考察です。
突発性難聴とは?どんな症状が起きるのか
突発性難聴は、ある日突然耳の聞こえが悪くなる病気です。原因は完全には解明されていませんが、ストレスや過労、睡眠不足などが大きな引き金となることが知られています。この病気の特徴は、「気づいたときにはすでに進行している」ということです。詳しくは下記の厚生労働省のe-ヘルスネットにて。
回復の難しさ
突発性難聴の回復は、個人差が非常に大きいです。早期治療が成功すれば完全回復する人もいますが、聴覚が完全には戻らないケースも珍しくありません。また、回復したと思っても耳鳴りや音の歪みといった後遺症が残る場合があります。これが音楽家にとってどれほど大きなストレスになるか、想像に難くありません。特に重要なのは、「発症後48時間以内に治療を始める」こと。このタイミングを逃すと、治療効果が大幅に低下することが知られています。
さらに、突発性難聴の再発リスクも無視できません。一度発症すると、同じ条件下で再び症状が現れる可能性があるため、「いつまた耳が聞こえなくなるのか」という不安が常につきまといます。この不安が精神的負担を増やし、さらなるストレスや体調不良を引き起こす悪循環につながることもあります。
突発性難聴がもたらす経済的損失
突発性難聴は健康面だけでなく、仕事や経済面にも深刻な影響を与えます。
特に音楽家にとって深刻なのは、音が歪んで聞こえるなどの音の認識異常が伴う場合があることです。ミュージシャンとしてのキャリアや収入がどのように影響を受けるのか、短期的・長期的な観点から見てみましょう。
短期的な影響
突発性難聴は突然発症するため、スケジュールに与える影響は大きいです。例えば、ライブやレコーディングが直前でキャンセルになると、そのまま収入が途絶えるだけでなく、関係者やクライアントへの信頼にも響く可能性があります。また、予定を変更することで他の仕事に支障をきたすこともあります。
長期的な影響
聴覚が完全に回復しなかった場合、ミュージシャンとしてのキャリア全体に影響を及ぼします。音楽制作やパフォーマンスにおけるクオリティが低下し、仕事を続けることが難しくなるかもしれません。また、治療費や長期の休養による収入減といった経済的な負担も無視できません。
突発性難聴を予防するために
突発性難聴を防ぐために、私が普段から意識していることをザクっと羅列すると、
定期的に耳を休める時間を作る
長時間の作業やリハーサルの後には、意識的に「耳を休ませる時間」を設けています(車での移動時はほとんど音楽を聞きません)。
十分な睡眠を確保する
やむを得ない場合を除き、6~8時間睡眠を意識しています。
耳栓や防音用イヤープロテクターを使う
大音量環境にいるときは、耳を保護するためのプロテクターを使っています。
バランスの取れた生活を心がける
食事や運動を意識し、体全体の健康を保つことも耳を守るために重要です。
まとめ
突発性難聴は、私たちミュージシャンにとって非常に大きなリスクです。一度発症すると、健康だけでなくキャリアや経済状況にも深刻な影響を及ぼします。そのため、普段から耳の健康を意識し、予防に努めることが大切です。
耳は音楽家にとってかけがえのない資本です。
どうか皆さんも耳を大切にしながら、音楽を楽しんでください。