山留計算せずに山留設計する方法-4.斜面地の場合
今回は
斜面地について書きます。
一般地盤の斜面地としますので
先にこちらをお読みください。
※前提(前回まで同様)
この記事では掘削落差1.5〜7.0m程度の
スケール感とし、
親杭横矢板か連続柱列壁(SMW)の
工法としてください。
斜面地による制約とは
山留計画において
平地にはなくて斜面地にある制約は
水平切梁を配置できない
可能性がある点です。
例えば
掘削底…GL-4.0m
低い方の背面地盤高さ…GL-0.0m
高い方の背面地盤高さ…GL+2.0m
の場合、
低い方の掘削落差=4.0m
高い方の掘削落差=6.0m
となります。
一般地盤で掘削落差6.0mは
背面地盤高さ-1.0m(=GL+1.0m)に
切梁を架けたいですが、
低い方のこの高さには
地盤が存在しないので
切梁を架けられません。
別の支保工を考える必要があります。
背面地盤が広い場合
背面地盤が広い:
山留壁面〜敷地境界線等の水平距離が
掘削落差よりもかなり長い場合
この時、アースアンカーを
採用しておきます。
※地盤アンカー、バックアンカーとも言う
設置高さは平地の場合の
切梁設置高さと同様で良いです。
見積段階では
平面的な設置範囲だけ決めればよく
アンカー長や定着長等は計画不要です。
掘削底から敷地境界線へ向かう
45°影響線よりも外側に
アンカーを定着したいので、
背面地盤が広く取りたいです。
背面地盤がやや狭い場合
背面地盤がやや狭い:
山留壁面〜敷地境界線等の水平距離が
掘削落差と同程度(±1.0m差)の場合
この時、タイロッドアンカーを
採用しておきます。
※タイバックとも言う
タイロッドアンカーにも
色々ありますが、
ここでは山留から極力離れた所に
控え杭を打設し
山留芯材(H鋼)からフラットバーで
溶接して繋げる方法を取ります。
控え杭は
長さ:掘削落差と同じ
断面:山留芯材と同じ
間隔:山留芯材3本に対して1本
で勘定しておけば
見積段階としては狂わないでしょう。
背面地盤がかなり狭い場合
背面地盤がかなり狭い:
山留壁面〜敷地境界線等の水平距離が
掘削落差-1.0mよりも狭い場合
まず、原則として
見積段階であれば
基本設計段階の場合も多いので、
掘削落差を4.0m程度に抑えられないか
(つまり自立可能な高さ)
設計さんへ提案するのが良いでしょう。
施主さんにも
物理的困難の旨&コスト増&工期増について
説明が必要です。
もし提案を却下された場合
掘削落差が5.5m程度までなら
断面:H-500×200
間隔:450㎜
として、無理やり自立できる
山留壁にしましょう。
それを超える掘削落差なら
これに加えて
「背面地盤がやや狭い場合」の
タイロッドアンカーをやるだけの
金額を見込んでおきましょう。
施工会社の組織をあげて
解決策を慎重に考える必要がありますが
これだけの金額を考慮しておけば
一旦大丈夫です。
(解決策は今後別途記事に書くかもです)
今回はここまでです。
「山留計算せずに山留設計する方法」
のシリーズはこれで以上になります。
私の専門分野は
山留だけでなく
「仮設物構造計算」全体を指すので
他にも役立ちそうな情報を
たくさん書いていきます。
(そして専門分野以外にも色々やってるw)
楽しみにお待ちくだされば幸いです!
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