山留計算せずに山留設計する方法-3.硬質地盤の場合
前回までの記事
まずはこちらを先に
お目通しください。
今回は
硬質地盤について書きます。
※前提(前回同様)
この記事では掘削落差1.5〜7.0m程度の
スケール感とし、
親杭横矢板か連続柱列壁(SMW)の
工法としてください。
硬質地盤の場合
硬質地盤:
掘削土のN値が30以上
(60や100超もひっくるめて)
まず、施工長について。
硬質地盤は一般地盤と同様に
掘削落差:根入長=1:0.8~1程度
としましょう。
実施段階では攻めても良いですが、
見積段階では攻める必要は
ないでしょう。
掘削落差が3.0mなら
根入長は2.5m~3.0mなので
施工長は5.5m~6.0mです。
軟弱地盤と違って、山留壁の底が
しっかり固定されます。
足元はびくともしないでしょう。
根入範囲は全く変位しませんが、
掘削落差範囲は普通に土圧を受けるので
放物線的に倒れてきます。
軟弱地盤と違って、
根入長を長くすることは
あまり変位に有効ではないです。
むしろ地盤が固すぎるあまり、
山留の打設に難航します。
ロックオーガーによる一軸先行掘りで
削孔が2工程になったり、
ダウンザホールで地盤を叩いて壊して
騒音振動が発生したりします。
私の経験上、
一般地盤の4~5倍の時間を費やしたり、
近隣住民さんの対応に苦労しました。
狭小地いっぱいに建てるならともかく
基本は山留を打たずに済むように
知恵を絞る方針をお勧めします。
施主さんも、コストや近隣対応等の
悩みの種が減って良いですし。
次に、断面寸法(H鋼)について。
一般地盤より1ランクダウンです。
対応表にまとめると、
掘削落差1.5m以下:H-200×100
掘削落差2.0m以下:H-200×100
掘削落差2.5m以下:H-200×100
掘削落差3.0m以下:H-250×125
掘削落差3.5m以下:H-300×150
掘削落差4.0m以下:H-350×175
掘削落差4.5m以下:H-400×200
掘削落差5.0m以下:H-450×200
硬くて自立しやすいとはいえ
見積段階ではこれくらいに留めましょう。
硬質地盤の掘削落差は
原則5.0mまでにしましょう。
私は所長と協議の末
5.5mまで自立で攻めた経験がありますが
これ以上は冒険したくありません。
H-500×200以上を使わないのは
一般地盤で書いた通り、
重機の錐の付替えが発生するからです。
掘削落差が小さい所でも
親杭横矢板を選ぶ場合は
H-200×100は下回らない方がいいです。
矢板の引っ掛かり代が少なすぎて
施工性や耐久性が落ちます。
出隅部(45°)はもっとシビアで
H-250×125を下限にしてください。
軟弱地盤/支保工の場合
掘削落差が1.5m~7.0mのスケールにおいて
支保工は不要でしょう。
そもそもそんなに硬質地盤ならば
建築物の支持層になりえるので
構造設計として深くならないです。
むやみに深くしても山留掘削の
費用と工期がかかるだけで
メリットがありません。
冒頭の通り、硬質地盤では
山留をなくしていく方針が良いですが、
施主さんや現場の予算と相談して
決めましょう。
今回はここまでです。
高低差がある場合の
見積段階での基本的な考え方は
次回に書きます。
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