映画レビュー:五十六本目「Sad Vacation ラストデイズ・オブ・シド&ナンシー」
高校生だった頃、同級生に元L⇔Rの黒沢健一が居て
彼の誘いで彼の友人でパンクスだったK君の家に行った。
自分はニューウェイヴ派だったので、うまく馴染めなかったけど
なんだか流れでK君がヴォーカルを務める
ハードコア・パンクバンドにベーシストとして
加入することになった。
理由は、中学の頃に同級生の兄からベースギターを譲られて
弾いてもいないのに所持しているから、だったと思う。
初ライヴは、近所の公民館のロビーでの
地元のバンド合戦みたいな会場。
そこで自分は、弾き手の親指を本番中に切ってしまい
途中から血だらけで弾いていただけで
「シド!」
と笑われる羽目に。
でも、なんだか嬉しかった。
バンドからは直ぐに脱退したけど、
彼らとの交流は暫く続いた。
黒沢健一の、その後の活躍は割愛。
YMOに洗礼を受けて
UK発信のニューウェイヴへ直行した世代には
他ジャンルの「汗」や「怒り」や「泥臭さ」が
どうしても受け容れ難く
自然と「食わず嫌い」になっていってしまいがちで。
特に思春期。
耽美派こそ我が血。
みたいな、今振り返るとなかなかの薄気味悪さ。
とかなんとか思いながらも、
ジョン・ライドンのソロワークは
全てチェックしていたりするんですが
その勢いで、たまたま
「God Save The Queen」
のジャケTを着て大相撲観戦に行ったら
同行者の知り合いから
ピストルズのボックスセットを
クリスマスに贈られて
そりゃまぁ、とりあえず改めて色々探ろうかと
思いますわな。
とかいう想いも忘れてた
ついさっき
GYAO!でこの作品を見つけました。
前置きの長さよ。
ファーストカットから、NYチェルシーホテル。
飛び込みでライヴ演ろうぜ!と
バンドでアメリカを飛び回ってた頃、
一週間程お世話になりました。
90年代は、まだお手軽に泊まれた安宿でした。
ここでメンバーと自炊して過ごした日々を思い出します。
しかし、その20年前の下層階は
こんな事になってたとは。
勿論、事件は周知してますが
本編で現場まで何度も出て来ると。
事を掘り下げず、ざっくりした印象だけで語る人は
後世どんどん美化してって
カート・コベインの件をも歌にする
日本の女性歌手みたいなのも出て来る始末。
私は、コートニーと未だ親密に繋がっている人々とも親しいので
軽々しくネタにする輩はゴミだと捉えています。
閑話休題
ヤク中の母親に育てられたシド少年は、
意外なほど素直で人当たりの良い人物に育つも
やはり母親を赦せない部分から反発し
音楽の世界へ。
スージー&ザ・バンシーズの滅茶苦茶ドラマーから
マルコム・マクラーレンに引き抜かれて
クビになったグレン・マトロックの後釜で
セックス・ピストルズに加入。
グレながらも本心はお人好しなのが仇となり
「ヴィシャス(悪徳)」とステージネームから
無理矢理ケンカさせられたりの日々。
そんな中、癇癪持ちだった為に鎮静剤を子供ながら処方されていた
グルーピーのトップ、ナンシー・スパンゲンと出逢う。
「グルーピー」とは、簡単に言えば「バンドヤリ●ン」。
近年まで、日本でも見られた存在。
ナンシーは、アメリカの有名歌手とヤリまくった挙句
「セックス・ピストルズを捕まえて戻る」
と友人に豪語し、果たす。
シドを虜にし、バンドには嫌われ、インタビューの主導権を握り
「オノ・ヨーコみたいだった」
と言われたナンシーは、
変わり者の女友達だけには好かれた。
男たちには尽く嫌われたのが解り易い。
カネ作りの為にバカみたいなソロアルバムも作り
1コーラス目も歌えないライヴで小銭を稼ぐも
クソほど売れたバンドのギャラも全部ドラッグに消え
チェルシーに泊まりながら無一文で
ナンシーがアレコレ作ってくるカネで結局は薬漬け。
でも、拾っちゃいけないけど、なんか解る。
自分が泊まってた頃の印象だけだけど、
チェルシー・ホテルの、あの雰囲気。
薄暗くも暖かい、照明と家具と壁からの反射。
あの中で、シドは毎朝5時に起きてヤク抜きリハブに
真面目に向かってた。
問題なのは、結局明かされない「S」氏」。
Sって、本当に居たのか?
いや、これは語り過ぎだ。
申し訳ない。
謎は終わらない。
そういう世界に埋まった二人の持ち物なんだろう。
他の誰を責めるのではなく、
未だに暗躍する麻薬カルテルだけを糾弾して
滅びた人々には祈りだけを捧げてほしい。
シドの友人が
「二人で自殺したい」
と聞いたと話してたのが
引っ掛かるけど。
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