スマートシティ・シェアリングエコノミーとデジタル社会の未来:成田悠輔と伊藤穣一の対話
成田悠輔:伊藤さん、よろしくお願いいたします。あなたは最近ほぼほぼ日本に滞在している感じですか?
伊藤穣一:はい、その通りです。東京をベースにしていますが、実は先月サンフランシスコにも行ったんです。基本的にはあまり海外出張はしていないですね。
成田悠輔:サンフランシスコが変わり果てた街になっているとよく聞きますね。一時期は衰退していましたが、それなりに回復してきたと思いますが、以前とは違う形での回復を感じます。
伊藤穣一:うん、それはどのように変化されたんでしょうか。
成田悠輔:治安が悪化したり、多くの企業が撤退したりと、街の状況が大きく変わりました。それでも、コロナ禍よりは少しずつ復活していて、例えば私のビジネスパートナーが経営する和食店も2月に再開する予定です。サンフランシスコはテックユートピアとテックディストピアが共存する象徴的な街ですね。
伊藤穣一:そうですね。日本の都市でも同じような状況は見られますが、サンフランシスコはテック企業の集中とそれに伴う物価高が顕著です。たとえばGoogleの社員送迎シャトルが社員を送り迎えしていて、結果として地域への貢献が少なく、それが摩擦を生んでいます。このような貧富の差や学校の問題など、多くの問題が発生しています。
成田悠輔:その問題に対する解決策はあると思いますか?テック大企業や市場競争の側で動くレイヤーと、警察や教育といった公共の側での動きが噛み合っていないという問題がありますが。
伊藤穣一:それは非常に難しい問題ですね。半導体時代からの長い歴史があり、貧困層やダンピング問題など、様々な問題が複雑に絡み合っています。企業のキャンパス内には全てが揃っていて、それが地域とのつながりを欠いているため、問題が生じています。しかし、最近では慈善事業などで地域に貢献しようとする動きも見られます。
成田悠輔:それは大学が以前直面していた問題に似ているように思います。例えば、私が所属していたニューヘイブンのイェール大学も、かつて治安が悪化するなどの問題を抱えていました。大学が繁栄している一方で、その周囲の町に対する貢献が乏しく、社会的な隔離が進んでいました。その後、大学が地域との関わりを強め、様々な階層の人々が共存するエリアを作り出すことで、状況は改善してきました。
伊藤穣一:そうですね、私が以前所属していたケンブリッジのハーバード大学やMITも同様の問題を経験しています。しかし、近年では街の様子が大きく変わり、まるで別の町のようになってきました。
成田悠輔: あの、webスリー関係の投資をしているんですけども、完全分散型チームっていうのはすごく増えてますよね。Webスリーの多分8割9割はあのオフィス無いんですよね。もう完全。リモートなんでだから結構デジタルネイティブのインターナショナルビジネスは、あの最初からオフィスがないって、その体制のためのサポートの会社とか、ツールとかも出てきてる。
だから全体がすごく変わったかっていうと。おっしゃるとうりだと思うんですけど、変わったワーキングタイルをやってる人たちは?中には出てきてるかな?僕もなんか小っちゃい会社やってるんですが、officeなしで完全分散型でやってるんですよね。なので、たぶん今の20代30前後以下の世代にとってはすごくナチュラルに。やれるのかなっていう感じがしますね。それがその主導権が50代以上にあるみたいな感じだと総じて難しいというのもあるのかな?
伊藤穣一:その中で僕も50代ですけどね。
成田悠輔: 伊藤さんは、異常なくらい年をとらない永遠のデジタルネイティブ。伊藤さんはそのずっと老いていないように見える秘訣っていうのは何なんですかね。老いてないっていうなんかその。マインドセットというか。そう、新しい技術とか、その社会の動きに対する姿勢っていう意味で。ずっと動き続けられる新鮮で続けられる秘訣ってなんかあるのですか。
伊藤穣一: あのまあ、ちょっと僕もやっぱりそういう抑え込まれるのが嫌いだし、苦手なので。あの。どんどんやっぱりあの逃げちゃうんですよね。なんか僕もなんか少し一番最初に覚えてるのは、なんか幼稚園で机に座って外がなんか鳥が鳴いて楽しそうで。逃げて毎日逃げたらもうこなくてもいいと言われたっていう。なんかそこそこがもう四歳の時からなんかそういうこうちょっとあの落ち着かないのが多分渉外でもあり、あのなんとなく動く馬力になってると思うんですけど、成田さんはそもそも今言えるにいる理由っていうの?なんかあるんです。
成田悠輔: いやまあ、それも偶然のようなもので。僕もともとその性格的に。人と。同じ場所とか同じ時間で。活動するとか仕事するっていうのが元々できない人間なんですよね?でも、小中学校に入ったあたり、十代前半ぐらいからなんか突然道端で寝始めたりとか。するような感じで、学校にもあまり行かずにずっとそのままきてで。もうとにかく気づくと寝ちゃうみたいな感じなので、普通に特定のofficeに毎日同じ時間に行くみたいな普通の社会人的な仕事全部無理だなと思ったんですよね。そしたらさらに人との付き合いはあまり得意じゃないので、あの起業家経営者も厳しいし、政治家みたいなの。厳しいなあと思って。こうなんか、それでもやれるような仕事っていうのを消去法的に探して行くと、研究者とか技術者みたいな方向ぐらいしかないんじゃないか?まあ、あるいはもしかしたら、彫刻家とか画家とかになるべきかもしれない。それでずっとその消去法的に研究者っぽい道をずっ辿ってきたんです。積極的に「これがやりたい」と動いてきたというよりは、「これはつらくて耐えられない」「ここには入れない」みたいなネガティブな消去法で。それで生きてきたような気がしています。伊藤さんが「逃げる」というのは、もう元から子供の頃からの性格なんでしょうか?
伊藤穣一: そうですね。あまり組織化された秩序の中で、目的が分からないことをされるのは苦手でした。そもそも何のためにこれを学ばなきゃいけないのか、何のためにやるのかと自分自身に問いかけていました。趣味や興味を追いかけて学ぶやり方と、「とりあえず学んでいつか役に立つ」っていう二つのパターンがあって、妹はきちっと学校で成績を取ってきたんですけど、僕はやりたい時に学べるけど、命令に従うのが苦手でした。
でも今回のこの状況で、ズームでいろんなプロジェクトに参加しながら、役に立つ時は出てくるけど、役に立たないことにはあまり行かないというスタイルは、結構良くなったと思っています。
【成田悠輔】
「ニューリアル」という言葉を聞くと、リアルの価値が根本的に短期間で変わっていないんじゃないかな、と思うんです。一定の世代や一部のグループでは、これまでと違う働き方や組織のあり方が立ち上がってきてると思います。
【成田悠輔】
僕が興味があるのは、完全分散型・完全リモート組織を作ったときに、仕事や組織に対する愛着、アイデンティティ、組織のカルチャーはどうなっていくのか、ということです。人間は同じ空間を共有し、時間を共に過ごすことで、コミュニティやグループ感を醸造すると思います。それを一旦切った時、その人がその組織の中に属している感覚をバーチャルにどう続けられるか、というのが興味があります。新しいリモートアイデンティティやバーチャルアイデンティティはどういう感じになると思いますか?
伊藤穣一: 僕は90年代からオンラインゲームやオンラインコミュニティフォーラムに深く関わってきました。フォーラムでは言葉しかやりとりできないですが、ゲームでは誰かを助けるために何日間もかけてアイテムやゴールドを貯めてあげることができます。それは何時間もかけて作った物を渡すといことが、デジタルな世界でも存在します。
ゲームの世界で、価値の交換やリアリティの交換は、言葉だけとは違います。それをそのままデジタルで写せる物と言えば、お金です。デジタルでも、お金を送ることとメールを送ることの価値は全然違います。
成田悠輔:デジタルの現在、そしてWeb3.0の世界において、一つ面白い動きとして、コミュニティ内で資産が活発に動くという現象があります。そのコミュニティのパワーダイナミクスが変わってきているのを感じます。例えば、私が所属するオンラインコミュニティでは、金銭に換算できない特別な"トーク"が存在し、一時間当たりの価格が約119トークに設定されています。メンバーがそれぞれ様々な仕事をすることで、これらのトークを獲得します。そして、新しいメンバーをコミュニティに引き入れるためには、時間を投入してトークを集める必要があります。これにより、ただ誰でもが参加できるわけではなく、時間を投資しなければ参加できないという構造が生まれています。
伊藤穣一:そのうえで、Web3.0の世界では、コミュニティ内の動きだけでなく、NFTのような、一つしかないもの、つまりユニークな価値を持つものに対する関心も高まっています。このようなユニークなアイテムは、簡単にコピーできる物とは異なる魅力を持ち、それがリアルの世界の何かと関連づけられていると、人々のリアル世界への絆も生まれます。そういう意味で、Web3.0に参加する人々のコミュニティは、彼らのリアル世界との接続を新たな形で確立していると感じています。」
成田悠輔:まさにその通りです。過去のテクストや画像、音声のようなデータのやりとりに対して、今我々が体験しているのは、時間や歴史、来歴などを圧縮したり、唯一無二の価値を持つNFTのような物を交換できるステージです。これにより、純粋にバーチャルなコミュニケーションだけで成立していると見えるコミュニティでも、より強い絆や愛着感が自然に形成されます。そして、これは新しい現象ではありません。ゲームの世界でも、実際のお金の交換でも同じです。本当の意味でのお金の存在はメタバースにはありませんが、その移動によって様々な動きが生まれます。
伊藤穣一:そのため、今、一般の人々や学生、子供たちまでもが、価値の交換が日常的に行われる感覚になれてきていると思います。それが、より広範囲でツールとして使われているのが現状です。お金というのは、人間が作り出した記号で、時間や歴史を圧縮するメディアです。つまり、私が百ドル札を持っているということは、過去に何か価値あることをした証であり、その証がお金という形に圧縮されているのです。
成田悠輔:その点で、時間とトークの交換やNFTなど、時間をかけないと作成できない、簡単に複製できない価値を作り出す新しいメディアが登場しています。それは、新たなスマートシティのような概念とも関連しています。
特にクリエイティブ産業は多くのフリーランスの人たちがいることから、この産業はweb3.0の流れに乗って多くの変化を経験する可能性があります。
フリーランスの働く環境はこれまで良い状態にはないままでしたが、それがこれから変わるかもしれません。
ただ、スマートシティを実現するにあたり重要なのはフレキシビリティで、単一のパターンやソリューションに縛られずに、オープンアーキテクチャーを重視するべきだと考えています。
また、中国などで見られるスマートシティの例を見ると、結局はサーベイランスシティと化してしまう傾向があります。ですので、プライバシー保護と参加型のシステム設計が重要となるでしょう。
その点を含めたエコシステムのテストは、非常に価値ある議論となると思います。スマートシティはサーベイランスシティにならないような形で設計するべきです。現在、うまく機能しているようなスマートシティの代表例は存在しますか?
伊藤穣一:確かに、中国の若者との会話を通じても彼らはサーベイランスを好意的に捉えています。そして、その背景にはエビデンスベースの国家を目指しているという事実があります。つまり、データを集めて最適化を進め、その結果、犯罪者などが減ったという現実があるのです。その点についてのデータは多数存在します。ですが、データに基づいた強力なサーベイランスについての話を聞くと、説得力があるように感じます。しかし、複雑なウェルネスを中心としたスマートシティの考え方が重要で、まだ見たことのないような事例があると思います。現在、いくつかの実験が行われているので、それらを見ていきたいと思っています。例えば、海外ではいくつかの興味深い事例が存在します。たとえば、サンフランシスコ北部の一部地区では、一旦不動産価格が暴落した後にアーティストやカフェが進出し、地域が活性化するという現象が起きました。一旦価格が下がってアーティストが来るというのが重要で、私はクリエイティブ産業やアーティストがウェルネスや人々の安らぎを中心に据えたシティには必要な存在だと感じています。
成田悠輔:スマートシティについては素人ですが、部外者としての印象は、スマートシティが賢い人たちや意識が高い人たちによるトップダウンのビジョンや計画に基づいて作られる形が多いように感じます。また、乱雑さやノイズの要素、普通の生活を継続したいという大多数の人々との間に生じる差異が、問題を引き起こすことが多いのではないかと思います。特に、スマートシティが計画的に美しく作られることで、アーティストの流入やパーティーカフェのようなものが生まれにくくなるのではないでしょうか。そのため、計画の中に遊び心や余白を残すことが重要なのではないかと思います。
次に、監視問題についてですが、中国の若い世代の人々と同様の感覚を持つ部分もあります。インターネット産業やウェブビジネスが可能にした生活は、ある意味で監視経済そのものです。一見、日本社会はプライバシーや監視経済に対してアレルギー反応を示しているように見えますが、普通のwebサービスには完全に身を委ねているわけです。時間が経てば、私たちは口でプライバシーの重要性を語る一方で、実際の行動はそれほど気にしていないように思えます。そんな流れについて、どう思いますか?
伊藤穣一:個人がプライバシーを意識し始めるのは遅くなってからのことが多いと思います。そして、プライバシーが失われると、自己適応的な複雑系システムが形成されにくくなり、中央集権的になる傾向があります。特に国に関してはそうで、新たな差別が生じる可能性もあります。これはAIも含めて、不適切な行動をとる人々が排除される傾向があるからです。その結果、新しいアーティストや政治的なアイディアの出現が減少し、アイディアの競争も少なくなるかもしれません。これは大きなコストになるのではないかと思います。しかし、一般の人々は自分たちに責任がないと感じ、それを気にすることは少ないでしょう。それでは、このアーキテクチャが変化していく中で、どうやって大きな改革や新しいアイディアを生み出すことができるのかが問題です。
成田悠輔:そのマクロな摩擦についても非常に興味があります。コンテンツやアイディアのプラットフォームが効率的に機能し、スーパースター的な存在が大きなマーケットシェアを取ることが容易になりますよね。
成田悠輔:まず、その結果として私が感じているのは、かつて情報の摩擦やコミュニケーションの難しさによってローカルに留まっていた異質なメディアやコンテンツが生き残りにくくなっているのではないかということです。例えば、国内の問題を取り扱うジャーナリズムや、商業的に成功しきれない音楽や映画などがそれに該当します。これはブログやソーシャルメディア時代から気になっていました。
一方で、別のカレンシーを用いることで新しいゲームが生まれることも可能です。これにより、従来は困難だった特定の人々の集結が可能となり、それまで存在できなかったサブカルチャーにもエネルギーが注入されます。それによって、マス市場が成長し続ける中で、ロングテールとして言及される尾の部分も一部活性化するのではないかと思います。
しかしこれは、このデジタル世界でどのように多様性を取り込み、活性化させるかという課題を抱えています。私は趣味やハッピネスといった多様性がデジタルの世界でうまく活性化されると、分散が起きるのではないかと思っています。しかし、これはまた一方で異なる原理が競争しているようにも感じています。
先程伊藤さんがコミュニティについて言及したとき、通常の貨幣とは交換できない価値が存在すると言及しました。私もこれには強く同意します。たとえば、私がいる学術の世界でも、月謝は支払いますが、PhDは購入できません。その価値はお金で買えず、認証された特定のトークンでしか獲得できないのです。
伊藤穣一:確かに、その中でもビジネスにはお金では買えない価値が含まれています。例えば家庭や宗教のように、その存在を維持するのにお金は必要ですが、純愛や神との交流はお金で買うことはできません。それらの価値を周りにビジネスを形成し、そのビジネスが大きくなることがあります。
昔からお金で買えないが交換可能なものが存在し、それがお金とのインターフェースを持つことで影響を及ぼします。PhDを取得すると給料が上がる可能性はあるものの、それは直接の交換ではありません。我々の対話もまた、お金には交換できないが、この対話を持つことで得られる価値があるという点で同じです。このような価値がお金と両立することで新たなシステムが生まれるわけです。私たちはこの「お金ではないが価値がある」領域を現在探求しています。
成田悠輔:実は先週、たまたまパリに行ってパリ・ファッションウィークを見に行ってたんです。出展しているブランドは100以上あるのに、まだ中国のブランドは一つしかないらしいんですよ。それがある意味で、先程あなたが触れた例に該当するのかなと思います。LVMHのような企業が、そのような閉ざされた空間を維持することで、彼らのコンシューマビジネスを発展させていると考えられます。これはまさにインターフェースのデザインの一部です。
そして、そのような高級ブランドのビジネスや先程の学費ビジネスが、具体的な例となっています。さきほどあなたが言及したようなメカニズムは、エリート層のコミュニティだけでなく、より広範なコミュニティでも同じような仕組みを作り出す可能性があると思います。これが私たちの希望と期待です。
成田悠輔:しかし、その目指す方向への最大の障害は何でしょう?技術的な壁なのか、それとも人々の価値観や文化に根ざした壁なのでしょうか?
伊藤穣一:それは、ある意味で文化的な壁だと思います。Web 3.0の世界を追求しながら、人々はやはりお金が重要だと感じています。特に若いコミュニティでは、脱金融の動きが見られ、彼らの文化はかなり面白いものになっています。それはヒッピー時代に似ているとも言えます。
成田悠輔:Web 3.0というと、大きなアプリケーションとしてはお金、市場、資本主義などが語られがちです。一方で選挙や民主主義、意思決定の仕組みに関する話題もよく語られます。しかし、心と体の健康、つまり個人の内側の話についてはどうでしょう?それらが物理的な技術によって変わる可能性はあるのでしょうか?
伊藤穣一:そうですね。例えば、Web 3.0の最初のキラーアプリケーションとして暗号通貨があります。初期のインターネットがメールによって普及したのと同様に、ブロックチェーンを通じてお金の流れが大きく変わったのです。しかし、インターネットはメールだけで終わらず、今ではZoomを通じて教育や社会サービスを受けることができます。これと同様に、ブロックチェーンもまた広範なインフラに組み込まれることで、お金の世界だけでなく、人間のコーディネーションにも大きな影響を及ぼすと思います。
若者たちが求める社会変革と、それに適したツールがタイミング良く揃ったということが、現在のヒッピー時代のような動きにつながっていると思います。そして、彼らの理念としては非中央集権化とオープンネス、そして環境への意識があります。
私が感じるところでは、健康に対する価値観が変わってきていると思います。ナチュラルな生活を求め、あまりお酒も飲まず、自己犠牲を美学とするような態度も少なくなっています。これはある意味でスピリチュアルな面での健康につながっています。そして、現在、Web 3.0を通じて生まれつつある新しい文化は、文化的にも物理的にも健康な方向へ向かっています。
流行しているステップカウンターのようなアプリも、歩くことや運動を中心とした健康志向が反映されています。それ故に、私たちの世代に比べて、今の若者たちは物理的にも心理的にもより健康的な方向に進んでいると言えます。そしてそれを支えるテクノロジーとしてWeb 3.0が大いに役立つでしょう。
伊藤穣一:それに合った。そのそれこそ、スマートシティがあれば、あのだから健康に行きたいって言うこう気持はみんな持ってきてると思うので、そこをこうなんかエネイブルできるんじゃないかなって気がするんです。その健康な方向に流れがあるのは何でなんだと思われます。これはずっとこう、人類がだんだんとこう。暴力とか強すぎる刺激みたいなのは、自分たちからそぎ落として言ったっておーきな流れの延長線上にあるのか、それとも何か?最近、大きな変化があって、それが特に。今の全然あたりの考え方からだとこころに対する考え方に俺は僕の勝手なこれもね、どっちかっていうと、あの希望の方なんですけど、僕やっぱり産業革命、大量生産のときって、やっぱり人間を機械のように使う時代だったと思うんですね。あの工場だとホワイトカラーで。そして人間をパーツにしたと思うんですねで、同じようなことをするこう使い捨ての人間の世界だったんですけども、やっぱりその時代から今度は情報化時代になると、みんな一人ずつが違うことをして、でクリエイティビティアンロックしなきゃいけないので、ただ体とかパーツとして人間を使うんじゃなくて、その部分は機械とかコンピューター使ってで人間は人間らしさを出すで、やっぱり人間が人間らしさを出すには?スピリチュアルにも物理的にも健康じゃなきゃいけないし、フリーダムも必要だと思うので、みんなの人間全員がそれやりたいかって言うとそうでもないけれども、そういうクリエイティブでフリーで健康な人達が、やっぱり社会的に必要とされてきてるんじゃないかなと思うんですね。今までよりはでそういう環境に向かって言ってるんじゃないかなっていうのが僕のあの。今の変革の希望なんですね。
成田悠輔:なるほど。柏の葉スマートシティは?データ利活用の町作りに着手し、2020年には個人が許諾することに、よりデータを流通させることができる。柏の葉データプラットフォームドットトゥーンドットを開発。そしてこのプラットフォームを活用し、住民の方々が様々なサービスを利用できるポータルサイト。スマートライフパス柏の葉の提供を開始。町屋個人のデータを有効に利活用し、このニーズに応じて人々の暮らしがより豊かになる街づくりを目指し、日々、新たな取り組みを行っています。伊藤さんこの柏の葉データプラットフォームみたいに、いろんなタイプのモダリティの。センサーデータを。集めて言って、それを使って生活のいろんな局面とか、様々なサービスを最適化して行くような年とか町。みたいなものビジョンとして、大きくあると思うんですよね。これは先ほどのあのスマートシティなのか、それともサーベイランスシティなのかっていう話でも関わってくると。思うんですが、なんかこの流れがどういう方向に進んでいくべきなのかとか、あのそこで生まれる。こういう課題とか問題に。特に注意したほうがいいとか、こういうこう。ユースケースとかアプリケーションが特に大事みたいな、なんかご意見とかビジョンみたいなの終わりになったりするんで。
伊藤穣一:私は、スマートシティの存在が、人々が健康志向に向かって行きたいという意識を促進できると考えています。そのように健康的な方向への流れが存在する理由については、暴力や強すぎる刺激から自分たちを遠ざけてきた人類の進化の一環であるのか、それとも最近の大きな変化の結果なのか、といった疑問があります。私自身は、産業革命と大量生産の時代では、人間は機械のように使われていたと考えています。工場の作業者からホワイトカラーまで、人間がパーツのように利用されていたのです。しかし、情報化時代になると、それぞれの人が違うことを行い、クリエイティビティを発揮することが求められます。人間を単なる部分として使うのではなく、機械やコンピューターを使って人間らしさを出すべきです。人間が人間らしさを発揮するためには、スピリチュアルな面でも物理的な面でも健康であることが必要であり、自由も必要です。全ての人がそのような状態を求めているわけではないかもしれませんが、クリエイティブで自由で健康な人々が社会的に求められていると考えています。
伊藤穣一:例えば「柏の葉スマートシティ」は、データ活用による街づくりを始めており、2020年には個人が許諾することでデータの流通が可能になる「柏の葉データプラットフォーム」を開発しました。このプラットフォームを通じて、住民は様々なサービスを利用することが可能となります。個々のデータを有効に活用することで、人々の生活が豊かになるような街づくりを目指しています。成田さん、このようなデータプラットフォームを活用して、センサーデータなどを集め、生活のさまざまな面を最適化することができる街をどのように見ていますか?また、この動向がどのような方向に進んでいくべきだと思いますか?
成田悠輔:それは非常に興味深い問いです。しかし、我々がデータを集めていくプロセスには、パーソナライゼーションから得られる利点とプライバシー問題という、2つの大きな課題があります。日本では、情報が縦割りされていることや、情報が標準化されていないことが問題となっています。その結果、プライバシーの問題により医療データが共有できないという状況が生じています。標準化というのはトップダウンとボトムアップの二つのアプローチがありますが、一般的には、我々は標準化をあまり上手に行えていません。データが共有されるという夢を持ちつつも、それが達成できていないのです。ただし、ブロックチェーンのような技術が生み出す標準化のプロセスやその成果が最も価値あるものであると考えています。個々の企業だけでなく、新たな技術を活用しながら、データシステムを構築することが必要です。そのような環境が整えば、非常に面白い実験が行えるでしょう。
成田悠輔:さて、例えばNFTのような標準化が実現できるケースはどういったものでしょう?それは単純に多種多様なスマートコントラクトを試したい人たちが参入可能な開放的な競争が存在するからでしょうか?それとも他に何か秘訣があるのでしょうか?
伊藤穣一:その質問に対しては、方法論や美学が一役買っていると思います。例えば、まず誰もがアクセスできるオープンソースの世界では、自分が何をやっているかを世界に向けて公開し、そのプロセスを通じてコミュニケーションを取ることが重要となります。もし他人がすでに自分の取り組みより優れたことを行っていたとしても、それを再度実行するのではなく、自分たちの方法や視点で新たなソリューションを探すことが重要です。これは一種の哲学のようなもので、すでに存在するものを再製造するのではなく、新たな価値を創造するという思想です。そして、情報の共有と標準化がこの思想を実現する上で欠かせない要素です。また、日本では検索が主に日本語で行われるため、英語のプロジェクトが見落とされるケースもあります。
成田悠輔:その点については共感します。データの標準化などでは多くのガイドラインが乱立しており、企業だけでなく、自治体や行政側でも同様の問題が見られます。たとえば、自治体が持っている行政データの標準化などが挙げられます。その他、教育や学校から得られるデータの標準化も同様の問題を孕んでいます。
伊藤穣一:その通りですね。標準化は存在しているものの、それがオープンになっていないケースが多いです。それが自分の競争力を維持するための手段となる場合もあります。Appleなどは独自の規格を作成し続けていますが、情報化時代には、それをシェアする必要があります。国や行政によるものは特に全てオープンにすべきです。ただし、プライベートデータそのものはプライベートに保たれても良いと思います。重要なのはそのプロトコルが全てオープンにされているかどうかです。
成田悠輔:それは納得できます。また、私たちが今身につけているようなスマートデバイスを通じたスマートヘルスにおいては、特に予防医学の領域で大きな可能性があります。心臓発作の予兆などを検出し、それを予防する介入を行うことが可能になりつつあるという話を聞きました。そのようなスマートデバイスを通じたアプリケーションが、私たちの生活の中に深く入り込んでくることが最も早く起きる可能性があると思います。伊藤さん、いかがでしょうか?
成田悠輔: 僕は、現在のトレンドを見ていくと、ライドシェアやタクシー、コワーキングスペース、あるいはシェアリングエコノミーに基づく住居といったことが、技術的には可能になってきており、次の5年間で社会的な法則もそれに追いつくと感じています。また、コロナの影響でリモートワークやプロジェクト型のシステムが一層普及すると予想しています。
さらに、ブロックチェーンも次の5年でサプライチェーンの一部になり、自分が食べているものや飼っているものがどこから来たのか、誰が作ったのか、本物かどうかを確認できるようになると考えています。
個人的には、学歴証明書を始めとする各種証明書が、自身がプロジェクトに参加したり図書館で学んだりした記録として機能し、就職活動などで利用できるようになると思っています。これにより、学校以外の場所でも学びを証明することが可能になります。
スマートシティにおいては、図書館や美術館での学びも認められ、証明書が必要ない状況も増えてくるでしょう。新しい生活や働き方が広がる中で、リアルワールドとの接続が進化し、web3.0の世界に向かって進んでいると感じています。
バーチャルなコミュニティにおいても、愛着や熱意を育てることができるようになるでしょう。これはお金ではなく、価値を持つコミュニケーションによって成立し、お金とそれを切り離すことが重要だと思っています。
創造性や自由さ、健康を持つ人々が社会的に必要とされ、そのような環境へ向かっていると感じています。この過程で、遊び心を残す方法や、余白や雑音を取り込むことができるスマートシティの創造が重要だと思っています。
また、僕は自身の経験からも、伊藤さんがMITで開催したイベントに参加し、その話を聴いた経験があります。その頃から、伊藤さんのYouTube動画で紹介されていた筍のあく抜き方法を見て楽しんでいました。今日はその伊藤さんと直接話す機会が得られて、とても楽しかったです。
伊藤穣一: いや、僕も初めて成田さんと話せて、意外と波長が合ったので、とても嬉しかったです。やはり、人間の香りや自然のノイズを取り込んだアーキテクチャーが一番重要だと感じています。
伊藤穣一: 物理的なグリーンは数多く存在しますが、同じくらい重要なのはデジタルのアーキテクチャーです。ここでは、創発的に生まれてくるものをサポートし、それを適切に活用できるようにするアーキテクチャーが必要だと考えています。物理的なアーキテクチャーとデジタルのアーキテクチャー、両方がこのプロジェクトに力を注ぐことが重要だと感じています。ありがとうございました。
成田悠輔:日本の経済学者、起業家。イェール大学アシスタント・プロフェッサー、東京大学招聘研究員、半熟仮想株式会社代表取締役。ダボス会議2023年度ヤング・グローバル・リーダーの一人。専門はデータ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと、公共政策の創造とデザイン。
伊藤穣一:日本のベンチャーキャピタリスト、実業家。 元マサチューセッツ工科大学教授・元MITメディアラボ所長、元ハーバード・ロースクール客員教授。千葉工業大学変革センター長、同大学長。