未完成の文章に共通点。〝出来事オンリー〟に個性なし。
僕の仕事には大きなメリットがあります。それは……、
〝未完成〟の原稿・映像を山ほど目にできること。
現在の僕だと週に3本の企画を担当しているので、単純計算で年に144本。途中経過を含めると、その数は何倍にも膨れ上がるでしょう。
長年、それだけの〝未完成〟に触れていると、自然と原因と対策も見えてくるというものです。
今回は、多くの〝未完成〟に共通する〝出来事オンリー〟の文章について書いていきます。
はじめに〝出来事オンリー〟とは?
その名の通り、出来事を羅列しただけの文章のこと。僕の造語です。
例えば、有名人の自宅取材が実現したと。で、ロケの撮れ高がこんな感じだったとしましょう。
この要素を並べるだけなのが〝出来事オンリー〟の文章。
何がいけないかって?
確かに、取材したのが世の中に広く興味を持たれている存在なら、あるいは訪れた家が誰の目から見ても強烈だったら、羅列しただけで成立するかもしれません。
しかし、そんなケースは僕の経験で言うと稀です。
では、どうしたらいいか。
実は〝出来事オンリー〟の文章には欠けているものがあるんです。
伝えられる側への動機づけ、そして伝える側の目線です。
自宅で明らかにしたい〝謎〟は何か。
実際に訪ねてわかったこと、伝えたい〝本質〟は何か。
ってこと。
文章って、僕は二種類あると思うんです。
〝読まれる〟前提で書いていいものと、
〝読ませる〟前提で書かなくてはいけないもの。
前者なら〝出来事オンリー〟の文章で大丈夫。仕事の資料とか、読まないと不都合が生じるものは勝手に読んでくれる。
でも、僕たちが書くべきは後者なんです。
興味を示さない相手を振り向かせ、離脱させないための工夫がいる。起こった〝出来事〟に意味を与えなくてはならない。
ここに書きましたが、大・中・小の〝フリ〟を意識するだけでも、かなり印象は変わります。
先のロケも、こんな風に展開したらどうでしょう。
同じ撮れ高ですが、興味を引けるようになっていませんか? これが〝伝えられる側への動機付け〟です。
では〝伝える側の目線付け〟とは……?
「今回のロケ、伝えたいことは何?」
僕がこう質問すると、キャリアの浅いディレクターほど長々と〝出来事〟を説明してきます。
でも、聞きたいのは〝出来事〟を通して見えた〝本質〟なんです。なるべく一言で。個性って、そこに宿るはずなので。
だって、好きなアニメの魅力を問われて、長々とあらすじを説明しますか?
おそらく「共感できるキャラ」とか「壮大な世界観」とか「時間とお金がかかっている作画」とか「綿密に計算されたストーリー」とか「心奪われた場面・台詞」とか、そういう一言から入ると思うんです。
先日、こんなことがありました。
とあるアスリートの企画。
僕たちは過去の失敗談を通して彼の〝愛されキャラ〟に焦点を当てました。
一方、このアスリートは別番組でも取り上げられており、そちらでは趣味を通して〝スタイリッシュな素顔〟を紹介していました。
これが〝伝える側の目線〟になります。
さて、今回は〝未完成〟の文章・映像に多く共通する〝出来事オンリー〟について紹介しました。
参考にしてもらえたら幸いです。