人生の「答え合わせ」は人それぞれ
東京五輪の期間中、何人かの選手が口にしたある言葉が印象に残っています。その言葉とは……。
「答え合わせ」
五輪という大舞台は、今まで取り組んできたことの成果を明確に知ることができる。ある選手は勝敗で、ある選手は記録で。
そんな中、こんな形で「答え合わせ」をする選手もいるのかと思わされたのが、陸上・女子100mハードルの木村文子選手、33歳。
自身2度目の出場となった五輪は39人中34番目のタイムで予選落ち。しかし、レース後の取材では晴れやかな表情でこう言ったのです。
「この9年間やってきたことは間違いなかったのかなと思います。今大会は3人も一緒に出場することができて、そういうところを見てくれたら、やってきた甲斐があったかなと思います」
成果を感じ取ったのは、勝敗でも記録でもなくて「出場した日本勢の数」だったんです。
でも、どうして日本勢の数なのか。
それは木村選手が第一人者だから。
この種目って世界の壁がとても高いんですよ。前回のリオ五輪では日本勢の出場はなし。その前のロンドン五輪は木村選手しか出られませんでした。
そんな中、2017年の世界陸上では史上初めて準決勝に進出するなど、少しずつ壁をよじ登っていったんです。
その背中を見て、後に続く選手が現われた。
今回の東京五輪は寺田明日香選手、青木益未選手も五輪の大舞台へ。しかも寺田選手は準決勝まで進みました。
世界の壁を登るのはもう自分だけではない。
だからこそ口にした言葉が「間違いなかった」
取材の最後、木村選手は声を詰まらせながら、こう語りました。
「特に才能の無い自分ですけど、コツコツ積み重ねたら世界に行けるという、そういう競技に出会わせてくれたことに感謝です」
長い時間をかけたものに対して、間違ってなかったと確認できるのはうれしいことです。
ちょっと前、僕にもそんな体験がありました。
昔お世話になったディレクターさんと久しぶりに再会を果たしたときのこと。長らく謎に思っていたある言葉について尋ねてみたんです。
それは僕を怒る際、時々使っていた言葉。
「下品なナレーションを書くな」
下品ってどういうこと?
その人は僕より11歳も年上で、かなり強烈なキャラクターをしていたので、当時は(恐くて)その疑問をぶつけることができませんでした。
しかし、今なら……。さあ、答え合わせです。
「たぶん、せきは言い過ぎていたんだよ」
ここでピンと来ました。
映像を見せるだけで伝わるのに、またはそこまでの流れを見ていたらわかるのに、言わずもがななナレーションを入れてしまう。
あとは、登場人物の気持ちを勝手に代弁するようなナレーションとか。
ズバリ言葉にすると、風情が失われるというか、情感が損なわれるというか、確かに昔はついつい入れてしまっていたような。
それを伝えてみると……。
「そうそうそう、そういうこと」
今ならわかる。自分自身の成長を確認できた瞬間。その答えを聞けて、本当によかった!
あなたは人生の「答え合わせ」をしたことはありますか? 自分が間違ってなかったとわかると、うれしいものですよね😊