【連載】日本のストリートボール史 vol.9
- 新たな仲間とライバル達の登場編 -
※個人の記憶を奔放に綴った内容ですので、事実と異なる点もきっとありますがご容赦下さい。
2003年7月。多少なりとも認知度が上がり、イベントのゲストに呼ばれるようになった矢先の出来事です。都内の体育館で行われた「SPORTS INDEX 3on3大会」。午前の部は男女混合のチームで行われ、午後の部は男子という構成でした。
そして午前と午後の合間に我々FAR EAST BALLERSが登場し、まずはパフォーマンス、その後に大会参加者からの“挑戦求む”へと展開していきます。
出番は13:50からの30分。12:00に体育館の近く、参加者からの目には触れない場所に集合して、“会場に着いたらプロらしく振舞うように”と毎度の確認を行い、13:00に会場入り。
それぞれ頑張ってプロっぽい表情、歩き方で体育館内に登場です。いきがっている訳ではもちろんないですが、当時は若さ故にそれなりの威圧感も出ていたので、会場の注目を浴びていましたね。
いよいよ本番になり、まずはAJ、COHEY、MATSU、HIDEでパフォーマンス。とは言え時間にして5分程度なので、早々に“我々に挑みたい人はいませんか?”コーナーに突入です。
午後の部に向けてアップをしていた男性チームから、次々に挑戦者がやってきます。レベルの高い選手もいますが、随所にトリックムーブを織り交ぜ、巧みに煙に巻いて勝ち続けて「さすがプロは違う」感を演出。
そうして本日もきっちりお仕事できましたねとなりかけた最後のゲーム。そこにある人物が現れました。
ヘアゴムで髪を1本触角のように立たせたふざけた髪形、ポップな水色のユニフォーム、足元はAIR ZOOM FLIGHT 5のホワイト。恐縮しているようにも、きょどっているようにも、いやいや何か企んでいるようにも見えるその立ち姿。
やけに元気な挙手の時点からAJが警戒しているように自分は感じましたが、いざゲームスタート。
トップでボールを持ったAJが、まずその場でフリースタイルを軽くやることで、一気にFEBのペースに持っていくのが常套手段。しかしそれに対して、その人物は目の前でファイティングポーズをして、いきなりこちらの調子が狂わされます。
“めんどくさいやつが現れた”空気をFEB全員が瞬時に察知するわけですが、同じようなシチュエーションはそれまでにもあり、その場合は畳みかけるようにガチのプレーをし、実力で場を制圧していました。
しかしその人物は一風変わった動きだけでなく、バスケットボール自体も相当に上手く、コミカルなプレーを随所でしつつも、点も取るしタイトなディフェンスでこちらが攻めあぐねる状況に。
いつもならフリースタイルにトリックムーブ、相手を混乱させるパスワークなどをみんなで駆使し、常にこちらが主導権を握るはずの挑戦コーナーが、その人物一人のせいで完全に崩壊。
ようやく終わった後の笑顔のハイタッチ場面でも、FEBメンバーの目は笑っていませんでしたね。
モヤモヤした気分で出番を終え、一刻も早く会場から離れたくなった我々。その人物がどのチームで出場しているのかも見ずに退散です。
YONEが運転する帰りの車の中でAJはこう言っていました。
“あいつムカつくけど、バスケはマジ上手い”
それから間もなくして、様々なイベントや大会で対戦することになり、東高円寺に呼んで練習試合もした宿敵、千葉県柏代表「勉族」。
この時点では知る由もありませんでしたが、そのリーダーぬまさんと初対面した記念すべき日でした。
日本のストリートボールシーンが形成され始める2003年から2004年頃、“プロなんだから勝って当たり前”とチーム内でもNIKE JAPANからも課せられた責務に、いつも立ちはだかるライバルが、TEAM-Sと勉族。
そして、チームとして表舞台に出てくることは余りないものの、ストバス時代からのパイオニア「駒沢ROCKERS」の存在を常に感じつつ、我々、そして日本のストリートボールが初めてのシーズンイン。初体験だらけ、賑やかな2003年8月を迎えることとなります。
新たな仲間とライバル達の登場編[完]
つづく>
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