【連載】日本のストリートボール史 vol.15

- FAR EAST BALLERS奮闘編 -
※個人の記憶を奔放に綴った内容ですので、事実と異なる点もきっとありますがご容赦下さい。

なにぶん書いているのが自分なので、多くがFAR EAST BALLERS視点からの話となっていますが、それがさらに色濃くなる2004年。日本のストリートボール史にとって最重要な年、2005年が訪れるまではしばしこの調子となります。

そんなFEBにやってきたかつてない大舞台。それはMTVとアサヒスーパードライが手を組んで、当時毎年行われていた「MTV THE SUPER DRY LIVE」です。会場は国立代々木第一体育館。観客は一般応募による招待制で1万人。

これまでとは遥かに規模の違うステージへのオファーを下さったのは、FEB活動初期から我々を面白がってくれた大人の一人、MTV 佐藤さんでした。

それまでは京王線飛田給駅の歩道橋の上や、味の素スタジアムの先にある大学の駐車場に夜中侵入して、警備員さんやパトカーに怯えながら練習していましたが、さすがにそんなんではまずいと「新宿村スタジオ」のリハーサルスタジオを借りてショー作り。

さらにその前段として、東高円寺での貴重なチーム練習の貴重なハーフコートを占領させてもらい、大まかな流れを組んでいったのでした。

こうなったら使えるものは全て使おう状態の我々は、CHRIS＆自分のラップもショーの冒頭に配置。

さらに、MC業だけでなくプロのミュージシャンでもあるAKIさんが叩く“ジャンベ”と歌声で、音楽性と熱量を増強してもらうことになりました。

当日の我々の出番は、アーティストのライブ転換時の15分間。“若者の夢を実現する”という本イベントのコンセプトのもと、夢を追いかける若者達として登場します。しかも大トリであるMary J. Bligeの直前。

その日付は、忘れもしない2004年5月22日です。

そして5月21日、当日では行うタイミングがないため、前日に我々のリハーサルが行われました。と言っても深夜1時からだったのでもはや当日ですね。

広大な客席、何十メートルもあるステージ、数百の照明に無数の大きなカメラ。圧倒される我々。

FEBのショーのためだけに、ステージ端に用意してもらったDJブースに立った時はさすがに震えました。

僅かな技術スタッフの方々と我々だけの薄暗い深夜の代々木第一。この特異な状況で変なテンションになってしまい、リハが終わっても会場中をずっと徘徊していたら、最終的には案の定、お仕事中のスタッフさんに怒られましたね。

全く出演しないのに、意味もなくリハーサルに来て、意味もなくユニフォームを着てうろちょろしていたYOHEIもその一因でしょう。

3時過ぎに解散して、14時に再び代々木集合。同じ転換時のパフォーマンスとして登場するBMXクルー「430 (FOURTHIRTY)」の皆さんと同じ控室となりご挨拶。この日以降、様々なイベントでご一緒することになります。

弁当も早々に平らげ、出番の20:00まで暇を持て余し、かつ緊張で居ても立ってもいられない我々は、“外でパフォーマンスをやりたいです”と佐藤さんに懇願。見事OKを頂き、実は用意していた覆面アイテムを身に着けて代々木第一の入口へ。

長蛇の列となっている来場者の暇つぶし役として動き回ったのでした。

いよいよ開演し、浜崎あゆみやm-floなどのライブも終わり本番が近づきます。我々はMissy ElliottとMary J. Bligeのライブ転換の間という、とんでもないタイミング。Missyのライブ中、ステージ端の自分のDJブースでしゃがみながらこそこそ準備していたら、歌っているMissyと“誰だこいつ”といった感じで目が合いましたね。

当時どの現場にも帯同して撮影してくれていた塙君のカメラも回る中、完全なる興奮状態で円陣を組み、いざ本番。観客席の方ではMAMUSHIとYOHEIが撮影スタンバイ。

スポットライトを浴びたAKIさんの力強い歌声から始まり、CHRISと共にステージへ。

RAPをし終えると自分は早歩きでDJブースへ移動。
曲に合わせていよいよAJ、COHEY、MATSU、HIDE、TANAが登場です。

無我夢中でまさにあっという間でしたが、数ヵ月間に渡る努力の結晶を1万人の観客に披露したのでした。

やり切った感は過去最高。
いつもならイベント後の打ち上げといっても、TGI FRIDAYSでチキンを食べてコーラを飲んで帰るメンバー達も、今回ばかりは「和民 渋谷東急ハンズ前店」へ。普段は全然飲まないAJやCOHEYも酒が進み、結局最後はVUENOSに出動です。

地下の満員のフロアにて、朝まであのステージの余韻に浸ったのでした。

そうして日付は変わり5月23日。
精魂尽き果てた我々と入れ替えで、渋谷の街にあの「神様」が降臨します。

つづく＞

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