【感想】アデル、ブルーは熱い色
映画で価値観がぶっ壊されたり、更新されたのは初めてかもしれない。もう観る前の自分には戻れない。
ポスターが美しかったから観ようと思ったのだが、映画自体も芸術性が高くて美しい。カメラワークも映像もただただすごい。
内容はレズビアンの恋愛のお話で、アデルの高校生時代から30代前後くらいまでを描いている。周囲との比較があったり、何人かとの恋愛があったり、将来何になるか、みたいなところから実際に働くところも描かれていて、こう観るとなにくわぬ恋愛映画なのだが、ただの恋愛映画で終わらせない不思議な魔力がこの作品にはある。
僕はこの作品を見て、おそらく日本の性や同性愛・トランスジェンダーに対する感覚は10年、いやもしかするとそれ以上フランスより遅れているのだと思った。
この映画に理屈は不要である。むしろ確かな理屈は何も描かれていない。
アデルの同性愛への目覚め、セックスのシーンがすごい。情熱的で美しく、芸術的だ。一目惚れのシーンは鳥肌ものだし、Netflix版は無修正で性器にモザイクもかかっていない驚きの仕様だが、ただただ美しい。まるで絵画のようなセックスシーンはそれ自体が芸術作品だった。
上映時間約3時間はかなり長いが、それすらも思考する時間を与えてくれてありがたかった。ゆえにボーッと考え事をしていて途中いくつも見逃したシーンがあったが、そんなことは気にならない。むしろいつか見返すのが楽しみだ。
とにかく観ながら、自分は性というものや男や女という概念や枠組み、決めつけに縛られすぎていて、押しつけすぎていたことに気づかされた。それに対して悔しくなったり、情けなくなったりしたが、今ではそれすらも清々しい。
自分の中の既成概念が崩れさって、性別や性への認識が更新された。描かれれる愛の純度と密度がすごくて、性の次元をこえた愛を感じた。同性愛とか男とか女とかっていうくくりに囚われない純愛だ。
おそらく自分以降の世代になるほどそういった感覚はあたりまえになっていくのだと確信した。恋愛や結婚という形式はより曖昧になっていくだろう。
観るのに覚悟はいるが、一度は観てみてほしい作品だ。パルムドールは伊達じゃない。約3時間かかるが、芸術性の高い映像に触れられ続けれるし、自らの価値観になんらかの爪痕は残してくれるはず。おすすめです。
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