jukeに至るまで
2000年以降、私は新譜より旧譜が好きになって行った。私の新譜の感覚はほぼドラムンベース、エレクトロニカ、ハウス、テクノで留まった。そこから一度ジャズから遡り、ソウル、ファンク、ディスコ、ヒップホップ、ハウスと過去のライブラリーを辿り、土地柄と音楽の繋がりなどのイメージを蓄積していった。何の為にと突っ込まれると自分の為としか言いようがなく、自分以外の人にとっては全く無益なので時間もお金も無駄遣いと言われればその通りだし、何か特別でかっこいいことをしていると誇れるものでも無い。
その間全くリアルタイムでテクノ、テクノから分岐したジャンルに触れずにいた。そこでベルリンに行って短期集中でテクノ以降を学習しようとしたという側面もあり、ベルリンに三カ月行っていた経緯がある。
ベルリンで沢山パーティに行って現地調査するうち、ベルリン=テクノ と思っていたが、私はベルリンの音楽の本質はミニマリズムだと思うようになった。
旧譜、黒人音楽を聴いた上でテクノを聴くと、中学の時に聴いた感覚、機械の音楽 というイメージだったテクノは血の通った黒人音楽だと感じるようになった。
実際、テクノはデトロイトの黒人音楽である。 ベルリンでもシカゴ、デトロイトの音源は非常に好まれていた。 でもそれはUSからの輸入品なのでは?と感じるようになってきた。折角日本から来たのだから、もっとこの土地ならではのものが知りたいと思うようになった。
同じ国のドイツという括りで言うと、クラフトワークは確かにテクノに大きな影響を与えたドイツ人だがその影響は間接的だと思う。テクノ、テクノポップは全く違うものだ。
それに加え、私はクラフトワークの感覚は人間以外のものへの憧れ、リアリティよりもイマジネーションの世界 、現代より未来というイメージがあり、 リアリズム、人体、肉体の音楽の であるテクノという解釈になった今、クラフトワークはやはりエレクトロという概念に属されると感じている。
パラダイスガラージ的に同一視していたテクノ、テクノポップ、エレクトロ、を分類するようになった。
また 音楽のUS的要素 ハウス、テクノ、ヒップホップの90年代に育ったディスコから生まれた兄弟たち、
ヨーロッパのインダストリアル、パンク、エレクトロ、の実験室と工場
の要素の関わり合いから音楽を分類したり分析するようになった。
そうするとやはり、ベルリンならではというとミニマルダブ、ダビーテクノ ではないかと思う。ベルリンという土地でミニマルダブは最もぴったりくると感じた。日本の湿度の高い気候で飲む日本酒 みたいな感じかと思う。
伝わりにくい上に共感いただけないかもしれないし、何かからの受け売りに感じる方がいると申し訳ないが、私の音楽の受動体はだいたい上記のように分類されはじめる。
こういった分類は既に多数の文献で行われており、アーカイブされているものだが、自分の基軸で感じ、分類したいという欲求をなぜか生まれながらに持っているタイプの人間に生まれた。
ベルリンへの憧れもあっただろうがしっくりくるのはこういったダビーな感覚、ミニマルな感覚だと感じ、私なりの(一般的でもある)ベルリンの音楽、ベーシックチャンネル、バーントフリードマン、pole,rhythm&soundを後追いし、新しくリリースされるミニマル、ベース系なども視野に入れスタイルを模索しながらミニマルダブ、ダブステップ、ダブなどでdjしていた。テクノのパーティのサブフロアや実験的なパーティなどで呼んでいただくことが多かった。
バーントフリードマンが来日することになり、運良くブッキングしてもらえた。とてもいい経験だったが、あまりよくわかってないことも多く、誘って出てもらった先輩方に失礼な事をしてしまったという反省もある。
この頃L.A.ビートなどの音楽も知り、レコードを買ったりもしていた。
こういった音楽でdjしているときに、seihoくんに出会い、すごく才能のある人がいるんやなぁと思った。大阪って面白いなと改めて感じるようになった。
テクノのパーティも並行して行っており、沢山の人と出会った。
そして件のパーティでjukeと出会うこととなる。
jukeはミニマルで前衛的な感覚とクラシックな黒人音楽が折衷していると感じた。なるほどUKのベース系のシーンに受け入れられるのも分かる。
ミニマルな音楽でdjしているときに、今までの黒人音楽を少し否定的に見てしまっていて、10年間ロスしていたリアルタイムの音楽の未経験である部分をコンプレックスに感じていたが、私はこれで良かったのかも。と少し思えた。
ゲットーテクノという言葉はフルトノと出会うまで知らなかった。ただ最初に彼の家に行って聴かせてもらったゲットーテクノは私が中学2年の時に生まれてはじめて買ったテクノのmixCD 、田中フミヤのI am not a djの出だしの一曲目、DJ FUNKのpump it も含まれており、内容的にははじめて聴いたものでは無く、むしろベースの部分だった。
そこから分岐され、デトロイトで独自に進化したゲットーエレクトロやデータベースなどのレーベルのゲットーテクノは全く知らないレコードばかりで、色々教えてもらって本当に面白かった。またミニマルテクノも色々教えてもらい、kingkongなどで少し掘ったりした。
そこから名前ぐらいしか知らなかったチップチューン、ナードコア、ブレイクコアのジャンルの人に出会ったりして、jukeを通じて沢山の出会いがあった。リアルタイムで聴いていないタイムラグがあると感じたけど、旧譜を掘らなかったらjukeが面白いと気づかなかったと思うし、当時黒人音楽にしか興味がなかったのも私なりに取捨選択した上なんだと思う時もある。
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