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手のひら【12.02出国の日】
手のひらを見ることが増えた。
それは私にとって、誰かに見送られることが増えた、ということでもある。
JICA海外協力隊というプログラムに参加するため、アフリカのジブチに行くことになった。2年間は帰らないつもりで、これを機にと会いたい人に連絡をし、ひたすらに会っていく日々である。会いたい人がいる幸せも、“またね”といえる幸せも、もぐもぐとかみしめる。会う時は大体、美味しいものと一緒。
LINEもある。Instagramもある。
繋がろうと思えばいくらでも繋がれて、直接やりとりをせずとも、どこかで生きているという存在を感じられる。
それでも、誰かと会って、“次は2年後だね”と口にしたときの寂しげな声の震えは、どうしたって電波には乗りきらない。
軽やかに、時には力強くハグをしたときの感触も、別れ際に触れた手でしか感じられないその人のかたちも、直接会ったそこにだけ、ある。
飛行機が動きだした今になってはじめて、出発の実感がひたひたと身体をみたす。出発日はずいぶんと前から、決まっていたはずなのに。
がたがたとゆれる機内で、こちらに向けられた手のひらを思いだしている。
改札の前で、動きだした電車に、階段を降りるまで、扉が閉まりきるまで、角を曲がるその一瞬まで、ゆらゆらとゆれていたやさしさたち。
覚えておきたい手のひらたちは、ささやかでたしかな私のお守りで、だから遠くまで遠くまで、歩いていけるんだと思う。
自分のきもちの備忘録とジブチのことについて、ゆるゆると発信するnoteです。