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終電に乗った老婆
皆さん、こんにちは。
秋山真之介です。
KinKi Kidsの堂本剛さんと同い年で、無職、貯金ゼロ、愛するよりも愛されたいゴミ人間です。
これまでの記事に『スキ』や『コメント』を下さった皆様、本当にありがとうございます。
本日は、私が10年前に出会った老婆の話をさせていただきます。
私が彼女を見たのは、電車の中です。
両親が住む三重県名張市に帰省する為、近畿日本鉄道の大阪上本町駅発、青山町駅行きの最終電車に乗っておりました。
夕方から大阪の姉夫婦の家に寄り、お酒を沢山いただいていたので、座ると直ぐに眠りに落ちました。
目を覚ますと、電車は榛原という駅に着いたところで、私の降りる駅までは、まだ15分程あります。
対面を見ると、1人の老婆が、大きなボストンバッグと紙袋を座席の脇に置いて座っておりました。
時刻は0時を過ぎています。
田舎へ田舎へと向かう最終列車に、大荷物の老婆が乗っている事に、違和感を覚えました。
さらに異様だったのは、その老婆が、1人で喋り続けていた事です。
名前は忘れましたが、老婆が話しかけている相手は2人いました。
もちろん私には見えません。
誰もいない空間に向かって、身振り手振りを交えながら会話を続けています。
そのような人を見た事は有りましたが、近くでじっくり監察するのは初めてでした。
老婆が話している内容は、ちゃんと脈絡が有って、言葉もはっきりとしています。
私の頭に、ある推論が浮かびました。
このような人々は、ただの変人では無く、私たち凡人には見えない存在を見ることが出来る、崇高な存在なのかもしれない。
私はある実験を試みました。
見えない存在と会話が出来るほど、崇高な存在なのであれば、私の心の声も彼女に届く筈です。
「お婆さん、誰もおらんで。誰と喋ってるん?」
私は心の中で、強く唱えてみました。
その瞬間、ずっと喋り続けていた老婆は、唐突に喋るのを止め、私の顔を見ました。
老婆の鋭い視線に、息が出来ないほどの恐怖を感じ、うつむいて寝たフリをしました。
暫くすると、老婆は見えない2人との会話を再開しました。
それから私は、一度も彼女のほうを見ず、電車が名張駅に着くと、逃げるように電車を下りました。
ドアが閉まってから車内を見ると、老婆は私の方をジッと見つめながら、2人の存在と共に去って行きました。
私の心は、ひび割れたビー玉のようでした。
ご静聴ありがとうございます。
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