③U太くん(四星球)が大切にしている言葉は…
【「②U太くんのそばにある1曲は?」から続く】
U太くんが大切にしている言葉を教えて欲しいです。
何やろうなぁ、逆境になってこそ真価を発揮するタイプやなと自分のことを思ってて。“逆境の時に楽しめる・逆境こそ楽しみたい”っていうところはありますね。すんません、有名な言葉とかじゃないんですけど(笑)こんな感じで。
逆境こそ…っていう人間になったのは何故でしょうね?
何でやろね、このバンドの駆け出しの頃が逆境ばっかりやったと言うか。バンドのスタイルがこれなので、どう認めてもらうか。舐められる、じゃないですけど“真剣にやってんのか?”みたいに思われてたバンドなので。それをはね退けるところから考えると、やっぱりどうしても、その精神が身に付いてしまったところがあって。それで続けてたら今度は、うまく行くことばっかりでもない。
最近の分かりやすい話で言うと、次のアルバム制作をしてる中で、決められたわずかな期間で録音から完パケ(=完成)までしないとアカンかったんですよ。でもドラムの録音だけで4日はかかるんですよね、それで残りの期間でギター/ベース/ボーカル・コーラスとネタ(一同笑)まで録る…って、無理やん!普通に考えたら終わるわけない!っていうところを、“もしこれを乗り切ったら何か変わりそうな気がするで”って皆で話して。結局、ギターとベースは家で録ったんです。今の子たちにとっては普通のことだと思うんですけど、40歳を過ぎたタイミングで、家で出来るようになったら…ある種これは成長できるチャンスや、ここは踏ん張ろうって。結果、全部録り終えることが出来たんですよね。それで、あぁ良かったっていう反面、自分たちの下手くそさがすごく浮き彫りになったんですよ。いつもみたいにスタジオで録ってたら大っきな音で聴いて、多少のアラは何となくグルーヴで(笑)イケるんじゃないみたいな感じになるんやけど。
僕、スタジオだったら1曲を大体1時間で録るんですね。でも家で録りながら弾いたら全く納得することが出来なくて。1曲で4時間とかかかって、腕パンパンになって(笑)。達成感もあったけど、新しい気づきとか反省点も出たっていう。これが一番直近で、一番分かりやすい逆境のコンテンツですかね(笑)。挑んで燃えることで、達成感もあって勉強になることもあって、反省点もある。1個上に行くためには効率が良いんだろうな、って(笑)。
そういう考え方も出来ますな(笑)。
逆に、平坦で何もない生活が続く・移動も順調でライブも円滑に出来てる、とか。そっちの方が僕、怖くて不安になっちゃうんですよね、“これで良いのかな?”って。何も困ってない自分にいつか大きな落とし穴が待ってるんじゃないか、って。だから逆境・トラブルを求めてるんじゃないかって思うところもあって(笑)。このバンドを始めた時からやと思うんですけど、嫌な癖やなぁって思いながら。
その性格は元々ではなく、バンドを始めてから?
もう、全然(そうではなかった)。昔は、楽しかったらオッケー!イエーイ!みたいな感じだったんで(笑)。
バンドのマネージメントも担ってる責任感もあるかもしれないよね。
それはあるかも。現状維持って駄目じゃないですか、って僕は思ってるんですけど、特にバンドをやっているという部分では同じことをやっていても仕方ない、このバンドは特に。せやから、同じことの繰り返しになるのが不安で仕方がなくて。
もちろん、やれるだけ繰り返して続けられることは素晴らしいことではあるんです。でも自分らはサービス業で、(お客さんの)満足度は上げ続けなアカンくて。満足度って見えないんですよね、やから、過剰に過剰に(笑)してしまうと言うか。でもそれの元々は、自分の不安からやったんですけど、それがぬるっと、対・お客さんの精神に変わってて。何かし続けなアカンっていう強迫観念から始まり、それがお客さんの満足度・満足してもらうことがゴールになってる。このバンドの特性なのかもしれないですね、過度な満足度を持って帰って欲しいっていう(笑)。
面白い話です。でもどんなことでも現状維持をしたいと思っても、同じことをやっていても現状維持って出来なくて(笑)、どちらかと言えば下降しちゃう。
そうそう、そう!
そうは言っても年齢を重ねるにつれ、リスクも怖いしとりあえず同じことをやる方を選んだりするけど、U太くんはまだそういう考えはないんだね?
うん、そうやね。年齢を重ねると、感動が減ると思うんですよ。それは自分が他の何かを見ててそうやし、自分自身が達成感を感じることも減っちゃう気がするんですよね。でも、過度な満足感をお客さんに感じて欲しい、のに加え、過度に何かをしないと自分自身の達成感も生まれない気がしてて。“あれは去年やってることやし、同じことをやって(自分が)ときめけるやろか?”みたいな(笑)。何をするにしても枠組みを決めてそれに則ってやっちゃえばやれちゃうと思うんですけど、それだと(自分たちの)テンションが上がってないのに、お客さんのテンションが上がるんだろうか?とかね。
僕は裏方の側としてそれを考えることが多くって。例えばですけど、段ボールの小道具を何個か飾り付けてステージに置きましょう、5個ぐらいあれば…っていうところを、いや、20個は要るな(笑)って思っちゃう。だからワンマンライブでも2時間半とか(それ以上)やっちゃうタイプなんですけど。
四星球のライブはいつも、だいぶお腹いっぱいになって帰るからね(笑)。
(演る側が)疲れてないと、やった感がないんですよ(一同笑)。変にストイックで、変にアスリートなんですよね。
それでいて今回のツアー(「ふざけてナイトTOUR」)に関しては、ネタ満載というより楽曲で攻めてるところが面白かったなと。
新曲が生まれたっていうところがあってね、(東京公演では)メンバーの絵描き歌をやってみたりとか、メンバー個々のルーツをモチーフにした曲・僕やったらヴィジュアル系の曲、まさやんだったらザ・ブルーハーツやザ・ハイロウズをテーマにした曲、みたいにコンセプトを決めて(メンバー4人の)4曲を作って。曲の中にネタを入れたから、曲が際立ってるかな、っていうね。
楽曲・演奏という部分をしっかり楽しませてもらえたツアーでした!
今回は対バンっていうところもあるかなと思いますね。ガッツリ、ウチらがネタをしまくって対バンのバンドに申し訳ない感じになってもね、ただでさえウチの方が持ち時間長いのに(笑)。
わたし的にびっくりしたのは、四星球のライブでもダイブとか出るんだ!?ってところで。
土地とか共演者、イベントにもよるんですけどね。全員が統一の認識で(ライブに)来てるわけではないですけども、全員が楽しめる中で、もしダイブ等が起きてもウチらは全然良いですよ、ただ、ダイブ・モッシュが出来るっていうのは、誰かが我慢をしていたり頑張ってくれているからで、だからこそ出来ているんですよっていう。そういうことも敢えて言葉で言ったりしてますし。(会場に来てる誰をも)悪者にはしたくないなと思ってますからね。
康雄くんが前列の方への配慮・気遣いをちゃんと言葉で伝えてましたよね。少なくともわたしはそういう四星球のライブは初めてだったから、また新しい階段を登ってるんだなと感じました。
ホンマですか、伝わってたら嬉しいです。
コミックではあっても、そうだ、ちゃんとバンドだった!って思わせてもらいました(笑)。
そういう一面もちゃんとあるんすよ(笑)。
【「④「U太くんのこれから」(終)に続く/7月26日更新予定】