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④バカビリーさんの、夢
【「③バカビリーさんが大切にしている言葉」から続く】
では年始に起こった能登半島地震。発災して、バカビリーさんはどう動いていたのかを伺います。
俺の黒革の手帖(一同笑)、持って来るわ(とスケジュール帳を持って来る)。1月3日に内灘町に物資を持って行ってるね、金沢から15キロぐらいだし能登半島とは言えないエリアだけど震災絡みで(車で動いたの)はこの日だね。それで4日は親戚の家を訪ねて。
1月1日に発災して、まずはウチの近くの避難所の設営に入りました。金沢市にあるウチの家から400メートルぐらいの崖っぷちでも何軒か、土砂崩れで家が崩れちゃったし、やっぱり揺れたからね、地区の人たちは避難しに来てたね。
夜通しでスゲー寒かったし、避難所の周りで車中泊してる人たちにも声がけをしてガソリンの有無を確認したり、避難所がデカいから灯油を集めて持って行ったりとか。金沢大学の学生も留学生含めて50人ぐらいいたし、トータルで160人ぐらい(避難所に)来たのかな、でもテントも7基しかなくてもうてんやわんやで。地区には防災士が30人ぐらいいるんだけど来たのは3人で、集まった人でどうにか設営とかをして。1日、2日は寝ないで2日間、対応をやって。
3日の日に地元のライブハウス(金沢vanvanV4)が物資を集めたいっていう連絡があって、それを始めた。4日になってTOSHI-LOW(BRAHMAN)から“顔、見に行くわ”って連絡があって、6日にはトーキョータナカ(MAN WITH A MISSION)とか騎馬武者(ロックフェス)の実行委員たちが来てくれて。能登方面に向かった人たちと液状化を喰らった富山県氷見市を見に行く人に分かれて、俺は富山の被害状況を見に行きましたね。7日はBRAHMANが来て、俺も合流して能登方面に向かったけど、この時はまだ全然(能登方面に)行けなくて、志賀原発があるあたりまでは何とか行けましたね。
発災後、目まぐるしい日々だったと思います。その後の動きというのは?
そうなの、バタバタし過ぎて実は手帳に残ってないんだけどさ(笑)、柳家(睦)さんが15日に来てくれたのかな、14日にキネマ倶楽部で2回ライブをやった“善意のカツアゲ”を持って。内灘町の液状化がひどい所とか羽咋市のエリアに行って。それで確か20日ぐらいには友達関係も来てくれて、22日はBRAHMANが金沢(vanvanV4)でライブをやって、石川キャンパスを立ち上げたのかな。
年始からはじまって、北陸での作業というのは想像を絶する寒さの中だったかと思います。
そうでした…ね。あるアーティストが“今までの自分の経験と知識を全部リセットする”って言ったんだよね。色んな地域でやってきたことが、ここでは全部通用しない。
自分の家の近くの避難所は閉鎖が早かったんですけど、(場所を変えて)公民館に20名ぐらいは自主避難で残ったの。で、毎日色んな所に行っても必ず最後はそこに立ち寄って顔を出す。ウチは米農家だから物資として米を持って行って、あとは梅干しと味噌とかね。避難している人でウチの米を買ってくれてた人もいてさ、“(バカビリー家の)お米が食べられる!”って言ってくれてさ。1つのアクションとして“皆で給食当番してください”って伝えて、少しでも…心の中で辛い思いをするより、給食当番でもワイワイやった方が良いかなと思ってさ。“それもいいわねぇ”なんて言ってくれて。
バカビリーさんとしては今、現場ではどのような活動が多いでしょうか?
能登は結構、リスク高い作業が多いし、せざるを得ない状況になってるね。プロみたいな災害ボランティアチーム・コミサポひろしまの元で、屋根に登ったりすることも多いし、俺の(仕事)現場もそういうのが多いから(ボランティアの方々に)レクチャーをする。ボランティアは“怪我と弁当は自分持ち”だからね、何回かボランティアに来てるうちに“自分もやってみたいです”って言う人には登らせる。
もちろん女性も、現場に来てくれたら登らなくてもシートを綺麗にカットしてもらうとか、高い所に登んなくても出来ることなんかいっぱいある。誰ひとりとして何も出来ないなんてことはない、とは思う。それこそ(片平)里菜ちゃんは、お茶出しながら音を奏でる。だから、ボランティアに来るっていうのはただ、気持ちの問題なんじゃないかな。
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床材撤去をしているバカビリーさん
(※有資格作業)
おっしゃる通りと思います。今のお話で、屋根に登っての作業というのは現状としてどういうことでしょうか?
地震からもう11ヶ月も経ってるから、(震災後に屋根に貼った)ブルーシートを耐火レベルの高いものにしたりしてます。当初、胡散臭い業者が入って作業したもんだからさ。今その場所に住んでて“こんな所に住んでるの?”みたいな人もいるし、昼は家にいて片付けをしても、夜は火事場泥棒も怖かったりするから夜だけ避難所とかにいく人もいる。住んではいないけどタンスとかの家財が濡れてカビが生えないようにとか。仮設住宅に入ってても、最低限の物しか持っていけないからね。
この前はわら小屋の屋根をやったんだけど、“お正月のしめ縄作りが生業だから改めてシートをかけたいんだ”ってことだったりね。仮設から数年後に引っ越すとか、解体になるのかとか分かんないけど、その家の思い出や大事なものを残したいよね、そのためのケアだよね。
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作業をしている時の1枚
床暖房の撤去がとても難しく大変だったそう
”輪島ではもう人も住めるんでしょ?”っていう感覚の人もいっぱいいる。金沢ではもう通常の生活をしているし、毎日ニュースではやっていても関心がない人も増えてきてるから、石川県の人でも風化は始まってる。俺らは、風化していくのが怖い。
俺は石川県民として活動してる。現場にいる人間が一番、頼りになるから色んな(ボランティア)団体も回って挨拶にも行ったんですよ、“これからきっと、長いスパンで動くことになるんで”って。
お話が身に沁みます。それでこそ心配になってくるのは、本格的な寒さがやってくること。そして降雪です。
今朝(11月中旬)は8℃ぐらいまで下がったからね、寒い寒い。冬将軍がやって来ましたよ。雪が降ったらもう作業自体は出来んでしょう、だし、今年は大雪って言われたりしてるから、中半壊と認定された家は潰れたりするかもしれない。北陸の雪ってジメジメ、湿気を帯びた雪で、厄介な雪でね。“雪が降る前にもう1回来ておきたかった”って、活動に来て言ってくれる人もいます。
来年の正月をこの土地の人たちは、どんな思いで迎えるのか。新年を迎えたら“おめでとう”だけど、お正月だからなくなった命とお正月だから助かった命が、この能登半島にはある。盆と正月だけは帰省してるから、それで助からなかった命。“コロナだから帰って来るな”って言われててやっと帰ることが出来て、なくなった命。逆に帰ることが出来たから“ばぁちゃん!早く出て!”って、足腰悪い人を息子娘や孫が担いで、どうにか助かった命。ここには、それがある。これが1月3日に起こっていたら、若い人は能登を離れてたから。
ここの人たちは、どんな思いで来年の正月を迎えるんだろう。午後4時10分、黙祷のサイレンが、鳴るんだろうか。
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石川県生まれ 高校卒業と共に上京
建築関係の仕事をしながらサイコビリーのDJとして活動
東日本大震災後に故郷の石川に戻り
建築の仕事と農業をしながら防災士の資格を取得
2024年始に発災した能登半島地震の復興に尽力し続ける
趣味はホラー映画を観ること
(奥様曰く“ボランティアじゃない?”)
好きな食べ物はスイカと回鍋肉と焼肉
いつか…ささやかな夢だけど、石川県民がボランティア活動にいっぱい来て、自分らで自分の土地を支えていく。小ちゃな夢だな…でも、地元の人たちが自主的に立ち上がって、自主的にやれる土地になれば。この土地はもっと良くなるはず。数年後、“あの時に助けてもらったよ”って、次に困ってる土地に行けるような人がいっぱい出れば。俺は素敵だなぁって思ってるから。経験したことを繋げていくような将来があれば良いなぁ、って思いますね。
だから今は、自分の背中を見せ続けるしかないって思ってる。家の用事がない限りほぼほぼ毎週(活動に)行くようにして、1センチでも3ミリでもいい。気持ちが…“生きよう”って、思ってくれたら良いなって。震災関連死と呼ばれるものが、ちょっとでも…ちょっとでも……そういう人たちをこれ以上、増やしたくないから。
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騎馬武者ロックフェス・代表に花男くん、
ソナエル食堂の2人&ロカンダさんと🎶
これからも発信も続けます!
【「ひとのちから、まちのちから。」〜バカビリー防災士編〜/完】