遺品:若竹七海:ホラーだけどハードボイルド、安心してください。
「遺品」(30/2022年)
若竹と言えば、やっぱり不幸な葉村晶ですよね。そんな若竹がホラーを書くなんてと思い読み始めたら、やはり主人公はハードボイルドでした。1999年発表なので、初期で様々なタイプの作品を書いていた時期かと思います。
主人公の女性は学芸員。伝説的女優にして作家に関するありとあらゆるコレクションが保有されているホテルで、ホテルの金銭的な都合で彼女の展示会を急遽開催することになる。ちなみに彼女はそのホテルで死んでいる、自殺か事故か他殺かは曖昧なままに。そして、ホテルの創業者がコレクターであり、パトロンである、ま、ランジェリー、使用済の楊枝や鼻紙、髪の毛までも収集していた「変態」です。
最終的にはホラーですが、かなりミステリ度高め作品です。なぜ、ホラー現象が発生するのか、ある程度ロジックで説明していく感じは、ホラーファンからすれば邪道かもしれませんが、ミステリ好きとしてはかなり安心できる流れです。主人公の女性のキャラ設定も秀逸、葉村を彷彿させる勢いはあるけどたまに揺れる感じにハラハラさせられます。
「どんでん返し」もあります。ネタバレになるので書きませんが、たびたび起こる死傷事件にしっかりミスリードされて、大満足です。今まで葉村シリーズしか読んでなくて損したかもです。