【勝手に電波少年企画〜スペインからポルトガルへ野宿とヒッチハイク〜一文無しからBoom Festival へ向けて。そして片想いの先輩も探す旅!06】
(スペインからポルトガルへ)
翌朝、ヒッチハイク再会である。
水と菓子パン握りしめスタート。
車は必ず1時間以内に停まる。
これは女性だからという特権だけでは無いと思っている。
私の選択した車を待つ場所、ドライバーには声が届かないので、どのタイミングでどの車にどのようなジェスチャーや動き、雰囲気でアピールするか。
寧ろ、こちらの方が1時間以内に、車を停める鍵である。
どんなドライバーに乗せてもらいたいか。
も重要である。
この時期。私は極度に性的行為や男女の淫らな部分を避けていた。
本当に吐き気がするほど、見たくもなければ、近寄って来て欲しくもなかったのだ。
なので。ヒッチハイクをする時は、自分の女性的部分の雰囲気は全て消す。
男でも女でもない、陽気で変わったキャラクターのつもりで過ごすのだ。
そう。
人間は欲望の固まり。
普段、理性ある人間でも、ちょっとした、きっかけで欲望、性欲などに火がついてしまう。
相手に火をつけさせない。
そういった態度、立ち振る舞い、話し方により。
恐らく。
私は、20代の頃から日本国内でもよくヒッチハイクをしていたのだが、痴漢や危険な目に遭わないでいるのだと思う。
1台目のドライバーは道を間違えて、私は間違えた場所で2台目をヒッチハイクしようとしていた。
2台目の人は私が行きたい街の方面へ続く道路まで連れて行ってくれた。
どこも辺鄙な幹線道路なので、降ろされては一服。
一服してはヒッチハイク。
という気ままな感じである。
車は陽気に行き先を書いたボードを振り回していれば、停まる。
停まらなくても、クラクションで応援してくれたり、手を振ってくれたり。
ヒッチハイクは直感訓練ゲーム。
実に楽しい。
おじさんや、家族、友人同士の車に乗る事が多い。
若い女性にも乗せて頂いたことはあるが、圧倒的に世界的に見てもおじさんが多い。
世界のおじさん達に助けられている気分だった。
また。スペインでは英語ぺらぺらと話せる人も少なく。
スマートフォンの翻訳機能で会話することもあった。
なんだか、ドラエもんの翻訳こんにゃく時代がやってきたみたいに感じた。
しかし、同時に。
簡単な単語の連発とジェスチャーだけで会話が成立する人も沢山居る。
共通言語を持たない人とは意思疎通が不可能だと思い込んでしまっている様な人とは不可能だったりするが。
どんな国の老若男女問わず。空気を読むのが上手い人。
というのは、ジェスチャーと相手が理解出来なくても何かしらの言葉による会話手法で、意思疎通が可能であったりすのだ。
私は。
人間が造り出す文明と、人間自身の持つ能力。
どちらも素晴らしいな。と実感していた。
「アメリカ、ファック!」と言う陽気なモロッコ人の車で、アラビアンソングをBGMにポルトガルへ渡る港へ到着した。
「シュークラン!」とお礼を言い、スペインからモロッコへ渡る船に乗る。
1.75ユーロ、30分ほど。
税関検査もスタンプも無く、ポルトガルに到着すると日は暮れかけていた。
私は少しでも目的地の近くまで移動したかったので、再びヒッチハイク。
夕刻、帰り支度に忙しい人々。
港であったが車はなかなか停まらなかった。
バスも終わっていた。
今夜は公園で野宿かな?安全かな?と心配もあったが。
日が暮れてしまう前には車が停まった。
若者四人。
車内では、お決まりの質問や会話。
どこから来たの?旅行中?どこ行くの?知ってるよ日本!
みたいな。
「BOOM FESTIVAL目指しているの。でも、チケットが無いからチケットも探しているの。」
と。フェスティバルを目指しつつ、チケットも未だ探していた私。
「チケットは無いなぁ。マリファナは好きかい?」
と聞かれ。
「貴方達はマリファナ好き?」
と聞き返してみた。
彼らは「いやぁ、まぁ、好きだよ。」みたいな生温い返答。
「私は大好きだよ。感謝してるよ。」
と。
そして、その後、彼らは仕事場に戻らなければいけないらしく、普通の道端で降ろされた。
「ここなら車も通るよ。」と。
「貴方達は何のお仕事しているの?」
と最後に尋ねた。
「僕たちは警察官だよ!」
と。私を車に乗せてくれた、普段着を着た若者四人は言う。
ポルトガル人ジョークなのか、本当なのか。私には分からなかった。
でも。彼らが自分たちで警察官だと名乗るのだから、まぁ、警察官なのだろう。
私にとって肩書きはその程度である。
細い三日月が藍色のグラデーションが広がる空に美しく光っている。
どう考えても野宿は危険な雰囲気の場所だった。
一刻も早く、安全な野宿場所までヒッチハイクをしなければいけない。
目の前には陽気な若者が飲んだくれているバーがあった。
ヒッチハイクをしていた私に手を振ってくれたので、いざとなったら、彼らの所へ行ってみればいいと楽観的でもあった。
そうこうしているうちに、すんなり車は停まる。
おばぁさん、お母さん、娘さんの親子三世代。
これから大型ショッピングモールまでナイトシアターを見に行くと言う。
映画の時間があるから、大型ショッピングモールまでしか連れて行けないけど、近くに電車の駅やホテルもあるわ。
と。
都合が良かった。
ホテルはこれ以上、出費は避けたかったので却下。
映画館があるほど、大型ショッピングモールか電車の駅なら、野宿可能なほど、安全な場合が高い。
私の予想を上回る大型ショッピングモールだった。
大きな駐車場。
少し先にホテルや電車の駅があるという看板もあった。
どちらにせよ、今夜は安心だ。
駐車場の中か、警備員に見つからない、誰にも見つからない場所でこっそり寝ればいいのだ。
私はバックパックと背負い、コロコロを引き、ショッピングモールの中へ。
大きなショッピングカートは1ユーロで動き、返せば1ユーロ返却される。
荷物をショッピングカートに全て押し込み、ウインドウショッピング。
私はずっと、インドからずっと、フェスティバルに行くと決めてからずっと。
安いテントを探していた。
軽くて、安くて、無くしてもいいテント。
荷物が多いので、テントが無ければ、広いフェスティバルでは危険なのだ。
そして、みつけた。
15ユーロの安くて軽いテント。
後は。ビールや朝食を買い、ショッピングモールの閉館時間までウインドウショッピングを楽しんだ。
ショッピングモールが閉まる頃、寝床へ。
私は半地下駐車場と地上の間にある、道路から少し下がった、人目につかない場所を見つけた。
段ボールを敷いて、寝袋にくるまって寝れば安心。
ビールを飲んで、一服して。
星空が綺麗だなぁ。遠くにまだ人の声や車の音が聞こえるなぁ。
と思いながら眠りについた。
朝は6時前。
目が覚めた。清々しい。
大型ショッピングモール勤務者らしき人たちがちらほら。
車も少ない。
フェスティバルの初日はあと一日と迫っていた。
幹線道路へ出てヒッチハイク開始。
立派な自転車で走り去るアスリート的な人々がチャオーと朝の挨拶をしてくれたりしているうちに車が停まる。
煙草を吸うおじさん。
助手席に入ると後部座席には一歳に満たない赤ん坊がチャイルドシートの中で眠っていた。
私は。
何故、この人は赤ん坊がいるのに煙草を吸っているのか?と疑問に思った。
「煙草吸ってもいいの?」
と尋ねると。
「オッケーオッケー」
彼は私より英語は分からない感じだった。が、次の街、ファロまで連れて行ってくれることは確かだった。
本当はリスボンまで続く幹線道路付近で降ろしてもらいたかったが、そこまでは意思疎通出来なかった。
郊外を走る車内中。
さりげなくなのか、直接的なのかハッキリしない感じで。
ドライバーの彼は、右手をそろりそろりと私の太ももに触ろうとしていた。
私も。さりげなくなのか、分かりやすくなのか、もう、どっちでもいいや!という感じで足を組み替え、ドライバーの右手付近に自分の荷物を置いた。
彼は状況を判断して、バスか電車の駅に連れて行くと言う。
もう呆れ疲れたし、フェスティバル初日も迫っていたので、ポルトガルの首都、リスボンまで安い方法で向かうことにした。
バスが意外にも安く、19ユーロ、3時間程。
私はバスの中でBOOMに向かうというカップルに出会う。
彼らはチケットを持っている人たち。
余りのチケットは無いが、綺麗に印刷されたBOOMフェスティバル会場までの地図をくれた。
そう。彼らはリスボンから大自然の中の会場まで向かうシャトルバスチケットも持っていたのだ。
半年も前に予約したと言う。
一方、私。
もしチケットを正規価格で購入したら、大自然の中のフェスティバル会場までの交通費と、一週間過ごし、その大自然の中から街へ行く交通費を抜かしたら、殆ど、スッカラカンな所持金であった。
とりあえず、こうなれば節約しながら現場に向かうしかないのだ。