2020804
その溜まり場となっている古民家は、山の麓にあり、裏庭はケーブルカーの駅となっている。
家主の女性は幸の薄そうな美人で、無職の男性と同棲している。
男性は、ボサボサの天然パーマ、オシャレには気を使っていない無気力感があり一定数の女性にはモテる感じだ。
私や友人は河の向こうにある小さな町に住んでいて、徒歩で1時間もする場所にあるにも関わらず、その山の麓にある男女が同棲する家を溜まり場としていて、頻繁に通っていた。
昔は、その家主のストーカーをしていたという風変わりで少し早口な男性も普通に仲間として集っていた。
雨が降り出すと私たちは帰れない。
家は古民家といっても、最近よくあるオシャレで丁寧な暮らし風の古民家ではなく、本当に古い家といった趣。
畳の部屋と、畳の上にカーペットを敷いた部屋。
三角に折りたたまれたビニール袋が転がっていたり、新聞の広告を折って作られた紙細工なんかも無造作に置いてある。
その日は、1日中どんよりとしていて、雨が降ったり止んだりの繰り返し。
深夜になっても、どんよりとした雰囲気は変わらなかった。
私と友人は、河の向こうの町に徒歩で戻ることにした。
いかんせん山間の田舎町なので街灯は殆どない。
真っ暗闇の中、ゴォーゴォーという濁流の音を聞きながら大きな橋を渡る。
町に着くと、そこはインドで街灯というよりも、電飾で彩られた建物が立ち並んでいた。
ガネーシャ祭りの夜だったのか、深夜でも賑やかな雰囲気。
私はピンクのコンクリートで出来た建物の一室に戻る。
小さな個室はベッドが占領し、簡単なバスルームがある。
簡素だが清潔で、そこは旅中の安宿のよう。