202401環境デッキの詳細
毎度どうも。
遅くなりましたが今期も書きました。
0.緒注意
●執筆に時間がかかってしまいシーズンを跨いでしまったため、本記事公開の時点で前シーズンの内容なので注意のこと、申し訳ない。
●100000文字あり、長過ぎて全文読む様な記事ではない。スクロールだけでも手間なので、読みたい要所だけ端末にコピペやスクショする等、読み易い様に各自で工夫して欲しい。一部記事では単体での内容完結のため前記事と重複する点も注意。
1.緒言
本記事は2024年1月~3月の期間に遊戯王OCGの大会環境で流行したデッキについて、基礎的な内容を集積したものである。実践的な内容や参考資料で有料に該当する内容は本記事では記載しておらず、参考資料の方が遥かに有益な情報が載っている。興味のあるデッキは是非、是非、是非!参考資料リンク先の一読を強く推奨する。
まとめ方について、表現や着眼点、どこまで掘り下げるか等、執筆の都度試行錯誤しているので意見等あれば遠慮無くnoteのコメント欄等で記載頂けると非常にありがたい。noteのコメント欄を使ったことが無い諸兄も、これを機に初めて使ってみて、気になったことはなんでも書いてみて欲しい。
一応前記事はこちら↓。過去の参考資料でも基礎の記載が参考になるものやシーズンを跨いでも参考になる資料は本記事でも扱っているので、正直あんまり見なくていい。
またX(旧Twitter)での拡散よりも、noteのフォローもしくは「スキ」なら記事を更新した際に通知等が届く様になるため、個人的にはそちらを推奨する。
2.【炎王スネークアイ】
※前記事と内容の一部が重複するため注意
【炎王スネークアイ】は前シーズンでトップクラスのパワーを有していながら制限改訂の影響をほぼ受けなかったため、環境の走り出しである1月に広いシェアを占めた。
2.1.【炎王スネークアイ】の特徴
【炎王】は戦闘・効果による破壊に非常に強い耐性を持つデッキであり、【スネークアイ】は現環境トップクラスのパワーを有する。この2つを混ぜた【炎王スネークアイ】は【スネークアイ】の高いパワーと【炎王】の高い生存性能を両立させ、強固な盤面と豊富なリソースを武器に戦うデッキである。
パワーで言えば【純スネークアイ】も非常に高いが【炎王】と混ぜることで妨害とリソースを墓地や手札に散らすことが出来るため、最終盤面の強固さで【純スネークアイ】と差別化されることが多い。実際に盤面を見てみよう。
【純スネークアイ】に比べて【炎王スネークアイ】は墓地に存在する妨害の数が1枚多く、《一滴》等の捲り札1枚で盤面の妨害を無力化したとしても返すのが難しい盤面である。対戦相手は捲り性能を有するパワーカードを複数種類引き込まなければならない。加えて【炎王】の要である《キリン》は初動となる《エクセル》等への無効系誘発を避ける手段として使用できるので、【スネークアイ】の弱点の補強にもなり高いシナジーがある。勿論【純スネークアイ】の方が優れている部分も存在するので、そちらは【純スネークアイ】の項で記載する。
2.2.【炎王スネークアイ】の動き
まずは基本となる《エクセル》1枚を起点とした展開を見ていく。尚、同じ1枚のカードからの展開でも、状況によって展開ルートが大きく変化する点に注意。
この様に、動作としては【スネークアイ】のギミックで《原罪宝スネークアイ》を使うことで《ポニクス》にアクセスして《炎王の聖域》から《炎王の孤島》で【炎王】のギミックに触れる形になり《原罪宝スネークアイ》がギミックの橋渡しの役目を果たす。
これで盤面は
(1) 《ガネーシャ》によるモンスター効果無効
(2)《マスカレーナ》からのリンク召喚
(3)《咎姫》による特殊召喚時の破壊
(4) 破壊された《アンブロ》の②と③効果
(5) 墓地《ガルドニクス》からの《キリン》
を構えた形になる。
上記の展開ルートは一般に《ニビル》をケアしたルートとして認知されており、他にも【粛声】対面等に有効な《アポロウーサ》を場に出す展開や、《ヒートソウル》でドローを狙うルート等が存在する。対面や自分の手札、ゲームプランと相談し、負け筋として想定されるカードをしっかりとケアした展開を行いたい。
特に先攻で《ジーランティス》を構えて《拮抗勝負》の被害を最小限にする展開ルートは、知識として知っておかなければ発想に至らない展開ルートである。【天盃龍】【神碑】に対しても有効であり、知名度はそこまで高くないものの覚えておいて損はない。【天盃龍】対面で言うなら、《ナイチンゲール》を出し易いのも【スネークアイ】ギミックを取り入れる魅力である。各種展開ルートは下記の参考資料を参照のこと。
上記参考文献にも記載があるが、一般に《ジーランティス》は《咎姫》《レイジングフェニックス》と組み合わせて後攻のワンキルで使用される。以下に具体例を示す。
上記の場合《咎姫》の②起動効果がリンク数の補填になっているため、対面する側は《咎姫》の②起動効果の発動前である《咎姫》の着地時に《ニビル》を発動する必要があったと言える。その場合《炎龍》で蘇生したモンスター2体と《原始生命態トークン》を使って2枚目の《咎姫》に繋げることが出来るため、【炎王スネークアイ】側の構築は《咎姫》が2枚採用される印象である。構築に関しての詳細は次項で記載する。
展開の話に戻ると、上記の様な盤面は作ってしまえば相手は越えるのが非常に困難になるため、【炎王スネークアイ】と対面するには各種手札誘発で盤面を弱化させて対応することを強要される。そのため実戦では各種手札誘発、ここでは例として《原罪宝スネークアイ》《炎王の孤島》《エクセル》②効果への《うらら》、《エクセル》への《ヴェーラー》《泡影》を警戒した展開を挙げ、実戦で必要な最低限の展開例として上記5パターンの誘発貫通展開を記載する。尚、繰り返しになるが以下に記載していく展開はあくまで一例であり、残りの手札等と相談して随時最適な展開を行いたい。
まずは《エクセル》1枚の展開で《エクセル》の②効果で《炎龍》を特殊召喚しようとした際に《うらら》を打たれた場合、
《咎姫》と《ガネーシャ》で妨害を構える形になったが、残りの手札次第だったり《超融合》をケアしたければこのままリンクして《アンブロ》まで進んでもいい。ただしその場合《アンブロ》の②効果で蘇生したいモンスターが特に居ない点には注意したい。
では《エクセル》1枚の展開で《原罪宝》に《うらら》を打たれた場合、
…《咎姫》にチェーンして《マスカレーナ》を使わなければならない窮屈な盤面である。無理に《咎姫》を狙わず《アポロウーサ》等を目指すルートも考えられるが、そうなると《泡影》1枚で簡単に妨害が無くなってしまう。この様に《原罪宝》は【炎王】ギミックへの橋渡しであるため、ここを止められると【炎王】ギミックに繋げることが出来なくなり盤面は脆弱になる。とは言え【スネークアイ】だけでもリンク数を伸ばすことで盤面の形成は可能なので、それを活かしたルートは多く考えられる。
次に《エクセル》1枚の展開で《孤島》に《うらら》を打たれた場合、
《孤島》まで《うらら》を待ったということは、相手からは「《孤島》の素引きによる誘発の貫通を嫌った」や「《孤島》を除去による全体破壊をしたい」という狙いが透けて見える…のだが、今回はそれを度外視して《泡影》の警戒を解いてリンク数を伸ばした場合、3素材の《アポロウーサ》を残すことが出来るということで、そちらの盤面を紹介した。警戒する内容によっては盤面に《アンブロ》と《炎龍》を維持して《アンブロ》で蘇生するための《マスカレーナ》を墓地に準備したり、《ヒートソウル》によるドローで妨害を散らすのも有効と考えられる。それらの場合の展開ルートは上述の参考資料もしくは以下解説後に記載の資料動画を参照のこと。
今度は初動の《エクセル》に《ヴェーラー》《泡影》を打たれた際に、手札に《篝火》があった場合の展開例、
あくまで一例であり、この他にも《ガルドニクス》でデッキから落とした《キリン》を《サンライトウルフ》で回収しつつ3素材の《アポロウーサ》を立てる等の展開も考えられる。上記展開は最後に《炎龍》の③効果を使わないことで《わらし》等のカードを嫌ったが、使えばリンク数はもっと伸びるので、適宜手札や対面を見て判断したい。対面によっては《アンブロ》の蘇生が期待出来ない等の理由で⑪の《炎龍》から特殊召喚するモンスターを《マスカレーナ》にしてもいい。
では次に《エクセル》に《ヴェーラー》《泡影》を打たれた際に、手札に《キリン》があった場合、
この展開も《ニビル》をケアした動きである。その分《うらら》に弱いが、詳細は上述の参考資料に詳しい記載があるのでそちらを参照して欲しい。尚、上記展開はせっかく回収した《キリン》を破壊してしまっているため、出典元では「手札に余った炎属性モンスターがいる場合は〈炎王神獣 キリン〉を温存した方が良い」としている。《キリン》を温存した展開ルートの例としてはシーアーチャー氏がYouTubeで展開の動画を公開しており、《ガルドニクスエタニティ》のエクシーズ召喚から《ガネーシャ》の蘇生を行い《キリン》を手札に維持している。本ページでも視聴可能だが、氏は【炎王スネークアイ】の他にも様々なデッキを紹介しているため、是非リンク先に飛んでチャンネル登録することを推奨する。
ここまで《エクセル》からの動きを見てきたが、《エクセル》を引き込めなかった場合の例として《ポプルス》の展開を紹介する。《ポプルス》1枚からでは《エクセル》ほど盤面は伸びず以下の様になる。
そこまで悪い盤面ではないが、《ガネーシャ》への《泡影》等で簡単に妨害を越えられてしまうリスクがある。こういった場合、手札に他に炎属モンスターが居ればリンク数を上げることが出来るため、
として《咎姫》を墓地に送ることも出来る。このとき《孤島》で破壊する炎属モンスターが《炎龍》なら更にリンクが伸びたり、②でリンク召喚するカードが《リンクリボー》ではなく《アルミラージ》なら《サンライトウルフ》で炎属モンスターを回収したり…等々、様々な工夫を重ねればその分多くの捲り札にも対応出来るようになっていく。
詳細は留意点の項目で記載するが、上記した各種展開は基本展開のみであり、応用展開ともなると本当に多種多様な展開が可能である。それに加えて【炎王スネークアイ】の動きは《ポプルス》《ポニクス》《ガネーシャ》《炎龍》等の素引きによる展開の分岐もとにかく多いため、丹念な展開ルートの研究と想定外の場合でのアドリブ力が求められ、総じて高い実戦力が求められる。
2.3.【炎王スネークアイ】の構築
構築についても上述したれい氏のnoteに詳しい固定枠と自由枠の記載がある。2つのアーキタイプの混合ということもあり【炎王スネークアイ】は固定枠が多いのが特徴で、地域差での構築の変動はあれど同じ地域内で大きな構築差が起きにくい。とはいえプレイヤー間でプレイに色濃く個性が出るため決してマニュアルなデッキではなく、少ないフリー枠や手札誘発の選定にこだわりを持つプレイヤーは多い。尖ったメタカードで個性を出そうとするプレイヤーも居なくはないが【炎王スネークアイ】はあくまでメタをされる側であるため、ギミックを循環させる目的以外の環境メタや制圧札を採用しても勝率が伸びない印象である。
特にEXデッキの自由枠は非常に出番が多く、各種誘発を受けてからどういった盤面にするか、警戒すべき対面は何か、プレイヤーの意識の差が垣間見得ることろである。《ヴェーラー》《泡影》を受けて展開が伸び悩んだ際等に《ヒートソウル》からリソースを拾いに行って相手とアドバンテージを引き離したり、公式戦のET01ターンのルールや【天盃龍】との対面を重く考えて《ナイチンゲール》《キキナガシ》を採用したり、他にも想定される場面によっては《アルミラージ》や《サロス》等のカードを採用する選択肢もある。
固定枠の考え方について、前項で述べたように《咎姫》の2枚目は《ニビル》の受けや《クロウ》等で墓地の《咎姫》が除外されたり、返しのターンにリンク数を上げて《レイジング》《ジーラン》によるキルを狙ったりと多くの役割を果たす。今回構築例として挙げさせて頂いた構築は、《ヒータ》が相手の墓地の《咎姫》を踏んだり、《ダルク》も相手の墓地の《ディアベルスター》を釣り上げてリンク数を伸ばしたり、《トロフェニ》も【神碑】等の対面で永続罠を破壊したりと、様々な場面を考慮して広く対応しようとした結果生まれたものと思われ、それにより実績を残すことが出来た構築である。
地域や時期によっては《ニビル》の採用がゼロだったり【スネークアイ】【神碑】の分布が少なかったりも考えられる。例えば関東圏で【スネークアイ】の分布が増えて《ヴェーラー》《泡影》が流行していたとしても、関西圏で【天盃龍】が流行すれば関西での固定枠の手札誘発が《わらし》に変化する…等の構築差も今シーズンでは見られた。「固定枠」という考えに対して漫然とデッキビルドするのではなく、参考資料の筆者がそのカードを固定枠だと考えた意図を深掘りしながら構築をすべきである。
記事の執筆が遅くなってしまい、既に新制限となる202404環境が始まってしまっているが、4月の上旬には《ウルカニクス》を採用した構築・ゲームプランも開拓され結果を残しており、準制限に指定された《キリン》を《ウルカニクス》で構えることで【天盃龍】等の対面に難しいゲームを強要することが出来る。今後の【炎王スネークアイ】を先導することが期待されるので、詳細は下記リンクを参照してみて欲しい。
2.4.【炎王スネークアイ】のゲーム構成
【炎王スネークアイ】のゲームメイクは、先攻なら盤面形成、後攻なら手数による捲りからの盤面形成による蓋を狙い、優先すべき思考は「どんな手札誘発による妨害を受けても最低限は妨害とリソースを構えてターンを返す」ということで、これを強く意識してプレイする。後攻のゲームも例外ではなく盤面を捲ったあと必ず妨害を1つは残して相手にターンを返すことを意識する。最終盤面の妨害数に目移りすることなく、最低限の妨害数を守りながら展開し、これにより自分のライフを確実に守れる固い壁となる盤面の作成を目指す。破壊に対して高い耐性のあるカード、【スネークアイ】ギミックなら《炎龍》《アンブロ》、【炎王】ギミックなら《キリン》や《ガネーシャ》等を最終盤面に残すもしくは特殊召喚出来る状態にするのも重要である。
展開に際して、【炎王スネークアイ】は【スネークアイ】のギミックから【炎王】のギミックに触りに行くことは出来るが、【炎王】のギミックから【スネークアイ】のギミックに繋げることは難しい。可能な限り《エクセル》や《ポプルス》から攻めに入り、上手く《原罪宝スネークアイ》と《炎王の孤島》を通して《ガルドニクス》まで繋げたい。
【炎王スネークアイ】の【スネークアイ】と比較した優位性は【炎王】の生存性能にある。《キリン》による手札からの特殊召喚効果は墓地の《ガルドニクス》の特殊召喚効果に繋げることが出来る立派な妨害であり、場と墓地と手札に妨害を散らすことで相手のメタカードに対して高い耐性を持ちたい。そのため可能な範囲で墓地に《ガルドニクス》と手札に《キリン》を構えたいので、《ガルドニクス》で墓地に落とした《キリン》を《サンライトウルフ》で回収するプレイは、《うさぎ》を警戒しつつもメタカードが増えるサイドゲームでは積極的に狙いたい。
【炎王】ギミックのプレイ時の小技と言う程でもないが、【炎王】はダメージステップでも効果を発動するカード群であるため、なるだけ自爆特攻による戦闘を介したダメージステップに炎王モンスターの効果を発動することで相手の妨害のタイミングを制限しながらゲームすることも狙える。《ヒータ》による自爆特攻で《キリン》や《ポプルス》をサーチして特殊召喚効果を狙うのも有効な場面が多い。
サイドゲームからは、対面のメタカードが墓地除外や破壊以外の盤面荒らしに偏る傾向がある。上述した様に《ニビル》等の手札誘発を警戒して最低限の妨害を構えつつターンを返すが、《三戦の才》や《超融合》《拮抗勝負》を重く貰って相手にイージーゲームを許さない事も意識しなければならない。特に《三戦の才》のコントロール奪取や《超融合》にる打点補強はスピードのあるキルを狙ってくる可能性もある。アドバンテージ等に目移りせず、自分の負け筋を踏まない様に注視してプレイすることが求められる。
2.5.【炎王スネークアイ】を使う留意点
まずは覚えておくといい裁定について、
○《ガルドニクス》の②効果は「デッキのカードを破壊する効果」であり「デッキから墓地へ送る効果」ではない。そのためこの効果に対して《うらら》等は使えない。
○《ガルドニクス》の①効果は自身が場や手札、デッキから破壊された場合には発動出来ない。
○コントロールを得ている相手の炎属モンスターが自分のモンスターゾーンで破壊された場合、自分は手札か墓地の《ガルドニクス》の①効果を発動できる。
○墓地で発動した《ガルドニクス》の①効果には《わらし》を発動出来るが、手札で発動した《ガルドニクス》の①効果には《わらし》は発動出来ない。
○②の効果で攻撃力が上昇している《ガルドニクス》に対して《ヴェーラー》等で効果を無効にした場合、②の効果で上昇した攻撃力は元に戻る。
○自身を特殊召喚する誘発効果のうち手札で発動可能である効果は、同一チェーン上ではいずれか1つしか発動できない。例えば手札に《ポニクス》、墓地に《ガルドニクス》が存在するときに場の炎属モンスターが破壊されたとすら。このとき、誘発効果を発動して特殊召喚可能なのはどちらか一方だけである。
○効果を発動するチェーンブロックの確認は公開領域が先に処理され、かつ非公開領域のカードのクイックエフェクトの権利はプレイヤー間で相互に行われる。つまり《炎王の孤島》で手札の《炎龍》を破壊して《ガルドニクス》をサーチした場合、《炎龍》の③効果をチェーン1で発動したあと、相手に公開領域の効果が無ければ、非公開領域の効果を相手がチェーンするか確認してから、チェーン2以降で手札の《ガルドニクス》の効果を発動することになる。仮に相手の公開領域でカードの効果がチェーン2で発動した場合、《ガルドニクス》の効果はチェーン3で発動することになるし、仮にチェーン1で《ガルドニクス》の効果を発動した場合は《炎龍》の効果を発動することは出来ない。
○発動時の《孤島》をリクルートする効果は「置く」という記載であり「発動」ではない。そのため《聖域》を発動出来れば《魔封じの芳香》等の影響下でもリクルートが可能。
○《ゴッドバードアタック》等でフィールドゾーンのカードと同時に炎属モンスターが破壊されようとしている場合、代わりに破壊するモンスターとして、同時に破壊されようとしているモンスターを選ぶことは出来ない。
○《ブラックローズドラゴン》等で魔法罠ゾーンの《聖域》も一緒に破壊される場合であっても、手札の炎属モンスターを《孤島》の代わりに破壊できる。その場合魔法罠ゾーンのこのカードは《ブラックローズドラゴン》の効果で破壊される。このとき代わりに破壊するモンスターとして、フィールドの炎属モンスターを選ぶことは出来ない。
○このカードの③効果によるエクシーズ召喚は《古聖戴》の効果で無効に出来る。ただしチェーン2以降に《聖域》の③効果が発動されていた場合は《古聖戴》では無効に出来ない。
次にプレイについて、
覚えておくと稀に役に立つ内容としては、《炎王の孤島》の②効果が挙げられる。
ほとんど使わない効果だが、《孤島》と一緒に《ポニクス》や《ガルドニクス》を重ねて引いている場合、《孤島》に《うらら》を打たせてから盤面のリンクを伸ばすことが出来るので頭の片隅には入れておきたい。
その他、手札誘発の受け方や各対面に対する意識等、勝率に繋がる小技等のプレイはここでの記載より以下のnoteが参考になるのでこちらを参照して欲しい。
あとは、先述したが【炎王】ギミックから展開を始めると【スネークアイ】のギミックに触れるのは難しい点も留意である。《原罪宝スネークアイ》が成立しない場合はギミックの片方しか成立しないことが多く、少ない捲り札で盤面を返されリソースまで枯渇するケースも少なくない。
シーズン中期以降は捲り札の研究が広まり、メイン戦で《孤島》を《リトルナイト》で除外したり《キリン》を《墓穴》で除外するだけに留まらず、サイドゲームでは《ガネーシャ》への《心変わり》や《咎姫》への《うさぎ》等の不意な重い妨害も散見される。
そして【炎王スネークアイ】が警戒すべきカードとして真っ先に思い浮かぶのは《コズサイ》である。
基本展開が通ってしまえば《孤島》を《コズサイ》で破壊されて盤面の全体除去を許しても《アンブロ》②効果と《ガネーシャ》②効果による蘇生が起動するため盤面にそこまでの被害はなく、墓地の《咎姫》《ガルドニクス》も機能する。が、手札誘発を受けて弱体化した盤面ではそうは行かない。
上図は《エクセル》1枚初動のとき《孤島》に《うらら》を打たれた場面の盤面例である。《コズサイ》で《孤島》の全体除去を許すと《アンブロ》②効果による蘇生を墓地の《ヒータ》にしなければ《咎姫》と《ガルドニクス》が機能しなくなり、盤面は脆弱になってしまう。尚、《コズサイ》は先攻のゲームだけでなく後攻のゲームでも警戒すべきカードであり、サイドゲームでは《墓穴》等と共に常に意識して立ち回る必要がある。
繰り返しになるが、盤面形成の際は《コズサイ》に限らず対面のサイドインするメタカードを上手く予想し、《ラー球》《三戦の才》《心変わり》《超融合》《拮抗勝負》等のカードで簡単に妨害数が減らない様な盤面の形成を目指したい。
2.6.【炎王スネークアイ】対面の意識
本項では【炎王スネークアイ】を使う場合ではなく、【炎王スネークアイ】と対面したときのことを考えてみる。
まず今期の環境デッキは総じて手札誘発1枚で展開は止まらないし、捲り札1枚で妨害がゼロになるなんてことはない。甘い考えは捨てるべきである。
誘発の打ちどころについて、展開紹介した項で記載した通り《G》や《アトラク》以外のほとんどの手札誘発は貫通される可能性がある。《ヴェーラー》と《泡影》は数ある手札誘発の中でも初動となる《エクセル》を止められるという意味で後攻の理不尽なゲームにワンチャンを作れる可能性があるため有効とされている…が、貫通される可能性が高い前提で打ち込む誘発であるため期待値は低い。
安定して勝ちに行きたいのなら、大切なのはどこを止めたら最終盤面から何が消えるか考え、勝ち筋を見出だしてから手札誘発を打ち込むことである。
例えば【粛声】を使う場合、《原罪宝スネークアイ》に《うらら》を打てば【炎王】のギミックが最終盤面から無くなるため、【スネークアイ】による《咎姫》や《マスカレーナ》からの《アポロウーサ》といったメインフェイズ開始時に打てない妨害や、対象をとる妨害しか残らなくなる可能性があり、《ロー》の通常召喚や《結界》による対象耐性付与で有利なゲームを作れるかも知れない。
例えば【ふわんだりぃず】を使うなら《エクセル》の②効果に《うらら》を打てば《炎龍》にアクセス出来ないことで最終盤面のリンク数が少なくなり、盤面は《ガネーシャ》と《咎姫》だけになる可能性があるので、《ガネーシャ》の無効効果さえ踏んでしまえば妨害は無くなり墓地の《ガルドニクス》を《すとりー》で除外してイージーウィンを狙うことも出来る。
【炎王スネークアイ】は様々なギミックを持つため、対面するにあたって有効と思われるメタカードは存外豊富にあるものの、1個1個のメタカードのバリューにそこまで期待が出来ない。そのためサイドインする捲り札の考え方として、バリューの高さだけでなく勝ち筋のイメージに必要なものを選定し、勝ち筋を濃くするためのサイドイン・サイドアウトを行って、要所で適切にカードを打ち込む練度が必要である。
2.7.【炎王スネークアイ】の変遷
【炎王】がストラクチャーデッキでの大幅な強化を受け環境に躍り出たのは2023年の9月、環境でのメタカードが刺さりにくい優位な立ち位置を得たものの、【炎王】からすると【ピュアリィ】が明らかな不利対面だったことや、出力の低さから【R-ACE】の《アウローラドン》を使った先攻展開を捲れない場面が多く、この時点では使用するプレイヤーもそこまで多いわけではなかった。
そんな矢先に【スネークアイ】の発売により、これを取り込むことで環境デッキとしての立ち位置を磐石とした。【スネークアイ】の爆発的な出力の高さと【炎王】による強固さが広く知られることになり、環境の第一線を先導することになる。
その後制限改訂を挟んだ202401環境では、共にトップクラスのパワーを有していた【R-ACE】が厳しい規制を受けたものの、【炎王スネークアイ】は制限改訂の影響をほぼ受けなかった。そのため【R-ACE】との差を広げ、環境の走り出しである1月に広いシェアを占めた。その後メタゲームの中心となったが、対象耐性や除外ギミックの横行を受けて一強となる場面は減り、分布は少しずつ落ち着くことになった。
3月には《ウルカニクス》の登場で【純炎王】も入賞報告等があったが、【炎王スネークアイ】では《ウルカニクス》の採用によるブラッシュアップはほとんど無いままシーズンを終えた。翌202404環境ではこれを採用した型が入賞報告を挙げており、今後の【炎王スネークアイ】を先導するゲームプランではないかと注目されている。
2.8.【炎王スネークアイ】の参考資料
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
こたらは【炎王スネークアイ】の概要を変遷も兼ねて記載してくれている。展開紹介では、複数の展開を動画にしてくれているため、文面よりずっと分かりやすい。
こちらは前環境でYCSJに優勝したムツミ氏の記事で、【炎王】に関する基礎をハイレベルな目線から記載してくれている。氏は202404環境でも《ウルカニクス》入りの【炎王スネークアイ】で実績を残しており、前環境の記事ではあるものの強豪プレイヤーの目線という意味で参考になる部分は多い。
3.【粛声】
※前記事と内容の一部が重複するため注意
【粛声】は『儀式召喚』というロマン溢れるギミックでありながら、その手堅い戦術で発売から瞬く間に頭角を現したテーマ。
3.1.【粛声】の特徴
【粛声】は安定した儀式召喚で対象耐性・効果無効・攻撃対象誘導等の固い守りを成立させ、【スネークアイ】等の単調な攻めに対して圧倒的な防御性能を誇る中速のデッキである。見た目の派手さこそ無いが、参考資料の文言を借りると「ぱっと見突破しやすそうで突破できない、しても返しきれない」という強固で堅実な性能で環境入りしている。
実績のあるプレイヤー様が基礎から応用まで網羅しているnoteを出しているため、下の2記事は【粛声】に興味のあるプレイヤーは本当に、マジで、必読。
【粛声】というデッキは儀式召喚を使ったテーマであり、本来儀式召喚というギミックは①儀式魔法②リリースするコスト③儀式モンスターという3枚のカードを揃えるというハードルの高さと、儀式召喚をするだけで①②のカードを失うため大幅なディスアドバンテージを抱えるという性質があり、ロマン扱いというか、正直実践向きではない戦術のギミックである。そのため多くの儀式召喚テーマは、それを鑑みても尚余りあるギミックのリソース回収性能を有するカードデザインとなる。
今でこそ珍しくないが《下準備》は1枚のカードから2枚のカードを生み出すアドバンテージ性能でありながら、儀式召喚であるから許されている様なデザインであり、
テーマ内には破格のカードアドバンテージとなるカードが複数枚存在している。これらを駆使して各種妨害を巧みに応対し、相手に強固な盤面でプレッシャーをしかけて踏み潰す戦いを得意とする。
3.2.【粛声】の動き
そんな【粛声】の基本展開を見ていく。初動は《ロー》1枚から。
この基本展開を、《ロー》以外の手札次第で盤面を肉付けしたり各種妨害をケアして動いたりするのが【粛声】の盤面形成の基本方針となる。
例として《ロー》に加えて《サフィラ》を引いていた場合、各種手札誘発を避けた展開を見ていく。
相手がモンスターを召喚特殊召喚したとき《祝福》の②効果を発動して場の《ロー》をリリースし《古聖戴》を儀式召喚出来る。このときリリースした《ロー》の③効果発動で自身を蘇生すれば、更に《ロー》の①効果でデッキから《威光》を魔法罠ゾーンに設置することも可能。
盤面についてはそんなところだが、《ロー》を通常召喚しないことに注目して欲しい。このルートで重要なのは盤面形成までの流れであり、例として挙げたこのルートを辿れば《ヴェーラー》《泡影》《ドロバ》等を打たれた場合でも最低限の基本盤面までは展開することが出来る。不用意に《ロー》を通常召喚して《ヴェーラー》を重く受ける必要は無い。
この盤面、相手のターンに《ロー》の③効果を発動するタイミングで《墓穴》等を使われると《ロー》が居なくなってしまうので、更にそれをケアするなら③で以下の分岐が可能である。
この様にケアしたいカードによって展開を流動的に変化させながら使うことがプレイヤーに求められる。上述した内容の繰り返しになるが、初動となるカードとプラスアルファの手札を使って、盤面を厚くしたり誘発のケアをすることが、このデッキの基本展開の基礎となる。
基本展開の例として《ロー》1枚の展開を紹介したが、その他の1枚初動の例として《神巫》もここで挙げる。
この基本展開も《神巫》以外の手札次第で盤面を肉付けしたり各種妨害をケアして動くことになる。長くなるので展開例はこの場では割愛する。参考資料等を参照して欲しい。
3.3.【粛声】の構築
【粛声】は先攻で固い盤面を築くのが狙いのデッキであるが、後攻で盤面を荒らすギミックがテーマ内にほぼ存在ぜず、それ故に後攻になったときに相手の盤面を弱化するための手札誘発を多く積む構築が主流である。昨今の中速のデッキはメインスロットの半分程度が自由枠であることが多いが、ギミック内のカードが優秀な【粛声】の自由枠はその中では比較的少なく、その自由枠を後攻に寄せたカードで埋めるのが通説である。
《ペンデュラムグラフ》は高い妨害性能を有する儀式モンスターの選択肢の1つとして採用されることも多い。《古聖戴》と違い手札から仕事をするわけではないが《墓穴》等から墓地の《ロー》を守ることが出来たり、サイドゲームでの《拮抗》等の捲り札に対しても有効な儀式召喚の選択肢である。メインデッキの儀式モンスターは4,5枚が一般的なので、慣れないうちはその枚数の範囲の中で試行錯誤するといいだろう。
また上述の通り盤面を荒らすギミックが不足していることから、EXデッキは盤面に触れるカードを優先して採用したい。【ふわんだりぃず】や【エルドリッチ】で経験した諸兄も居ると思うが、EXデッキを使う機会が少ないデッキだからこそ、EXデッキの採用カードの選定は個人のプレイ意識が色濃く現れ、トーナメントの構築を参考にする際は多くの知見を得られる。
《神巫》から盤面を退かすギミックは《ヌトス》だけでなく《ヒエラルキア》を介してアクセス可能な《アンヘル》が除外の性能も有している。光属性をS素材とするため、①効果の通りが良かったり、ライフレース等の場面で場保ちが良いのが特徴である。
先攻での使用は勿論、《強金》と違い後攻で相手の盤面に触ることもリソースを爆発させることも出来る優秀さから『ドラグマ』のギミックを採用する構築も珍しくない、そうなった場合EXデッキの選定は更にプレイヤーの意識が十人十色で現れるため、トーナメントに限らず多くの構築を参考にするといいだろう。興味があれば遊戯王OCGの公式チャンネルからYCSJ名古屋2023のトーナメントの動画を観てみたり、上述した参考資料を観てみるといい。
【粛声】はEXモンスターの用途をしっかりと理解することも重要である。《セキュア》は様々な用途で使用されるが、広く知られる用途は《祝福》の②効果による儀式召喚を狙う場面である。例として《ロー》と《ローガーディアン》の2枚の展開を見てみよう。
まずは《セキュア》が無い場合、
この様にせっかく《ローガーディアン》を素引きしているのに盤面が基本盤面程度にしかならず、《ドロバ》も重く貰うことになる。そこで《セキュア》が居るとどうなるかというと、
この様に展開すれば、相手のターンに《祝福》の②効果による《古聖戴》の儀式召喚、それによる《ロー》の③効果による蘇生と①効果による《結界》や《威光》の設置を狙える。
3.4.【粛声】のゲーム構成
【粛声】は少し回っただけですぐギミックが回りきってしまい戦術の使い分けの選択肢が少ない。そのため対面次第で大きくスタイルを変えたり戦術を使い分けたりする様な動きはほとんど無く、戦術に至る細かなプレイの幅はかなり広いのだが根幹のゲームプランは単調である。派手な大型モンスターや盤面の全体除去とは縁が無いと言えば分かり易いか。
しかしながら、それを考慮しても尚余りある高いパワーと安定性が、このデッキを環境デッキとして長らく君臨させている。その実態は参考文献の言葉を借りると「万能無効を用意しながら対象耐性かつ攻撃誘導を行う41打点を盾に継続リソースとなるカードを用意することで相手に負荷を押し付けながら、相手とのアドバンテージを広げていく」のが【粛声】のゲームメイクである。
先攻のゲームは確実に盤面を作ることでが手にプレッシャーを与えることになり、後攻のゲームなら手札誘発で相手の展開を弱化して《ローガーディアン》の4100打点で戦闘を介し場を荒らしてから上記ゲームメイクを行う流れとなる。
サイドゲームでも大きく方針が変わることは無い。サイドチェンジについては先攻のゲームなら不要な手札誘発を抜き、強力な罠カードを積極的に採用して《ローガーディアン》でそれを守るプランが多いように思う。採用する罠カードは地域やプレイヤーによって差が大きく、モンスターを横に並べさせないための《サモンリミッター》を採用する構築もあれば、《羽根帚》等をサイドインされる危険を考えて《魔封じ》《紅蓮の指名者》等を採用する構築も見られる。後攻のときのサイドチェンジは《強金》の枚数を減らしたり、相性の悪い手札誘発をスイッチする印象だ。この辺りは上述したむらかみ氏の参考資料に丁寧な記載があるので是非参考にして欲しい。
3.5.【粛声】を使う留意点
まずは覚えておくといい裁定について、
◯《ロー》の②効果は《ヴェーラー》等で無効になる。《墓穴》で無効になっている場合、フィールドに表側で存在する《ロー》の②効果は無効になるが、手札・墓地・裏側表示の《ロー》は《墓穴》の適応下でも②の効果を使用出来る。
◯《裂け目》等の状況下でも《神巫》は①効果を発動出来るが、デッキ・EXデッキから選んだ天使族モンスターは除外され《神巫》のレベルはそのままになる。
◯《サウラヴィス》はチェーンブロックを作らない特殊召喚で、墓地の魔法カード2枚をデッキに戻すのは特殊召喚のコスト扱いである。そのため《神宣》等で召喚無効になったとしても魔法カードをデッキに戻す処理は行う。
◯《ネクロバレー》の適応下でも《サウラヴィス》は①効果で墓地の魔法カードをデッキに戻して特殊召喚出来る。
◯《ロンギヌス》の効果適応下では《古聖戴》の②効果は発動出来ない。ただし《古聖戴》の②効果にチェーンして《ロンギヌス》の効果が発動された場合は、召喚無効となったモンスターは墓地へ送られる。
◯《マスカレーナ》等の効果によるリンク召喚に対しても《古聖戴》の②効果は発動出来る。ただしそれは《マスカレーナ》の効果がチェーン1で発動されていた場合に限った話であり、チェーン2以降で《マスカレーナ》の効果が発動されていた場合《古聖戴》は②の効果を発動出来ない。
次にプレイについて覚えるべきこと、
【粛声】は基本展開が簡素であるためプレイ難度が低いと思われがちだが、それでは高い勝率を期待出来ない。このデッキの本質は簡素ながらも様々なプレイの選択肢を取ることで高い勝率を目指せることであり、実態はプレイ難度が決して低くないデッキである。各種誘発の受け方を考えつつ、最終盤面を伸ばす思考がプレイヤーに求められる。良い例があったのでライト氏がX(旧Twitter)で挙げていた盤面形成を見ていこう。
初手は上の画像の3枚とする。
まず《サフィラ》か《結界》からプレイすることが考えられるが《うらら》を打たれた場合について、
結論、どちらに《うらら》を打たれても基本盤面までは進めなくなるため、思い切って《うらら》を割り切った展開をする必要がある。
次に何の受けを考えるかだが、ここでは例として《ドロバ》が流行している場面での受けを考えてみる。《サフィラ》から発動した場合はその後の動作が出来なくなるが、《結界》から発動した場合は《サフィラ》で《祈り》を墓地に送ることが出来るため《結界》でサーチした《ロー》から設置出来る《威光》の発動条件を満たせる。つまりこの場合は《結界》から発動するのが正解である。
次の動きは2択で
(1)《ロー》を通常召喚
もしくは
(2)《サフィラ》の①効果発動
のどちらかである。
このとき《ヴェーラー》《泡影》を考える。《ロー》の効果が無効化された場合、せっかく《サフィラ》で儀式モンスターをサーチしても儀式召喚のためのコストが無くなってしまう。ここは《サフィラ》を先に使う。
これで《ローガーディアン》までアクセス出来た。上記の通り《ロー》に対して《泡影》等で効果を無効化されると儀式召喚のコストが無くなってしまうため《ロー》は通常召喚せず《サフィラ》の墓地効果で儀式召喚を狙う。
ここで《ローガーディアン》の①効果と《ロー》の③効果でチェーンブロックを組むことになるが、《ロー》をチェーン1で発動することで《わらし》を打たせない様に注意する。
《ロー》を蘇生して①効果で《祝福》を設置すれば盤面は完成するのだが、《一滴》等で盤面を返される可能性を考えここで更に盤面が伸びないか考えてみる。召喚権を残して手札にはレベル3の《うらら》、場にレベル1の《ロー》が居ることに注目すると《虹光》のシンクロ召喚が視野に入る。《虹光》が場に居れば《一滴》等の捲り札で負ける場面を防げるかも知れないので積極的に狙いたい。よって盤面にモンスターを並べることになるため《ロー》で設置する魔法罠は場にモンスターを横に並べる(特殊召喚効果を有する)《威光》の択をとる。
次に《威光》でデッキからモンスターを特殊召喚する。《サウラヴィス》を特殊召喚すれば妨害となるが、出来ればシンクロ召喚の素材となった《ロー》には場に居て欲しい。そこで、この場では《大儺主水》の使い方の紹介も兼ねて《サフィラ》を特殊召喚する。
《大儺主水》は①効果で盤面のカードを退かす効果を有しているが、主な用途は②の墓地の儀式モンスターを蘇生する効果である。儀式モンスターを素材にして儀式モンスターを特殊召喚…というと意味が無さそうに見えるが、その本質は《ロー》の③効果を起動出来ることである。
《大儺主水》を使うことで容易に《ロー》を相手のターンに特殊召喚出来る様になり《祝福》を設置することが出来る。この《祝福》は《古聖戴》の特殊召喚による妨害となる。ライト氏の動画では《泡影》を打たれた想定で展開しているがその場合でも《威光》のコストを手札の《古聖戴》ではなく墓地の《祈り》にすれば、展開は継続出来る。
ここまでの展開をまとめたものが以下。
本項を読んだ諸兄の中には「こんなことまでいちいち考えて回さなきゃいけないのか」と思う方も居るだろう。べつに考えなくても回せるのだが、単調なパワーデッキと異なりプレイの最適解を拾いに行く意識の有無で勝率が格段に違うのが【粛声】というデッキである。
手札誘発の受け方を考えながら回し、いざというときは「割り切るときは割り切る」という意識も重要。加えて勝ち筋を追うというよりも負け筋を丁寧に潰していく意識も持ちたい等々。基礎的な内容に見えるかも知れないが、これらを本当に抜け目なく出来る様になるのは難しい。文頭の繰り返しになるが【粛声】は基本展開が簡素であるがプレイ難度が決して低くないデッキであり、一挙一動を丁寧にプレイすることで真価を発揮するデッキである。
3.6.【粛声】対面の意識
【粛声】と対面するときのことを考える。
他のデッキの項目でも記載しているが、今期の環境デッキは総じて手札誘発1枚で展開は止まらないし、捲り札1枚で妨害がゼロになるなんてことはない。甘い考えは捨てるべきである。
【粛声】相手の妨害数やリソースは盤面だけでなく墓地や手札にあることが多い。相手の手札に確定している《古聖戴》や墓地の《祈り》の枚数を常に気にして戦うことになる。不用意に相手の儀式モンスターを退かして《祈り》の墓地効果を使わせるくらいなら、相手の盤面を越えようとはせず盤面を固めて自分の攻め手を蓄え、チャンスを待つのも手である。
上述したが【粛声】はプレイの意識によって各種手札誘発をリスクヘッジしながら受けるデッキである。同じ手札でも【粛声】側のプレイヤーの意識によってこちらの手札誘発や捲り札の威力は違ってくる。臨機応変に、要所を意識外の手札誘発で止めたいところである。
特に打ちどころが難しい手札誘発が《うらら》であり《強金》《天底》《サフィラ》《結界》《威光》《祈り》《下準備》…等とにかく打ちどころが多い。それでいてどこに打っても貫通される可能性があるし、どこに打っても止まる可能性がある。相手に依存するところがあまりに大きい。
《ヴェーラー》と《泡影》も同じで《ロー》や《神巫》に打つことで展開が止まる可能性もあるが《古聖戴》や《ヒエラルキア》等の受け方があまりに多い。【粛声】を使う上では《ヴェーラー》等の対策の意識が必要だが、自分が【粛声】と対面するにあたってはこれらのカードは警戒されると仕事は期待出来ない。
主な【粛声】対面で有効と言われるカードを以下で紹介する。
《うさぎ》は《結界》を破壊して展開を止める期待も持てる他、相手の展開後に引いても《祝福》や《威光》に対して打つことが出来るため有用である。
《羽根帚》は《結界》《祝福》《威光》を剥がすことが出来る他【粛正】がサイドインする《サモンリミッター》等に対応する役割でもある。《ローガーディアン》の無効効果も相まって、対戦相手との駆け引きが生じる。
対戦相手との駆け引きで言うと《ローガーディアン》の効果の使用有無を相手に悩ませる要因は《三戦の才》である。《三戦の才》は《結界》で対象耐性を持ったモンスターの処理に大きく貢献出来る。《古聖戴》のコントロールを奪取して妨害数を減らしてからリソースを膨らませたり、2ドローで《羽根帚》等を引き込みに行く選択も取れる優秀なカードである。
その他の《わらし》や《一滴》等の手札誘発や捲り札に関しては上述したりゅぬ氏の参考資料に詳しい記述があるため、そちらを参考にして欲しい。
3.7.【粛声】の変遷
前シーズンの10月にPHNIが発売してから11月頭のYCSJ名古屋2023で注目を集め、その後『宣告者』の儀式ギミックと併用した展開型の構築も存在していたが、トーナメントに分布するのはミッドレンジの型で安定する様になった。
特に【炎王スネークアイ】【スネークアイ】【R-ACE】の流行による《咎姫》や各種魔法罠に対する《結界》の対象耐性付与によって【粛声】は非常に良い立ち位置を得ることになる。
今シーズンの前半は《強金》を採用して先攻での勝率を高く維持するプランと、後攻での性能が高い《天底》を採用して積極的に相手の盤面に干渉しつつ《ミドラーシュ》の特殊召喚を狙うプランが存在しており、これら2種類の【粛声】が多い印象だった。
そこに《祝福》での強化が入ることで《威光》の回収手段を得て盤面に干渉する役割の《天底》を採用したプランは減少傾向となった。とはいえ蓋を開けてみると《祝福》で《威光》を回収する動きはそこまでリアルワールドな動きではなく、依然《天底》でのプランも少なくない。
3.8.【粛声】の参考資料
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
こちらは《祝福》発売後の【粛声】について触れられている記事。各種ギミックの評価に至る過程と考え方が参考になる。
こちらはnoteの記事ではなく動画での解説。記事と違い動画は深掘りした内容には触れられないのだが、大枠や重要なポイントが分かり易く紹介されている。チャンネル登録も忘れずに。
こちらもYouTubeの動画で、上述のnoteの筆者様のデッキ紹介でnoteと併せて視聴するのがいい。チャンネル登録も推奨する。
4.【純スネークアイ】
※前記事と内容の一部が重複するため注意
【スネークアイ】というギミックは現在の遊戯王を先導する最高峰のパワーを有しており、これを核としたデッキこそが【純スネークアイ】である。
4.1.【純スネークアイ】の特徴
まず【スネークアイ】というギミックは1枚のカードから膨らむリソースの量に富んでおり、加えて《ディアベルスター》から成る【罪宝】ギミックからもアクセス可能な姉弟テーマであることから、初動及び手数が非常に豊富なテーマである。
《エクセル》は今シーズンを代表する1枚である。どんなに小規模なトーナメントでもこのカードを見ない大会は無かったのではないだろうか?【スネークアイ】のギミックは出張性能だけ見ても今シーズントップクラスのデッキパワーの底上げ性能を有しており、その利便性の高さから当該ギミックを採用したとしてもデッキ名にわざわざ入れないことも多い。そのため、この場では【スネークアイ】のギミックだけで構成されたデッキを便宜上【純スネークアイ】と呼ぶ。
【炎王スネークアイ】の項で【スネークアイ】のギミックについて、最終盤面の強度で言えば他ギミックと混ぜることに優位性がある旨の記載をした。では他ギミックと混ぜないことによる優位性は何か?いくつか挙げられるが、ここでは再現性と自由枠について記載する。
まず再現性について、【スネークアイ】は《エクセル》《ディアベルスター》《ポプルス》《篝火》といった初動となるカードを大量に採用出来るテーマであり、他ギミックを採用しないことで初動となるカードの種類がある程度固定される。そのため他ギミックを採用したときと比べると、単体採用のカードを引き込んだ場面等のアドリブ性の高い展開を迫られる機会がそこまで多くなく、ストレスフリーでゲームすることが出来る。《エクセル》《篝火》の様な簡潔なサーチが展開の基盤にあるのも重要で、初動の再現性及び安定したゲームを支えている。
自由枠について、【純スネークアイ】はフリースロットが多いデッキであり、構築では各種手札誘発や捲り札を多く採用出来る。腐ったカードは《ディアベルスター》のコストにも出来るため、メタが固まった環境では他ギミックとの混ぜ物よりも戦い易いゲームが可能となる。特にメイン戦の後攻では、他ギミックと混ぜたとき相手の完成盤面をギミックで踏むことになりがちだが、【純スネークアイ】なら豊富な手札誘発で相手の先攻展開盤面を弱化出来るため、理不尽なゲームにもある程度対応出来る様になる。
4.2.【純スネークアイ】の動き
参考資料の言葉を借りると、【純スネークアイ】は構築だけ見てもプレイの思想が見え辛い。そこで、まずは他ギミックと混ぜた展開との分かり易い差別化が可能な展開を見てみる。
初動はお馴染み《エクセル》1枚から。
【スネークアイ】から【罪宝】に繋がり《シルウィア》を構えることで万能無効カードを1枚準備出来た。混ぜ物をした構築では《墓穴の指名者》や《拮抗勝負》を重く貰う様な盤面でも、《追走劇》を採用したこの形であれば《シルウィア》のお陰でそういったパワーカードを無効に出来るためある程度の耐性を付与出来ると言える。《ポプルス》のサーチ先に多くの選択肢をとれるので、他ギミックと比べると質素ながら、状況やゲームプランに応じた幅広い戦術の使い分けが可能となるのである。
後述するが、入賞報告の多いゲームでは手札誘発の引き込みを非常に重要視する。トーナメントに長けたプレイヤーはメインデッキで後攻のゲームを意識するため、メイン戦は《シルウィア》等は採用せずその枠に手札誘発を採用する場面が多く、《ヒートソウル》によるドローを目指すゲームが多い印象である。
入賞報告の多い【純スネークアイ】の例として、以下の参考資料から一部展開を紹介する。無料部分に《ポプルス》1枚からの展開等の記載がある他、有料部分には初動の動き出しの優先順位等の記載があり【純スネークアイ】に興味があれば必読である。
では先程と同じ様に《エクセル》1枚から。
《炎龍》の②効果と《蛇眼神殿》の③効果を使えば
(1)《ヒートソウル》のドローによる手札誘発の引き込み
(2)それをトリガーに発動出来る《アーリィ》の無効妨害
(3)《マスカレーナ》による相手ターンのリンク召喚
(4)《リンクリボー》による《マスカレーナ》《アーリィ》の戦闘からの保護
(6)《炎龍》③効果で蘇生した《ポプルス》や《オーク》による次ターンの攻め手
を構える形になる。基本盤面はプレイヤーのゲームプラン次第となるが、《ヒートソウル》を積極的に絡めることで【純スネークアイ】の持ち味は存分に発揮出来る。積極的にゲームプランに加えたい。
ここで《ニビル》について考える。【炎王スネークアイ】の基本展開の紹介では《ニビル》に対するケア展開を基本としていたが、【純スネークアイ】は混ぜ物をしていないことでギミックの底が浅く、《ニビル》をケアして展開するとどうしても盤面が脆弱になる。そこでここでは上述した参考資料から《エクセル》《ディアベルスター》の両引きによる《アポロウーサ》を使った先攻展開を見てみる。
この様に《蛇眼神殿》と《ポプルス》を使って魔法カードをかさ増しすることで、《セレーネ》に魔力カウンターを乗せることができ、これにより《アポロウーサ》を成立させることが出来た。この様に安定した初動と幅広い戦術を両立しそれを駆使出来ることで、混ぜ物をしたデッキよりも高い対応力を実現しているのが【純スネークアイ】である。
4.3.【純スネークアイ】の構築
前述の通り自由枠が多く豊富な手札誘発を採用し可能であり、メインギミックの枠は豊富な初動及び貫通札が大部分を占めるため、構築されるカードのゲームに関連出来る仕事の純度が非常に高く、全てのカードが手数になる可能性を持つ。混ぜ物では採用枚数が多くない《ポプルス》や《ディアベルスター》といったカードも純構築であるが故にフル投入されることが多い。
《ワイトバーチ》は②の効果を自ターンに使えないが、①の効果で手数の1つになるのは勿論のこと、最終盤面に残しておくことで②効果を発動した《炎龍》のサクリファイスエスケープの他、②効果を発動する前に《炎龍》が《超融合》等で除去された場合等、ワイトバーチの②効果で炎龍を供給する等の捲り札のケアにも使用出来る。
混ぜ物では1枚採用がデフォルトの《原罪宝スネークアイ》も【純スネークアイ】であれば2枚採用されることがある。②効果を積極的に使用出来ることで継戦力が上がる他、【神碑】等のデッキに飛ばされても保険が利く等、様々な恩恵がある。
《アーリィ》は主に《リンクリボー》と一緒に《ヒートソウル》に繋げるための用途で使われることが多く、妨害として使用する場合は《マスカレーナ》が優先される。そのため《ヒートソウル》でのドローの期待値を高くするため手札誘発を多く採用する構築では《アーリィ》が活躍することが考えられるのだが、こういったカードの強みや役割はゲームプランによって異なり、前述の通り【純スネークアイ】は構築だけ見てもプレイの思想が見え辛いため、入賞報告のある構築を参考にする場合はプレイヤーの思想を追う必要がある点に注意したい。
4.4.【純スネークアイ】のゲーム構成
まず先攻展開について、地域や時期やプレイヤーによって目指す最終盤面が大きく異なる。ここでは最終盤面が違うとしても共有する部分について記載したい。
昨今の競技的な遊戯王で多く見られる傾向だが、先攻展開で共通する意識として「どんな手札誘発が飛んで来ても最低限1妨害は構えられる様に展開しよう」という最低限の妨害を保証する意識が有効である。【純スネークアイ】というデッキは以下2つの理由からこの性能が非常に秀でている。
1つ目の理由はそのリソース性能にある。【スネークアイ】というギミックはリンク数を伸ばす動作と妨害を同時に兼ね備えるギミックを《炎龍》や《咎姫》といった1つのカードが兼務する。《ヴェーラー》や《泡影》はこれらのカードに繋げるまでの間に打たなければ1妨害を許すことになり、相手目線では手札誘発を打つ場面が《エクセル》等に限られる。これら「次ターンの妨害と次々ターンの攻め手を1枚で生み出すリソース」という存在自体が最高レベルの妨害保証性能を発揮するのである。
2つ目の理由は手数にある。【純スネークアイ】が【炎王スネークアイ】をはじめとした混合デッキより秀でた点として、前述した「全てのカードが手数になる可能性を持つ」ことが挙げられ、これはつまり貫通性能の高さを示している。今シーズン流行した《ヴェーラー》《泡影》は【スネークアイ】における《エクセル》初動を止めることが出来る点で評価されているが、【純スネークアイ】は手札がある程度あれば大抵の手札誘発は貫通して盤面を形成出来る。
つまり上述した2つの理由を重ねて考えると、相手の視点では「《炎龍》や《咎姫》に繋がる前に手札誘発で止めたいのに、《エクセル》や《ディアベルスター》を無効にしても手数が多くて貫通される」というゲームになるのである。先攻展開ではこの理不尽なゲームを押し付ける意識を持ちたい。
手数が豊富なデッキであるが故に後攻のゲームでの捲り性能も低くない。メインデッキの自由枠も豊富で手札誘発も多く採用出来ることから比較的先攻後攻問わず安定してゲームが可能であり、ゲーム構成を考えるなら盤面の補強等よりも単体のカードのバリューを上げることが勝率に直結する。《三戦の才》等のパワーのあるカードを積極的にメインデッキに採用して不要なら《ディアベルスター》のコストにしてもいいし、《ニビル》を採用して先攻で腐ってしまっても相手のターンに自分の場のカード諸共一掃して《炎龍》でリソースを拾うことも出来る。多種多様なカードを採用して自分のゲームを作れる自由さも【純スネークアイ】のゲーム構成の1つである。
4.5.【純スネークアイ】を使う留意点
まずは覚えておくといい裁定について、
○【スネークアイ】のギミックで永続魔法カード扱いとして魔法罠ゾーンに設置されているモンスターが、各種カードの効果の発動や適用の条件に含めることが出来るかどうかについて、
(A)モンスター扱いではないため『フィールドに「○○」モンスターが存在する場合』のような記載のテキスト効果を発動、適用するための条件に含めることはできない。
(B)モンスター扱いでは無いがモンスターカード扱いではある。つまり『フィールドに「○○」モンスターカードが存在する場合』のような記載のテキスト効果を発動、適用するための条件に含めることはできる。
(C)モンスター扱いでないカードは「チューナー」等の性質を持たない。よって『自分のフィールドか墓地にチューナーが存在する場合に発動できる』のような記載のテキスト効果を発動、適用するための条件に含めることはできない。
(D)モンスター扱いでなくてもカード名の情報は残る。つまり『自分フィールドに「○○(カード名)」が存在する場合』のような記載でカード名を指定している場合は、効果を発動、適用するための条件に含めることができる。
(E)尚、モンスター扱いではないため永続効果を持つモンスターの効果は適応されない。
○《大炎魔》の①効果は対象をとらない誘発効果であり、このカードの元々の持ち主と戦闘を行う相手モンスターの元々の持ち主のフィールドに、使用可能な魔法&罠ゾーンがそれぞれ必要数ある場合に発動できる。
○《大炎魔》の①処理時に少なくとも片方がモンスターゾーンに存在しなくなった場合、処理は行われない。
○《大炎魔》の②効果は魔法罠ゾーンに他に空きが無ければ発動出来ず、墓地のモンスターを魔法罠ゾーンに置く際《大炎魔》が置かれていた魔法罠ゾーンに置くことは出来ない。
○《大炎魔》の②効果は永続魔法として発動及び適用される効果であるため、この効果の発動に相手がチェーンしても《シルウィア》の『自分の「ディアベルスター」モンスターまたは自分の「罪宝」魔法・罠カードの効果の発動にチェーンして、相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、墓地のこのカードを除外して発動できる。』という効果は発動できない。
次にプレイについて、
《ポプルス》の③効果を手なりで発動してしまうプレイヤーが多い印象だが、《炎龍》以外に自分の墓地の《マスカレーナ》や《アーリィ》《炎龍》を魔法罠ゾーンに設置出来る数少ない手段であり、上述した展開の様に相手のターンに《リンクリボー》で墓地に送って《蛇眼神殿》用の妨害を設置したり、《セレーネ》等のリンク素材にしてチェーン2以降に発動することで《うさぎ》等をケア出来る。《ポプルス》の③効果の使いどころはプレイヤーの腕の見せ所でもある。
また【スネークアイ】が有するアドバンテージの塊となる爆発的なリソース性能のカードはチェックしておきたい。
《炎龍》の③効果もリソースの塊であり、相手のターンに発動が通ると2体のモンスターの蘇生で単純にリソース+2であり、蘇生するモンスターが《エクセル》《ポプルス》等のモンスターの場合それらの召喚成功時効果が誘発するためリソースは+4にもなり、更にそこに《オーク》が絡むとリソースは+5であり、《タービュランス》も真っ青なアドバンテージ性能となる。相手のターンに積極的に狙いに行き、成立すればかなり優位なゲームを作れるだろう。
4.6.【純スネークアイ】対面の意識
【純スネークアイ】と対面するときのことを考える。
前述の通り《炎龍》《咎姫》を着地させた時点で1妨害は構えられることになるため《ヴェーラー》《泡影》は初動に打たなければならない…と言われがちだが、それはあくまでパワーが少なく1妨害を越えられないレベルで手札に攻め手が無い場合の話である。そもそも今期の環境デッキは総じて手札誘発1枚で展開は止まらないし、捲り札1枚で妨害がゼロになるなんてことはない。甘い考えは捨てるべきである。手札誘発は複数枚打ち込むことで相手の先攻展開を弱化させるイメージで、《ヴェーラー》《泡影》は他の手札誘発と一緒に使う想定で相手のリソースが一番減りそうなタイミングで打つことになる。
ちなみに、「手札誘発は複数枚打ち込む」と記載したが、場合によってはその頭数に《墓穴》等のカードも入れることになる。例えば上述した《エクセル》と《ディアベルスター》の展開の場合、
《ヴェーラー》と《泡影》ならここで①の《ディアベルスター》と②の《エクセル》に2連続で放り投げて相手の展開を力任せに止めに行く。しかしこれが片方だけだと展開は止められない。そこで《ディアベルスター》《エクセル》の両方に打たずにガメたと仮定すると、
ここで《ヴェーラー》を打たないと《アポロウーサ》が成立するため《ヴェーラー》はここまでしかガメることが出来ない。《セレーネ》の③効果を止めても《原罪宝スネークアイ》も《大炎魔》も控えているため、相手は喜んで展開を続けるだろう。しかし《泡影》の場合、
あくまで仮の話だが、ここまでガメた《泡影》を《咎姫》に打ったらどうだろうか?【純スネークアイ】はギミック内で墓地の《炎龍》を釣り上げる手段は《咎姫》の②効果による蘇生と《ポプルス》③効果か《大炎魔》②効果による魔法罠ゾーンへの設置となる。そのためこの展開の場合、
《咎姫》を止められてしまうと《アンブロ》を立てるだけでターンは終わり、相手はこちらのターンに《リンクリボー》で墓地に送った《ポプルス》の効果で《炎龍》を設置しなければならず、《アンブロ》を経由しなければ《マスカレーナ》が成立しなくなるのである。ここで《墓穴》を《炎龍》に当てれば相手は《アポロウーサ》《咎姫》《アンブロ》の妨害こそあるもののリソースの確保手段を失う。《ヒートソウル》も成立していないため、盤面さえ返してしまえば相手は勝ち筋を無くしてしまったと言える。
厳しいゲームであることに代わりは無いが、召喚権で《アポロウーサ》を踏めれば敗色濃厚のゲームをプレイングで返せる可能性を見出だせる。勿論、初動の《エクセル》《ディアベルスター》を止めることでも展開は止まることがあるし、止まらないにしても相手の手札を減らすことは出来る。しかし相手先攻のゲームはそれだけで敗色が濃厚であるため、僅かな勝ち筋は見逃さない様にしたい。
上記の例では《墓穴》について触れたが、先攻展開を許してしまった場合妨害となる《マスカレーナ》《咎姫》に目が行ってしまうが、それらの本質は《炎龍》を墓地に送ることで爆発的なリソースを確保することにある。妨害を恐れて《咎姫》に《墓穴》を使うよりも《炎龍》の③効果を《墓穴》で射抜く方が有効な場面は案外多い。《拮抗勝負》も《咎姫》からの《炎龍》を使わせてから発動したり、《三戦の才》も相手の場に《炎龍》を残した状態で打てないか一考する等、リソースを少しでも減らすプレイを意識したい。
とは言え破格のリソース性能を有する【純スネークアイ】のリソースを枯らすのは至難の技である。もし可能なら早々の8000ライフカットによるキルが望ましい。珍しいところでは炎属性主体のデッキが《ヒータ》を2枚採用して《咎姫》を誘ったあとに2枚目を着地させて《炎龍》を釣り上げ、《アクセスコード》と合わせてワンキル…というプランも見られた。《三戦の才》によるコントロール奪取もキルを助力するので、狙える場面は少なくないかも知れない。予め有効なキルパターンを準備しておくのが有効な印象である。
4.7.【純スネークアイ】の変遷
『スネークアイ』というギミックは7月のAGOVの時点で存在していたが、10月末のPHNIで大幅な強化を受けたことで環境入りしたテーマ。
PHNIのフラゲが広がった始めこそは《篝火》から《ポプルス》を経由して《原罪宝スネークアイ》を使用することで召喚権を使わずにリンクを1伸ばしつつ好きな炎属性のレベル1モンスターにアクセス出来るということで、流行していた【R-ACE】や頭角を現した【炎王】における出張が期待されていたが、いざ発売すると《ポプルス》の非常に高いアクセス性能やパフォーマンスが瞬く間に広がり【スネークアイ】という単体ギミックだけで多くのプレイヤーを魅了することになった。
上述した下級スネークアイモンスターの連鎖による基本展開とは異なり《原罪宝スネークアイ》から《ジェットシンクロン》にアクセスすることが容易なためシンクロ召喚を積極的に狙うプランも非常に多く見られる。これは【罪宝】ギミックを手札誘発の貫通と後攻での手数として有効活用することを注視したゲームプランとなる。その分魔法罠による妨害を構えることが出来なくなるため、流行は地域差が非常に激しく現れた。
その後【スネークアイ】ギミックの動作に+αのゲームプランを立案する構築が増え、《スキドレ》等のシステム効果の置物で相手のターンに強力な妨害を強いたあと自ターンに下級スネークアイモンスターの効果コストで置物を剥がすプランも注目された。
今シーズンは【炎王スネークアイ】の流行による《ヴェーラー》《泡影》、【粛声】の流行による《うさぎ》《わらし》に対して高い貫通性能を持ち、かつ自身もそれらの誘発を積み込める自由枠の多さから、環境デッキに対する理解が深まったシーズン中期以降に頭角を表し環境を先導した。
4.8.【純スネークアイ】の参考資料
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
こちらは【純スネークアイ】の戦い方についての要点がまとまった資料で、トーナメントを意識するなら必要な意識についての記載が参考になる。
【純スネークアイ】はマスターデュエルでフルパワーの構築が可能であるため、基本の動きや思考を追いたいのならそちらの方が参考になる資料が多い。こちらの動画では終盤に基本の《G》受けにも触れている。
その他にも《シルウィア》を使った型や『シンクロ召喚』を取り入れた型についての資料が存在するが、今シーズンは入賞報告が少なかったことと資料を並べるとキリが無いので苦渋の割愛となる。興味があれば前記事に参考資料があるためそちらを参照して欲しい。
5.【R-ACE】
※前記事と内容の一部が重複するため注意
【R-ACE】は優秀なモンスター群による圧倒的なアドバンテージ性能を武器に、長らく環境の第一線を走り続けるテーマ。
5.1.【R-ACE】の特徴
【R-ACE】は《ハイドラント》《インパルス》《プリベンター》といった単体性能の高いモンスターを多く携えたデッキテーマである。特に《タービュランス》は現在のOCGのカードプールでもトップクラスのアドバンテージを稼ぐ性能を有する。
②の効果を読んで欲しい。サラッとデッキからカードを4枚持ってくると書いてある。ヤバい。この《タービュランス》のカードデザインの関係で、テーマ内の魔法罠のレパートリーが非常に充実しているのも特徴である。
こういったハイパワーのテーマはそれぞれのカードに制約を設けて他ギミックとの共存を規制するものなのだが【R-ACE】はそういった規制が無く、自由にギミックを取り入れて展開の強化が可能である。
よく使用されるのは【罪宝】と【スネークアイ】のギミックで、特に《ボプルス》の登場により《篝火》が《ハイドラント》になるだけでなくリンク数の底上げにもなる点でも強化を受けたと言える。そのため現在の【R-ACE】は《ディアベルスター》《ポプルス》のギミックを入れたものが主流である。《咎姫》の存在で《ヴェーラー》《泡影》を簡単に受けられる様になったのも大きい。こういった追加のギミックのお陰で手札の《プリベンター》を温存しながら盤面を作れるのが重要である。
先に述べた通り【R-ACE】の本質は単体性能の高いモンスター群であり《プリベンター》は妨害効果を有するだけでなく簡単にリンク数を稼ぐ展開札でもある。【スネークアイ】を使って召喚権を温存しながら《ハイドラント》に繋げ、妨害を受けたとしても手札の豊富な【R-ACE】モンスター群が《タービュランス》へのアクセスを助ける。後攻で盤面を荒らす性能も《プリベンター》のリンク数を稼ぐ性能が活きる場面である。後述するが《プリベンター》は《ニビル》等の盤面を一掃するカードの被害を最小限に出来たり等、様々な応用に使用出来る。
今シーズンの【R-ACE】については大抵の事が下記の参考資料に記載されているので、【R-ACE】に興味のあるプレイヤーは必読である。
5.2.【R-ACE】の動き
上記の参考文献内で「9パターンの展開を過去に動画で紹介している」とあり、そちらを参照して欲しい。
上記の動画を見れば一発なのだが、一応本記事でも基本中の基本の展開だけ少し紹介する。まずは《エアホイスター》1枚から。
このデッキは《タービュランス》の効果を如何にして通すかが重要である。1枚から《タービュランス》に繋がるカードは覚えておく必要がある。
次は《ディアベルスター》の1枚展開。
《ディアベルスター》は特殊召喚から《タービュランス》まで繋げることが可能であり、強力な初動として活躍出来る。
《リトルナイト》は《タービュランス》の起動効果への《ヴェーラー》《泡影》を防いだり《ニビル》から《タービュランス》を逃がしたりと、様々な運用が可能であり【R-ACE】におけるエースカードの1つである。そのためかつては《タービュランス》へは起動効果にチェーンするのではなく特殊召喚成功時に《ヴェーラー》《泡影》で効果を無効にするのが通説だったが、《咎姫》の登場で変化があった。
どういうことか、先程の《ディアベルスター》の展開を途中から見ていこう。
この様に《泡影》等を受けた《タービュランス》を素材に《咎姫》を出すことで、どの道を通っても《タービュランス》の効果を通す貫通力を身に付けた。前シーズン終盤からはこれに加えて《ポプルス》の登場による《篝火》1枚からの展開が可能となっている。
この盤面なら場に《ハイドラント》が残ることで《CONTAIN》《EXTINGUISH》を強く使える。ただし詳細は5.4.項で後述するが今シーズンは《REINFORCE》の存在から《ALERT》を墓地に残すことが重要な場面も多く、墓地の《リンクリボー》を使って《ハイドラント》を墓地に送り、《タービュランス》のコストで《エアホイスター》と《ハイドラント》の2枚を除外するプレイも少なくなかった。
《エアホイスター》と《ディアベルスター》と《篝火》の3種類の初動について記載したが、《増殖するG》に対する受けだけで考えると
(1)《エアホイスター》初動なら1ドロー
(2)《ディアベルスター》初動なら2ドロー
(3)《篝火》初動なら3ドロー
で《タービュランス》が成立する。そのため先攻展開での初動カードの発動の優先順は《エアホイスター》>《ディアベルスター》>《篝火》が一般的である印象だ。勿論《ヴェーラー》《泡影》へな警戒もあり状況によって使い分けることになるのだが、《G》のドロー枚数は覚えておいて損は無い。
最終盤面は基本的に《リトルナイト》《タービュランス》の形で完結しており、対面する相手や状況によって《アポロウーサ》や《咎姫》からの《アンブロ》を立てる動きを狙うことになる様に見えるのだが、食らうはずのない《ニビル》や《三戦の才》を重く貰うリスクがあるため、十中八九のゲームで《リトルナイト》《タービュランス》の盤面が有効な印象である。そのため先攻展開で《アポロウーサ》等の出番は多くない印象だ。ただし【天盃龍】や【ピュアリィ】といった対面ではそれに限らないケースも多いため、そこは経験値を積みたいところである。
また《超融合》の流行によっては最終盤面に《リトルナイト》と《リンクリボー》を残さない様に②で《リンクリボー》を経由しなかったり、最終盤面の《リトルナイト》と《リンクリボー》で2枚目の《リトルナイト》をリンク召喚する等の動きもあった。《ドロゴン》は天敵であり【R-ACE】が環境に大頭し始めたシーズンには《超融合》が非常に流行した。相手の《超融合》の発動を止めることは難しいが、《超融合》で出てくるモンスターが《ドロゴン》ではなく《ガルーラ》であれば対処が難しくないため、ある程度アドバンテージを無視してでも負け筋を踏まない意識をすることが【R-ACE】の勝率に繋がる。どのみちカードアドバンテージは《タービュランス》が稼ぐ。
先攻展開で《アポロウーサ》の出番は少ないと上述したが、《プリベンター》でリンク数を伸ばすという動き自体は、後攻で《アクセスコード》を出す場面であったり、先攻で相手の《G》を《うらら》で無効にしたあと《サンライトウルフ》で《うらら》を回収する等の動きで有効である。昨今多くの【スネークアイ】ギミックを取り入れたデッキでは《ジーランティス》を使ったキルが流行しているが、【R-ACE】における後攻の《アクセスコード》の5300打点は《タービュランス》の3000打点や《プリベンター》の2800打点と合わせてキルを狙う場面が頻出するため、まだまだ現役である。
5.3.【R-ACE】の構築
【R-ACE】を使用する場合、モンスター群の性能が高いからといって枚数を多く採用すれば強いわけではない。手数としてカウント出来る引き込んだ場合のリソースの役割と、デッキ内に眠らせて息切れしない様に立ち回るデッキ内リソースとしての役割、これらと自分のプレイでどこまでリソースを回せるか判断して枚数を決める。
そういった意味で【R-ACE】の構築はメインギミックの採用カードや採用枚数がプレイヤーや大会傾向によって異なり、どんな構築を参考にすべきか判断が難しい。どんなに強力なカードもダブって引きたくないなら枚数を減らす択がある。例えば《インパルス》は《タービュランス》をリクルート可能である様な強力な効果であっても先攻での動きの阻害にもなる場合等が考えられる。上手く自分のゲームプランと相談したい。
【R-ACE】はテーマ内に専用魔法罠が多種多様に存在し、《タービュランス》の存在からそれらを散らす形で採用する必要がある。これらは初動との重ね引きで妨害を貫通するものもあれば、後攻のゲームで機能しない類のものもあり本当に多種多様である。それぞれのカードの役割を十分に理解しておくだけでも【R-ACE】の勝率に繋がるため、多くの知見を得ておきたい。前シーズンまで《REINFORCE》は《拮抗勝負》への受けの良さからサイドデッキで使われていた印象だが、昨今では【天盃龍】対面での有効なカードとしてメインデッキに採用されるケースも散見される。
また上記の構築例では《デュランダル》と《大聖剣博物館》を採用している。《エアホイスター》《インパルス》のサーチを行えるので、召喚件を強力に使ったり、後攻の捲りの際に《インパルス》のサーチから動くことで自分のターン中の《プリベンター》や《ファイアエンジン》のリクルートを狙えるため、高い捲り性能の期待値が生まれる。これは《EMERGENCY》が規制されたことで薄くなってしまった妨害の受け方の選択肢を増やす意味が強く、全国区で見ると採用率はあまり高くないが【R-ACE】がどんな弱点を持っていて、それをどうやって補うのか、考えを巡らせるには非常に良いカードなので【R-ACE】を触り慣れていないプレイヤーは使ってみると新たな発見があるかも知れない。
【R-ACE】はメインデッキに《一滴》《コズサイ》《超融合》《羽根帚》といった捲り札を採用し易いデッキである。1枚初動のカードが豊富であるため手札誘発を多く積む構築も見られるが、【R-ACE】は初動を引けない事故というよりは初動に妨害を貰ったあとの2手目が少ないことにリスクがあるデッキである。今シーズン流行した《ヴェーラー》《泡影》を多く採用する【粛声】等が「初動が太く手札誘発に対して強い耐性を持つ」様なデッキであるのに対し、【R-ACE】は「初動が細く手札誘発で簡単に止まるものの手数で妨害を押し切りに行ける」タイプのデッキである。メインギミックの厚さで勝負するという一昔前の遊戯王を大事にした戦い方であり、それ故に手札誘発を多く採用する型よりも捲り札を引き込みに行く型の方がトーナメントの入賞は多く見られる印象だ。
捲り札について上述したが、手札誘発と違い後攻のゲームを捲り札で戦う場合、下手に手札誘発を使って自身の手札を減らすことが非常に大きなデメリットになることがある。そのため《ファンタズメイ》の様な数少ない手札誘発や捲り札の引き込みを狙いつつ手札が減らないカードはサイドゲーム等で非常に重宝される。
5.4.【R-ACE】のゲーム構成
【R-ACE】は各カードのスペックの高さからリソースの質が良く、初動が重なれば重なるほど攻め手になる出力の機動性がある。多量の手数を使うことで、先攻なら手札誘発を貫通して強固な盤面を作り、後攻なら相手の先攻盤面を崩すというシンプルな戦いを得意とする。
先攻のゲームでは無駄に《ニビル》等を受けない様に立ち回りながら《タービュランス》の②効果の成立を目指す。《ヴェーラー》《泡影》警戒のため《リトルナイト》を立ててから《タービュランス》を着地させることになるのだが、《ヴェーラー》《泡影》の6枚採用がデフォルトの今シーズンでは2枚引きも想定されるため《EMERGENCY》を手札に残す意識も重要になっている。相手の展開を《CONTAIN》《EXTINGUISH》等で妨害した次の自分のターンは《EMERGENCY》《RESCUE》で稼いだリソースでライフカットを狙うのだが、焦って負け筋を踏むくらいならライフカットを諦めて《タービュランス》で伏せた《CONTAIN》や《EXTINGUISH》といったカードを《ヘッドクオーター》で使い回してアドバンテージを盤石にする方が有効な場面も多い。
また今シーズンは【天盃龍】警戒のため《REINFORCE》を伏せる択が存在する。上述した展開ルートでは《ALERT》を《タービュランス》①効果のコストで除外することになったが、《ハイドラント》が場に存在する状態で《REINFORCE》でセットしすぐ発動すれば《インパルス》を回収して1妨害にできる場面もあり、《ALERT》を墓地に残すことが重要にもなるためプレイが少々難しくなったので注意が必要である。
後攻のゲームでは多量の手数で妨害を踏んで、《リトルナイト》《トロフェニ》《サロス》等の各種リンクモンスターで盤面を荒らし、最後に《アクセスコード》でのキルや、それが難しければ《タービュランス》で盤面に蓋することを狙う。後攻であっても《篝火》によるリンク数のかさ増しや《インパルス》によるリクルートでの盤面の横並びをうまく使えるので、総じて後手の捲り性能は高いデッキである。
サイドゲームの先攻ならやることはあまり変わらないが、《羽根帚》《拮抗勝負》への警戒を強めて《REINFORCE》と《ヘッドクオーター》を大事に使う意識が必要である。後攻の場合は有効な捲り札をしっかりサイドインする必要があるのだが、どちらかと言うとサイドインしたいカードに目移りし過ぎて下手に重要なギミックのカードをサイドアウトし、負け筋を自分で作らない様に注意したい。サイドインするカードよりも、後攻のサイドアウト枠を予めしっかり決めておくことが特に重要である。また、採用できる手札誘発の種類や数が少ないので、発動する対象や順番を決め打ちしてもいい。効果の期待値で考えると「うらら→インパルス→G」の順に使用するのが一般的であるが、例外も多い…というか《三戦の才》を踏んで負け筋を作るくらいなら自分のターンまでガメることも多いので、勝ち筋をしっかりイメージしてゲームすることがとにかく重要である。
5.5.【R-ACE】を使う留意点
まずは覚えておくといい裁定について、
〇《ハイドラント》の①効果が適応されるのは「R-ACEモンスター」が存在する場合であるが、《ポプルス》《炎龍》等の効果で魔法罠ゾーンに存在する「R-ACEモンスター」はモンスターとしては扱わない。
〇【R-ACE】戦士族モンスターの共有②効果はタイミングを逃す効果である。そのため相手がフィールドのモンスター効果が発動したときに直接チェーンすふ必要があり、別のカード効果を挟んでから発動することは出来ない。
〇インパルスの①効果は対象をとらない効果であり、「相手プレイヤーが発動できなくなる」効果である。つまり「他のカードの効果を受けない」カードであっても効果を発動することが出来なくなる。
〇インパルスの①効果は発動した時点で1番攻撃力が高いモンスターに適応される。したがって効果適応後に新しく攻撃力が1番高いモンスターが場に出た場合、その新たに場に出たモンスターは効果を発動できる。
〇場に攻撃力0のモンスターしか存在しない場合でも、インパルスの①効果を発動して1番攻撃力が高いモンスター(この場合は攻撃力が0のモンスター)を選ぶことが出来る。
〇《ヘッドクオーター》の③効果はデッキにカードが存在しない場合には発動できない。
〇《ヘッドクオーター》の③効果に対して相手が《クロウ》や《ケルドウ》を発動して《ヘッドクオーター》の対象になったカードが墓地・除外ゾーンから移動した場合でも、残りのカードをデッキに戻して1枚ドローする処理は行う。(効果処理を行えなくなる《貪欲な壺》等との違いは戻す枚数まで指定されていないことであり、記載が「そのモンスター5体を」ではなく「そのカードを」の様に記載されていることで判別する)
〇《EMERGENCY》や《REINFORCE》に限った話ではないが、墓地に存在する魔法罠カードが効果を発動する場合、速攻魔法やカウンター罠等のカード種類に関係なく魔法カードならスペルスピードは1、罠カードならスペルスピードは2である。
次にプレイについて、
大事なことはこちらの参考資料にほぼ網羅されているので、必読。
…とは言え、参考資料様に任せきりにするのも良くないので本記事でも簡単に触れる。
引用だが【R-ACE】は「初動が細く手札誘発で簡単に止まるものの手数で妨害を押し切りに行ける」タイプのデッキである。後攻のゲームで手数となる《インパルス》や《ファイアエンジン》は相手ターンに考え無しに発動せず、後攻の手数になる場合は《三戦の才》のリスクもあって発動しないこともある。自分のターンに《インパルス》の①起動効果に対して相手がチェーンして効果を発動し、それにチェーンして《インパルス》の②効果…という場面も少なくない。
また【R-ACE】は他の環境に存在するデッキと比べると暴力的なゲーム展開を《タービュランス》に依存している。手札誘発をあまり多く積めないことも首を絞め、《タービュランス》の②効果が成立しなかったときに対戦相手の理不尽なゲームを許してしまい「今のはどうしようもない」という負けゲームを多く抱えがちである。手札の《インパルス》や《ヒータ》の②効果による《ポプルス》のサーチ等、生存性能の高いカードを丁寧に扱うことで、不測の事態が発生したゲームを落とさない様にしたい。
それと【R-ACE】には特有の手札事故も存在する。《タービュランス》の存在から【R-ACE】は《RESCUE》や《CONTAIN》等のR-ACE魔法罠をデッキに多く投入することになるが、これらは基本的に初動にはならないため事故要因でもあり、ゲームを不安定にさる側面もあるので注意が必要である。これらの素引きを嫌ってデッキを太らせる構築も稀に見るが、そういった構築では手数を引き込めずに展開の入り方が細くなって、相手の簡素な妨害に屈するゲームも多く見られる。
その他、サイドゲームでは《羽根帚》《拮抗勝負》に関する受け方のプレイ等があるが、長くなるのでここでは割愛したい。各種参考資料に詳しい記載があるのでそちらを参照して欲しい。
下記の参考資料は【R-ACE】ミラーについての世界一詳しい記載のある記事に思う。深掘りした実践向けのプレイとそ考え方について触れられており、トーナメントを意識するならミラーの機会が無くとも読んで損は無い。
5.6.【R-ACE】対面の意識
【R-ACE】と対面するときのことを考える。
《タービュランス》を止めるのは勿論であるが、上述した様に【R-ACE】は「初動が細く手札誘発で簡単に止まるものの手数で妨害を押し切りに行ける」タイプのデッキである。手札誘発が2枚重なってくれた場合、打ちどころを間違えなければ《タービュランス》までの展開を止めることが出来る場合が多く、相手の手数を上手く見切って誘発を当てたい。《ヴェーラー》《泡影》については1枚では《タービュランス》を止めるのは絶望的だが、2枚重なったとき《リトルナイト》と《タービュランス》の盤面になってから連打出来るので、誘発の打ちどころが分かり易い。
手札誘発は基本的に《ポプルス》や《エアホイスター》等の初動に連打するイメージが有効だが、いくら連打しても手札誘発の枚数が相手の手数より少ない場合は《タービュランス》まで繋げてくるので手札誘発に依存し過ぎないこと。《タービュランス》の効果が通ってしまった場合の立ち回りも重要である。
《タービュランス》の効果が成立してしまうと伏せた4枚のカードを1枚1枚丁寧に踏んでいく必要があり、《リトルナイト》は2つの効果で《CONTAIN》《EXTINGUISH》の両方を上手く踏める可能性があり重宝する。《EMERGENCY》等で《ハイドラント》を供給されると《CONTAIN》《EXTINGUISH》の追加効果(ハイドラントボーナス)により重く打たれる可能性があるため、対象不在で避けることが出来るならそれに越したことはない。【R-ACE】のギミックの妨害は《プリベンター》と《CONTAIN》と《EXTINGUISH》の3つで、これに《タービュランス》の③効果を含めた4つである。これらを上手く無駄打ちさせることが出来れば非常に優位なゲームを作れる。
【R-ACE】は《CONTAIN》《EXTINGUISH》の供給があるため妨害性能に目が向きがちだが《インパルス》からの《ファイアエンジン》をはじめとした2000クラスの打点の横並びによる生存性能も非常に厄介である。それ故に《ヘッドクオーター》による《タービュランス》の効果のサイクルを止めることが難しいゲームでは厳しいゲームとなるため、恒久的な妨害を予め採用しておくか、速攻で8000削って終わらせるゲームプラン・キルイメージを用意しておくべき。《羽根帚》等のAoEは一見すると有効に見えるが、相手が稼いだアドバンテージをプラマイゼロにするだけで、こちらがプラスになるわけではないので注意。それと構築の時点で《REINFORCE!》後の《R-ACEタービュランス》を超える手段を準備しておくこと。《サンボル》は極論であるが、テーマ内の除去罠等を後攻用のカードをサイドインするためにサイドアウトしてしまうことで、《REINFORCE》を越えられないゲームを作るのは避けたい。【R-ACE】との対面では魔法罠でのモンスター除去手段はサイドアウトしない様に注意したい。
5.7.【R-ACE】の変遷
当初注目されていなかった【R-ACE】が環境に顔を出す様になったのは《プリベンター》《EMERGENCY》がDUNEで新規で登場してからである。
《EMERGENCY》は《タービュランス》の効果に対する《泡影》をサクリファイスエスケープ出来ることで注目を集めた。流行していた《障壁》に対して強い立ち位置であったことも功を奏している。その後《タービュランス》の驚異が広く認知され、如何にして《タービュランス》の効果を通すかが研究された。
様々なプランが起案されたが、最も流行したのは《ディアベルスター》で安定性を上げつつ《プリベンター》と《バリケイドベルグ》からの《ラドン》を使ったシンクロ召喚を使用する展開である。これによる《サベージ》の成立は《羽根帚》等のサイドカードに対し強く動けるため流行した。
現在はオーバーパワーな展開ではなく、負け筋となる《ニビル》や《G》を重く貰わないこと、手札誘発の重ね引きに対してもある程度耐性があることから《篝火》《ポプルス》を採用して《リトルナイト》を上手く運用する型に落ち着いた。
5.8.【R-ACE】の参考資料
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
こちらは前々期の記事ではあるが【R-ACE】について基本的な内容から十分な考察まで記載されており必読。ナイショ。
こちらは前期の記事だが、実績のあるプレイヤー様が『罪宝』ギミックについて分かり易く解説している。
また記事の執筆が遅くなったことで、202404シーズンの【R-ACE】についてのたけっしー氏の解説動画が既に公開されている。
6.【ふわんだりぃず】
【ふわんだりぃず】は【スネークアイ】の流行により《アトラク》等の除外ギミック、《咎姫》のすり抜け等が評価され、シーズンの前半に主にランキングデュエル等のスモールスケールのトーナメントで多くの入賞報告があった。
6.1.【ふわんだりぃず】の特徴
【ふわんだりぃず】は2021年のBODEで発売し2年以上前に発売した、少し古めのテーマである。特異な特徴を有するテーマであることから認知度も高く、好んで使うプレイヤーも多い。
周知と思うので今更ではあるが、まず大きな特徴はカード効果による通常召喚を使った展開を行うデッキであることが挙げられる。特殊召喚を行わず《G》によるドローを許さないデッキは数あれど、特殊召喚を介さず『展開』を行えるデッキは稀有である。
そして墓地をほとんど利用しないことから除外ギミックをメインデッキから採用出来る。今シーズンに【ふわんだりぃず】が広く使われたのは【炎王スネークアイ】等の流行りのデッキに除外ギミックが有効だったところが1つの理由となる。
除外ギミックをメインデッキから採用出来るテーマは【エクソシスター】【霊獣】を筆頭に【ピュアリィ】【相剣】等が挙げられるが、環境としての立ち位置を得ているのはこの【ふわんだりぃず】である。何故そうなったのか等、その辺の話は【ふわんだりぃず】というデッキ単体の特徴という話から少々脱線するので本記事では割愛するが、興味があれば参考資料に詳しい記載があるのでそちらを見てみて欲しい。
特異な特徴は上記の点だが、今でこそ珍しくない【ふわんだりぃず】の特徴として挙げられるのは《えんぺん》と《夢の町》を同時に構えることでモンスターゾーンと魔法罠ゾーン両方に妨害を構える強固さを有する点である。《謎の地図》《夢の町》は発売当初は『相手のターンに展開をする』という近代遊戯王の先駆けとなる効果を有している部分でも注目され、この「モンスターゾーンと魔法罠ゾーン両方に妨害を構える」という視点の有無が、強い【ふわんだりぃず】と弱い【ふわんだりぃず】の違いでもある。
6.2.【ふわんだりぃず】の動き
【ふわんだりぃず】の動作は簡素であるものの掘り下げると複雑な動きをしている面が多い。
先に注意点として、本記事では展開ルートの記載にあたり、付番の区切り(①、②等)を一連のチェーンブロック及び誘発効果の使用が終了する度に区切る仕様を採用している。が【ふわんだりぃず】に関しては、動き出してから展開が終了するまでをほぼ全ての動作を一連のチェーンブロック及び誘発効果でほとんど完結させるため、本項に限り展開ルート記載時の付番の区切り(①、②等)をチェーンブロック解決毎とする。
まずは基本の《ろびーな》1枚の展開から見ていく。
【ふわんだりぃず】には数多の展開ルートがあるが、基本的な目指す盤面は上記の《えんぺん》と《夢の町》の2枚を抱えつつ、手札と除外ゾーンに下級ふわんだりぃずモンスターを準備する盤面である。《ろびーな》は1枚でこれらの条件を満たせるため優秀な初動である。除外ゾーンにも下級ふわんだりぃずモンスターを準備する理由は後述する。
ここで《ろびーな》と《謎の地図》について見ていく。
《謎の地図》は【ふわんだりぃず】において、自分の召喚権を増やす手数であもあり、相手の通常召喚に反応する妨害でもあるデッキの中枢となる重要なカードの1つである。このカードと先程の1枚初動だった《ろびーな》を同時に引いた場合、どの様な動きになるかというと、
お分かり頂けるだろうか?《ろびーな》1枚初動のときと《謎の地図》の有無以外大きく変わらないのである。
ここで注目したいのは《うらら》を打たれる場合である。《ろびーな》1枚から展開する場合、1枚初動を止められる形になるため重く受ける。《謎の地図》を引いていたときも上記展開④で《いぐるん》に《うらら》を打たれると展開が止まってしまう。
ここからがポイントで《いぐるん》と《謎の地図》を同時に引いたときの動きを見ていこう。
上記展開の様に除外ゾーンの下級ふわんだりぃずモンスターの③効果をチェーン2以降に発動することでチェーン1の効果に対し相手に《うらら》を打たせないというプレイが可能である。これはそのために《黄金櫃》が採用されることもあるくらい非常に重要なプレイで、上記展開の場合④で《うらら》を打たれても召喚権が残っているため《えんぺん》のアドバンス召喚から展開を継続し最終盤面まで到達出来る。
《ろびーな》は1枚で初動になる点で《いぐるん》より秀でているが《いぐるん》は《謎の地図》と同時に引いたとき《うらら》をケアして展開が出来る点で《ろびーな》より秀でていると言える。先程から展開後の盤面では除外ゾーンに下級ふわんだりぃずモンスターを残していた。この理由は上記の様に「チェーン1でサーチ効果、チェーン2以降で下級ふわんだりぃずの③効果」というチェーンブロックの組み方をすることで《うらら》を打たせるタイミングを無くすのが目的である。
そんな【ふわんだりぃず】だが、除外されている下級ふわんだりぃずモンスターの③効果をチェーン1で発動する場面もある。《とっかん》と《謎の地図》からの展開を見てみよう。
上記の様に《とっかん》の効果を無効にされても《ろびーな》を手札に加えるために、チェーン1で《ろびーな》の効果を発動する形でチェーンブロックを組むことがある。相手からの妨害の受け方を考慮した展開パターンを頭に叩き込んでおくといい。
ちなみに《ろびーな》と《謎の地図》からの展開を上述したが、実戦では《うらら》を割り切る展開として《謎の地図》で《えんぺん》を除外する展開を行うのが自然な印象である。
この展開も相手のターンに《夢の町》から《ろびーな》と《いぐるん》を経由して最上級モンスターのアドバンス召喚を狙うのだが、相手に《謎の地図》から通常召喚した《ろびーな》への《うらら》を強要しつつデッキ内の下級ふわんだりぃずモンスターの純度を高く維持する意味がある。
基本展開については以上になるが、その他にも《えんぺん》がターン1でないことから《とっかん》で1ターンに使い回して2回効果を発動させたり、様々な応用展開が存在する。ここでは非常に重要なプレイとして【ふわんだりぃず】特有の《アトラク》の使い方に触れる。
《アトラク》は1度通れば多くのデッキにターンスキップレベルの拘束を強いる強力な手札誘発である。一般に《アトラク》はその発動条件から1ゲーム中に複数回使用することはほとんど無いのだが【ふわんだりぃず】はこれを使い回す動きが可能である。以下にその動きの例を示す。
次のターンに《アトラク》をドローすることになるので、そのまますぐに発動すれば墓地にカードが置かれるタイミングも無いため、毎ターン《アトラク》の発動が成立する。あとは手札と除外ゾーンの《ろびーな》と《いぐるん》で攻めればいい。場に《ライザー》の効果対象のカードを供給出来たり《謎の地図》を引けたりしていれば、上記展開例に加えて盤面形成や《ライザー》のセルフバウンスも狙える。
上記はあくまで一例だが《ライザー》を使うことでターンスキップ級のパワーカードを毎ターン使い回せるのも【ふわんだりぃず】の魅力である。
6.3.【ふわんだりぃず】の構築
【ふわんだりぃず】はただでさえ初動が少なく手札事故が起こり易いデッキなのだが《ふわんだりぃず×えんぺん》を初めとした最上級モンスターを複数枚デッキに入れる必要があり、構築難易度はわりと高い。
最上級モンスターの採用枚数について、202401環境では4枚の採用が多い。基本盤面の《えんぺん》と後攻で盤面に触れたり《アトラク》の使い回し等を狙える《ライザー》、《えんぺん》が有効でない場面や単純に相手のパワーカードを止める等で役割が多い《巨神鳥》の3種類が主な選択肢であり、この中からゲーム中に裏側除外等で欠損した場合に備える形で1種類を1枚増やして4枚体勢となる印象だ。202210環境あたりまでは2,3枚しか採用しない型もあった。これについては別項で少し触れる。
《未知の風》は手札事故が起き易い【ふわんだりぃず】の数少ないドロー効果を有するカードであり、相手の盤面のモンスターをアドバンス召喚のためのリリースにも使える強力なカードである。前シーズンまでは広く採用されていたが、今シーズンではドロー効果の使いにくさや、相手の場のモンスターをリリースすることにあまり意味が無かったりと、姿を消す場面が増えている。
以前は《トップ・シェア》で自身のデッキトップに初動を置いて《成金》でドローする型から、《トップ・シェア》を抜いて1ターンあたりのデッキの圧縮数を伸ばすため《未知の風》によるドローや《チキンレース》等を採用、噛み合いの悪い《強金》を抜く様な構築も見られた。が、上述した《未知の風》の不採用や、環境に分布するデッキに手札誘発の採用を強いられる側面等を理由に姿を消している。
では昨今採用されているカードは何なのか?というと、上述の通り【ふわんだりぃず】は手札事故が起こり易いデッキである。そのためフリースロットの考え方はドローソースやターンスキップといったカードが多くを占める。手札誘発や捲り札を採用する場合、環境に刺さる刺さらない等だけではなくサイドチェンジ等を十分な考察の上で採用することが他デッキより大きな意味を持つ。上記構築例では《無限泡影》が3枚採用されているが、上述した構築者様の参考資料に詳しい思考内容が記載されているので参考にして欲しい。
フリースロットの考え方はドローソースやターンスキップといったカードが多くを占める…と記載したが、サイドチェンジも主にフリースロットのカードとのスイッチとなるため、サイドデッキに入るカードの傾向も同様である。《羽根吹雪》は多くの対面にターンスキップを強要する上、フリーチェーンで通りが非常に良く《ライザー》で使い回しが可能であるため、多くの構築でサイドデッキに採用される。後攻を想定したカードも極端なものが多く《結界波》や《拮抗勝負》が多い印象だ。
EXデッキのカードも他デッキと比べて使用頻度は少ないが、出番は決してゼロではない。《バグースカ》や《ボーダー》《御前試合》を突破する等、メインギミックでは手が届かない範囲の仕事をこなす。相手のターンに《夢の町》で下級ふわんだりぃずモンスターを横に並べ、返ってきたターンで《ナイチンゲール》からの《アーゼウス》や《サロス》の着地を狙う等の場面が考えられる。昨今の【天盃龍】との対面を考えると《ナイチンゲール》の存在感は大きい。参考資料のリンク先で《金謙》の除外選択肢等にも触れているので参考にして欲しい。
6.4.【ふわんだりぃず】のゲーム構成
【ふわんだりぃず】は手数も初動も少ないデッキであるため、相手の妨害を1つずつ踏んで展開を伸ばす…といった動きはほとんど不可能であり、極力相手の妨害を踏まない様に立ち回る。そのため、相手に展開を許して妨害を複数準備されると途端にゲームが難しくなることから、他のデッキよりも比較的先攻でのゲームに特化していると言える。
《謎の地図》は上述の通り自分のターンには手数になるし、相手のターンには妨害にもなるため【ふわんだりぃず】のパワーを総合的に底上げする優秀なカードである。可能な限りゲームに絡めたい。6.2.項で記載したが【ふわんだりぃず】は先攻で《えんぺん》と《夢の町》の盤面を構えることを狙うのだが、ここに《謎の地図》も備われば相手ターンに2回の召喚を狙えるため《ライザー》や《巨神鳥》のセルフバウンスが非常に意味を持つ。
《えんぺん》はリンクモンスター主体のデッキに対して強力なものの《泡影》で簡単に無効になる等過信出来ず、結局のところ盤面の妨害性能はそこまで高くない。【ふわんだりぃず】の妨害性能は少々除外ギミックに依存している面がある。《金謙》と《強謙》でデッキの上から合計9枚を探しに行くことも出来るので、制圧力の高い永続札を積極的に使用したい。
【ふわんだりぃず】はリソースが除外ゾーンと手札を恒久的にループするため、1度展開が通ってしまえばリソース不足に悩まされることは少ない。《とっかん》で《夢の町》を使い回す動きがメインギミックのベースとなり、短期でライフカットするゲームよりはロングゲームの方が得意である…のだが、それはあくまでデッキのパワーに大きく差がない場合の話である。実戦では《裂け目》等を破壊するカードを相手に引かれないうちにゲームを終わらせたい場面が多く、のんびりロングゲームしている暇はほとんど無い。
サイドゲームで先攻後攻の選択権がある場合、多くの場面では先攻を選択し、初動となる下級ふわんだりぃずモンスターや除外ギミックを引き込むのは勿論のこと《羽根吹雪》等の相手にターンスキップを押し付けるサイドカードを引きに行くゲームとなる。そのためサイドチェンジ後のデッキ内のドローソースの密度も重要となり、構築の練度が試されることになる。実績のある構築のサイドイン・サイドアウトの基準等を是非参考にしたい。
そして【ふわんだりぃず】は前述の通り後攻のゲームが非常に苦手である。相手に選択権のあるゲームで後攻のゲームを想定し《アトラク》《結界波》といった自由度が低いもののパワーの高いカードを要所に合わせてサイドインすることが多い。が、そういった後攻のパワーカードを使用してゲームを制する根幹にあるのは、あくまで相手の完成盤面に対して【ふわんだりぃず】のギミックを上手く使ってゲームを返す構図である。パワーのある後攻カードを引き込みつつ、妨害をすり抜けながら【ふわんだりぃず】ギミックを間違いなくプレイすることが求められる難しいゲームになるため、相手の使用するデッキの理解等、多くの経験値が必要になる。
今シーズンは【神碑】や【粛声】等の対面に有効だとして《最終戦争》をサイドデッキに採用した構築も見られた。手札にリソースを抱えられる【ふわんだりぃず】特有の着眼点だと言える。
6.5.【ふわんだりぃず】を使う留意点
覚えておくべき裁定について、
◯まずば基礎的なルールの確認。
ふわんだりぃずモンスターの「この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない」は効果外テキストに該当する誓約効果である。そのため《スキルドレイン》等で無効にはならない。《神宣》や《昇天の黒角笛》等でモンスターの特殊召喚が無効になった場合、または《ワン・フォー・ワン》が《うらら》等で「特殊召喚するカードの効果が無効」になった場合でも、そのターンふわんだりぃずモンスターの効果を発動出来る。ただしモンスターの特殊召喚を1度でも行ったターンにはふわんだりぃずモンスターの効果は発動出来ず、ふわんだりぃずモンスターの効果が《ヴェーラー》等で無効になった場合はそのターンモンスターの特殊召喚は出来ない。
◯ふわんだりぃずモンスターは裏側で破壊された場合墓地に送られる。ただし裏側表示のふわんだりぃずモンスターが戦闘を行った場合、ダメージステップに表側になるため戦闘破壊されたふわんだりぃずモンスターは除外される。
◯《ブラック・ガーデン》等は「そのコントローラーは○◯を特殊召喚する」というテキストの記載がされている。そのため、この処理は相手のカードの効果で自分が特殊召喚を行うことになり《ブラック・ガーデン》の効果が適応されている状態ではふわんだりぃずモンスターの効果を発動出来ない。
◯ふわんだりぃずモンスターの「表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される」効果は効果外テキストのルール効果として表側で除外する処理を行う。そのため《トロイメア・ユニコーン》等のカードでデッキバウンスされたり《拮抗勝負》等のカードで裏側で除外したりする効果を受けても、表側表示のふわんだりぃずモンスターは表側で除外する処理を行う。
◯《ロンギヌス》等が適応されカードを除外出来ない場合、墓地に送られるふわんだりぃずモンスターは②の効果を適応出来ず、通常通り墓地に送られる。
◯《未知の風》の①の効果をそのまま記載すると「モンスター2体をリリースせずに自分フィールドのモンスター1体と相手フィールドのカード1枚を墓地へ送ってアドバンス召喚できる」となっており、墓地へ送るカードはリリースするわけではなく、対象をとらない墓地へ送る効果である。そのため《ホルスの黒炎竜 LV6》等の魔法カードの効果を受けないモンスターには適応出来ず《召喚僧サモンプリースト》の様なリリース出来ないモンスターには適応出来る。
◯《未知の風》の①の効果はリリースではなく効果による墓地送りによってアドバンス召喚する。そのため風属性モンスターを墓地へ送った場合でも《ライザー》の「風属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合」は適応されない。
◯《未知の風》の①の効果はカードの効果による墓地送りに該当するため『シャドール』モンスターや《やぶ蛇》は効果を適応出来る。
◯「風属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合」の追加効果は水属性の《ろびーな》と風属性の《いぐるん》をリリースした場合等、風属性モンスターを含んでさえいれば適応出来る。
◯風属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功して「デッキの一番上に戻す」の効果を使った場合、「フィールドのカード1枚を対象として持ち主の手札に戻す事ができる」の効果の対象は「デッキの一番上に戻す」効果の対象のカードとは別のカードを対象に選択する必要がある。
◯風属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、「デッキの一番上に戻す」の効果は使わずに「フィールドのカード1枚を対象として持ち主の手札に戻す事ができる」の追加効果だけを使用することも可能。
次にプレイについて、
《旅じたく》は今シーズン流行の《ヴェーラー》《泡影》を受け流す用途で知られるが、対面次第では《LL-プロム・スラッシュ》等と組み合わせて《スキルドレイン》を破壊したり《ドロバ》 の受けとして使ったりと用途は幅広い。基本的ではあるが《ドロバ》の受けは【天盃龍】の流行が影響し《うさぎ》が増えたこともあり《裂け目》等の除外ギミックで内包することも多い。下級ふわんだりぃずを通常召喚する前に自分のメインフェイズ1開始時に《アトラク》を使用する場面も少なくない。
《謎の地図》で《えんぺん》を除外し《とっかん》で回収する、という動きで《いぐるん》を介さず最上級モンスターにアクセス可能で、《うらら》をケアした最上級モンスターへのアクセス方法は重要な選択肢の1つである。《すとりー》を使って自分の墓地の《旅じたく》等の強力なカードを除外する選択肢を頭に入れておくのも大切であり、総じて《とっかん》も非常に多くの仕事をこなす強力なカードである。
【ふわんだりぃず】は先攻の盤面が単調である。サイドゲームからは相手の《ロンギヌス》や《拮抗勝負》等のサイドカードを警戒したゲームをすることになる。【炎王】【神碑】の流行から《コズサイ》の採用率が増えていることもあり《夢の町》を守るために手札の不要な魔法罠をブラフとしてセットするのも1つの戦術である。《羽根帚》等の裏目も多いが、そういった選択肢もあることを頭の片隅に入れておきたい。
6.6.【ふわんだりぃず】対面の意識
【ふわんだりぃず】と対面するときのことを考える。
【ふわんだりぃず】が今シーズン強力な立ち位置となった理由の1つに「手札誘発で下級ふわんだりぃずモンスターからの展開が止まったとしても、キルさえされなければ除外ゾーンの下級ふわんだりぃずが帰ってくる」という部分が大きく関わっている。
例えば、相手の《ろびーな》の効果を《ヴェーラー》で止めたとして、次の自分のターンの展開を相手の手札誘発で弱化されてしまった場合、相手の次のターンは下級ふわんだりぃずの①効果にチェーンして前のターンの《ろびーな》の③効果が乗ってくる。単純な話、この「毎ターン初動のバリューが増える」という性質が、こちらに毎ターン初動を確実に止めなければならないというプレッシャーをかけてくる。互いのデッキが互いに妨害を打ち合い消耗戦になったとき、一般のデッキは相手より先に動けた場合には、次の相手の初動を止める妨害を無理にでも準備出来れば1:1の交換が可能なので問題ない。が、【ふわんだりぃず】との対面ではそうはいかず、単体除去という要素が機能しない。これが昨今の手札誘発の流行と相まって、「自分のターンに強力な展開が出来ない」という場面を妥協出来ないまでに弱くしている。
加えて《ライザー》によるドローロックや《アトラク》《羽根吹雪》の使い回しが意味するのは「こちらにまともにゲームをさせないこと」である。【ふわんだりぃず】は一見すると《ヴェーラー》《泡影》で展開が止まるため無効系の手札誘発に弱い様に見えるが、下手に自分の手札を減らしてしまうと少ないリソースでその後のゲームを続けることを相手に強要されてしまう。かといって相手の展開を許す訳にもいかず、メタしているつもりがじり貧のゲームを自ら作る…なんてことになる可能性もある。《G》が腐ることや『除外ギミック』に目が行きがちだが、この恒久的なリソースによる消耗戦への異常なまでの適性に目を向けなければ【ふわんだりぃず】対面の勝率は上がらない。【ふわんだりぃず】対面で考えるべきは「手札誘発をどこに打てばいい?」ではなく「手札誘発を打ったあと何をしたらいい?」である。そもそも今シーズン環境に居る様なデッキはどこに手札誘発を打っても貫通される可能性もあるし止まる可能性もある。相手の手札に依存するより、自分の盤面でケアする方が誠実である。
上述の通り【ふわんだりぃず】は手数が少ないデッキである。①通常の召喚権②《謎の地図》による召喚権、の2つを確実に止めに行く妨害を準備することがマストなのである。たとえ《G》を相手に通してしまい大幅なドローを許した場面でも、返しのターンに相手の攻め手はその2つしか無い。誘発をケアして盤面とアドバンテージを大事に動くより、捲り札に警戒しながらガチガチに固い盤面を相手に押し付ける方が【ふわんだりぃず】対面では有効なことも少なくない。最低限、上記の①と②を止める盤面は作る意識を持ち、どのカードで①を止める、どのカードで②を止める…までイメージしておきたい。もし妨害を準備するのが難しいなら、いっそ《G》をツッパしてキルを狙うのもいい。《アトラク》の採用の関係で、こちらのキルを止める手札誘発の割合もデッキ内では薄いことが予想される。
相手に先攻展開を許す場面でも、例えば《夢の町》をスタンバイフェイズに《コズサイ》で撃ち抜いたり、《泡影》で《えんぺん》を無効にすれば、ある程度自由に自分のターンに立ち回れる。《羽根吹雪》が厄介なので《リブート》の採用も良い。この様に先攻盤面をイメージし易いのも【ふわんだりぃず】の弱点である。具体性のある勝ち筋をデッキビルドの時点で準備しておけば、たとえ相手にフルパワーの先攻展開をされたとしても戦い方は残されるだろう。有効なメタカードをサイドインするというより、どういった流れで勝利するのか具体的にイメージし、そこからメタカードを選定したい。
6.7.【ふわんだりぃず】の変遷
【ふわんだりぃず】が登場したBODEが発売された2021年7月は【電脳堺】が《V.F.D.》を使って環境を先導していたが【鉄獣戦線】【シャドール】【プランキッズ】等が力を付けていた時代である。発売当初注目されたのは【ふわんだりぃず】ではなく【相剣】であり、【ふわんだりぃず】は環境でちらほらと見かけるが、デッキパワーの評価はそこまで高くなかった。
【ふわんだりぃず】が大きく強化されたのは《旅じたく》が登場し《謎の地図》のサーチだけでなく、各種手札誘発への受けも広がったところが大きい。まさに救済を得た【ふわんだりぃず】は環境で活躍を見せるが、その後【烙印】【天威勇者】【エルドリッチ】にパワーで圧され、更にその後は【スプライト】が環境で力を持つことで姿を消すことになった。
ところが、どういうわけか半年後に【イシズティアラメンツ】の流行により『除外ギミック』に注目が集まる。その需要の急増から【ふわんだりぃず】にも手を伸ばすユーザーが現れ、特に《烈風の結界像》は《ろびーな》でサーチ可能な上、当時の環境を牛耳っていた多くのデッキの展開を硬直させることが可能であり【ふわんだりぃず】では必須レベルで使用された。また《古尖兵ケルベク》等で《ライザー》が墓地へ送られることが負け筋になったため、この時期から《ライザー》を2,3枚採用する構築が全国的に知られる様になった。
その後【ふわんだりぃず】はまたしても他の環境デッキにパワーで圧され、姿を潜めつつも環境下位の立ち位置を大事に立ち回り、【クシャトリラ】【ティアラメンツ】が流行した2023年1月に依然として強力だった《烈風の結界像》は禁止カードとなる。その1年後の今シーズン【炎王スネークアイ】等の流行により『除外ギミック』がまた注目を浴び、【ふわんだりぃず】が誇る恒久的なリソースと【スネークアイ】の流行による手札誘発の環境形成が【ふわんだりぃず】にまた活躍する舞台を与える形になった。
6.8.【ふわんだりぃず】の参考資料
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
かなり過去の記事だが【ふわんだりぃず】の基礎や要点が分かり易く紹介されており、【ふわんだりぃず】プレイヤーは必読。
上記記事のプレイヤー様は【ふわんだりぃず】で比較的最近の前シーズンでも結果を残し、noteの記事や動画でデッキ等を解説している。
こちらも過去の記事だが、【ふわんだりぃず】の基礎や要点を分かり易く詳細に紹介している。こちらの記事も【ふわんだりぃず】プレイヤーは必読。
7.【幻奏】
【幻奏】はペンデュラムモンスターを使用した大量展開を得意とするデッキで、10年の時を経て環境デッキに成り上がった珍しいデッキである。
7.1.【幻奏】の特徴
【幻奏】は2014年にDUEAで登場した光属性天使族のカテゴリで『遊☆戯☆王ARC-V』のヒロインキャラが使用していたカード郡である。
『ペンデュラム召喚』が主体のアニメ作品でありながらストーリーの都合上ヒロインは一切それらを作品内で使わなかったため、長らく『ペンデュラム召喚』とは縁の無いテーマであったが、アニメもとっくの昔に放送終了した2024年にLEDEで強化され、念願の『ペンデュラム召喚』をテーマ内に取り入れるに至った。カテゴリ登場から実に10年後のことである。その新規カードの性能が非常に高く、立ち位置の良さもあって環境入りすることになった。
基本的には大抵の手札誘発を貫通可能な、手数の多い大量展開デッキという認識で間違いないが、最大の特徴は環境にヒットした優秀な切り札のモンスター郡である。
《シューベルト》は【炎王】【スネークアイ】【粛声】等の墓地利用をシャットアウトすることから環境に存在するデッキに対して非常に相性の良い効果を持つ。
《エトワール》はフリーチェーンで自身を盤面から逃がせるため非常に場持ちが良く、昨今の【スネークアイ】【R-ACE】の対策となる対象耐性の流行のおかげで『対象をとらないバウンス』効果が、攻め手の切り口になり易い傾向にある。
そしてこの《アリア》こそが【幻奏】を象徴するモンスターであり、場の幻奏モンスターに対象耐性と戦闘破壊耐性を付与する効果を持つ。これに加えて、
《エレジー》による効果破壊耐性を付与すれば、【炎王】対面等ではとんでもなく強固な壁となる盤面を形成することが出来るのである。
この様に強力な耐性付与と墓地メタがテーマ内に存在するということが、環境での非常に良い立ち位置を作り上げている。
ペンデュラムを盛り込んだデッキでありながら【スネークアイ】の《炎龍》によるPゾーンの占拠で展開が崩れないのも特徴であり、類似した『ペンデュラム』系展開デッキとは差別化が出来る。
属性及び種族が統一されていることから、そういった面での強力なカードを採用出来ることも魅力だ。《群雄割拠》等を採用することも可能で《朱光》は手札誘発としてだけでなく《G》や《ニビル》を無効にする役目も期待される。
ここまで【幻奏】のエースモンスター群を紹介したが、非常に良い環境での立ち位置ではあるもののパワーは決して高くないことが分かると思う。そのためシーズン後半には【覇王魔術師】と混合させて爆発的なデッキパワーを得た形のものが流行する。【幻奏】の展開力から展開した先の選択肢を【覇王魔術師】の万能な効果のモンスターに置き換えたイメージである。本記事では【幻奏覇王】については割愛するため、興味があれば以下の参考資料を読んで欲しい。
7.2.【幻奏】の動き
本記事ではあくまで純構築の【幻奏】の展開を見ていく。何故なら純構築だけでもとんでもないボリュームだからだ。まずは《ルフラン》1枚初動の展開から。
このとき《ハーモニスト》での特殊召喚を《クープレ》ではなく《エレジー》にすれば《シューベルト》の代わりに《エレジー》を残せる。
また《ルフラン》の通常召喚ではなく《第一楽章》で《ルフラン》を特殊召喚して展開していた場合、召喚権が残っているため⑥のとき《フランソワ》の効果で《アリア》を回収したあと下記のルートに移行可能。
更に、例えば手札に《ソナタ》や《カノン》等、他に幻奏モンスターが供給出来るなら、《エトワール》の先出しで《ニビル》を警戒して動ける。
他にも様々な組み合わせで《ニビル》の被害を抑える展開が可能であるが、際限が無いので割愛する。
そして【幻奏】で最もパワーのある初動となるのが《オスティナート》である。《オスティナート》は1枚で5回目の特殊召喚を《エトワール》に出来る上、最終盤面も非常に強力である。
この《オスティナート》での展開も《ソナタ》や《ソプラノ》が手札にあれば、より妨害数をかさ増しした展開が可能となる。本展開ははくや氏がX(旧Twitter)で展開を動画にしているたて、文字を追うのが大変ならそちらが参考になる。
この様に、相手が手札誘発を打ってこなかった場合は《ハーモニスト》を経由する必要が無くなり、特殊召喚出来るモンスターの制限を気にせず多様なモンスターを盤面に出すことも出来る。
妨害数で考えれば可能な限りは《ハーモニスト》を使わずに展開したい。
7.3.【幻奏】の構築
メインデッキのうち【幻奏】のギミックは19~23枚の枠を占めている。大量展開で場を制圧するデッキでありながら、デッキに多量のフリースロットを有する珍しいデッキである。今シーズンは環境に分布する多くのデッキが捲り札に対して高い耐性があり、手札誘発を多く採用する傾向があることからフリー枠は13~16枚を手札誘発にする構築が広く使われる印象である。
《エレジー》は強固な耐性付与効果を有しており【炎王】に対して非常に有効なものの、素引きしたときに展開に絡めるのが非常に難しく、加えて《アリア》の付与する耐性のみでも十分戦える場面が多いことから不採用も珍しくない。シーズン初頭は【炎王】対策のため採用されていたが、シーズン中期以降は最終盤面の強固さよりもメインのスロットを1つ空けて手札誘発を1枚でも多く採用する形がトーナメントでは多く見られた。
《ハーモニスト》の存在はデッキの手札誘発の受けを向上している。しかし誓約効果の影響が展開の多様性を狭めるデメリットがあるため《ハーモニスト》の使用を前提としたスキームを組み込む場合はEXデッキから使用するモンスターの選択肢が非常に少なくなる。そこに注目し、大量展開を得意とするデッキでありながら《強金》を採用する構築も珍しくない。
上述の通りフリースロットの多さから多様な手札誘発を採用出来る【幻奏】だが不用意に採用出来ない手札誘発が存在する。【幻奏】の初動となる《オスティナート》《第一楽章》は場にモンスターが存在すると使用出来ない。そのため《ニビル》や《ファンタズメイ》は後先考えず使用すると自分の攻め手を失くしてしまう可能性がある。
特に《ニビル》は重く受ける可能性がある手札誘発でもあるため《抹殺の指名者》のためにも本来は採用したいところである。が、上述の理由を重要視して《カイコロ》等のカードをサイドインすることで対策することもある。この方法ならば《エトワール》の①効果で場のモンスターを能動的に減らすことも可能で、盤面のリソースと《カイコロ》による相手の拘束を両立することも可能である。とは言えシーズンが進むとデッキ内に初動にならないカードが増えること等から不採用になりがちな印象である。
7.4.【幻奏】のゲーム構成
先攻のゲームは多くの展開系デッキと呼ばれるデッキと同じく【幻奏】も手札誘発を貫通して盤面形成することになる。
後攻でのゲームも相手の妨害札を貫通して盤面に高打点の融合モンスターを並べてからの《ソナタ》等のパンプアップを介した殴り合いを得意とする。
と言うのも【幻奏】は妨害を貫通していくだけの手数はあるものの、盤面を除去する効果・性能は《エトワール》によるバウンスと打点上昇からの戦闘に依存しているテーマである。器用貧乏と言えばそうだが、元々盤面に干渉出来るカードが存在しなかったので《エトワール》を貰えただけ儲けものくらいに考えていい。とにかく《エトワール》は先攻の妨害も後攻の除去にも使うことになる。
妨害の貫通手段についてだが【幻奏】の攻め手には概ね順番がある。簡易的な図にしたのが上の図だ。
展開の起点を使用順にまとめると、
(1)《オスティナート》《第一楽章》
(2)《ルフラン》
(3)《ハーモニスト》
の3段構えの順番で妨害貫通した展開が【幻奏】の展開の基本となる。
いざ展開に入った場合、動作を支えるのは《バッハ》である。幻奏のリクルート効果と蘇生効果を両方持つリソースの塊である。《オスティナート》と並んで【幻奏】で最も強烈な効果と言っても過言ではない。上述した展開の起点からこのカードの融合召喚さえ出来てさえすれば、盤面にモンスターを並べる条件は整ったと考えて良い。特に【幻奏】はサーチやリクルート、墓地に落とす効果により《ソプラノ》にアクセスすることに非常に意味を持つデッキである。
【幻奏】がテーマ内で妨害を盤面に作ろうとすると、融合体以外に選択肢が無い。テーマ内の融合効果を持つ《協奏曲》は1ターンに1度しか使えないため、ターン内に使用制限の無い《ソプラノ》は展開する上で非常に貴重なカードであり《ソプラノ》を何回使い回せるかが最終盤面の妨害数に直結する。尚《オスティナート》は『幻奏』ネームが付かないカードなので注意である。
とは言うものの【幻奏】の盤面形成の真髄は妨害ではなく生存性能である。《アリア》と《エレジー》による耐性付与を手軽に準備可能であることに注目したい。先攻展開なら《ソプラノ》の使い回しは1回だけにしても《アリア》《エレジー》を場に残す選択肢をとることで相手に盤面の処理とライフカットを許さず、返ってきたターンで《エトワール》によって相手の盤面を空け、横に並べたモンスター群でライフカットを狙うゲームプランをとれる。
選択肢の判断基準については対面のデッキに依存するところが大きいが、トーナメントでの多くの場面では《ソプラノ》の使い回しは1回だけにして《エトワール》と《シューベルト》の2枚を成立させ、余力で《アリア》《エレジー》の両立を目指すのがベターに思われる。
7.5.【幻奏】を使う留意点
まずは知っておきたい裁定について。
◯《バッハ》の①効果は②効果によって守られているため《うらら》《バグースカ》では無効にならない。が《泡影》《ヴェーラー》《スキルドレイン》等の場合は①と一緒に②の効果も無効化されてしまうため、これらのカードが適応された場合①の効果は無効になる。
◯《バッハ》の②の効果は「発動が無事に成功した効果は無効にならない」というものである。そのため「発動自体を成立させなければいい」ということで《神通》や《ローガーディアン》の様にテキストに「発動を無効」と記載されているカードが適応された場合は、幻奏融合モンスターの効果は無効となり適応されない。
◯《ハーモニスト》の①効果における「この効果を発動するターン、自分は幻奏モンスターしか特殊召喚できない」という効果は所謂『誓約効果』である。そのため既に幻奏以外のモンスターを特殊召喚しているターンには発動自体が出来ない。また《うらら》や《泡影》によって効果が無効になった場合でも、そのターン幻奏以外のモンスターは特殊召喚出来なくなってしまう。ただし《神通》や《ローガーディアン》の様にテキストに「発動を無効」と記載されているカードが適応された場合は、その後幻奏以外のモンスターも特殊召喚出来る。
◯《エトワール》の効果で一定の期間だけ除外されたモンスターは「「表側表示で存在する限り1度」の制限」がリセットされるため、既に効果を使用した《シューベルト》は《エトワール》の効果で1度場から離れれば、戻ったとき再度効果を使用出来る様になる(ただし帰還したとき攻撃力は元に戻る)。また「そのモンスターがフィールドに出た方法の情報」はリセットされないため、特殊召喚された《アリア》《エレジー》を《エトワール》の効果で除外したとき、戻った《アリア》《エレジー》の効果は適応されたままである。
◯《エトワール》の効果で除外したモンスターはエンドフェイズ中の任意のタイミングで帰還出来る。なので仮に《エトワール》と《シューベルト》が場に居て両立効果を使っていなかった場合、
の様な動作も可能である。
◯除外したモンスターを帰還しないで除外したままには出来ない。もしメインモンスターゾーンが埋まっている場合、帰還出来ないモンスターは墓地へ送られる。EXゾーンのモンスターを除外していた場合、そのモンスターはメインモンスターゾーンに戻る。
◯《アリア》の効果適応中、自分フィールドの幻奏モンスターは自分のカードの効果対象にも出来ない。そのため《ルフラン》のP効果や《リトルナイト》の効果の対象にすることは出来ない。
次にプレイについて、
【幻奏】は不用意に展開を進めると《ニビル》をかなり重く受けることになる。たとえ最終盤面が少々弱化するとしても5回目の召喚・特殊召喚以内に《エトワール》を成功させ《ニビル》の効果にチェーンして場の幻奏モンスターをエンドフェイズまで逃がせる状況を作りたい。
また《フランソワ》も《ハーモニスト》と同じく誓約効果を有しており、光属性以外のモンスターの効果を発動したターンには効果を発動出来ない。そのため相手の《G》を《うらら》で無効にする等した場合の展開ルートも用意しておく必要がある。ここでは例として《ルフラン》の通常召喚から入ったルートで《協奏曲》に《G》を打たれて《うらら》で無効にした場合のルートを挙げてみる。
この様に他デッキなら《G》に《うらら》を打てば既存の展開が可能なところを【幻奏】では最終盤面が少し弱化することを避けられない。
尚、これも留意点であるが、上記展開で《エレジー》と《ソプラノ》を逆にしてしまうと、墓地に幻奏モンスターが居るにも関わらず《ソプラノ》の①効果を発動出来ない。これは《ソプラノ》の①効果が「時の発動できる」という発動条件を持つことからチェーン2以降のカード効果で特殊召喚されたときタイミングを逃すからである。詳細はリンク先を参照して欲しい。
あとは基本としては【幻奏】は基本中の基本として《ハーモニスト》をいつでも特殊召喚して効果を発動出来る様に中央のモンスターゾーンは空けてゲームする等のプレイも挙げられる。
少し踏み込んだ話をすると、上振れた展開を狙わずに各種手札誘発の受けを予め想定して展開する場面がある。例として《ヴェーラー》《泡影》の受け方の話をしよう。上述した《バッハ》に対しての《ヴェーラー》《泡影》が今シーズンは特に多く、これによりリクルート回数が減ることで最終盤面が大きく弱化することが散見される。そんなとき、例えば《オスティナート》で《バッハ》を出す場合なら《オスティナート》でデッキから墓地に送るモンスターを工夫することで被害を抑えられる可能性がある。
上図の様な手札として、まずは上述した《オスティナート》1枚初動に宜しく《ルフラン》《クープレ》を落とした場合を考えよう。
この様に動作したとき、墓地に存在するモンスターが《クープレ》だと、サーチした《クープレ》の①効果を発動出来ないのである。そのためこの後の動作は以下の様になる。
《リトルナイト》と《シューベルト》しか盤面に残らなくなってしまった。相手の《泡影》を非常に重く貰ってしまったことになる。では《オスティナート》で墓地に送るカードを《ルフラン》と《ソプラノ》を落とした場合を考えてみよう。
ここで墓地に《ソプラノ》が存在するため《クープレ》の①効果を発動出来るのである。
あとは《協奏曲》でPゾーンの《ルフラン》と《クープレ》で2枚目の《シューベルト》を出してもいいし、場の《シューベルト》も巻き込んで融合すれば《エトワール》を出しつつ墓地の《協奏曲》でドローすることも出来る。この様に《オスティナート》で墓地に送るモンスターを最大展開から変えるだけで、手札誘発の受けは大きく変わることになる。こういった細かなプレイで上手に相手の妨害を受ける方法は数多存在し、これらを身に付けることでプレイヤーレベルは向上することになる。
ちなみに上記展開の③で《ルフラン》からサーチするカードを《クープレ》ではなく《カノン》にして《バグースカ》《深淵に潜む者》等のランク4エクシーズでターンを返す動きをすることも可能であり、構築や対面するデッキによってプレイの方針を変えるのも1つの手である。
7.6.【幻奏】対面の意識
【幻奏】と対面するときのことを考える。
大方の大量展開デッキとの対面と同じく、まずじゃんけんで勝って先攻をとるのが一番有効…という話は置いておいて、運良く先攻のゲームになったとしても【幻奏】はフリースロットが多いため大量の手札誘発を警戒して展開する必要がある。
多くの『ペンデュラム召喚』を有するデッキに対し《炎龍》による相手のPゾーンを埋める動作は有効である。それに対して【幻奏】はPゾーンが埋まっていても構わず大量展開をしてくる。が、自身のPゾーンのカードを退かす手段がほとんど無いのは確かなので《ルフラン》と《クープレ》のどちらかしかP効果を使えないという部分で妨害として完全に無駄なわけではない。特にペンデュラム召喚を封じる大きな意味として、展開後の盤面から《アリア》と《エレジー》の両立は難しくなるので、自身の妨害数が減らない範囲で狙うべきである。
『ペンデュラム召喚』に対するメタカードとして広く知られる《魔封じ》はPゾーンを埋めるというよりは《オスティナート》や《ルフラン》からの《協奏曲》等の初動を止める仕事で有効である。だが《ソナタ》等の特殊召喚から《ハーモニスト》を経由した《エトワール》でテーマ内に回答を持つため《魔封じ》以外の妨害も多く準備が要る。《アザレア》等のEXモンスターで破壊してくる可能性もあるため、有効であることに違いは無いが過信は禁物である。
後攻のゲームについて、【幻奏】はテーマ内の妨害が《エトワール》によるバウンスと《シューベルト》による墓地除外しか存在しないのだが、対面すると先攻盤面の強固さに驚くだろう。要所に手札誘発をヒットさせて展開を止めるか弱化させるかしたい。が、他のデッキの項目でも記載しているが、今期の環境デッキは総じて手札誘発1枚で展開は止まらないし、捲り札1枚で妨害がゼロになるなんてことはない。甘い考えは捨てるべきである。
上述した様に展開の起点は《オスティナート》《第一楽章》《ルフラン》《ハーモニスト》であり、この4枚とリソースの塊である《バッハ》の計5枚をマストカウンターだと考えていい。手札誘発をはじめとした各種妨害で是非無効にしたい。が、これらを無効にしたとしても上図の様に3段階の起点を持つデッキであるため、手札次第で貫通してくる可能性も十分あると考えて対面する。尚《ハーモニスト》は《バッハ》を素材としてリンク召喚することで《うらら》を打たせないプレイが広く使われるため注意すること。
その他、覚えておくといいこととしては《オスティナート》がターン1ではないこと、《オスティナート》には《わらし》を打つことが出来ることや、《ハーモニスト》はリンク先に特殊召喚する効果なので《うさぎ》が有効なこと、《ニビル》は《エトワール》で避けられるので過信し過ぎないこと等が挙げられる。《ヴェーラー》《泡影》と《ニビル》を重ねて引いている場面で、相手のメイン終了まで好きに展開させてから《ニビル》を打って《エトワール》を《ヴェーラー》《泡影》で無効にしたい…なんて場合も、《アリア》が並ぶと《エトワール》が効果対象にならなくなるため要注意である。
上述のマストカウンターを止めるカードが基本的に有効な対策カードになるが、上記の通り《G》以外の手札誘発にはダイレクトな展開を止めたり盤面を無力化する機能は無く、相手の手数とこちらの妨害の数で戦うことになるので、ターン内の発動回数制限を意識した「質より量」を重視した豊富な妨害で展開を阻害したい。
もし展開を許す場合は《アリア》と《エレジー》による耐性を越える手段が必要となる。これについては構築の段階で意識しておかなければならない。
《ラヴァゴ》 《アルファ》《アーゼウス》《ジーランティス》《サロス》《三戦の才》《一滴》《結界波》《超融合》等のカードが【幻奏】の耐性を越えられるが、他のデッキのメタを厚くする過程で採用しない、もしくはサイドアウトしてしまうと【幻奏】に対する後攻のゲームでのライフカットによる勝利はほとんど望めなくなるため、構築の段階で【幻奏】対面の保険として忍ばせる意識が必要である。また、耐性を越えれば勝ちと言う程甘くはないので、越えたあとしっかりと妨害を残せるだけのリソースを維持出来るカードを選別したい。
耐性を越える手段について、不用意な状態で【幻奏】と対面した場合でも焦らず、多少長考してでもデッキ内に《アリア》と《エレジー》の耐性を越える手段があるか思考し、無い場合はライブラリアウトやETによる勝利が望めるかを思考、現実的でないと判断出来るなら残し時間と相談してゲームの硬直によるET勝利を目指す形にシフトするか、すぐにサレンダーしてサイドゲームに移りたい。サイドチェンジのタイミングで改めて回答が無いか確認するのもいい。また、【幻奏】の耐性を突破するカードをサイドチェンジでデッキに入れる場合、下手に手札誘発を減らし過ぎてしまうと耐性を剥がしても捲れないレベルの強固な盤面形成を許してしまい、敗因になりかねないので注意が必要である。
7.7.【幻奏】の変遷
7.1.項でも記載したが、【幻奏】は2014年にDUEAで登場した光属性天使族のカテゴリで『遊☆戯☆王ARC-V』のヒロインキャラが使用していたカード郡である。
発売当初は《アリア》と《エレジー》を両立させることで戦闘効果破壊に加え対象耐性を付与する盤面に注目が集まり《光神化》等のカードで《エレジー》を特殊召喚する等して耐性を付与する動きが使われた。とは言え当時の環境は【シャドール】【テラナイト】『セプタースローネ』が筆頭であり、あくまでファンデッキの域を出なかった。
『遊☆戯☆王ARC-V』が放送されていた期間はポツポツと新規カードを得ていたものの実戦レベルのものはほとんど無く、2017年に放送が終わったその2年後にリンクモンスターを気持ち程度に貰うことになる。《ハーモニスト》のカードデザインは発売当初に注目された《アリア》と《エレジー》の耐性付与の両立を簡単に出来る様にすることがベースになっていた。
その後2022年の環境を先導したPOTEでこっそり1枚テーマサポートが増え【ジェムナイト】とのデッキテーマの混合を薦める動きがあったりしていたが、注目どころか多くのプレイヤーにとっては話題になることすらなく【幻奏】は完全に過去の忘れ去られたファンデッキとして姿を消していた。
そこに今シーズンの強化である。【幻奏】は一気に環境デッキに名乗りを上げるまでのパワーを得ることになった。まさか《オスティナート》がこんなに強くなるとは、細々と存在していたファンがどんな反応をしたのかは筆舌に尽くし難い。
その後トーナメントの場面では【幻奏】エースモンスターのパワー不足や、盤面への回答方法が環境に増えてきたこともあり、【覇王幻奏】が主流になりつつある。
7.8.【幻奏】の参考資料
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
【幻奏】は競技的な部分に触れる資料が少ない。こちらの記事も競技的な視点ではないが、【幻奏】の基礎や考え方が分かり易く紹介されており、【幻奏】を使うなら必読。
こちらは競技的な場で実績のあるプレイヤー様の【幻奏】の解説なので、考え方の視点等が参考になると思われる。
8.【天盃龍】
【天盃龍】は麻雀をモチーフにしているため、モチーフの認知度の高さから屡々「麻雀龍」とも呼ばれる炎属性ドラゴン族のカード群である。
8.1.【天盃龍】の特徴
まず【天盃龍】についてはこちらのnoteにほぼ全ての要点がまとまっている。有料部分も併せると【天盃龍】のゲームが網羅されているので、必読の上、興味のあるプレイヤーは購入を強く推奨する。
…とはいえ全部任せきりも難なので、この記事でも基礎だけ説明する。上記の記事の言葉を借りると【天盃龍】は「大量の手札誘発と盤面干渉カードで相手の動きを止めて1枚初動でワンキルを狙う後攻がとても強いテーマ」である。
【天盃龍】はバトルフェイズにシンクロ召喚を行う共通効果を有しており、最大の特徴はそのキル性能である。【天盃龍】は連鎖的な高火力モンスターの特殊召喚で、下級モンスター1枚からの8000ポイントの総火力を当然とする圧倒的なライフカット能力を有する。バトルフェイズに動作するだけでも一部手札誘発を無力化する上に《燦幻荘》の存在からメインフェイズの妨害も寄せ付けない。加えてバトルフェイズの妨害は、下級モンスター共有のフリーチェーンのシンクロ召喚効果により高い回避性能を実現しており、総じてテーマ全体が高い妨害耐性を有している。
そしてこの《燦幻荘》だが、③の効果がキル性能を大きく助力している。詳しい動作は次項で解説するが《トラドラ》と組み合わせることが出来れば「攻撃力6000で3回攻撃」なんてこともよく見る。勿論そういった展開は相手の妨害札で阻害されてしまえばそれまでだが、【天盃龍】は前述の《燦幻荘》の他にも《トランセンド》の存在により相手の妨害による影響をほとんど受けずに展開が可能となる。
《トランセンド》は②効果で相手のバトルフェイズ中の妨害札の発動を許さない。高いライフカット能を有するテーマでありながら《燦幻荘》と《トランセンド》の存在から確実にライフカットを行う実践性能を併せ持ち、総じて環境随一はおろか遊戯王OCG全体でも類を見ない圧倒的なキル性能こそが【天盃龍】の特徴である。
8.2.【天盃龍】の動き
【天盃龍】は基本的には先攻で展開してゲームを制圧することはせず、後攻で相手の妨害をすり抜けてライフカットを行いワンキルを目指すデッキである。
本項では本記事の2~7項で挙げた各種環境デッキのうち、例として【粛声】の基本盤面にサンドバッグ役になってもらおう。尚、あくまで【天盃龍】のライフカットの動きを見るものであり、他のデッキとの対面想定まで行うと記事が長くなるので割愛したい。
では《パイドラ》と《燦幻荘》から、
上記展開では終始《開門》を発動していないが、これは《燦幻荘》等に無効効果を受けてからリカバリするためである。上記例の相手の盤面では《ローガーディアン》による妨害が存在しているので、ここからは各カードに《ローガーディアン》の無効効果を打たれた場合のゲームを見てみる。ちなみに結果だけ言うとどこに無効妨害を打たれてもキルは成立する。
まず《ローガーディアン》で《燦幻荘》を無効にされた場合、
《トランセンド》が一瞬場から離れてしまっているのでリスクはあるが、《バイデント》の効果が通っているので相手が《G》で《わらし》や《クロウ》を引いていない限りはキルが成立する。
次に《ローガーディアン》で《チュンドラ》の②効果を無効にされた場合、
チュンドラの②効果は非常に強力だが、《開門》がほぼ同様の効果を有するためこれを妨害されても《開門》でリカバリが可能。勿論《うらら》には注意したい。
次は《ローガーディアン》で《バイデント》の①効果を無効にされた場合、
⑬で8000のライフカットは成立しているのでわざわざ⑭でシンクロ召喚をする必要は無いが、総ダメージはライフゲインもゼロではないし《金謙》との兼ね合いもあるので、展開のライフカット量は覚えておくと良い。
【天盃龍】の基本的な展開の紹介は以上。
【天盃龍】が頭角を表した際、【ドラゴンリンク】と呼ばれるギミックを取り入れた型も注目された。このギミックの型については8.4.項で解説するとして、本項では【ドラゴンリンク型】と呼ばれる『リンク召喚』を主体にした先攻展開の動きについても簡単に紹介する。
《パイドラ》1枚から。
先攻が苦手な【天盃龍】であるが、デッキに《アブソルーター》等の不純物を入れることで《パイドラ》1枚から《ヴァレルエンド》《サベージ》といった制圧盤面の先行展開も可能である。手札にドラゴンモンスターが居れば⑫でロムルスの効果で特殊召喚することが出来るため、⑭でチュンドラを場に残せるので《ブラックフェザードラゴン》を経由して上記展開を行える。そうすると墓地にある《バイデント》と《ブラックフェザードラゴン》で《ブラックフェザーアサルトドラゴン》を場に出せる。
レベル10で攻撃力が3000より高いので、戦闘面での打点として活躍出来るだけではなく、こういった特殊召喚によって妨害兼バーン効果によるETEDの補助としての役割も持つ優秀なカードである。
8.3.【天盃龍】の構築
【天盃龍】の構築は手札誘発の枚数が22枚前後であることが多い印象である。相手の盤面を確実に弱化させる意思の現れであり、シーズン後期は《一滴》等の捲り札の採用も増えた印象である。捲り札の採用が増えると《金謙》で引き込むカードの選択肢も増える。ライフカットも16000程度であれば【天盃龍】にとってはそこまで大きなハードルではなく、積極的に採用される。
《マグナムート》は妨害になるだけでなく、攻め手となるドラゴン族モンスター(《パイドラ》や《チュンドラ》)のサーチが行えることもあり、加えてレベル6であることから《チュンドラ》と素材にしてレベル10のシンクロを狙えるため、【天盃龍】では非常に強力に使えるカードである。
先攻でのゲームのために《天球》と《カイコロ》で盤面を作るプランも広く見られる。特に《天球》は不意に妨害を貰ってキルをとれないとき等にメインフェイズ2で立てる保険としての役割もあって必須級の採用率である。
【天盃龍】のメタカードとしてサイドインされる《障壁》の上からキルをとるために《咎姫》《ジーランティス》《レイジングフェニックス》が採用されることもあるが、要求値の高さから珍しい所ではシーズン終盤に《ドリトルキメラ》が採用されることもあった。
尚、本構築例は構築者様が以下の動画で簡単な解説もしているので、併せて確認したい。
8.4.【天盃龍】のゲーム構成
純構築の場合メイン戦は後攻を選択する。
相手の先攻展開を手札誘発で弱化して、返ってきたターンに《うらら》や《うさぎ》の他、盤面の妨害を越えながら各種【天盃龍】カードでワンキルを狙いに行く。デッキの性質上、1本目は確実な勝ちが欲しい。
2本目以降のゲームからは相手が先攻後攻どちらを選択するか悩ましい所ではあるが、メタカードのサイドイン等の関係で基本的には後攻を想定したサイドプランを固めることになる。どのみち1本目を取れてさえいれば選択権のあるゲームが1回はあるのだから、下手に先行札をサイドプランに絡めてしまうと勝率が伸びない印象である。
【ドラリン型】はメインで先攻を選択出来るため、それだけでもサイドゲームで優位な立ち回りが出来る。こちらは2本目以降のゲームは選択権の有無に関わらず後攻を想定したサイドプランを徹底できるが、対戦相手は先攻選択に振り切っていいのか判断が難しく、サイドチェンジのミスを誘発することも可能である。メイン戦で《G》等の各種誘発に弱くなったり、不純物の採用による手札事故といったデメリットに目が向かってしまうが、サイドゲームの選択権でほとんど確実に優位を取れるというのは非常にゲームを左右する大きな要素である。
8.5.【天盃龍】を使う留意点
まずは知っておきたい裁定について、
○下級天盃龍モンスターの③効果が適応されたシンクロ召喚は《古聖戴》の②効果等で無効に出来る。ただし下級天盃龍モンスターの③効果がチェーン2以降で発動したのであれば、そのシンクロ召喚の際に《古聖戴》の②の効果はタイミングを逃すため、発動する事はできない。そのため【天盃龍】を使うプレイヤーは下級天盃龍モンスター2枚(ここではAとBとする)でシンクロ召喚を狙う際に相手の場に《古聖戴》が存在している等の場合は、天盃龍Aの③効果の発動にチェーンして天盃龍Bの③効果を発動する等のチェーンブロックの組み方をすることがある。
○ダメージ計算に関する複数の効果が適用されている状況では、以下の順に効果を考慮してダメージを決定する。
例えば《パイドラ》の「モンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる」と《ナイトメアペイン》等の「モンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける」が重複した場合、結果的にお互いに戦闘ダメージは受けない。
○《燦幻荘》の①効果は魔法カードの効果を受けないモンスターには適用されない。そのため、魔法カードの効果を受けない効果を有する自分フィールドのドラゴン族・炎属性モンスターは、相手の発動したモンスター効果や罠カードの効果を受ける。
○《燦幻荘》の①効果は効果の処理時に場を離れたモンスターには適応されない。そのためドラゴン族・炎属性モンスターがフィールドで効果を発動した際に、それにチェーンして《一滴》等で該当のモンスターが場を離れてしまうと《墓穴》等で効果を無効にされるリスクがある。
○《燦幻荘》が場にあるとき自分フィールドのドラゴン族・炎属性モンスターと《燦幻荘》が同時に破壊等の効果処理を受ける場合、《燦幻荘》は処理されるが自分フィールドのドラゴン族・炎属性モンスターは効果を受けない。
○このカードを発動した発動時には●のどちらを使うか宣言する必要はない。処理時に●を1つ選択しその●の処理を行う。
○バトルフェイズに発動して両方の●の処理を行う場合、より上に記載された●から順に処理を行う。そのため手札からドラゴン族・炎属性モンスター1体を特殊召喚したあとにデッキからレベル4以下のドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加えることは出来ない。
○《トラドラ》の①効果で複数の攻撃権を得た《トラドラ》は「続けて攻撃」という記載がされていないため、《トラドラ》で攻撃したあとに別のモンスターで攻撃し、そのあとで《トラドラ》で攻撃することも可能。
○《トラドラ》の①効果の対象として選択した2枚のカードのうち1枚がフィールド上に存在しなくなった場合、フィールド上に存在する残りの1枚は破壊され《トラドラ》は通常の攻撃に加え1回だけ攻撃を行う事ができる。
○《トラドラ》の①効果は複数回攻撃宣言出来る権利をプレイヤーが得る効果である。よって
複数回攻撃できる状態になった後に該当のモンスターが《ヴェーラー》等で効果。無効化された場合でも、複数回攻撃することが出来る。
次にプレイについて、
基本的なことを箇条書きすると、
●《パイドラ》等を召喚する前に《燦幻荘》を場に表側で置いておけば《パイドラ》が《ヴェーラー》等で効果を無効化されない。
●《チュンドラ》の①効果はダメージステップに発動するので《うらら》で無効化されない。
●《ファドラ》の①効果はダメージステップでも発動出来るので、極力ダメージステップに発動すれば《クロウ》等で対象のモンスターが除外される心配は無い。
●《パイドラ》の①効果で《燦幻荘》をサーチするときは手札に加えるのではなく場にセットすれば《ドロバ》を回避出来る。
…等が挙げられる。が、上述した参考資料にほとんど網羅されているので、ここで記載出来ることは少ない。そこでこの場では当該参考資料の「採用する手札誘発」の考え方について少し掘り下げてみる。
手札誘発の選択について、しノん氏の記事では「天盃龍は後攻を選択するデッキなので誘発の選択はどの対面にも撃てるという軸で選択するべきだと考えています」としている。そこで各種手札誘発を「どの対面にも打てるが期待値が高くないもの」と「万能ではないが特定の対面は壊滅させるもの」の2種類に分けて考えてみる。
「どの対面にも打てるが期待値が高くないもの」の例は《うらら》、「万能ではないが特定の対面は壊滅させるもの」の例として《応G》を考えてみる。《応G》は【炎王スネークアイ】の《原罪宝スネークアイ》に対して発動出来ればゲームの決定打になる反面、【粛声】に対しては発動が難しいカードである。
まずは【炎王スネークアイ】に対して《応G》を発動できたパターンを考える。
分岐として相手は⑤で《ポニクス》の②効果のサーチを《聖域》にして《ガルドニクス》のサーチまで進める場合も考えられるが、《パイドラ》と《燦幻荘》から《トライデント》が成立すれば《ガルドニクス》を特殊召喚することは出来なくなる。《神天焼》で《応G》を破壊することも考えられるが、《G》をサーチされることを嫌って《神天焼》をセットしてターンを返すパターンが上記の盤面である。どう転んでもキルルートを記載するまでもなく《パイドラ》と《燦幻荘》の2枚の手札からは簡単にキルが可能となる。《応G》は【炎王スネークアイ】対面にイージーウィンを狙えたと言える。
次は《応G》ではなく《うらら》の場合を考える。
手札誘発が1枚しか無く、素引きによる裏目が最も少ない場面に打とうとすると、【炎王スネークアイ】対面では《篝火》《炎龍》《孤島》の素引きによる裏目を嫌って《うらら》の打ちどころを《孤島》にする場面がある。この盤面ではバトルフェイズの《チュンドラ》の②効果への《アポロウーサ》や《バイデント》のシンクロ召喚成功時の《咎姫》によりキルが成立しない。そのため《うらら》よりも《応G》が高い優位性に見えるのだが、《炎龍》や《孤島》の素引きによる裏目を嫌わずに《エクセル》②効果に対して《うらら》を打ってみると、
かなり強度が違う盤面である。上図は不用意に《ガネーシャ》の①効果を《チュンドラ》の②効果を貰った上《開門》に《うらら》を貰う等が起きない限りキルが成立する盤面となる。つまり《炎龍》素引きの裏目のリスクを負ってでも《うらら》をダイレクトな箇所に投げれば《応G》に近い仕事を期待出来るのである。
次は【粛声】を見ていこう。《サフィラ》に《うらら》を打っても《ロー》の通常召喚等の豊富な貫通手段で基本盤面は作られる。
《うらら》1枚では【粛声】の展開を止めることは難しく、基本盤面が成立する。とは言え《パイドラ》と《燦幻荘》であれば基本盤面の上からキルが成立する。
言わずもがな《応G》は【粛声】対面では発動する機会がなく、
《応G》は仕事をせず手札で腐る。《うらら》を打たなかった場合も共通だが、《結界》によるサーチを許すことになるため《威光》や《古聖戴》による盤面の補強を許すことになる。これでは《燦幻荘》を《威光》で破壊されて《パイドラ》の①効果を《ローガーディアン》で無効にされてしまうとキルが成立しない。そのため上記の場面では基本盤面の形成は許したものの《うらら》は仕事を十分こなしていたのだと言える。
ここで《うらら》と《応G》の上述した例での評価を表にしてまとめると、
【炎王スネークアイ】への手札誘発の打ち方を打算的に「エクセルに打つ」や「孤島に打つ」等の覚え方ではなく、しっかりと裏目や自分の手札でキルを狙えるラインを理解して打てる様になっておけば、《応G》の様なオーバーパワーな手札誘発を採用する必要もなく、それどころか【粛声】対面の勝ちを諦めなくてもいいことになる。「万能ではないが特定の対面は壊滅させるもの」よりも「どの対面にも打てるが期待値が高くないもの」が優先されるのは、捲り性能が高いからこそ「この対面とは相性が悪いから諦めよう」の様な場面を減らすことに意識を割ける。
イージーウィンに目が眩むことなく、相手の盤面弱化の確実性を求めることが、多様な種類の対面とマッチする可能性のあるトーナメントでは効果的なのである。
カードによっては《アトラク》の様に「どの対面にも打てるし対面を壊滅させられる」という強力なものも存在するが、自分の《ファドラ》《バイデント》の蘇生等も阻害するためキルが遠退くリスクもあり、必ずしも万能ではない意識を持って使用したい。
8.6.【天盃龍】対面の意識
【天盃龍】と対面するときのことを考える。
まず相手が【天盃龍】だと分かっている場合、メイン戦はじゃんけんで勝って後攻を選択したい。先攻で作れる盤面は《天球》や《カイコロ》が有力で、ミラーの場合は《トランセンド》を立てるのが通説である。
メイン戦でじゃんけんに勝って先攻を選択した場合、対面が【天盃龍】だと分からないままゲームすることになる。相手の抱えている手札誘発の豊富さに違和感を覚えて【天盃龍】だとアタリを付けたら《マスカレーナ》からの《リトルナイト》で《燦幻荘》をいつでも退かせる状態を作ったり《ナイチンゲール》や《キキナガシ》等を盤面に出す選択をすることになる。
《燦幻荘》を発動されたら、自分の抱える妨害手段次第ではノータイムで退かしに行きたいカードである。上述したが《G》や《ヴェーラー》等の多くの対面に有効な手札誘発も【天盃龍】には《燦幻荘》や《トランセンド》の存在から腐る場面が多い。《うらら》と《うさぎ》なら有効に使える場面は多いが貫通手段も多く、より確実な勝利を狙うなら《クロウ》や《わらし》といったカードの採用も視野となる。が、手札誘発で対応する場合に重要なのは発動のタイミングであり、《燦幻荘》の発動前に《パイドラ》が出てきたら《燦幻荘》は手元に無いと考えて《うらら》を打ったり、通常は下級天盃龍モンスターの③効果で対象不在にされるため仕事をしない《泡影》も、《古聖戴》等で下級天盃龍モンスターの③効果を誘えれば強く発動出来る可能性がある。
サイドゲームから相手が後攻を選択してくれるのは、対戦する側から見ると【天盃龍】の大きな弱点である。《障壁》等のカードで相手のキルのハードルを一気に上げてターンを凌げば、かなり有利なゲームを作れる可能性がある。また、先攻を選択する場合であってもどうせ仕事をしない《G》や《ニビル》は後攻用のサイドカードである《コズサイ》や《一滴》にしておけば、先攻1ターン目で伏せて《燦幻荘》の除外や下級天盃モンスターをバトルフェイズに効果無効にしたりと、相手の意識外からゲームを決定付ける打撃を与えられる可能性がある。相手の《羽根帚》等のサイドインを考えても、頭の片隅に入れておいて損はない。
8.7.【天盃龍】の変遷
【天盃龍】が頭角を現したのは今シーズン中期以降であり、同日に関東では【ドラリン型】、関西では純構築が入賞報告を挙げ大きく注目された。
後攻選択するデッキは長らく環境に居なかったためノーマークのプレイヤーは【インフェルノイド】を警戒する場面があり、その【スネークアイ】ギミックを警戒した《ヴェーラー》《泡影》《ニビル》の構える場面でそれらの妨害をほとんどすり抜けて《G》すら貫通する高速でのキルは大きな話題となった。
特に《アトラク》の採用はシーズンの序盤こそ【ふわんだりぃず】で見られたもののシーズン中盤には姿を消しており、その上《アトラク》の適応下でも8000のライフポイントをカットする性能は初見のプレイヤーに大きな衝撃を与えた。まだ環境に姿を現してから日が浅いが、その入賞率の高さに今後も活躍が期待されている。
8.8.【天盃龍】の参考文献
上述した以外にも参考になる資料を紹介する。
前項の通り【天盃龍】は1月末のLEDEで登場し、環境に姿を現したのは2月中旬。まだ開拓されておらず参考資料は多くない。
こちらは環境に姿を現す前、LEDE発売後すぐに公開されたnoteで、既に【粛声】対面の捲り等の思考の記載がある。一読を推奨する。
こちらは【ドラリン型】のプレイヤー様の記事であるが、純構築と共有の内容なので一読して損はない。《アトラク》下でのワンキルについての記載も是非参考にして欲しい。
9.【神碑】
大量の永続罠でゲームを停滞しテーマ内のカードで穴を埋めることで対面にゲームすら許さない環境随一の制圧力を誇るデッキ。
9.1.【神碑】の特徴
多種多様な速攻魔法で相手を妨害してデッキデスを狙うデザインのカード群だが、その特徴はなんと言っても個性的な戦い方である。
豊富なドローソースで《スキドレ》や《割拠》といった拘束力の高い永続罠を複数枚引き込み、盤面を制圧・ロックした状態にしてから、《泉》で神碑カテゴリの速攻魔法を供給しリソースを枯らさず、時間をかけて相手のデッキをロストしていくという環境内でもかなり特徴的な戦術のデッキである。
昨今は制圧力の高い永続カードの規制が厳しくなり、全盛期程の安定したゲームが難しくなった。空いた穴を《裂け目》や《シンクロゾーン》で埋めた構築が現在は主流であり、拘束力が落ちた様に思われがちだが、昨今は【スネークアイ】【粛声】の様な『妨害性能』よりも『リソース性能』が重要視されるゲームが増えたため、「相手が何枚手札を持っていようが解決札が無ければ何も出来ない盤面」を作る意義は健在で、その組み立て方が【神碑】の腕の見せ所となる。
【神碑】は圧倒的なメイン戦の優位性を持つ。先攻で永続罠を重ねて引ければメイン戦は勝ったも同然、引けた永続罠によっては1枚でも十分な制圧力を誇るだろう。後攻でも数多くの捲り札で盤面に触りに行ける。特に《ボーダー》や《天岩戸》等のカードは効果的だ。もし相手がサイドからも対策していない様なら圧倒的な勝利が可能である。サイドボードの軸が定まっていない2,3強の環境では無双も可能で、メタが固まったシーズンの後半になると定期的に姿を現すデッキであり、今シーズンの後半は【天盃龍】の分布が増えたことで優位なゲームを作り易くなり、2月末から3月にかけて多くの入賞報告があった。
9.2.【神碑】の動き
9.4.項で後述するが【神碑】は拘束力の高い永続カードを2.3種類重ねて発動することで、盤面を制圧することが狙いのデッキである。これといった基本展開は存在しないが、各カードのプレイの幅を如何に広げるかが重要なデッキである。ここでは例としてEXデッキのカードの使い方について簡単に記載する。
9.2.1.《フギン》
手札を1枚捨てて《泉》をサーチする。《泉》で複数枚のカードを引き込むことで、デッキから拘束力が高い永続カードを探しに行ける。捨てたカードが神碑速攻魔法ならサーチした《泉》ですぐリカバリ出来るため、通りさえすれば手札コストはあって無い様なもの。ただし《うらら》の他、今シーズンは《泡影》の流行から通りは非常に悪いので、ハイリスクなカードでもある。永続罠を十分に持っている場合は無理をして《泉》をサーチする必要も無いので、適宜判断が必要。特殊召喚の兼ね合いから《命削り》との相性が悪い点も注意で、発動するカードの優先順を間違えない様にしたい。
9.2.2.《ティフォン》
【神碑】の後手捲りの要の1つである。対戦相手の先攻展開を傍観した後、返しのターンで不要な手札誘発がトンデモない捲り札に生まれ変わる。《リトルナイト》を一方的に踏み潰せる他、相手が【神碑】を意識して《ナチュビ》や《バロネス》を立てた場合に突破の糸口に出来るのも魅力。
9.2.3.《バグースカ》
《ボーダー》は《うらら》を許さず安全にドローカードを発動するための役割と、後手で対戦相手の作り上げた盤面のモンスターを不能にすることで盤面捲りの補助をする役割、加えて《ティフォン》や《バグースカ》に繋げる役割もある。
【ピュアリィ】が流行していた環境では《天岩戸》から《バグースカ》をX召喚して《ノワール》を無力化するプレイ等が見られた他、このデッキにおける《バグースカ》は他デッキと比べて非常に重要な使い方がされた。《天岩戸》はエンドフェイズに帰還するので伏せた永続罠を《クシャトリラアライズハート》や《エクソシスターミカエリス》等から守ることが出来ない。が、神碑速攻魔法で《ゲーリ》を特殊召喚して《バグースカ》にすることで、守れるどころかモンスターを無能にし、ターンを跨ぐことで《輝く炎の神碑》といった名称ターン1のカードを連打して盤面を捲りに行ける。《まどろみの神碑》での延命も可能だ。こういったプレイは今シーズンではほとんど無くなったが、マスターデュエル等ではまだまだ現役である。
9.2.4.《リトルナイト》
神碑速攻魔法で特殊召喚できる融合モンスターは《リトルナイト》の①効果の発動条件を満たせる。直接攻撃できないデメリットも【神碑】なら在って無い様なものであり、相手の厄介な恒久リソースを除外してしまうことでゲームの硬直に貢献できる。【粛声】等の対面には《結界》等を除外して各種神碑速攻魔法を上手く使える状況を作る他、上述した《ティフォン》では対処できないサイドゲームからの《醒めない悪夢》等の除去に一役買う。
9.3.【神碑】の構築
このデッキの初動とも言える《スキドレ》《御前》《割拠》《センサー》は文句なしのフル投入。前述の通り規制によって空いた穴を《裂け目》《シンクロゾーン》で埋めている。その他、強く使える場面の多い神碑速攻魔法は3枚、場面の少ない速攻魔法は1枚の採用、そして異なる永続罠の重ね引きや《泉》の素引きを狙うため《命削り》《強謙》等のドローソースで構成されている。
スモールスケールなトーナメントでは《裂け目》による除外や《御前》《割拠》《センサー》が有効でない対面も多く分布することがあり、ランキングデュエルやマスターデュエルでは《カイコロ》等のカードを採用する場面も少なくなかった。各種神碑速攻魔法で《フレーキ》や《スレイプニル》を特殊召喚して相手の展開の拘束を狙える。《フギン》に《泡影》をされてゲームが作れなくなった場面での急場凌ぎとしても使われる。
今シーズンは《天岩戸》よりも、相手のターンにも場に残る《インスペクトボーダー》の採用が主流である。《天岩戸》よりも【炎王スネークアイ】【天盃龍】に有効ということもあるが、《天岩戸》が有効だった【ピュアリィ】【ラビュリンス】等が減少したことも要因である。
強力な拘束力故に《G》等を採用する場面も少なくなく、サイドゲームでは相性の悪い永続カードとスイッチする形で使用することもある。が、《命削り》との兼ね合いが悪くなったり貰う必要のない《三戦の才》を打たれたりとリスクもあるため採用時には頭に入れておきたい。
9.4.【神碑】のゲーム構成
繰り返しになるが、先攻のゲームは基本的に永続カードの重ね引きによる盤面の制圧を狙う。制圧後に時間をかけてデッキデスを行い、相手がサレンダーしない限り時間をかけて勝利を狙う。後攻のゲームは《ボーダー》からの《輝く炎の神碑》等で盤面を荒らし、安全に永続罠を開くことを狙う。デッキの性質上、1本目は確実な勝ちが欲しい。
《泉》は神碑速攻魔法の循環を生むため「デッキデスの加速」だと誤解されることがあるが、「永続カードを引き込みに行けるドローソース」の様な認識で使いたい。
2本目以降のゲームからは相手がメタカードをサイドインしてくるため、神碑魔法でデッキから除外されたカードを逐一チェックして、対面がサイドインしたカードをチェックしながらゲームを進行する。敗色が濃厚であっても粘るだけ粘ってETEDに持ち込みたい。
3本目のETEDではデッキデスでの勝利は望めないため、ライフ差での勝利を目指すのが主となる。そのため《ムニン》によるライフゲインが非常に重要となる。ターンの選択権のあるゲームで後攻を選ぶ等して《拮抗勝負》を打たせない等のゲームメイクも有効。
9.5.【神碑】を使う留意点
まずは覚えておくべき裁定について、
○除外枚数が固定となっている神碑速攻魔法(現状は《怒れる嵐の神碑》のみ例外)はカードの発動時に相手のデッキの枚数が除外予定の枚数未満の場合は空撃ちとなり除外を伴う方の効果の選択ができなくなる。
〇各種神碑速攻魔法の融合モンスターを特殊召喚する効果は出せる場所が「エクストラモンスターゾーン」に指定されている。エクストラモンスターゾーンにモンスターが残っている場合効果の選択ができない。
○自分バトルフェイズがスキップされる制約は、次に行うと宣言したバトルフェイズがスキップされる。よって、宣言せずにただメインフェイズ1で自分ターンを終了した場合、その後神碑速攻魔法を発動せずとも、次の自分ターン以降にスキップが持ち越されるので、いざバトルフェイズに入ろうとしたタイミングでスキップされる危険があるので注意。
〇複数枚の神碑速攻魔法を発動した場合でもバトルフェイズがスキップされる制約は重複しない。
○②の効果はデッキの枚数より対象のカードの枚数の方が多くなるように対象を選択することも出来る。デッキの枚数が0枚でも発動が可能。
〇②の効果で対象に取ったカードのうち何枚かが《クロウ》等の効果で墓地から存在しなくなった場合、墓地に残った分のカードで処理を行う。
〇②の効果は複数枚のカードが破壊される場合でも、複数枚のカードの代わりにこのカード1枚を除外できる。
〇②の効果はチェーンブロックを作らない効果である。そのため自分のフィールドのカードを破壊するカードの効果にチェーンして《フギン》が特殊召喚された場合にも効果を適応できる。
〇《ムニン》の②効果は《フギン》の②効果と違いチェーンブロックを作る効果である。そのため自分のフィールドのカードを破壊するカードの効果にチェーンして《フギン》が特殊召喚された場合には効果を適応できない。
〇①の効果はいずれかのモンスターがモンスターゾーンに存在していない場合、処理は行われない。尚、処理時にいずれかのモンスターが裏側守備表示になっている場合でも、裏側表示で除外されエンドフェイズに裏側守備表示でメインモンスターゾーンに戻る。対象のカードがこの効果を受けない場合、《スレイプニル》だけがエンドフェイズまで除外される。
〇①の効果で除外されたモンスターは、エンドフェイズに除外された際の表示形式で除外された時のコントローラーのメインモンスターゾーンにチェーンブロックを作らずに戻る。これは特殊召喚扱いではない。
〇このカードの①効果の詳細は以下を参照。
次にプレイについて、
神碑速攻魔法はバトルフェイズをスキップする効果を有しており、「どうせバトルフェイズに攻撃することは無い」等と考えていると以外にもライフカットが必要な場面が訪れる。メインフェイズ終了時にバトルフェイズの宣言を必ず忘れないようにして、必ずバトルフェイズを迎えられる態勢をとること。また今シーズンは《ヴェーラー》が流行しており、《ドロバ》や《ヴェーラー》を意識してドローフェイズに神碑魔法を使うことを意識したい。
《強貪》で《泉》が消えることを怖がって発動を躊躇することもあるが、どのみち拘束力の高い盤面を成立させなければ負けるゲームが多い。【神碑】は他のデッキと異なり手札誘発が極端に少ないことで、初動を引けなかった場合の急場凌ぎが困難なデッキでもある。ここで言う初動とは永続カードのことであり、神碑速攻魔法しか初手に無い場面で《フギン》に《泡影》なんて喰らった日には貧弱なゲームしか出来ない。《バグースカ》での延命も《泡影》で解決されると苦しい。永続カードに依存したゲームメイクは首を絞めることになる。極端に言えば《泉》が無くともゲームを拘束出来れば各種神碑速攻魔法でデッキデスが出来ないわけではない。割り切りや思いきりの良さを持たずにいると「《泉》が除外されるのを怖がらずに《強貪》を打ってればチャンスがあった!」の様なゲームを多く経験することになるだろう。
特異なデッキ故に【神碑】に対するメタカードは《拮抗勝負》や《コズサイ》、《醒めない悪夢》等かなり限られる。そのため《破壊の神碑》やそれに繋がる《穂先》は極力大事に扱うことになる。1度盤面を制圧してしまえば自分のライフを守る必要も薄いため、「《泉》さえあればドロー出来る!アドバンテージだ!」と言って神碑速攻魔法を雑に《泉》や融合モンスターの特殊召喚に使うのではなく、盤面の制圧や《泉》のドローが確約されるまでは1枚1枚のカードを限界まで大事に使う意識を持つのが理想である。
今シーズンは【ピュアリィ】の減少と【スネークアイ】の増加により《魔封じ》が減少したり、【ラビュリンス】の減少による《闇デッキ》の減少等もあるので、数少ないメタカードは漏れなくケアしてゲームを進めたい。
9.6.【神碑】対面の意識
【神碑】と対面するときのことを考える。
まずこのデッキに対する一番の対策は、デッキ構築の時点で妥協せず強く意識することである。メインデッキ内の《G》や《三戦の才》といった【神碑】対面で不要になりそうなカードとなるだけ同じ程度の枚数のサイドカードをサイドデッキに準備しておき、サイドゲームでカードが腐ることを無くすだけで勝率に大きく関わる。
魔法罠を多用するデッキであることから《羽根帚》等が有効に思うプレイヤーも多いが、《フギン》の存在のせいで有効な場面は非常に限定的である。《コズサイ》や《拮抗勝負》《醒めない悪夢》《王宮の鉄壁》等のカードが有効と言われているが、サイドカードでメタをするだけでは引けなかったゲームを落とすことになるため、意識としては《うらら》や《泡影》を確実に有効な場面に打ち込むことで盤面の制圧に穴をあける意識を強く持つことが有効である。永続カードをデッキから複数枚堀に行けるカードまで《うらら》をガメたり、ピンポイントの《フギン》や《ボーダー》に打ち込むのは勿論として、《泡影》は無効にしたい永続カードの正面にセットして使う場面も少なくない。
また3本目はETEDでのライフ差での勝利を狙ってくるため、迅速なプレイで2本目までの試合を早めに終わらせる意識も重要だ。もし意識が欠けてしまっていたり、対面した際にサイドカードの引き込みが悪い場合でも、対面が永続罠を開くまでの間に出来ることを落ち着いて考えるべきである。
繰り返すがサイドカードでメタをするだけでは引けなかったゲームを落とすことになる。なので欲を言えば【神碑】には【神碑】を理解した盤面を押し付けて理不尽なゲームを返すプレイも準備しておきたい。広く知られているのは先行盤面で《マスカレーナ》を使用した《アクセスコード》を立てることで後攻のゲームでの盤面制圧にプレッシャーをかける等も有効である。その他にも小技が大量にあるが、詳細は下記の記事の有料部分に記載があるのでこの場では言及しない。【R-ACE】を使わなくても有用な知識であるため
、一読に損は無い。
9.7.【神碑】の変遷
【神碑】はロック性能がゲーム性に響くため、他の環境デッキの変遷が構築傾向や採用カードに関わることになる。
【ティアラメンツ】全盛期には《裂け目》の採用が主流であったり、《センサー》の採用枚数を減らしたり等の工夫がされていた。ほかにもデッキの型として、メインデッキに《モンゲ》からの《ボーダー》でロック性能を増したり、《泉》によるリソースの回復に注目し【スプライト】と混合させて展開に寄せた構築にしたものも存在したが、環境の変化に対応できず入賞報告は多くなかった。
デッキの型で言えば【ナチュル】を混合した型がTCGで流行したが、これはレベル2,4のモンスターを制限なく特殊召喚でき盤面に干渉できるカードも豊富な【神碑】の性質と、豊富なリソース性能でレベル4のチューナーを大量に供給できる【ナチュル】を混合させたシンクロ召喚ベースの展開デッキ・ビートダウンの一種であり、デッキデスのイメージが色濃いOCGでは流行しなかった。
デッキデスとして進化するOCGの【神碑】はサイドに《賄賂》《パラドックスフュージョン》を入れてサイドカードを対策したり、《G》《うらら》を採用して盤面制圧を補助したり、《シンクロゾーン》で拘束性能を規制後も維持したりと、シーズン後期に定期的に現れては採用するカードの形を変えながら長く息を続けている。
9.8.【神碑】の参考資料
あとで書くよ!!!
10.環境の構成
この項目では今シーズンを通してのデッキの流行の推移、汎用カードについて触れる。尚、筆者は北海道で遊戯王をしているが大会等にはあまり参加しておらず、記載する情報は全国区レベルの分布等の情報をSNS等で追って大まかにまとめたものである。
10.1.大会での分布の流れ
第2項でも触れたが、シーズンが始まった1月は前シーズンでトップクラスのパワーを有しながら制限改訂の影響をほぼ受けなかった【炎王スネークアイ】が広いシェアを占めた。これを受け、対象耐性を有する【粛声】や除外ギミックを有する【ふわんだりぃず】の使用も広がり、1月の下旬には対象耐性と展開力、そして豊富なフリースロットを有する【幻奏】も環境に現れた。この頃にはもう【スネークアイ】のパワーが環境を支配する素振りを見せていたため、シーズンの幕開けとほぼ同時に《エクセル》の初動を止めるための《ヴェーラー》《泡影》は高い使用率を占めていた。
2月は【炎王】ギミックへの墓地メタが盛んになる等、流行のデッキに対するメタが徐々に広がったことで、より相性の良い汎用札を多量に詰め込める【純スネークアイ】がシェアを伸ばした。《うさぎ》《わらし》といった手札誘発のメイン採用も増え、ほぼ全てのゲームが高いデッキパワーと豊富な手札誘発の撃ち合いに染まった。そんな折、突如【天盃龍】がそんな単調なゲーム展開に喝を入れる形で入賞報告を挙げ、全国で爆発的にシェアを広げることになった。
そして各地で【天盃龍】によるワンキルが認知されると、3月には手札誘発に耐性がありつつ盤面を永続的に制圧可能な【神碑】が全国的に入賞報告を挙げた。しかし【天盃龍】も【神碑】も特異な戦術であるが故、対策されれば一溜りもなく旬はすぐに過ぎ去ることになる。3月の中旬以降は再度パワーと誘発の殴り合いのゲームが増え、【炎王スネークアイ】や【粛声】以外にも【R-ACE】や【幻奏覇王】といったデッキもシェアが安定した。
本記事では割愛しているが、その他にも環境に分布するデッキとしては【キマイラ】【転生炎獣】【地属性GS】【センチュリオン】等が挙げられる。3月下旬には《ファントム・オブ・ユベル》の登場で【ユベル】もトーナメントで見かける機会が増えた。
上述した内容は、エアプのプレイヤーがSNSの話を元に全国区の流れをざっくりとまとめたものであり、実際のメタゲームは逐一細かく変化しており地域差もある。ライト氏(@rai_10y)やデュエルサポート(YouTubeチャンネル)が週ごとだったりCSのレポートだったりを公開したりしており、参考になるのでチェックして欲しい。
10.2.メインのフリー枠
10.2.1.『無効系誘発』
《ヴェーラー》と《泡影》は今シーズンを象徴するカード達である。環境トップのパワーを誇る【スネークアイ】のギミックは、一度盤面を形成してしまうと捲り札だけで盤面を返すのは難しく、最終盤面を弱化させるための手札誘発の使用は必須というか一部の界隈では「対戦時のマナー」とまで言われた。幅広い用途故にメイン戦で腐ることも少なく、先攻でも雑な1妨害として機能する汎用性の高さから、《G》《うらら》《ヴェーラー》《泡影》をそれぞれ3枚ずつメインデッキに採用し、手札誘発12枚の体制でデッキビルドを始めるのが今期の主流となった。《ヴェーラー》は後述する《うさぎ》《わらし》《ファンタズメイ》《ニビル》等の汎用手札誘発とスイッチすることも少なくないが、《泡影》はトップでドローしたとき《マスカレーナ》等に打てたり【神碑】にも裕子なことで非常に高いメイン採用率を誇った。
10.2.2.《うさぎ》《わらし》
上述した《ヴェーラー》《泡影》は【スネークアイ】に対して有効な手札誘発だが、【粛声】等に対してはそこまで有効ではなく、より多用な手札誘発や捲り札を採用する必要がある。特に【天盃龍】と対面する際は《燦幻荘》の存在から《ヴェーラー》《泡影》は無力であり、有効な手札誘発はかなり限られる。そんな中で注目されたのが《うさぎ》や《わらし》である。《うさぎ》は【粛声】の《結界》や【天盃龍】の《燦幻荘》に対して打つ等様々な用途が考えられ、《わらし》は【粛声】の《サフィラ》や【天盃龍】では《バイデント》の蘇生を止める等の用途、加えて【炎王】や【スネークアイ】も墓地の《咎姫》《ガルドニクス》、【粛声】なら《ロー》を《墓穴》《クロウ》から守る役割も兼ねることが出来る。そのため「手札誘発12枚の体制」に入れ換えや追加される形でメインデッキから採用されることも多かった印象だ。
上述した《G》《うらら》《ヴェーラー》《泡影》《うさぎ》《わらし》等の手札誘発は今シーズン「1枚でどれだか仕事をするか」ではなか「他の誘発と重ねて引いたときバリューが高いか」で評価されることが増えたのも今シーズンの特徴の1つである。あとはこれらの手札誘発はサイドチェンジで相性が悪いと考えられる場合はサイドアウトされる枠であり、代わりの相性の良い手札誘発をサイドインすることになる。
10.2.3.《墓穴》
《墓穴の指名者》《抹殺の指名者》は数少ない《G》を無効化出来るカードであるため採用率は高い。先攻展開の必須枠だと考えられがちだが、今シーズンの流行を見てみると少しずつ変化が見られる。まず大抵のデッキは《G》以外の手札誘発を受けてもメインギミックだけである程度の貫通能を有しており、【粛声】【天盃龍】【神碑】に至っては《G》すらほとんど無力である。そのため【粛声】では《墓穴》《抹殺》のメイン不採用が珍しくなく、その他にも少ない特殊召喚回数で盤面形成やライフカットが狙えるデッキでは《抹殺》の不採用が散見される。《墓穴》は【炎王】の《ガルドニクス》、【スネークアイ】の《咎姫》、【粛声】の《ロー》を墓地から除外出来ることから、限定的ではあるものの後攻でも仕事をこなすカードとなり《抹殺》とは差別化され多くのデッキでメインに採用され【粛声】のサイドデッキに身を潜めることもあった。以前から《墓穴》《抹殺》の不採用自体は以前から珍しくなかったが、この「差別化」という点は今後新規で実装されるカードのデザインに関わるであろう要素である。注目しておきたい。
10.3.サイドカード
このシーズンで広く使用された印象のサイドカードを記載する。「紹介するから使ってみて」ではなく「こいつらをサイドからインされる想定でゲームしようね」という意味での記載だと思って欲しい。また今期の環境デッキは総じて手札誘発1枚で展開は止まらないし、捲り札1枚で妨害がゼロになるなんてことはない。甘い考えは捨てるべきである。
10.3.1.《ファンタズメイ》
上述の通り今期の環境デッキは総じて手札誘発1枚で展開は止まらない。そのため今シーズンは後攻のゲームでの手札の質がとにかく重要であり、手札の質を向上する《ファンタズメイ》は重要な立ち位置のカードであった。…のだが、【粛声】や【天盃龍】【神碑】対面では完全に腐ってしまうため、採用率はそこまで高くなく、パワー不足で環境での立ち位置が悪かった非環境のデッキがどうしても後攻のゲームで手札の質を上げる必要があり、補強のためにサイドに採用することが多かった印象だ。《泡影》と同時に使う場合では発動順に注意が必要で、特にリンク召喚を多用する【スネークアイ】に対して《泡影》が有効だったことも、全国的に採用率が伸びなかった原因と思われる。珍しいところではバトルフェイズを挟んで無力化した《カイコロ》と併用し、メインフェイズ2でも《カイコロ》のロックを継続させる場面もあった。
10.3.2.《ドロバ》
以前はこのカード1枚で展開が止まったり妨害を残せなくなるデッキも多かったが、現代遊戯王ではそこまでの期待値はなく、《泡影》や《わらし》等の数多の手札誘発とほとんど同程度の期待値である。使われる側の【炎王】や【粛声】は油断せずケアして動かなければならないが、使う側は《ヴェーラー》等と同じくカードアドバンテージがマイナスになるカードでありながら《G》や《ファンタズメイ》による手札の補強が出来なくなるリスクを考えておきたい。特に《G》と同時に採用する場合、発動する順番を間違えるとそのままゲームエンドになる可能性が高いため、そういった場面では落ち着いて冷静な判断を心掛けたい。
10.3.3.《ニビル》
《ドロバ》と同じく、かつては多くの展開系デッキを黙らせるだけのパワーがあったが、対策等が広く知られ期待値がそこまで高くなくなり、現在では《ヴェーラー》《うさぎ》等の数多の手札誘発とほとんど同程度の期待値となってしまった。発動出来る場面を期待できる【スネークアイ】や【幻奏】といった環境の展開デッキは可能な範囲でこれをケアした展開をするため、《ヴェーラー》等と一緒に使うことを想定した用途が主な狙いとなる。【粛声】では儀式召喚のためのコストになる場面も見られたり、他デッキでも先攻で《ニビル》を手札に忍ばせつつ墓地等にリソースを残す展開を行うことで、相手が後攻で《アクセスコード》等による盤面の一層を狙ったところで発動する等の用途もあった。《ファンタズメイ》と同じく《泡影》と同時に使う場合では発動順に注意が必要である。
10.3.4.《ガンマ》《デルタ》
トーナメントを意識するプレイヤーであれば手札事故を嫌うため《ドライバー》を採用しなければならない《ガンマ》《デルタ》は疎遠になりがちなのだが、今期はそれを度外視しても後攻のサイドゲームで採用される場面が多かった。と言うのも、昨今の環境デッキは1,2枚の手札誘発で展開が止まらないのが殆どであり、《ガンマ》《デルタ》は1枚あたりのバリューだけで言えば数ある手札誘発の中でもトップクラスのパワーがあるため、今期の環境デッキ相手でも展開を力ずくで止めるだけの期待値がある。どのみち後攻のゲームで理不尽な展開を押し付けられるのであれば、たとえ運要素であってもワンチャンを作るために採用する…くらいの認識である。実戦では相手の展開を止めるだけでなく、自分のターンに相手の《G》を無効化したり、《羽根帚》を無効にしようとした《ローガーディアン》や《泉》を守ろうと発動した神碑速攻魔法を無効にしたり等、引き込むことが出来たゲームでは幅広い活躍をしている印象である。尚《うらら》だけでなく、墓地に《ドライバー》が存在しているか否かに関わらず《わらし》で無効に出来る点には注意である。
10.3.5.《羽根帚》《大嵐》
どんな環境でもサイドデッキにほぼ必須採用される魔法罠の全体除去カードは、《ライスト》《ツイツイ》を押し退け禁止カードから復帰した《大嵐》と《羽根帚》の2枚が多く採用された。とはいえ罠を多く採用するデッキは環境に多くなく、【炎王】【神碑】をはじめ分布の少ない【ラビュ】等も《羽根帚》《大嵐》には耐性があったため、後攻で多様なデッキにサイドインされる…というわけではなかった。後述する《コズサイ》との使い分けが多い印象である。《羽根帚》《大嵐》をサイドインして臨む対面は【粛声】【R-ACE】【ふわんだりぃず】といった対面となり、特に分布の多かった【粛声】との対面では《三戦の号》でサーチする等の運用も多く見られた。
10.3.6.《コズサイ》
《炎王の聖域》下で《炎王の孤島》を退かせる数少ないカードであり、加えて【粛声】の《威光》や【神碑】の《泉》、サイドゲームの《魔封じ》等に対応出来るため、必須レベルでサイドデッキに採用され、分布や時期によってはメインからの採用も見られた。前シーズンでは【R-ACE】が台頭していたことで《羽根帚》や《拮抗勝負》に魔法罠の除去という仕事を盗られていたが、今シーズンでは【R-ACE】が《EMERGENCY!》の規制により分布が減ったことで、元々の役割を奪い返す形となった。《羽根帚》《大嵐》とはサイドインする対面が違うだけでなく、先攻のゲームで《コズサイ》を伏せることが有効になる場面も少なくない。
10.3.7.《一滴》
【純スネークアイ】の盤面を崩したり、【粛声】対面で《ローガーディアン》の効果を無効にするだけでなく戦闘破壊による墓地の《祈り》の不発を狙える。【天盃龍】等の対面でサイドアウトしたいカードが多過ぎたときに先攻札として使用する等、総じて小回りが利く後手の優秀な捲り札として広く使用されている。シーズン後半のトーナメントのシーンでは評価がかなり高くなり、《一滴》で盤面が崩壊しないことがデッキや展開ルートの選定条件になる場面もあった。
10.3.8.《三戦の才》
先攻でも後攻でも強く一時期は入れ得とまで言われたカード。今シーズンも非常に強力だったが、手札誘発にメインの枠を取られたり重ね引きを嫌ったりと、カード単体を高く評価している割には採用枚数は少なめのプレイヤーが多かった印象で、サイドデッキに忍ばせる程度の採用も多く見られた。今期の環境で見られる盤面は豊富な永続魔法罠や墓地リソースによるプレッシャーが大きく、コントロール奪取のバリューが総じて前期ほど高くないのも痛手である。特に【天盃龍】【神碑】が流行した2月下旬~3月上旬は採用が見送られることも多くなった。その後それらのデッキの流行が去った3月中旬以降、コントロール奪取によって勝ち筋を作るプランが再度注目され、少しずつ採用が増えたところでシーズンを終えた。翌シーズンの前半は複数枚の採用も予想される。
10.3.9.《超融合》
非常に強力な盤面除去効果を有する後攻の捲り札であるが、今シーズンは手札誘発が盤面をある程度弱化してくれる上、誘発を打って減少した手札では《超融合》の手札コストが重く、結果として前シーズンと比べると強力に使える場面が減って採用も減少傾向にある印象である。【R-ACE】の減少や「《超融合》で盤面を削らないと勝ち筋が見えない」といった様な【インフェルノイド】等のデッキが今シーズン姿を消したのも大きい。
10.3.10.《拮抗勝負》
多くの対面に有効な後攻の捲り札として知られるカードだが、今シーズンの後攻の戦術は手札誘発で相手の展開を弱化させることを狙うものが多く、《超融合》と同じく《拮抗勝負》の仕事も各種手札誘発に取られてしまい、大きなバリューを期待できない場面が散見された印象である。よって今シーズンのこのカードの用途は、対面と相性の悪い手札誘発をサイドアウトしたいときの入れ換え候補としての役割となった。また一部の公式大会がETを1ターンのみとするルールに変化しているため、《拮抗勝負》のバトルフェイズをスキップするデメリットが非常に重くなった点でも採用が減少傾向となった。
10.3.11.《神宣》《神通》
選択権のあるゲームで先攻を選択する際、サイドチェンジで相性の悪い手札誘発や《ヴェーラー》《泡影》と入れ換える枠。前シーズンは《魔封じ》等の《羽根帚》に耐性のあるカードが多かったが、【炎王】の分布の変化や《コズサイ》の流行によって、地域や時期によっては《羽根帚》《大嵐》への警戒を薄めた《神通》や、【神碑】への警戒を強めつつ【炎王】【粛声】にも有効な《醒めない悪夢》等の採用も見られ、前期よりも多種多様な選択肢がとられる様になった。
11.結言
まず執筆が遅くなり申し訳ない。言い訳するとただでさえ3,4月は年度末と年度始めで仕事の〆が忙しくなる時期であるのに、日本選手権の店舗予選とYCSJがカブってしまったため執筆の時間が全くとれなかった。一応2月には執筆を始めていたのだが、まさかこんな文字数になるとは思わなかった。というか10万文字はさすがに長過ぎて読めない。完全に自己満足である。
今回で3回目の環境まとめ記事であるが、筆者は普段カードに触れないため強いプレイヤー様のnoteで勉強した内容のメモが主な記事の内容である。それは言ってしまえば他人のnoteの無断転載みたいなもので、本来怒られても仕方ないと思いながら書いているのだが、過去2回の記事では参考記事の筆者様から温かい声を頂き、本当に本当にありがたいことである。
というかそんな上手いプレイヤー様が記事を出しているんだから、こんな長いだけの浅瀬記事の結言まで見なくていいので諸兄には是非、是非、参考資料を読んで欲しい。202404環境では関東圏の隔週のメタゲームのレポートをライト氏が記載してくれている。ありがたいことこの上無いので、全競技プレイヤーが参考にすべきである。
はい。
以上。
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