Ty Dolla $ignという男~HIPHOP界のスーパーユーティリティープレイヤー~
今日はとにかく、Ty Dolla $ignという男について語りたい。
早速、彼の凄さについて説明をしていく。
HIPHOP最盛期は今だ!
僕は今年でDJ歴13年目、HIPHOPを聞き始めて17,8年目だろうか。
この経験の中で、今が最も世界的にHIPHOPにスポットライトがあたっていると感じる。
それを証するエピソードとしては、
2018年の7月、
世界で最も権威のある音楽ランキングであるBillboardで大記録が樹立されたことであろう。
なんと、TOP10のうち7曲がHIPHOP界のスーパースター、Drakeの楽曲であった。
これはThe Beatlesの記録を抜いて史上初の快挙である。
要するに、HIPHOPがThe Beatles超えを成し遂げたのである。
(ちなみに、このときのTOP10のうち9曲がHIPHOPであった。)
そこから1年が経ったが、この世界的な流行は影を落とすことなく現在進行系である。
BillboardのTOP40や、
SpotifyのGLOBAL TOP50の約半数はHIPHOPである。
そう、今、世界中を席巻する音楽はHIPHOPなのだ。
そんなHIPHOP界でも一際異彩を放つアーティストがいる。
それがTy Dolla $ignだ。
彼はラッパーじゃない。
ドレッドヘア、全身のタトゥー、クビから下げるブリンブリン。
見た目は典型的なラッパーだが、彼は自分のことをシンガーと称する。
百聞は一見にしかず、まず1曲聞いてほしい。
この曲のフック(サビ)を歌うのがTy Dolla $ignである。
そう、確かに歌っている。紛れもなく彼はシンガーなのである。
多くの方はこう思われただろう。
そのとおり。
世の中でシンガーといえば楽曲に参加すると花を添えるイメージが強いが、彼は違う。
その曲にある種のイナタさをスパイスとして加えてくれる。
イナタさゆえに、様々なアーティストとの相性が限られそう。
なんて思った方は早計。
彼は表題の通り、HIPHOP界のスーパーユーティリティープレイヤーなのだ。
この曲以前、この曲以降
どんなアーティストにも、
コアなファンだけでなく、多くのマスのファンに広がるきっかけとなる曲がある。
彼の場合は間違いなくこの曲であろう。
この曲はXファクターというオーディション番組出身のガールズグループ、Fifth HarmonyにFeaturingする形でTy Dolla $ignが参加している。
Fifth Harmony単体だと(確かに歌は上手いが)キラッキラの女子5人組で変哲のない(失礼!)曲になってしまうが、2分17秒あたりから、「ダラサ〜イン」の掛け声とともに曲が一変する。
彼特有の低い歌い声で、イナタさというスパイスを与え、曲全体に締まりを作っている。
そして最大のポイントは、キラッキラの女子5人組に対して、
イナタさ満点の彼が参加しているのにも関わらず、曲全体のキャッチーでセクシーな雰囲気は壊さず、自分自身の存在感は確実に残し、曲の完成度を数段引き上げている点である。
先程の曲はフック(サビ)を担当していたが、
この曲ではヴァース(いわゆる、Aメロ)を担当している。
そう、彼はスーパーユーティリティープレイヤーなのである。
そしてこの曲は商業的にも大成功を収める。
Billboardの週間チャートでは最高4位、年間16位の大ヒットソングとなった。
では、この曲以前と以降の曲でそれぞれ考察をしていこう。
Work From Home以降
僕を含め、古参のファンは古い曲から語りたがるものだが、
本当に多くの人にTy Dolla $ignの良さを伝えたいので、あえて新しい曲から紹介したい。
この曲は、今をときめくフィメールラッパーのMegan Thee Stallion名義の楽曲に、
個性の塊みたいなフィメールラッパー、Nicki Minajと共に、
Ty Dolla $ignが参加している。
2019年の8月に発表後、一瞬で爆発的に売れ、
MTV Video Music Award for Best Power Anthemを受賞している。
この曲での彼の立ち位置は、フック(サビ)を担当し、
イナタさは保ちつつも、MeganとNickiを際立たせるような、甘くセクシーな歌い口である。
もちろん、曲のテーマである「イケてる女子の夏」を一切崩さず、
個性的なフィメールラッパー2人に決して負けることなく存在感を放つ絶妙加減。
断言できるのは、絶妙なバランス感を保ちつつも、この曲のフックを歌えるのは、彼以外存在しないということ。
本当に彼はスーパーユーティリティープレイヤーなのである。
そんなスーパーユーティリティープレイヤーの彼の真骨頂はこの曲に集約されている。
この曲は歌って踊れて、ラップもできてイケメンなJason Deruloの楽曲に、先程に引き続きNicki MinajとともにTy Dolla $ignが参加をしている。
どうだろうか、歌って踊れてイケメンなシンガーがいる。
個性の塊で大人気のフィメールラッパーがいる。
もうここでキャスティングが完成されていると考えてもいいのではないか。
しかしTy Dolla $ignはここでも確実に自分の存在感を残していく。
この曲においての彼の立ち位置は、歌えるJason Deruloをシンガーとして引き立たせ、自分自身はどちらかといえばサポートに近い形をとっている。
あえて、Rapに近い形でメロディアスではない歌い方をすることにより、
Jasonの醸し出す(いい意味の)軽さやチャラさに、落ち着きというスパイスを与えて曲のレベルを上げている。
また、 Nicki Minajという個性ともぶつからないよう、
JasonとNickiの「つなぎ」としての役割を完璧にこなしている。
そう、彼はスーパーユーティリティープレイヤーである。
また、ここまで紹介した4曲はすべて彼の名義ではなく、
他のアーティストにFeaturingという形での参加である。
これも彼のスーパーユーティリティープレイヤーたる所以で、
自身名義の曲以外にも、圧倒的にFeaturingでの参加が多いことである。
ただ、彼自身の名義の楽曲もセンス抜群である。
この曲は盟友YGとともに、
HIPHOPフリークなら絶対に分かる名曲をサンプリング*した楽曲。
(*サンプリング:過去の音源の一部や全体を引用し、再構築して新たな楽曲を作ること。)
名曲をサンプリングしてしまうと、原曲のイメージもあり、必然的にハードルが上がってしまう。
しかし、彼は原曲へのリスペクトを忘れず、それと同時に完璧に自分の曲として昇華をしている。
原曲はセクシー系ナヨ声シンガーであるが、
この曲では彼の低く太いイナタ歌声にを活かし、完全なオリジナルとして生まれ変わらせている。
後ほど考察するが、Featuringで参加しているYGとの相性も言わずもがな完璧。
ちなみに、この曲の収録アルバム自体の完成度が非常に高いので、こちらもあわせて聞いていただきたい。
Work From Home以前
僕を含め、日本国内の多くのHIPHOPフリークが彼の存在を知ったのはこの曲であろう。
彼の盟友であるYGとともに2010年に世に送り出したこの曲。
当時スマッシュヒットとなり世の中にYG及びTy Dolla $ign名は知れ渡り、
一気にスターダムを駆け上がることとなる。
ちなみにこの曲に裏方を含めて参加しているアーティストは、
Kendrick Lamar, ScHoolboy Q, DJ Mustardと2019年では現役バリバリのHIPHOP界のスーパースター達である。
そしてこの評判を聞きつけた大物達が、彼らとのRemix楽曲を作成する。
そのメンツがまた豪華で、西の大御所、Snoop Doggに、東の大御所50 Centである。
東西それぞれの大物が参加する楽曲とあっても、YGのラップはもちろん、Ty Dolla $ignのフックも全く色褪せることはない。
むしろ、Gangな要素をラップする彼らに、イナタさを与えよりHIPHOP要素が強まっているようにも感じる。
日本のお笑いに例えるならば、松本人志と内村光良に挟まれたハタチそこそこの若手芸人が、
先輩を立てつつも、自分の存在感をバシバシに出すようなものである。
普通はできない。
だが、Ty Dolla $ignはそれができる。
彼はスーパーユーティリティープレイヤーなのだ。
また、「She be in the club with no panties」で有名なこの曲もぜひ聞いてほしい。
浮気男が、2人の女の子にバレて復讐されるのでは?とい被害妄想を歌ったこの曲は、前述のDJ Mustardによるらしさ全開のシンプルなビートが印象的。
一般的にシンプルなビートの場合、アーティスト自身の器量がハッキリと分かりやすいと言われている。
そう、この曲はTy Dolla $ignの器量が存分に楽しめる1曲である。
ラップよりはメロディアス、普通に歌うよりは確実にイナタい、
Ty Dolla $ignだからできる絶妙な塩梅で、Paranoidという世界観を表現している。
また、Featuringで参加しているB.o.Bはさわやかキャッチー系のラッパーであるが、こういったタイプのアーティストともこれもまた相性抜群。
Ty Dolla $ignはスーパーユーティリティープレイヤーなのである。
ソングライティング
ここまで散々とTy Dolla $ignはスーパーユーティリティープレイヤーだと僕の熱を伝えてきたが、シンガーだけではなく、ソングライターとしても抜群のセンスを発揮している。
先程も紹介した西海岸の重鎮Snoop Doggと、Wiz Khalifaという、モクモク大好きな2人に加え、
今や世界のスーパースターであるBruno Marsをコーラスに迎えたこの曲の作曲メンバーの1人としてTy Dolla $ignが参加している。
この曲はタイトル通り、
若者×自由×ワイルドという元気でおバカな曲だが、
その曲のイメージ通りというまさしくなソングライティング。
実はTy Dolla $ignはギターやベース、ドラムにキーボード、MPCと数多くの楽器を演奏でき、作曲センスも抜群なのである。
もうスーパーユーティリティープレイヤーすぎる。
その他の楽曲の提供先もスゴイ。
この曲はRihannaとKanye Westという、HIPHOPとR&Bの頂点のような2人に、なんとPaul McCartney(The Beatles)を招集した楽曲。
今すぐにでも遊びに出かけたい!という軽快な曲調に、Paul McCartneyのギターが光る名曲。
この曲においてもTy Dolla $ignは作詞と作曲で参加をしている。
あのPaul McCartneyがいて、あのKanye Westがいて、
この二人だけで作曲が完成しそうな気もする。
しかし、それでも必要とされ、
彼らの良さを引き立てるソングライティングをする、Ty Dolla $ignはすごい。
この男がいかにユーティリティプレイヤーであるかお分かりいただけただろうか。
最後に
ある種主張の強さが求められるHIPHOP業界において、
4番バッターではなく、10年近くも第一線でスーパーユーティリティプレイヤーとして存在感を残し続けるTy Dolla $ignは本当に稀有な存在である。
存在感抜群なのに主張しすぎない。
抑えどころ完璧に分かったセンスの塊。
今、彼の楽曲がプレイされないクラブは無いだろう。
だが、どうだろうか。日本の音楽ファンが彼にフォーカスすることはあまり無いのかもしれない。
人生は1度しかないが、その人生の中で彼の才能に触れないのは大きな損失でしかない。
ぜひ、この記事をきっかけにTy Dolla $ignの活躍に注目し、彼の才能に触れてみてほしい。
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2020年11月13日追記
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最近、急にこのnoteが読まれているので、追記します。
2020年10月末に、Ty$先生がアルバムをリリースされたので、
当然、こちらも聞きましょう!
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2023年7月15日追記
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ついにHIPHOPの枠を飛び越えて、Houseもイケてしまうユーティリティ性をみせてしまうTy Dolla $ign先生も要チェック!!