著名人のアルコール依存症者
ここ数年、著名人がアルコールや薬物の問題で
メディアを賑わせることが多いような気がします。
差別・偏見の強い問題であるだけに、著名人で
あればあるほど、自分がその問題の当事者である
ことをカミングアウトすることは難しいと思います。
今日の記事は、そんな世の中で自らの病気について
カミングアウトし、壮絶な闘病の末に亡くなられた、
一人の皇室関係者について触れた記事です。
(2012年6月7日の日記より)
天皇陛下のいとこで「ひげの殿下」として知られる
三笠宮寛仁親王が亡くなった。
私自身は、皇室や皇族の問題に特別な興味関心がある
わけではないが、寛仁親王については、ある種の思い入れ
があった。
親王は2007年に自らがアルコール依存症者であること
を公表している。
宮内庁の反対(そりゃそうだろう)を押し切っての
公表だったという。
同じアルコール依存症者として、素直に
「たいした人物だ」と思った。
アルコール依存症という病気は、差別・偏見の強い
病気である。
ベロンベロンに酔っ払い、周囲の人に迷惑をかけ、
身体を壊し、仕事をなくし、経済的に破綻し、最後には
人間関係まで壊して、社会のどこにも居場所がなくなる。
そうなってもなお、酒を飲むことをやめられない
大多数のアルコール依存症者のイメージ(というか現実)
によって、世間は一般的に私たちアルコール依存症者の
ことを「意志の弱い、道徳的・人格的破綻者」であり、
「早く死んだ方が良い社会のお荷物」だと見ている。
WHOや精神医学会が、何度「そうではなく病気なので
意志の強さとか人格とかは無関係である」ことを繰り返しても、
世界中のアルコール依存症者が毎日「そうとしか見えない」
行動を繰り返して酔っ払っているのだから、仕方がないと思う。
そんな状況下で、皇族の、しかも皇位継承資格者がカミング
アウトしたのである。
彼のこの行動が、「酒をやめて生き直そう」とするアルコール
依存症者たちにとって、どれだけの勇気を与えてくれたかを、
忘れずにいようと思う。
親王の死因は「多臓器不全」だと報じられている。
20年以上にわたるガンとの闘病で、文字通り「多臓器が不全」
状態であったことは想像に難くない。
それと同時に、そういう状況でも浴びるほど酒を飲んでいた
(飲まざるを得なかった)とは、なんという壮絶な人生だった
のだろうと思う。
カミングアウトして後、親王が断酒を継続されたかどうかは
知らない。
しかし、断酒されたまま逝去されたのだと信じたい。
彼の行動に勇気をもらった一人として、心から弔意を表したい。