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激辛ではなく中辛で。

坦々麺を注文しようとして、店員さんに

「中辛・大辛・激辛とゴザイマスが?」

と言われると、条件反射的に「激辛で。」と答えてしまう、
そんな自分であった。

店員さんに試されているような気がしてしまうのである。

店員さんにとっては、私がどれをチョイスするかなんて
全く興味はなく、ただマニュアル通りに聞いているだけなのに。

期待されてもいないのに期待に応えたい。
その期待(どの期待だよ?)に応えて、自分を「価値ある者」
として認めて欲しい。強迫的な認知欲求が常に私の中にある。

そんな自分に、新しく鍼灸治療整体院を開業する友人から
声がかかった。一緒にやらないか?と。

現在の私は、視覚障がい者のガイドヘルプ、知的障がい者のガイドヘルプ、
そして個人的に私に依頼をくださる数名のお客さまに対するマッサージ的
な施術の3つを仕事にしている。1週間のうち3~5日、それも短時間の
仕事であるが、どれも私にとっては大切な大切な仕事である。
また、このくらいの仕事量が今の私にはギリギリのところだろうという
実感もある。だからこそ、色々なご縁があっていただいた仕事を精一杯
させていただこうという気持ちも強い。

話は少し横道にそれるが、
8年前、うつが酷くなり精神病院に3か月間入院していた頃、
自由外出時間になると私は必ず病院の近所をジョギングしていた。
中小の工場が立ち並ぶエリアから絶えず聞こえてくる機械の稼働音を
を聞きながら、「ああ。働きたいなぁ・・・」と心底から思った。
その時の気持ちを思い出すと、やれる仕事が3つもある今の状況は、
奇跡みたいに幸せなことである。

だから、4つ目となる仕事の依頼には、「幸せがまた1つ増える」
という喜びと、今の仕事量にさらに「もう一つ」という不安とが、
混在している。
どんな仕事でも「開業」するのは手間も時間もかかる。
また、精神的な「勢い」のようなものがなければ、次々に持ち上がる
課題に対処していけない、ということもある。

現在の私は、担々麺の「激辛」は頼めない。
それと同様に、「開業の勢い」についていく自信もない。

この仕事に誘ってくれた友人には、「『中辛』の私で良ければ、
喜んでお手伝いします」と答えようと思う。


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