私が酒を飲み始めた頃の話
私が初めて酔っ払うまで飲んだのは、高校2年の夏だったと思う。
1980年代の後半、高校生でも黙っていれば居酒屋で飲めた時代。
たしか、「学期終わりの打ち上げ?」みたいな飲み会だった。
その夏以降、文化祭の打ち上げ、修学旅行、部活からの引退、
高校卒業などなど、何か理由になりそうなことがあれば、
それがそれほど仲の良い友達との飲み会ではなくても、
とにかく飲みに出かけていた。
当時17〜18歳だった私は、すでに酔うことで得られる解放感に
取り憑かれていた。
一般論だが、アルコール依存に至る過程は、
「日本酒5合を毎日10年」と言われている。
私の場合、
「酒量は不明ながら、1年半、通算10回くらいの飲み会」
でこのレベルに達していた。
すごい才能である。
もし仮に、
「初飲酒からアルコール依存に至るスピード」を競う
競技があれば(ねぇよ)、
文句なしに世界で戦える才能である。
そして私は、その才能を、大学進学と同時に開花させ、
証明し始める。
入学直後の新入生歓迎コンパ
(今もコンパとか言うのか?)で正体不明に酔っ払い、
コンパ会場から逃走⁉︎(何があったのかは不明)した挙句に
深夜の街中で行き倒れ、地元警察の保護室(通称トラ箱)に
収容されたのである。
そして残念ながら、このトラ箱の一件は、
不幸な偶然が重なったアクシデントではなかった。
以降、トラ箱に入るこそなかったが、
それは友達のアパートに転がり込んで朝まで飲む
ようになったからであって、
私の酒は頻度・量ともに増加の一途をたどっていった。
今から思えば、一緒に飲んでいる友人も含めて
周囲への配慮など一切放棄し、ただひたすらに酒量で
他を圧倒し、大声で議論酒を仕掛けてくる私は、
実に迷惑で困った奴だっただろう。
あれから約30年。
今でも、当時を思い出すのが辛い。
自分がどれだけの人に、どれだけの迷惑をかけ続けたか、
今こうして思い出せるのは、氷山の一角に過ぎない。
それを考えると消えてしまいたくなる。
それでも、思い出し続けなければならない。
私の脳内に完成した依存の回路は解除不能で、
私は自分の経験を思い出し続け、目の前に並べておくことで
しか、次の再飲酒から逃れることはできないのである。
おしまい