ある辛口コラムニストの死
2018年12月。
「辛口コラムニスト・コメンテーター」
として有名だった男性が亡くなった。
肝不全。享年57歳。
若い頃から、文筆家としての素晴らしい才能と、そして、
酒への異常な執着は有名だったという。
2018年8月に、「重症アルコール性肝炎」で入院。
その名の通り、酒の飲み過ぎによる肝炎である。
それでも退院後はまた飲み始め、11月に再入院。
今度は、隠れて病室で飲んでいたことが発覚(←当たり前である)し、
強制退院となった。
彼の周囲は、彼を何とかアルコール依存症の専門治療につなげよう
と相当努力したそうだが、
辛口氏本人が、「自分は絶対に依存症ではない」と主張。
この時点で打つ手がなくなり、いわば必然的な結果として亡くなられた、
ということのようだ。
多少なりとも、アルコール依存症についての知識がある人であれば、
☆長年にわたる酒への執着履歴
☆重症アルコール性肝炎
☆上記による入院中に飲酒発覚
☆↑にも関わらず本人は依存症否認
と、客観的には、辛口氏がアルコール依存症であることを示す
「ネタは全て揃っている」状態である。
そして、そのことは、当の辛口氏ご本人が、よく認識されていた
はずである。
にも関わらず、何度かはあったはずの「回復のチャンス」を全て
放棄して、彼は死んでいった。
そして皮肉なことに、彼の死によって、彼がアルコール依存症で
あったことが、最終的に証明された。
身もフタもない言い方をすれば、「もっともありふれたアル中の死に方」で、辛口氏はその人生を終えた。
私が言うまでもなく、辛口氏はそのキャリアからも分かるとおり、
# 論理的に思考する能力
# ものごとを批判的に検証する能力
に非常に長けた人物であったはずだ。
にも関わらず、彼は彼の「死に方」について、あまりにも無力であった。
アルコール依存症という病気は、それほど強力に人間の脳を支配するのだ。
そういえば、
少し前に飲酒運転で有罪判決を受けた元アイドルグループの女性が、
執行猶予中に酒を飲んでいると、
「炎上」しているらしい。
彼女の年齢なら、回復のチャンスはまだまだある。
人から非難されてこの病気が治るなら医者は要らない。
燃やされて彼女が「更生」するなら裁判所も要らない。
必要なのは、
本人がまず自分の病気を認め、現在地を受け入れること。
そして適切な医療・リハビリプログラムを受けることである。
著名人には、殊更に辛い道のりである。
しかし、著名人だからこそ、回復の道すじを示す影響力がある。
辛口氏の死は、
そういう意味では、何も残さない。
生きていれば、まだ何かを残す可能性があるのだ。