521 斎藤知事のご功績
はじめに
明日で失職する兵庫県斎藤元彦知事が出直し選挙への出馬を表明して、3日が経ちました。26日Xに投稿された文章には、県政の現状への反省と改革の道を厳しくとも歩んでいきたいという決意が示されています。
失職と出直しを表明した26日の記者会見でも、ほとんどの時間を実績のアピールに用いていたわけですが、故人への謝罪や発言の撤回はやはりありませんでした。
そこで、今日の教育コラムでは斎藤元彦兵庫県知事の実績については、天下り規制の成果が1%強出ている点や公用車の予算削減をすすめてきたことなどについて評価できる点などについてこれまでもお話してきましたが、もう少しこの業績について見ていきたいと思います。
全体的な税収に増加傾向あり
斎藤知事が兵庫県知事として就任されたのは、3年前の2021年7月の事でした。度々、斎藤知事の実績として上がるのが2021年度以降の行財政改革の成果で、県の財政調整基金つまりは、県の貯金が100億円を超えたという話です。兵庫県の財政調整基金の推移を見てみると斎藤県政前の2020年度末の時点では、33億円でした。確かに2023年度の最新の県の財政調整金は、約127億円ということで、約90億円を上積みしたことになります。
では、この現象がどのような背景で成し遂げることができたのでしょうか。兵庫県財政課によれば大きな要因として、企業の業績回復が著しく、その結果として県税の収入が増えた影響が大きいことがあげられるとのことです。
2023年度の県の歳入歳出を見ると黒字分の94億円がそのまま積み上がっているということが分かります。
しかし、これが兵庫県だけに生じている現象であるかを見てみると意外な結果が分かってきます。2023年時点で、世界的な新型コロナの感染拡大は完全に終息し、多くの都道府県で企業業績が好調となり県税収入が増えているのです。また、兵庫県同様に黒字分を財政調整基金に積み上げている都道府県がいくつもあるのです。
実際に、都道府県の2023年度当初予算案を共同通信が集計したものを見てみると47都道府県中42の都道府県で前年度より地方税収が増えると見込んでいたことが分かっています。さらにその内、20都道府県では税収が過去最高額になると見込まれていたのです。それもそのはずで、インバウンドの急速な伸びや新型コロナウイルスから抜け出して社会全体が経済活動を活発にしてきていますので企業の業績が上がり法人税なども伸びていきます。
行財政改革という意味では公用車の経費削減により複数年で1000万円程度の経費の削減なども実際に行われていますので、決して成果がないとは言えませんが、ある程度は全体的な傾向とも言えます。
県立大学の無償化について
県立大の無償化という実績についてもよく耳にします。今年、兵庫県内の高校を卒業した人の内で県立大に進学した人の数は約750人程度です。これは、全体の約1.8%にあたります。この政策は、そもそも県が設置する県立大の授業料や入学金について、県民を対象に所得制限なしで無償化するというもので、この政策の恩恵を受けている人は全体の2%以下だということです。
かなり限定的な受益者となっているという点は留意する必要はあります。また、一方で斎藤知事は、兵庫県立大の博士課程も完全無償化するという試みをすでに発表しています。これは、全国初の試みとなりますし、このことで同大学への進学者が増えれば、今後受益者が増えていく可能性もあります。そういったことを考えると、この改革はまだ道半ばの物で今後も発展の可能性もあれば予算の問題で途中で改革が止まる可能性もある内容かと思います。
外郭団体への改革
斎藤知事は、外郭団体の改革についても実績を上げてきていることを主張されています。以前の教育コラムでも少しお話ししましたが、実は天下りしている職員の数というのは幹部職員で見てみると対して減っていないのです。
斎藤知事就任後の2022年から2024年までの約2年間に兵庫県庁の役職職員(本庁課長・室長級以上)の職員の内再就職した約85名の内、外郭団体に再就職した職員は何名かというと40名です。斎藤知事の就任前が同じ条件で約48%の天下り率でしたから、1%減少していることにはなります。
では、県職員のOBの外郭団体への再就職について65歳以上の天下りを制限した件についてはどうでしょうか。もともと県の内規で65歳で退職を定めていたのですが、慣例で斎藤知事以前までは70歳程度まで延長されていました。しかし、2022年度からこの適用を厳格化したため、65歳以上のOBの内約60名ほどが退職延長できませんでした。確かに、この点では大きな成果があったかもしれません。しかし、他方では斎藤知事が目標としていた2022年度中に廃止や統合するとしていた県と密接に関係している団体約30に対してその扱いが明確になったものは一つもありません。
この業績については判断は難しく、これからの高齢化する社会においてこれまでの経験を有効に活用して、人手不足で苦しむ各企業が多くの高齢者の手を借りながら経営を継続していく必要だってあるのです。
例えば、2021年に改正された70歳定年延長は努力義務としている高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会の確保も努力義務とされています。少子高齢化による労働力不足、年金問題、健康寿命が延びた高年齢者の就労意欲の高まり、高年齢者の生活を年金ではなく雇用により安定させるためなど、様々な状況下の中で今、社会は変わろうとしています。
さらに「もしかすると斎藤知事の中で古い物や高齢者を排除しようという目的でこの政策を実行しようとしていたのではないか」という懸念の声が無いわけでもありません。
いずれにしても、ここまでがよく巷で斎藤元彦知事の業績として讃えられているもののおおよそのボリュームや状況となります。
天秤にかけて判断してはいけませんが、告発文書そのものの検証や公益通報か否かの検証を第三者機関に当初から依頼せず、公開パワハラで告発者を罵り、そして違法な手法を用いた内部調査を徹底的に行うよう指示し、懲戒処分を下し握りつぶした行為を肯定するほどの功績と考えるようなものなのでしょうか。
兵庫県民の方々が判断し、投じる一票には日本の今後の政治の在り方が問われているようにも思います。