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475 斎藤知事のリコール


はじめに

今日の教育コラムは、最近上げました動画にたくさんのご質問を頂きましたので、兵庫県知事の斎藤知事のリコールについて少しお話してみたいと思います。

リコール

リコールというものは、直接民主制の制度の一つで、公職者を罷免できる方法だと考えればよいと思います。この制度は、日本国憲法15条1項で「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と保障されていることからもかなり強力な制度だと言えます。
議会に対する解散請求や最高裁判所裁判官に対する国民審査もリコールの一種ですが、どの制度もハードルが高いものとなっています。これは、乱用することができないように配慮されているためだと考えられます。

地方自治法では

議員や首長、副知事、副市町村長、選挙管理委員、監査委員、公安委員会の委員、教育委員会の委員といった地方自治の重要な任命職についてもリコールはできます。つまりは、権力者の横暴を住民や国民が最終的に判断し、審判を下すことが法律上はできるということです。

3分の1の署名の壁

住民投票によって首長をリコールする場合、有権者は3分の1以上の署名で解職の是非を問う住民投票を60日以内に行うことができます。
投票で過半数の同意があれば、リコールが成立し、首長は失職します。失職した首長は出直し選挙に再出馬できますが、リコールされている人間が再選する希望は薄いと言えます。
この署名も膨大な数ですからそうそう簡単には集まりません。例えば、人口が多い自治体の場合、「40万を超えるときは、40万を超える数の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上、80万を超えるときは、80万を超える数の8分の1と40万の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上」と地方自治法に明記されています。地方議会の解散の場合にも同様です。

かなり困難

有権者が1000万人規模で考えてみますと、約130万筆の署名が必要になります。それを2カ月以内で集めるのですからかなり難しいミッションとなります。現実的ではありませんし、かなり権力者に優遇されています。
これまでに確認できる範囲で振り返っても市町村長のリコールが成立した件数は20件にも満たないでしょう。住民投票を行ったものの過半数の賛成を得られず不成立だったものが4件あります。市町村レベルでも困難なのですから、有権者の数が多い都道府県知事へのリコールは不可能に近いのです。その証拠に過去の記録に都道府県知事のリコールが成立して事例は一つもないはずです。

斎藤知事の決断

斎藤知事は、総務省の官僚経験者ということもあり選挙やらリコールなどのこうした地方自治法や公職選挙法に大変明るい知事です。
ですから知事が決断しない限り、任期満了までにリコールなど成立するわけもないことを百も処置なわけです。これまでの長い歴史を大きく変えるような都道府県知事へのリコールの成立がどれだけ不可能に近いのかも承知しているわけです。
だとすると直接民主制が通用しないわけですから恐れるものはありません。どんなに報道で叩かれても、どんなに県職員がアンケートでパワハラを訴えても、どんなに命を懸けて訴えても、自分の行動は正当であり、適切に調査したと言えばいいわけです。そして、都合が悪いところは記憶を消してしまえばいいわけです。いくら印象が悪くなろうとも、県知事という権力にしがみつくことはすべてに優先する行為なのかもしれません。
こうした決断をしてしまったら最後、その強さはたぶん無敵です。いくら発言が間違っていても、認識が甘くてもなかなか、自分の責任を感じて人の責任まで背負ってやめていく岸田首相のような境地には立てないのかもしれません。

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