449 つらい夏休み
はじめに
子どもにとっては楽しい夏休みでも、親にとっては少し辛いのが夏休みです。小学館が調査したデータにこんな結果があります。
悩みの1位は、食事の準備でした。いかに学校給食がありがたいかわかります。給食が無い学校に通っている人からしたらお弁当を持たせることは毎日のことかもしれませんので、それほど気にならないかもしれません。
しかし、公立の小学校や中学校では、給食がほとんどの場合で出ますので、
特に昼食の負担を感じる人が多いのかもしれません。
学童利用の場合でもお弁当の準備が必要ですし、栄養バランスも考えなければいけないですので1カ月近い普段と違う日々は、負担感も大きいでしょう。
また、子どもの遊びに関する負担感も多いようです。遊ばせ方や遊ぶ機会を作ること、一緒に過ごす中で自分だけの時間が無いなど、この問題は様々な点に関係します。
親の気もちを理解するのは難しい
夏休みは、子ども中心の生活にならざるを得ない場合が多いです。自分の時間がないと感じる声も多いです。
大人は、普通に暦通り仕事がありますから、帰ってきて一息つく間もなく、食事の準備に取り掛かったり、お仕事の都合で夜勤明けに子どもを送り出してから睡眠時間を確保していた人は、寝ることができないなどという悩みもあります。実際に体に負担がかかるなかで、夏バテになったり精神的に負担を抱えてしまったりと大きな問題につながることも少なくないです。
そんな状況の中で、夏に増えてしまうのが児童虐待です。
一緒にいると起きる
親が子どもと一緒に過ごす時間が長くなる夏休み、子育てを任せきりにされていると思いがちになるのが親の心理です。
食事を作ったり、普段よりも宿題や工作など手をかけたりしなくてはならないため、親が子どもにいら立つ頻度が増えるのです。普段から子どもを虐待している親は、子どもと一緒に過ごす時間が増える事で、子どもの些細な言動にいら立ち、暴力がエスカレートしたり、食事を抜いたり、一緒にいたくないからといって、子どもを長時間家の外に出したりするのです。
逆に暴力がエスカレートし始めると、傷やあざの発覚を防ぐために、子どもを一切外に出さなくなる親もいます。夏休みを短くしてほしいという願いを持っている人が多いのも少なからずこうした理由も関係しているでしょう。
思い切って、子どもを見ることを仕事にしている人に勉強や自由な時間を任せてしまうことで、たまには自分の時間を作ることも大切な考え方です。
休み明けの様子
児童相談所が関わっていたとしても児童の実態を把握しきれず、最悪の事態になってしまったような事案をニュースで耳にすることがあると思います。夏休みが明けた時の話を今のうちに少ししてみたいと思います。
学校の先生の感覚として、夏休み明けに注意しなければいけないのが、児童生徒の変化です。非行の傾向なども観察により心配する必要がありますが、虐待の兆候がないかを見ていくことは大切です。元気がある無しではこれはわかりません。かなり丁寧に見ていく必要があります。学校が始まりやっと気づいてもらえるチャンスが来たと思いながらも、なかなか言い出せない子もいます。それは、夏休みの間にずっと苦しんでいたせいかもしれません。
なかでも、長期休み明けの欠席は非常に深刻な事態になっている可能性があります。夏休み以前から、学習環境に馴染めないであるとか様々な要因で学校を休んでいる児童や生徒とは違い、夏休みの間に虐待などを受けていた場合、傷やあざを隠すために親が欠席させている可能性があります。
欠席が続き、必要な状況だと判断すれば、風邪、高熱などの体調不良と親が連絡して来ても、家庭訪問をして、子どもの姿を確認する必要があります。例え、そんな心配が必要なかったとしてもそれで子どもたちの命が救えるなら、何ら恥じることもありません。
そこで、子どもの姿を見て会話するなかで、休み前よりも急に痩せていないか、疲れていないかなどを見てください。また、学校に来ている子にも同じように衣服が汚れていないか、家に帰りたがらないような様子はないか見ていく必要があります。とにかく休み明けは、普段よりも子どもから休み中の家庭での様子を丁寧に聞いてあげて欲しいのです。
その時、虐待されている子どもが家庭での様子や親のことを話したがらないということも念頭に置いておいてほしいです。「話したがらない」という事も、虐待を疑う視点の一つにしてほしいのです。
明るさは罠
学校では元気で明るく過ごしていることが、虐待がないという根拠にはならないということをもう一度押さえておく必要があります。
大きな事件や事故になっている様々な虐待事件の多くで、「普段は明るく見えた」という言葉を聞きます。虐待されている子どもというのは学校が大好きです。学校では、いきなり怒られたり、叩かれたりすることもありませんし、食事を抜かれることもありません。
虐待されている子どもにとって、学校は救いの場であり、唯一の居場所なのかもしれないという視点を持ってください。自由にゆったりと過ごせる場所では、明るくなるものです。それが学校だけなのかもしれないという視点が足りないと大切な命が脅かされいることに気がつけない可能性があります。