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363 衆議院補欠選挙



はじめに

2024年4月28日、本日は、裏金キックバック問題で政治と金の問題が注目された後に行われる、衆議院補欠選挙の投票日となっています。
今回の補欠選挙は、東京15区、島根1区、長崎3区の三か所です。いずれも自民党の議員の辞職等により空白となった議席を争う選挙なわけですが、長崎3区はさすがの自民党も候補を立てにくかったのか、今回は野党候補の一騎打ちといった感じです。
一方、東京15区と特に島根1区は自民党の主な幹部が応援に連日入り、総力戦を展開しています。
今日は、この選挙の投票日です。即日開票ですから結果も夜には見えてきます。今後の国政選挙にも大きな影響を及ぼす今回の選挙はどのような結果を生み出すのでしょうか。また、東京15区、島根1区の有権者の皆さんは、旧統一教会問題、度重なる閣僚の不祥事、裏金問題などをはじめとする様々な事象をどのようにとらえ、判断するのでしょうか。
今日の教育コラムでは、国民の注目が集まる今回の選挙について少しお話してみたいと思います

自分事ととらえることから

高校を中心に、主権者教育の促進が進められています。
ここで言う主権者教育とは「国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと」を意味します。
では、自民党の牙城として有名な島根1区を例に考えてみます。この選挙区は、自民党所属の総理大臣、閣僚、衆議院議長など有力な政治家を多く輩出しています。
今回ほどの裏金問題があっても、これまでに多くの恩恵を受けてきた島根県の有権者は、その期待や信頼関係を崩すことはないのかもしれません。また、不信感をたとえ持っていたとしてもそれを超える新たな期待に出会えなければ、これまでと変わらない行動をとるかもしれません。他の選挙区の有権者には投票権がありませんので、こうした場面でのその地域の方々の一票は、限定的なものとは言え、国の在り方や政治に対する信頼に関わる重要な指標となるわけです。

むしろ教材に

不謹慎ではありますが、実は、こうした選挙区の有権者の心理や行動自体が主権者教育では大変重要な教材になるのです。
政治的な転換期として政治資金規正法が今後改正されます。決してある特定の政治団体の問題点を授業で話し合うのではなく、あくまで法案の変更という国民にとって当然に知っておく事実を事例とすることで、十分に教材化できるわけです。また、そうした法律の変更が必要になった背景を出来事と法律の大きな抜け穴などを資料として考えていくことができます。
国や社会の問題を自分の問題として捉え、その改善方法や今後の課題を自ら考え、判断し、行動していくそれこそが主権者教育であるならば、今回の選挙の結果を通して、地方と都市部の実態や日本という国の議会制民主主義の在り方を考えてみることもできるのではないでしょうか。

投票率で見てみる

島根県は、全国平均を上回る投票率の高さを示している県です。2021年の1区全体の投票率は61%を超えていました。島根県全体の衆院選投票率は、1969年から2014年まで80%台後半から60%前後で推移しています。これは、実は16回連続で全国1位という驚異的な数値なのです。全県一区の中選挙区制時代は、山間の小さな村から大都市まで激しい選挙戦を繰り広げていた地域ですから、投票に行くという意識が高い地域なのかもしれません。また、小選挙区比例代表並立制に変わってからも投票率は高く保たれています。つまり、今回の選挙で、投票率が下がればここ最近の政治不信が深刻なこともわかりますし、投票率が高いことで各政党への支持の状態もつかめてきます。ですから今回の補選で注目されている地域なわけです。

学ぶ上では

このように選挙制度の在り方一つについても名称やただ単に一人だの政党名を書くだのと言ったことを覚えるのではなく、どのような制度だとどういった戦い方が必要なのか、また、どのような組織が強いのかなどと具体的に模擬選挙をするような気もちで学んでいくと面白いと思います。
政治について関心をもつ、考えるという文化がもっと子どもたちの間で一般的な営みになってほしいと長年願っていますが、関心を持たせるような政治家がいないのかもしれませんし、発信されていないのかもしれません。いずれにしても大人がすでに政治に関心が無い日本において、主権者教育は大変難しい教育なのかもしれません。

最後に、難しいからと言って関心が低くなれば、政治に近い者や政治家そのものがその関心の低さを悪用することすらも見抜けなくなってしまいます。やはり私たちは、政治を自分事のように考えることから逃げてはいけないように思うのです。

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