見出し画像

207 プレミアムフライデー


はじめに

今日は、月末の金曜日ということでたしか「プレミアムフライデー」という名前で呼ばれていたような気がします。いまだにこの特別な金曜日を夕方からゆっくり過ごす日としている企業はほとんど聞かれなくなったような気がしています。
今日は、そんな社会に定着しなかったプレミアムフライデーについて少しお話してみたいと思います。

はじまり

日本政府が2017年2月24日から始めた取り組み、それが月末の金曜日に早めの退社を促すキャンペーン「プレミアムフライデー」です。当時は、最初こそプレミアムフライデーということで少し早めに帰ることを進めていた会社も多かったように感じます。
私も、プレミアムフライデーということで山のような仕事をカバンに詰めて家に帰り、仕事を進めにくい環境で必死に残務を消化したように思います。当時も日本の経済は、低迷していて消費の停滞が問題となっていました。そこで消費の底上げにつなげるという名目で始まったのがこの取り組みです。
政府の「うたい文句」は、2.5日間の旅を楽しむであるとか、午後3時からの飲み会、午後のゆったりショッピングなどといった内容だったように記憶しています。
そのための早めに退社できるようにと企業に働きかけていたようでしたが、最初こそ面白半分に人々も一口乗っていましたが、見事にこの習慣は定着していきませんでした。
買い物や旅行を楽しむ余裕が、そもそも無いという人々の声が高まっていき、その後のコロナの流行で外出は自粛となり、各地の商店街のイベントなどもなくなっていきました。
実際に経済効果もなかったため多くの企業がそれまでの独自のイベントに力を入れる方向へと原点回帰していったのです。

あれから5年以上が過ぎて

これまで「プレミアムフライデー」に関する情報発信は、2017年に官民で連携して設立された「プレミアムフライデー推進協議会」のサイトを通じて行われてきました。
しかし、このサイトは今年、2023年の6月をもって閉鎖されました。政府が進めた「プレミアムフライデー」に関する情報は、経済産業省のHPでいまでも引き続き発信していますが、その内容は実に乏しいものとなっています。

こうしたように、官民ともにこの取り組みに対する意識が薄れていることがわかります。そうなるとやはり生活習慣に定着しないのです。

定着しないわけ

毎月最終金曜日に15時に業務を切り上げ、プレミアムな週末を過ごそうという試みとして当時はとても話題になりました。当時1年が経過したころには、認知度は約9割、施策の理解度は約7割に達したことが政府関係者から発表されました。認知度や理解度の面からは、相当に浸透していたことがわかります。しかし、国民が知っていてもやらない、やれないというのがこの政策の欠点なのです。
そもそも、時間を与えれば国民がお金を使うという、消費行動の促進をねらったわけですが、その思惑は外れてしまいました。企業や労働者にしてみれば、月末の忙しい時期には、早期退社などできるわけもなく、時間給で働いている非正規やパート労働者にとっては、労働時間を短くすることは賃金に直結するため難しいのです。むしろ、労働者の意識からすると、月曜日の午前中を休みにしてゆっくり出社したいと願う人も多くいました。しかし、そうした願いは、政府や経団連が推し進めるプレミアムフライデーのねらいには反しました。
消費拡大を目的としているため、月曜の午前中を家で過ごす様な過ごし方は望ましくないと考えたわけです。消費行動につなげるためには、会社帰り、しかも給料日の後の金曜日などが最高というわけです。

問題点

こうした国民の稼ぎをねらった政策は、いかにして崩壊したかというと意外と単純な理由でした。例え、早く退社できても使えるお金がないのです。さらに飲食店や小売店などでは、プレミアムフライデーという枠組みで、早く退社できないわけです。夕方から遊ぶ人がいれば、夕方も遊べない人がいるという当然の関係がその原因です。
プレミアムフライデーに関して言えば「人生の過ごし方」や「働く時間やタイミング」は会社や個人が定めて、決定していくものであり政府や国が口を出すような問題ではないのかもしれません。
また、働き方改革については、労働基準法を適切に守り労使の友好的な関係が築ければその多くの問題は、解決できるものばかりなのです。規則を作り一般化するとそこには息苦しさが生じてきます。
学校でも同じことが言えます。行き過ぎた行動をとる生徒が多くなれば規則で締め付ける必要が生じます。規範意識が高く、逸脱しない生徒ばかりであれば、規則など存在意味がないむしろ、制約が存在することが邪魔にもなります。

プレミアム

プレミアムフライデーというイベントに数億円の税金を用いたこの取り組みは、私たちに生き方や働き方の選択は自分でするものであるという大切なことを学ばせてくれたような気がします。壮大な無駄遣いと多くに人は言いますが、実は本当の意味でのプレミアムとは何かを学ぶことができた貴重な取り組みだったのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?