335 虎に翼


はじめに

今日の教育コラムでは、新しく始まったNHKの朝の連続ドラマ「虎に翼」の主人公のモデルとなっている日本初の女性弁護士「三淵嘉子(みぶちよしこ)」さんについて少しお話してみたいと思います。因みにドラマでは、猪爪寅子という名前登場し、大人気俳優の伊藤沙莉さんが凛とした強くしなやかな人物像を演じています。

三淵嘉子さん

ドラマを見ていくときに時代背景を理解しているとより、描かれている社会の様子やその当時の価値観などが見えてきます。
三淵さんは、1914年生まれの方ですから、大正時代の生まれの方ということになります。生まれは、父親の仕事の関係でシンガポールで生を受けました。銀行関係者だった父親の影響もあり、ニューヨークで暮らした経験などもある方です。
学歴は、東京府青山師範学校附属小学校から、東京女子師範学校附属高等女学校、現在のお茶の水女子大学付属高等学校を卒業します。その後に法律を勉強しようと決意することになります。しかし、この当時女性が法律を学ぶ環境はかなり限られていました。

理解のある家庭

父親の存在を無視して、三淵さんの弁護士への歩みは語ることができません。当時の日本では、結婚して家庭をもち女性は子育てをするという良妻賢母という考え方が多数派でした。ですから職業婦人という言葉が女性の社会人を表現する言葉として存在したくらいです。ドラマの中でも職業婦人という言葉が何度か登場します。
そんな時代背景の中で、三淵さんの父親は海外での経験などもあり、当時としては男女に分け隔てのない非常に民主的な考えを持っていました。
女性も男性同様に政治でも、経済でも理解できるようになることを教育の柱とされていました。そのために専門の仕事をもつ為の勉強をさせたと言われています。

弁護士資格を女性にも

1933年、前年に三淵さんが東京女子師範学校附属高等女学校を卒業して1年後、弁護士法改正が行われました。
それまで弁護士資格は、成人男子に限られていたのですが、「帝国臣民ニシテ成年者タルコト」と改められました。
これは、すべての成人年齢に達した人で、試験を通り司法修習を完了すれば取得が可能になったことを意味します。これにより女性も弁護士となることが認められたわけです。
司法科試験に合格することは大変困難で今日でも最も難しい資格試験の一つとされています。法が改正されたとしても女性が法律を学ぶ道は狭きものでした。そんな中、女性が法律を学び法曹としての道を歩む社会を見越していたのが、明治大学でした。現在も難関私立大学の一つとして有名な大学ですが、女学生の法学部への編入を認め、女性が弁護士を目指すための学問を治めることができました。

社会を変える

男女差別がまだまだ色濃かった時代に、性別に関係なく法曹として活躍できる環境と道を切り開いていった三淵さんですが、日本初の女性裁判官としての活躍だけではなく、現在では当たり前になっている家庭裁判所の創設にも尽力されました。女性や子どもの権利擁護という面でも今後のドラマで描かれていくと思います。
社会の変化と共に法律もその姿を変え、人々の価値観や人権意識を変えていきます。そうした変化を生み出すきっかけとして、やはり教育の力というものが大きな意味を持つのだと思います。

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