489 頑張れ‼ 後2日 斎藤元彦 兵庫県知事「県の顔」について考えよう
はじめに
今日の教育コラムでは、兵庫県の斎藤元彦知事が明日の百条委員会に出席することについて、正義感という言葉と関連付けて少しお話してみたいと思います。
ため池マン
写真は、斎藤知事が告発問題以前にため池マンとして自分の顔を使ってPRのポスターを撮影したものです。実は、兵庫県は日本一のため池の数を誇っています。これはとても有名な事であり地理的、歴史的な特色でもあります。詳しく話していく前にもう一つの疎水(そすい)という言葉について最初に見ていきたいと思います。
疏水とは、潅漑(かんがい)や舟運(しゅううん)のために、新たに土地を切り開いて水路を設け、通水させることをいいます。
日本国内の疎水の総延長は、国内だけで約40万kmという果てしない長さになります。これは、地球1周を4万kmとすると地球10周分になります。これらの疏水は、2000年近く農民たちが作り伸ばし守ってきたものです。私たち日本人は、こうした共同作業を多くの人間が協力し取り組んできたのです。
疎水は、食糧生産だけではなく国土や生態系の保全にも役立ってきたものであり、日本の美しい景観を保つ大きな役割を果たしてきたものなのです。
兵庫県とため池
約2万1500を超えるため池を有する兵庫県は、日本一のため池を有している県だと言えます。兵庫県は、斎藤氏の知事就任前からため池保全条例を設け、子どもたちにも重要性を知ってもらえるように「ため池マン」というキャラクターを作って広報をしてきました。
このポスター様々な教育機関にも張られているのですが、不適切な行動や対応の中で2名の県職員の命を失うことになった今では、この責任の主体である人物の顔写真が載っているポスターを外すところも出てきているとのことです。つまり教育的な配慮が必要であると感じている人が増えているということです。
国土
兵庫県の農業用のため池は、先ほども約2万2千箇所で日本一ですが、これは全国にあるため池が約15万4千万箇所ですから、兵庫県のため池数は全体の約14%を占めています。
⽇本には約3万5千本の川が存在します。実は、この川の水をめぐる歴史はかなら争いの要素が多いのです。水不足は農業によって経済を支えていた時代には死活問題です。そのため、水を独り占めする様な出来事があると大きな争いが村と村の間で発生します。
そうした長い争いの歴史を通して、今のような疎水がいきわたった国土が出来てきているのです。時には⽇本の農⺠は⼭に⽊を植え続けて川の⽔を枯れないようにしてきました。また、同じ川から何本もの⻑い⽔路を引き、平野の隅々まで水路をひきました。⽔⽥を潤した水は、また川に戻り、下流の生活を支えるのです。
ふさわしい人間とは
私は、こうした多くの農業に関わる人々や村々の協力で疎水のしくみが整っていったことに感謝します。兵庫県がため池の数で日本一なのは、農業用の水を求めてきた先人の苦労の多さを物語っています。
私は、ため池マンや疎水マンと呼ばれるような英雄にふさわしい人物はこうした苦労を多くの仲間と成し遂げることのできる人々だと思います。知事の顔が無くとも私には、兵庫県のため池のすばらしさは十分にわかります。知事は県の顔ではないのです。県民こそが県の顔なのです。知事がPRすることが大切なのか知事の顔が入った印刷物やうちわを税金で作って配ることが大切なのかといったことが混同されていることがとても不思議です。
私は、知事が顔を出す社会よりも農業に関わる方々がため池や疎水について自分の声を上げることの出来るような社会を望みたいと思います。
繰り返しになりますが、県の顔は知事ではないのです。県民の一人ひとりなのです。百条委員会に出席することになった知事は、県民の顔に泥を塗った自分を戒めなければならないのです。ため池マンとして、少なくとも正直話し謝罪する姿を子どもたちに示す必要があります。