Hope Sandovalになれなかった思い出
一年に数回、Mazzy Starを聴きたくなるフェーズが来るんだけど、今この瞬間がそれ。
その度に私にMazzy Starを教えてくれた先輩を思い出すなあ。
18の時、悲願の大学に合格して、憧れの東京にやってきたはいいけど、いざ来てみると意外とみんな普通で、ろくに音楽の話もできる人がいない。
期待はずれな街だな〜と思ってたら、Facebookで繋がった同じゼミの先輩が、私のいいねしたページ欄を見たかなんかで(今思えばこの人は相当私に興味持ってくれてたんだろうな)、「俺と音楽の趣味似てる気がする」という理由でちょくちょく話しかけてくれるようになった。
その後、一緒にバンドをやらないかと誘われて、まずは話をということで北千住駅のプロントを指定されて会った(場所まで覚えてる自分の記憶力にビビる)。
そこでどういうバンドをやりたいかというのを熱心に語ってくれて。先輩はどうやらシューゲイザーとかが好きらしい。
私はこの人に会うまで、藝大でも意外と音楽語れないじゃんとか偉そうに言ってたけど、本当はオタク的なディグりがすごい苦手で、先輩が最初シューゲイザーとか言ったところでそんなのピンと来てなくて。マイブラとかコクトーツインズとかも、(名前を)聞いたことあるレベルで、この人の熱に答えられるほど実は私の音楽知識は田舎で威張れるだけで全くチンプンカンプンだった。
でも先輩は、私のテンションに気づいてたかはどうかはさておき、普段はあんまりこういう話人とできないんだろうなっていうのがわかるほどの謎テンションで興奮気味に話し続けてた。ぱっと見暗い人だったからこんなおもろい人なの?と驚いた。
結局その日はとりあえず「やります」とだけ答えて解散したんだけど、内心自分のスキルでいけるのか不安にもなってきた。
音楽はずっとやってきたけど、演奏も都会の人の前でできるレベルではないとかビビっちゃって。でも歌うたいはやりたい気もしたからボーカルでやることになった。
その後程なくして「メンバーを集めたから一旦集まろう」と言われて、今度は藝大のキャッスルの下軽音楽部部屋で会った。それまで、そもそも藝大に軽音楽部があることも知らんかった。機能してないようなもんだったけど。
メンバーとしては、美術学部の女の子がドラム、慶應かなんかその辺の大学に通ってたその子の彼氏がベース、そしてその先輩がギター。
私が歌えるかどうかのお手並み拝見ってことで、何歌える?とかいうから、No DoubutのDon't Speakならと言ったら、趣味があったと思ってくれたか先輩が超テンション上がって、サラッとギター弾いてくれた。それに合わせて歌ったら「ちゃんと歌えるじゃん」とか言われて照れた。
その日までに先輩は実は一曲書き上げてて、出鱈目な英語歌詞で本人が歌うデモがあった。あの録音どこに行ったのか、もうどんなタイトルだったかも忘れちゃったけど、すごい綺麗な暗い曲。
集まったついでにちょっとやってみようぜという流れに。
そこで先輩が、「ホープ・サンドヴァルみたいに歌ってくれ」と私にリクエストしたんだった。
プロントで会った時に「コハルちゃんはMazzy Starとか好きそうだね」と言われたんだけど、その時の私は正直Mazzy Starを知らなかった。いろいろ教えてもらって「綺麗な曲多いけど、このヴォーカルのホープ・サンドヴァルっていうのがめちゃめちゃ性格悪いらしいよ」とかいう事まで知ってた。
多分だけど、あの先輩はホープみたいな危うい少女が好きだったんだろう。その少女性をなんでだか私の中に見出してスカウトしたんだろうな。
とにかく、ホープみたいに歌えと言われて、そこで初めてこの人のちょっとくせのある愛情表現に気付いた、んだったかどうだったか。リアルタイムでは私もうぶだったから微妙だけど、今ならわかるな。
その後結局、バンド計画は自然消滅した。どういう感じだったか忘れちゃったけど、私の目線の話をすると、ドラムとベースが上手くもないのにごちゃごちゃうるさくて、かと言ってデートだかなんだかで練習にも全然来ないし、そうゆう時に正義感が発揮してしまう私自身が嫌になって飛んだ。
つまり先輩にめちゃめちゃ申し訳ないことをした。
ゼミが一緒だったからその後も顔を合わせる。別に気まずい感じには全くならなかったけど、それ以上の関係にもならなかった。ホープみたいに人を惑わせたりできる少女にはなりきれなかったわけである。
でもたまに、もし私があそこで、好意を返して交際などしてたら今頃どうなったんだろうなあと思う。
結局その先輩は卒業が近づくにつれ、元々かなり不思議ちゃんだったのが加速して、急に休学してヨーロッパのどこか(私の記憶がないのではなく、本当に誰もどこに行ったか知らなかった、担当教授でさえも)で農業をするかなんかで消えた。
卒業のタイミングとかゼミ全員の集まりとかで何回か会ったけど、もう二人であって音楽の話をするとかは全くなかった。
今でもたまにインスタの私のストーリーの既読がついた時に、おっ、と思うし、気になったりするけど、どこで何をしてるのか全くわからない。
元気だといいな。
「Mazzy Starを聴いてたら思い出しちゃいました。」とか連絡しちゃおうかな〜
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