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音ゲー青年、根は真面目?

僕が大学で履修している授業には、世にも恐ろしい授業がある。
その授業の教授は「社会学バカ」と言われるほど社会学をこよなく愛する人で、淡々と小難しい内容を話す上に、その内容について受講者からランダムに当てて意見を聞くスタイルの授業なので、学生から恐れられている。

この教授の授業は単位も取りづらく気が抜けない、ということを先輩から聞き、毎年多くの学生が避けていたため毎年受講者は少なかった。

しかしコロナの影響で先輩との交流がなかったためか、今年の受講者数はとても多かった。
学内で中ぐらいの大きさの教室に人が入りきらない程に。
インドの満員電車を思い出す程に。

初回の授業は参加任意で、その授業を受けて今後受講するか否か決める、いわばお試し期間だ。
初回の授業で教室をはみ出すほどの受講者を見た「社会学バカ」は受講者削減を試みる。

方法はシンプルで「とにかく脅す」だ。

毎回800字以上のレポートを課題にする事、難しい内容について触れその内容について授業中に意見を求めること、単位取るのがこの世の授業で一番難しいことを学生に伝えた。
騒がしかった教室に一気に緊張が走った。

度重なる脅しに体育会魂に火がついたのか、成績不振で単位が命よりも大切な僕はその授業を一番に履修登録した。
2回目の授業に行くと、受講者は7割ほど減り空席が目立つほどになった。
初回ではあんなにカラフルだった頭は黒一色になっていた。
春から冬になった花のようだ。

授業4回目のある日、驚く光景を目にした。
授業中に音ゲーをする巨漢の男子生徒がいたのだ。
青いセーターの男子を盾に、スマホを横持ちし有線のイヤホンをしている。
その音ゲー青年の集中力は凄まじく、目が溢れそうなぐらい開いている。
それ姿を僕も目が溢れそうなぐらい開いて観察している。

音ゲーに夢中な彼は当然授業を聞いていない。
しかし突然挙手し手をあげて、質問する。
「聞いてますよ」とアピールするためだろうか。
僕は聖徳太子のように一度にたくさんの音を聞いているのかと感心していたが、質問の内容は5秒前に話していた内容であり、やはり授業を聞いていない事が証明された。
当然、教授から「それは今説明したばっか」とあしらわれていた。

音ゲー青年は教授を睨みつけて、再びイヤホンをした。
数分後、彼は隣の学生に授業の内容について質問していた。
音ゲーはしたいけど、授業にもついていきたい欲張り青年である事が判明。

そんな彼に「二兎を追う者は一兎をも得ず」を送りたい。

そんな面白い人物を見つけて、すぐさまブログにしている僕は授業の内容を一つも覚えていなかった。







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