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18歳娘、カナダ生活2日目で最大の危機に直面

カナダ到着二日目からはNSO(New Student Orientation)という新入生オリエンテーションが始まる。上級生のボランティアが主体となって運営されるオリエンテーションで、大学内の色々な場所で色々なイベントを行っている。オリエンテーションと言っても日本のように履修うんぬんとかの話ではなく、フットボール観戦やカラオケ大会、体育大会、バーベキュー、ピザパーティー、プールパーティー(水鉄砲で遊ぶ)などの内容である。1週間かけて行われる新入生交流の祭典と言ったところだ。

NSOの参加登録は日本にいるうちに済ませていた。大学に入るまでにも、人知れず大学のサイトにそういう大事なお知らせがアップされているので気が抜けなかった。

娘のカナダ生活の初日はLINEビデオ通話でキャンパスツアーをしてくれたり、寮の様子を見せてくれたり、「説明されてることがわからないんだよね~」なんて言いながらものほほんとしていた娘。

2日目の朝も元気な様子だったので、「なんとかなるでしょマインドは無敵だな」なんて思っていた。

ところが、2日目の夜、娘とLINEをしたときにどうも様子がおかしい。明らかに元気のない文面なのだ。返事は返ってくるから具合が悪いわけではなさそう。

「どうした?」

って聞くと

「別に日本に帰りたいわけではないんだけど、漠然とした不安がある。心がざわざわして落ち着かない。」

ということだった。

「泣きそう」


と、最強メンタルの持ち主である娘からのメッセージ

おおおお・・・これはただ事じゃないぞ。


でも、日本の裏側にいる娘にしてやれることは何もない。

「もし無理なら日本に帰ればいいから!
 壮大に送り出されてすぐに帰ってきましたー!
 ネタにしかならんやろ!おもろいやん!」とか

「学校内にメンタルサポートしてくれるところがあるから行ってみな」とか

「日本人の先輩もいるから何とか連絡取って相談してみな」

などの言葉をかけることしかできない。
娘からは

「うん」

「うんうん」

という返事しか返ってこない。

あのスーパーポジティブモンスターが!!!!


これは重大案件!!!!


くだらない笑い話などをしてみるが、当たり前だけど毒にも薬にもならない。

もう私は居ても立っても居られた(結局私にやれることは何もなく、本人次第なのだ)けど、とにかく心配すぎて夜しか眠れなかった(平常運転)。

大学時代にアメリカに留学していた友人に相談してみると、私のくだらない笑い話より余程薬になりそうなメッセージが来た

もちろん大変なことも、辛いこともあると思う。弱気になるのもわかる。
でも行きたくて行った海外はやっぱり楽しいのよー何とも表現できないけど、個性と多様性が普通の海外って気持ちいいと思うよ。私も群れないタイプだけど、娘ちゃんは群れないだけじゃなく自分をしっかり持ってるから、生活に慣れてきたら、不安だったことなんてすぐ忘れちゃうよ。

私の友人から娘に向けてのメッセージ

娘にしっかり刺さったメッセージであった。友人って有難い。

今振り返ってみてもこの時期が娘にとって最大の危機だったと思う。

この日と翌日は一人になると泣いていたらしい。情熱を注いでいた合唱以外のことでは泣かない娘だと思っていたので、そんな娘が泣いているとは相当である。日本を出発する時も「その辺に旅行行ってくるわ~」くらいのノリで泣くこともなかったし、カナダに到着した時も「ちょっと生活する場が変わるだけ」くらいの軽さで、大した出来事でもないという感じだった。

しかし、2日目と3日目は元気がなさそうだった娘が、4日目の朝にはすっかり元気になっていた

最大の危機を迎えるのも早ければ脱するのも早いな!!


いやいや、何があったかわからんけど、とにもかくにも元気になって良かった。早速どうやって危機を乗り越えたか、そのプロセスをインタビューしてみた。

漠然とした不安に包まれた娘。
本人も何が不安なのかよくわからないのだけど、その正体は「自分がやっていることは何が正しくて何が間違っているのかわからないこと」であった。

同室になった2年生のルームメイトや同じユニットの3年生のルームメイトに話を聞いてもらった。

「何だかよくわからないけど不安なの」っていうと、

「私も初めてここに来た時は毎日泣いてたよ。言葉は分からないし、何もかもが分からないし。」

と泣いている娘を励ましてハグをしてくれた。

NSOのイベントに参加した先でもとにかく色々な子に話しかけた。

「不安でしょうがないんだよね」って。

そしたら、みんな親身になって話を聞いてくれて、娘の気持ちに寄り添ってくれた。夕食を一緒に食べてくれた子の前でボロボロと泣いた。
留学生たちみんながとにかく優しかった。娘のことを無碍にする子は誰もいない。

並行して日本人の上級生とコンタクトを取ることにした。

どうやら2024年の秋学期入学で日本人の正規留学生はおらず、2年生に1人、3年生に2人、4年生に4人いるらしい。学生数は全体で4500人なので、さすがカナダの東の島だけあって日本人は少ない。

学校のツールを使って日本人の上級生を探し出し、インスタでのコンタクトに成功した。そしたら、ちょうど翌日に「”Japanese Society”の集まりがあるから来てみる?」という話になった。

日本に興味のある子たち(日本人以外もOK)が集まる学内サークルのことである。

で、その略してジャパソサのみんなと早速ウォルマートに買い物に行ったり、余ってる電気ケトルをもらったり、その他寮生活に必要なものを恵んでもらった。

大学のキャンパスを改めて案内してもらい、オリエンテーションは頑張って全てに参加しなくても大丈夫だよとアドバイスをもらってすっかり安心したらしい。授業がスタートする前に受けておかなければならない英語試験の場所や学校生活で困った時のサポート先、案外保健室は役に立たないなどの情報も教えてもらった。

また、ジャパソサメンバーの校内でのバイト先も聞いて、困ったらいつでも相談に来てねと言ってくれた。

ギュッとつまった数日間だったが、その後も自分のペースでオリエンテーションに参加。とは言っても、「これも経験」と思ってできる限りイベントに参加したらしい。

NSOの様子
輪がデカすぎる気がするけど…

バーベキューも美味しかったし、ピザパーティーも楽しかった。体育大会も不安が吹っ飛ぶくらい楽しんだ。ここで学んだのは集合時間の5分前に行っても誰もいないこと…。集合時間が過ぎてからようやく人々が集まり出すらしい。5分前行動は日本の文化だったのか。それもまた「私合ってる??」って不安にさせるんだけどね。

娘は緑チームだったらしい
パネルのイラストは中国人の男の子が自信満々に描いてくれた

娘はこのNSOの期間中に色々な人に話しかけた結果、知り合いがめちゃめちゃできた。相手には余程印象的だったらしく、キャンパス内で人に会うたびに

「やっほ!どんぐり(娘の仮名)!
 大丈夫?元気になった?」

と声を掛けられるようになった。
けど、当の本人は色々な子に話しかけ過ぎて、誰が誰なのか、どこの国出身なのか、何を専攻するのか、ほとんど覚えてないらしい・・・どーなん。

「ツラくても日本に帰りたいと思わなかったのは人の優しさだった」


と娘は言う。

「助けを求めればみんなちゃんと優しくしてくれる。黙ってたらほっとかれるけど、その距離感がすごくいい。」と約半年経った今も口にする。

こうして留学生たちの優しさと日本人の上級生たちとの交流のお陰で一気に娘の不安は解消されたのだった。

次回、英語試験の様子とダウンタウンに遊びに行ったときの様子をお伝えしたい。


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