10_堕_地
「あはは。今生はふたりもオトしちゃった」「くそ、しくじった」
静寂。支えてくれる手を失った揺り籠、我々が(というよりは紺色ひとりによって)陥落させた彼らの巣、の残党を一人残らず抹消し(これも紺色が)、国王の居たはずの玉座を、僕と、彼女と、だけが二人占めしている。
・・・彼女は六肢満足、僕は不満足な状態で。今までのお預けを清算するが如く、まあその、ええと、熱烈な愛を注がれている。
「最近は負けなしだったのになあ」
「いつまでも学習しないまま、と思わないことですよ」王の亡骸の上に腰掛けつつ、同時に僕を持ち上げ、フェロモン全開で僕との接触を試みる紺色、
戦闘終了、当然彼らとの戦いには勝ち、合間合間に交わしていた同士討ちは、、今回は。負けを認めてやろう、じゃないか。抱擁、オキシトシン、セキュリティ・エリア。安心・・・
「○○が言ってたことなんだけど」「妹さん?」「そう」彼女と○○って交流あったっけな、会話の上で、だけだっけ、
今回そこは重要ではなく、「彼ら、世代交代の時にさ、先代が巣を譲るわけじゃん。」「うん」「で、巣立った先代は暫く旅行をするわけなんだけど、そのときに王様を虜にできた近縁種がいたんだって」「あー。」
スキンシップの手たちを、半分は止めず、もう半分を組んで思案する彼女。回答を待つ自分、暇つぶしにじっと見つめる先には、僕の手足だったものが転がって、いや、紺色によってきれいに並べられ、安置されている。標本じゃあないんだからさ。
「...あのソロ活動さんたちか」「そうそう」今回仕留めた彼ら、とは違い、単独行動を好む連中。一騎当千の自信と、裏打ちされた、確かな実力はある、が、稀に集団で囲まれて焼き殺されている、今話題に出した事例では、
「兵隊を全滅させた挙句、無理やり古巣に戻させて上皇やらせたんだってさ。したら」「たら?」「そいつは思うままに生きたが、当然先代は弱るわけで、というか王が複数いて混乱もしてしまって。」
「続きが分かった。」意気投合をしただけあって、いやこうして行動を共にするたび思うのは、「その時初めて巣が緩んで、あれでしょ、さっき言ってた...三割方の占拠?」「そうそう」お互いに思考の程度、レベル、が相当に近い。僕らよりあたまのわるいやつらは散々いるし、同様で、もっと賢いやつらは天上の光の数だけある。僕らは、おんなじくらいだった。だからこそ、時おり生じる不和に対して、ものすごい失望が生じてしまうのだろうけれども。
「...ぅん。まあなんだっていい、最初からこれが欲しかったわけじゃないわ、だけど」彼女が僕を置いて、ゆっくりと立ち上がる。玉座の周辺に、慎重に、かつ堂々と陳列・展示された、、
自らの威光を示すかの如く、何千日、ここから出ずに暮らしてゆけるだろう、「しばらく、ゆっくりできるね。」
「ああ。あ、そういえばさ・・・」言い始めて直ぐ紺色が曇る、言わんとする事が分かっているようだ。「そっちはあと、なんにち」
「---」
「そうか。おれ?おれは---」
翌朝。国破れた王室の中、折り重なって眠る骸が、ふたつ(了