続・大麻取締法改正 経過の振り返り⑤「国会と厚生科学審議会」
しばらくお休みしようかと思いましたがここまで来たら乗り掛かったフネ、国会答弁まで見てみることにします。
国会で改正法案が議題となったのは令和5年11月10日の第212回国会のようですが、第210回国会でも、小委員会の取りまとめ公表を受けて質問がありました。
【第210回国会 厚生労働委員会 第7号】
質問者は自由民主党 高木宏壽委員で、答弁しているのは厚生労働省の医薬・生活衛生局長です。
戦後の薬物行政の評価と最近の薬物事犯の検挙状況は。 > 大麻の生涯経験率は諸外国に比べ低いが増加傾向。若年層での大麻乱用の拡大が懸念される状況。
検討会や小委員会を設置した背景は。 > 大麻事犯の検挙人員が過去最多を更新しており、若年層の乱用拡大が懸念されること、欧米諸国で大麻草から製造された医薬品がてんかんなどの治療薬として承認され、国連でも医療用途への活用が認められたことが背景。
小委員会のとりまとめでは、大麻から製造された医薬品で、承認されたものは輸入・製造及び施用を可能にすべきと結論付けている。日本でも医薬品原料用途の栽培を可能にし、国内承認が得られた薬は使用可能にすべきと考えるがどうか。 > 小委員会が示した方向性を踏まえて制度の見直しに向けた検討を進めていきたい。
産業用途も大きな可能性を秘めている。健全な市場形成の基盤を構築していくべきではないか。 > 栽培農家の継承、健全な産業利用など小委員会の方向性を踏まえて見直しの検討を進めていきたい。
小委員会のとりまとめには使用罪の創設も含まれている。使用罪が存在しないことと大麻の乱用との関係をどう捉えているか。使用罪創設の考え方は。 > 使用罪がないことが大麻使用の契機になっている。小委員会でも大麻の使用禁止を法律上明確にすべきとの方向性で、それを踏まえて見直しの検討を進めていきたい。
今回の取りまとめを受け法律を見直すべきと考えるがどうか。 > (加藤国務大臣)取りまとめられた内容を審議会に報告し議論いただく。
大麻については、有害性がないなど使用を誘引する情報がある一方、「ダメ。ゼッタイ。」と偏見や負のイメージも含め誤った情報が氾濫している。エビデンスに基づいた情報発信、広報啓発に取り組んでもらいたい。
以上です。全体として、小委員会の取りまとめどおり法改正してはどうですか? > その方向で検討します。 というやり取りで、新たな要素はありませんでした。この国会でのやり取りは、小委員会の取りまとめを審議会で議論するにあたってのセレモニーのようなものなのかもしれません。
そしてその審議会は令和5年1月12日に行われました。
【厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会) 】
議題は「大麻規制検討小委員会とりまとめについて」です。麻薬対策課が小委員会のとりまとめについて概要を説明し、委員から意見や質疑がありました。
農作物としての大麻の盗難についてはどうか。 > 低THCの品種は麻薬としての効果が期待できないため、盗難する魅力がない。
大麻は普通の若者に広がっている。依存症治療ではなく社会的な手当てが必要。
とりまとめ案に賛成。有効な成分は医薬品として管理、流通、施用体制を整備するとともに、基本的に使ってはいけないものだと明示、情報提供が重要。
大麻由来の医薬品は、適正に管理できるのであれば承認すべき。乱用については啓発が必要。大麻は麻薬として位置づけるのか。 > 大麻由来の医薬品は麻向法での麻薬に位置付ける。
エピディオレックスはスクリーニング検査にひっかからないのか。 > THC成分があったとしても医薬品であれば適正に使用されているので乱用ではない。
以上のやり取りの後、修正意見はなかったことから、取りまとめ案を部会として了承した、ということになりました。
そして、取りまとめを受けて作られた法改正案が内閣から国会へ提案されます。