見出し画像

「大麻の社会学」要約①

2冊目の参考文献は「大麻の社会学」(山本奈生著、2021)です。
序章だけ読んだところですが、学者の方が書いているので言葉や言い回しが難しい…けれども内容は濃くて面白そうですので、がんばって嚙み砕いていきたいと思います。

【第1章 ドラッグとしての大麻ードラッグ論の視座と刑罰の多元性】

ドラッグとは何か

  • ドラッグや麻薬という言葉は意味や範囲が社会的、医学的、法的にそれぞれ異なるが、日本では「ダメ。ゼッタイ。」で一括して広報されたため、ドラッグの区別が知られていない。(本書では大麻、オピオイド系、コカインと覚せい剤、幻覚系とMDMAに分け、効果や依存性を概説している。)。

  • 国際的には1961年の「麻薬に関する単一条約」を根拠として法が整備されており、大麻は、アヘンやモルヒネ、コカインとともに厳しい規制を求める「付表Ⅰ」に入っている。条約をどう法律に反映させるかは時代や地域により異なり、大麻は個人使用者への厳罰、非犯罪化、医療化、合法化と課税、など評価が様々に変わってきた。

依存、害(ハーム)

  • ドラッグの依存症は大きく精神的なものと身体的なもの(離脱症状があるかどうか)に分けられる。アルフレッド・リンドスミスの研究では、依存は、日本で言われるような「一度使えば終わり」ではなく、まずその使用を学習し、一定期間の使用後に生じる離脱症状をドラッグが原因だと理解し、これを避けるために使用を継続する、というサイクルが形成されて生じるとされた。

  • ジンバーグらの研究では、どのドラッグにも重い依存に陥らず使用を続けているものが一定数存在し、依存の形成はドラッグの種類や効果だけでなく「セット(使用者自身の状態)」と「セッティング(使用する環境や場面)」も影響するとされた。

  • ドラッグがもたらす害(ハーム)は、「個人へのハーム」と「社会へのハーム」の大きく二つに分類できる。マリファナ喫煙の個人への害としては、タールによる発がん性や若年者の脳の発達への影響が議論され、社会への害としては、自動車事故などが懸念されるが、統計研究では大麻はアルコールに比べ相対的リスクが低いとされる。(参考:ドラッグ別のハーム比較の表、BBCのページ

刑罰の多元性、ハームリダクション

  • 刑罰の見直しについては、酒やたばこなど合法なドラッグと大麻を比較する考え方(それらよりリスクが少ないという主張)と、「ハームリダクション」と呼ばれる、いかにして害(ハーム)を減らすべきかという考え方により議論されている。

  • ヨーロッパではハームリダクションの考え方に基づき、個人への厳罰それ自体もハームのひとつとみなし、大麻に対しては刑罰ではなく医療福祉を与えて管理する政策がとられている。

  • 日本では、大麻については摘発した人に厳罰を科しながらも、多くは個人の問題として取り残されてきた。大麻に関する情報は規制側からのものに偏りがちで、少数の厳罰反対派の声は行政、大手メディアには取り上げられてこなかった。

要約②へ続きます

いいなと思ったら応援しよう!