「カンナビノイドの科学」要約③
【第6章 カンナビノイド医薬品の研究開発】
新薬の開発には多額の費用と時間がかかるが、植物性カンナビノイドはすでに化学構造がすべて明らかとなっているため特許が取れず、製薬会社にとっては開発する魅力がない。このことは法規制を除いても大きな問題となっている。
世界で初めてカンナビノイド医薬品を市販したのはイギリスのGW製薬で、2005年にカナダで「サティベックス」が認可された。サティベックスは、「ハイ」にならないようTHCとCBDが同量含まれるよう設計された医薬品で、多発性硬化症をターゲットとした。
カンナビノイド医薬品は、(サティベックスでは)「ハイ」にならず、有害物が混入されないよう厳格な品質管理がなされ、医師や患者が扱いやすい、というメリットがある。大麻そのものを用いるメリットは、アントラージュ効果が期待できる、品種や摂取方法が多様である、価格が安い、自分で栽培できる、などが挙げられる。
【第7章 カンナビノイドの安全性と副作用】
科学ベースのリスク評価は、対象物質の毒性と摂取量の2つの側面から行われる。この場合の大麻のリスクは、アルコールの115分の1、ニコチンの20分の1で、THCでは致死量が計算できない(死なない)。しかしこれは依存性が対象外とされているため一部分での評価となる。
治療目的でカンナビノイドを用いたとき、生命にかかわるような重篤な有害事象はほとんどないが、わずかに神経、消化管、精神症状の有害事象が発生する。しかし、この有害事象をもって使用禁止にするのであれば、現在流通するすべての医薬品が全面禁止になる。そのためカンナビノイドの中で最もリスクの大きいTHCであっても、有害な副作用が少ない優秀な化学物質、という評価となる。
長期的な影響(慢性毒性)については、
精神疾患になるか → 大麻の使用が統合失調症に発展するリスクは最悪の場合でも1%まで
肺がんになるか → 関連性がない
依存性があるか → 日常的に大量に用いれば危険が高い。医療用として少量を断続的に用いる場合は危険は少ない(医療用モルヒネより少ない)
ゲートウェイドラッグであるか → 医療用大麻は問題にならない。日本の薬物乱用の調査では、ゲートウェイドラッグは大麻ではなくタバコとアルコール
青少年の使用が増加するか → 医療用大麻の合法化地域では関連性がみられない
青少年への影響があるか → 幼いうちから大麻を使用すると、依存、知能の発達などに悪影響が出やすい
【第8章 カンナビノイドの利用】
現在の医薬品は、ランダム化比較試験(実薬と偽薬の2グループにランダムに分けて効果を比べる)で有効性と安全性が確認されている。しかし、カンナビノイドについては患者の体験談、症例報告レベルの研究が多く、科学的な評価に耐えられるだけのエビデンスの蓄積が不足している。今後の研究の進展が期待される。
(この後本書には大麻の栽培方法の概要と摂取方法が記載されていますが、いずれも日本においては違法行為にあたるため要約は割愛します。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?