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「カンナビノイドの科学」要約②

【第3章 麻は太古からの薬草】

  • 大麻は、世界最古の医学書「神農本草経」に、現在の健康食品や保健薬に相当する、無毒で長期間服用可能な「上品」として掲載された。薬効は、疲労回復、リラックスなどで、多く摂れば魂が見え神がかりになるともあるが、有害とはみなされていない。漢方薬としては全草が薬になるが、特に種子(麻の実)を便秘薬として用いる。

  • 日本での医療利用についてまとまった文献はないが、1886年に公布された医薬品の規格基準書「日本薬局方」には、「印度大麻草」として輸入大麻が掲載されていた(1951年改正により削除)。

【第4章 人体にあるエンド・カンナビノイド・システム】

  • 人体には2種類のカンナビノイド受容体CB1、CB2があり、それに作用する内因性カンナビノイド=脳内マリファナは10種類が見つかっている。カンナビノイド受容体は脳以外にも精巣、子宮、肺、小腸など様々な臓器や細胞に存在しており、CB1が活性化されると、食欲の増進、痛みの軽減、筋肉けいれんの緩和などの効果があり、CB2は免疫と炎症反応に関連している。

  • カンナビノイドとその受容体による「エンド・カンナビノイド・システム」は、免疫システム、睡眠サイクル、正常な食欲や代謝などのバランス調整を担っている。そのため、強いストレスを受けたり、老化が進みカンナビノイド欠乏症となると、様々な症状があらわれる。

  • 大麻に含まれる植物性カンナビノイドが体内に入ると、内因性カンナビノイドと同じようにエンド・カンナビノイド・システムが働く。カンナビノイドの種類により作用が異なるが、最も多くの作用機序があるのはCBDで、CB1、CB2のほか、うつ病や睡眠を調整するセロトニン受容体、カフェインでも作用するアデノシン受容体などにも作用するため、様々な機能を発揮すると考えられている。

【第5章 驚くべき適応疾患の多様性】

  • 1996年にカリフォルニア州で世界初の医療大麻法が制定され、2000年代以降研究が飛躍的に進展している。

  • 本書では、カンナビノイドの有効性がみられる希少疾患及び難治性疾患として、多発性硬化症、てんかん発作、神経因性疼痛、炎症性腸疾患を紹介している。

  • 老人退行性疾患では、ガン(抗がん剤の副作用への有効性)、認知症とアルツハイマー病、関節炎、糖尿病、心臓病、炎症、皮膚疾患、不眠症、骨粗しょう症への有効性が、精神疾患では、統合失調症スペクトラム、不安障害、自閉症スペクトラム、薬物依存治療への有効性が紹介されている。(もちろん医療大麻だけで完治、寛解するものではない。疾患のどの症状にどのような作用があるか、詳細は本書をご覧いただきたい。)

要約③へ続きます


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