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「大麻大全」要約③

【第6章 マリファナ使用が認められた諸外国の現状から学ぶ】

  • 日本の大麻事犯検挙人員は増加の一途をたどっており、薬物乱用防止対策が功を奏したとは評価できない。

アメリカ

  • アメリカでは、(発刊時)現在30州と首都ワシントンD.C.で医療用大麻法が成立している(連邦法では違法)。これは、大麻そのものを認めたというより、患者が必要とする医療を受ける権利を保護するという考え方から、医療用大麻が条件付きで自由化されたとみなすことができる。

  • しかし、購入のための医師の推薦書が簡単にもらえること、用量や用法の指定がないなどの問題がある。また、世界保健機関の論文などから、医療用大麻の有効性や安全性についてははっきりしていないというのが実情のようである。

  • 嗜好用大麻については、9州とワシントンD.C.で年齢制限などの条件付きで自由化されている。コロラド州では、行政が大麻ビジネスを後押しし、マクドナルドとスターバックスを合わせた数よりも多い小売店、マリファナ体験ツアーなどの観光、大麻草栽培の大規模化などが起こり、関連税収は2014年の解禁直後352万ドルだったものが2017年には2378万ドルまで伸びた。大麻の店頭売り上げはコロラド州だけで2兆円市場となっており、関連ビジネスを含めた事業収益は計り知れない。併せて取り締まりのための人件費削減や、大麻からの税収を奨学金に充てるなどの政策が取られている。

  • 懸念として、健康被害の増加については、救急・相談の急増が見られた。これは、通報しやすくなったからという可能性もあるが、一方で、グミキャンディなど「食べる大麻」が流通し、幼い子供の誤食による被害は確実に増えている。自動車事故については、交通事故の保険金請求件数が増えたが、大麻関連の交通違反や交通事故死亡者数は減少しているというデータもある。犯罪の増加については、総犯罪数は減ったというデータがある。

オランダ

  • オランダは嗜好用大麻を合法化はしていないが、少量の所持なら罰せられないという非罰化を行っている。また、18歳以上のオランダ居住者なら、政府公認の「コーヒーショップ」で購入することができる。しかし、THCの含量には規制があり、15%以上のものは販売・所持すると逮捕される。

  • オランダは大麻だけでなく売春、同性婚、安楽死なども認めており、「寛容政策」と呼ばれる。大麻については、使用を止めることはできないため、それに伴う害をできる限り少なくする「ハーム・リダクション」の考え方をとっている。

  • オランダの政策はおおむね良い結果をもたらしていると評価されている。大麻の取り締まりにかける予算を削減し、より有害性の高いドラッグの依存対策にまわせるようになり、その結果ドラッグ依存を患う人の増加が止まった。また、大麻の普及率も他の西欧諸国と比べて高くない。

ポルトガル

  • ポルトガルは、大麻だけでなく、ヘロイン、コカイン、覚せい剤など国際的に禁止されている全ての薬物について少量の所持なら刑罰を与えないこととしている。

  • 2000年当時ポルトガルは100人に1人がヘロイン依存患者という悲惨な状態であった。当初厳罰主義の薬物対策が取られたが効果がなく、「薬物依存は処罰では治らない。医学的及び社会的介入が必要」との考えに行きついた。非罰化後、薬物の経験割合は徐々に低下している。

ウルグアイ

  • ウルグアイは、2013年、大麻の生産、流通、販売を許可することを法律に明記した世界で初めての国となった。大麻の栽培、販売、使用を登録制とし、課税し、その一部を依存ケアや教育プログラムに使っている。

  • 2017年に販売が開始され、販売は好調である。販売価格は5グラム187ペソと、闇市場の4分の1に設定された(日本の闇市場の50分の1)。これにより闇市場での取引は成り立たなくなっていると思われる。将来的にウルグアイにおける大麻使用者数がどうなるのか、今後の動向に目が離せない。

まとめと感想に続きます

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