私と「変なおじさん」
いやぁ、noteの更新もすっかりしてなかったですね。あららー、という感じです笑
そんな私が今回急に更新しようと思ったのはカメラの話ではなく、2024年のGWに旅行に行った際のとある思い出をここに残しておこうと思ったからです。
今回のGWの旅行先は、沖縄県の波照間島、という離島でした。
波照間島は日本最南端の有人島で、石垣島よりも船で約1時間半南に位置します。
一番の観光名所である「ニシ浜」というビーチは、それはそれは美しく、個人的には深い青からライトブルーのグラデーションに心打たれました。
(写真は過去にポジフィルムで撮影し、PCで繋ぎ合わせたパノラマです。)
ニシ浜以外にも日本最南端の碑や集落で食べられる現地の食材など、楽しめる箇所はたくさんあります。
また、島自体がとてものどかで、一日中ぼーっとしていても不思議と飽きないです。
海の美しさや島の雰囲気に惹かれて、何度も何度も訪れ、今回7回目の波照間旅行でした。
そして6泊7日という、私の中では波照間の宿泊日数が最長となる旅行でもありました。
今回もあちこち行ったりぼーっとしたり、と楽しんだのですが、冒頭でも書いた通り少し記事に残しておきたいな、という思い出がありましたので書いておきます。
ここから「です・ます調」ではなく、「で・ある調」で書いていきます。その方が主観的でしっくりくるので。笑
今回私は波照間島で、「変なおじさん」と自称するおじさんに出会った。出会うきっかけは宿泊施設の共有スペースで、「変なおじさん」に声をかけられたからだった。
今回の波照間旅行では6泊中前半の2泊を宿泊先Aで、後半の4泊を宿泊先Bで過ごした。「変なおじさん」に初めて出会ったのは宿泊先Aであった。
また、宿泊先Aも宿泊先Bも一般的なホテルではなく、どちらかというと民宿に近い形であることを念頭に置いていただきたい。お手洗いやシャワー室は屋外にあり、共有スペースとなっている。
初めて「変なおじさん」に出会った時、午前5時頃で私は屋外のお手洗いから暗い道を歩いて部屋に戻ろうとしていた。その時、「変なおじさん」が、
「街灯もつけずに暗い中歩くのは危ないよ、そこにスイッチがあるからつけるといい。」
と声をかけてくれた。
「そうなんですね、ありがとうございます!」
と、私はお礼を言った。
波照間では声をかけられることがよくある。島の人や滞在中に旅行客の人とよく挨拶をしたりする。小さい島なので、次第に顔を覚えてしまうのだ。この時もいつもの感じで声をかけてくれたんやろうな、と軽く思った。
その日の昼過ぎ、私は島を巡って疲れたので宿泊先Aに戻り昼寝をしようと帰ってきた。そしたら、たまたま今朝の「変なおじさん」に再会した。「変なおじさん」はこんがり焼けた黒い肌でタオルを鉢巻状に巻き、Tシャツに長ズボン、といった格好だった。色々宿の作業もしていたので、宿泊先Aのスタッフさんなんかな、と思った。
おじさん「今朝はごめんね。急にびっくりしたでしょ」
私「いえ、暗かったのでスイッチを教えていただきありがとうございました。」
そんな会話から、「変なおじさん」は私のことをそれとなく聞いてきた。「どこからきたの?」「関東からです」「出身は?」「兵庫です」「職業は?」「プログラマーです」………
おじさん「色々聞いちゃってごめんね。いや、ほら、僕『変なおじさん』だから」
私「(『変なおじさん』って自称するんかいっ!)」
そんなツッコミを内心しながら、穏やかにその時は過ぎて行った。
次の日、私は宿泊先Aから宿泊先Bに移動した。とは言っても、宿泊先Aから宿泊先Bまでは徒歩で行ける距離であり、かなり近かった。移動する際に、また「変なおじさん」に出会った。「もう帰るの?」「いえ、宿泊先Bに移動するんです」「あ、じゃあ近いね」なんて会話をした。
移動した日か次の日の日中、私は波照間港のターミナルにいた。ターミナルは、波照間と石垣島を行き来する船を待つ待合所のような建物である。船の時間が近づくとどこからともなく人が集まり、船が出航すると誰もいなくなる。私はその人の変化がとても好きで、滞在期間中かなりの時間をターミナルで過ごした。この時もターミナルの椅子に座ってぼーっとしていると、外から「変なおじさん」がふらっと入ってきた。ここまでくるともう顔馴染みである。お互い「よう」と目配りをし、「変なおじさん」はふらっと私の近くに座った。
そういえば「変なおじさん」の話を聞いてないな、と思って私は話を振った。すると、なんと旅行客であった。
おじさん「もう長いこと波照間には来ているかな。あなたが生まれる前から来ているよ。」
私「え、私30歳ですけど、それより前ですか?笑」
おじさん「うん、そんな感じ。」
「変なおじさん」は、見た目はこんがり焼けたいかにも「おじさん」であったが、声が少し掠れていて、小さめであった。ターミナルの窓から南国の生ぬるい風が心地よく吹いてくる。いつもはありがたい風なのだが、「変なおじさん」の声が風の音にかき消されそうになるので、この時ばかりは少し邪魔であった。
「変なおじさん」は旅行客であるが、GW終わりまで宿泊先Aで住み込みで働く、言わばワーキングホリデーのような状態であった。(とはいっても、「変なおじさん」は還暦は超えてそうだった)
すっかり宿泊先Aのスタッフさんと思っていた私は、当然びっくりした。同時に、「なんかおもろい人やん!」と思った私は、もっと「変なおじさん」のことを知りたくなった。ただ、自分からずけずけ聞くのはよした。「変なおじさん」と自称していたが、雰囲気は物静かな人であったので、「変なおじさん」から自分のことを話した方が自然な気がしたからだ。成り行きで色々しれたらいいな、ぐらいの気持ちであった。
そんな話を15分程度していると、船が港に向かってきた。「あ、船が来た。お客さん迎えに行くわ。じゃあまた。」と言ってふらっと去って行った。そのふらっとさが、私には心地よかった。
その後も、私は「変なおじさん」とよく出会した。ある時は「変なおじさん」が自転車に乗ってたり、またある時は「変なおじさん」が屋外の作業場で物を作っていたり。すれ違いざまに「よう」と目配せし、挨拶をし、「じゃあ」とお互いに去っていく時を過ごした。
波照間の滞在期間も少なくなってきた日、私は懲りずに港のターミナルの中でぼーっとしていた。朝からずーっとぼーっとしており、船に乗る旅行客を眺めたり、お土産屋さんのおばちゃんを眺めたりしていた。
昼ごはんの時間になり、流石にターミナルを離れ、集落内のご飯屋さんでご飯を食べた。でも食後、またターミナルに行きたくなり、戻ってきた。そしたら宿泊先Aの車から降りてきた「変なおじさん」に出会った。
波照間島では、(恐らく)全ての宿が船の時間に合わせて宿まで送迎してくれる。波照間は小さい島であるが、島の中心に向かって上り坂になっているのと、宿が多くある集落まで歩いて20分以上かかる。暑い南の島で、重たいスーツケースを引っ張りながら坂を上るのは相当難しい。なので、宿ごとに車を用意し、送迎してくれるサービスがデフォルトである。
「変なおじさん」は、宿泊先Aの送迎車を運転し、旅行客の送迎までしていたのである。
おじさん「また会ったね。あれ?帰るの?」
私はいつも、大きなリュックを背負っていた。カメラで島中を撮影したいがために、大きなリュックに色んなカメラを入れていたのである。
私「いや帰らないです笑 ターミナルでぼーっとしています。」
おじさん「そうなんだ。あ、じゃあ、今から船が来るから、宿泊客が来てくれるように宿の名前が書かれたプレートを持ってみない?」
私「!!やります!!」
送迎サービスでは、色んな宿の車が来るため、各宿が宿名が書かれたプレートを持って待機している。プレートを持つ側になれるなんて、めっちゃおもろい!と思った私は早速プレートを持って宿泊客を待った。
船が到着し、ぞろぞろ降りてくる。波照間島への船は外海を通るため、高確率で大きく揺れやすい。(自分も含め)気分が悪くなる人も多くいる。この時も気分が悪そうな人や、「やっと波照間に来たぞー!」という人、島の人が帰ってきたりと、色んな人が最南端の地に足を踏み入れていた。
私は少しドキドキしながらプレートをもち、旅行客を待った。そうすると宿泊先Aのプレートを目にした旅行客が3組ほど、車の元へやってきた。無事、お客さんを迷わず車に誘導することができた。
「よかったよかった。良い経験できたな。」と思ってプレートを返し、「変なおじさん」にお礼を言って去ろうとしたとき、「ついでに一緒に車にのりな」と言われた。「???」と思いながらも、他の旅行客と一緒に車に乗った。
他の宿の車が一直線に自分の宿へ向かう中、「変なおじさん」が運転する車は人が小走りする程度の、まさに徐行程度のスピードだった。「何故…?」と思っていると、「変なおじさん」の話が始まった。
波照間はね、信号機が一切ないんです。
しかも、「止まれ」などの一時停止の標識や線もない。
みなさんレンタサイクルやレンタカーで島をめぐると思うんです。
観光客の人はかなりスピードを出して運転されます。
あそこのガードレールをご覧ください。すごく曲がっているでしょ。
島の人は絶対そんなスピード出しません。
あそこで観光客の事故が起こったんです。
島には診療所がありますが、そこで対処ができない場合はヘリコプターが飛びます。
ヘリコプターが飛ぶということは、多方面に影響が及びます。まず診療所、宿、レンタルしたお店、警察署、消防署、役所。
せっかく楽しむために来られたんだから、悲しいことにはなってほしくないんです。
今から事故が起こりやすい交差点や危険箇所を巡っていきますので、どうか注意しながら楽しんでください。
「変なおじさん」は、事故が起こりやすい危険箇所を巡りながら、同時に宿に到着するまでの間に観光スポットも巡った。
ここがニシ浜です。(お客さんが「おおー!」と言う)
ここがコート盛。コート盛に登ると、島の三分の一が見えます。
ここが島で一番大きな売店です。お昼休みがあるのでご注意ください。
ここが八重山諸島で英雄となっている「アカハチ」の誕生碑です。
ここが日本最南端の警察の派出所です。
あと、日本最南端の碑や星空観測タワーなど、島を一周する方もいらっしゃると思います。その場合は、港を基準として時計回りで巡るといいです。
時計回りだと上り坂が少ないです。特にレンタサイクルで巡る方は時計回りをお勧めします。
「変なおじさん」の話を聞きながら、私も他の旅行客と同じように「へー!」「ほー!」と唸っていた。知っていることも多少あったが、多くは知らないことだらけで、聞いていてとても楽しかった。波照間に何度も来たことがあるからこそ、話に深みが感じられた。
そんな話を聞いていると、宿泊先Aに到着した。「変なおじさん」は旅行客の宿泊手続きをした。「また港まで送ってあげるから、しばらくそこらで遊んでいなさい」と言われた。ただ、遊ぶと言っても波照間は何もない島なので、旅行客の人と雑談をし、島のひと時を過ごした。
(この時、旅行客は私のことをスタッフさんと思っていたようで、「え!観光客なんですか!?」と驚いていた笑)
一通り宿泊手続きが済んだ後、私は車に乗せてもらい、港まで送ってもらった。車の中で、「変なおじさん」とたわいのない雑談をした。「変なおじさん」が初めて来た頃は、宿も数軒ほどしかなく、レンタサイクルもママチャリしかなかったらしい。それが今は宿も倍に増え、電動自転車で便利に回れるようになったなぁ、と話していた。ニシ浜は昔はもっと珊瑚礁で綺麗だったが、今は大分白化が進んでしまった、とも言っていた。昔のニシ浜、見てみたかったな…と、決して叶うことのない思いを抱いてしまった。
そんな中、「変なおじさん」がふと、
おじさん「こんな『変なおじさん』だからね。全然モテなかったよ…苦笑」
私「何言ってんですか!私にモテてるじゃないですか!」
おじさん「笑笑 ありがとう。いい男見つけなよ。イケメンじゃなくてもいい。真面目で、誠実な人を見つけなよ。」
と言った。「変なおじさん」的にはふらっと言った言葉かもしれないが、私には心にじんと響く内容であった。
そうこうしているうちに波照間の日々はあっという間に過ぎていき、とうとう帰る日になった。
最終日、「変なおじさん」はいつものように送迎車を港まで走らせ、お客さんを待っていた。
おじさん「おっ、帰るのか?」
私「そうなんです、いよいよ帰るんですー」
おじさん「そうか。じゃあ、またな!」
私「はい、ありがとうございました!」
こうして「変なおじさん」は去っていき、船から出てきた宿の旅行客を乗せて行ってしまった。
こういうあっさりした別れもいいな、と思った。さらっと出会い、時々島内で顔を合わせ、しれっと別れる。後腐れのない、綺麗な状態がなんだか気持ちよかった。
でも、また波照間に行ったら「変なおじさん」に会いたいなー、と思う。一応苗字だけ教えてもらったが、ここでは書かない。「変なおじさん」は私のニックネーム(うめちゃん)すら知らないんじゃないか、と思う。お互い写真を取り合うタイプでもなかったので、写真もない。当然、連絡先も知らない。「変なおじさん」の顔と声は私の記憶の中でしか再現されない。一期一会かもしれないが、ご縁があったらまた会うでしょ、と気軽に考えてもいる。いつかまた、「変なおじさん」に出会える日を楽しみにして。
ありがとう、「変なおじさん」。
というね、なんだか温かみのある「変なおじさん」との思い出がありました。
ちょっと思いついたので勢いで書いてしまいました。こういうのは勢いがある時に書かないと絶対途中で諦めてしまうので…笑
次、波照間に行った時に「変なおじさん」に会えるかは分かりませんが(「変なおじさん」もずっと波照間にいるようではなさそうだったので)、会えたらいいなー、と気軽に思いながら行きたいです。
波照間は、こういう「人との出会い」も面白いのでリピートしてしまうんですよね笑
波照間島、行くにはちょっと遠くて大変かもしれませんが、海見たり星見たりぼーっとしたりできるので、「行ってみたいな」という方は是非行ってみてください!
きっと穏やかな思い出ができると思います。
あ、紫外線対策は万全に!
以上、うめちゃんでした。