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彼の、私の5年間は何だったのか

彼が今日、医学部の卒業試験(日本の国試にあたる)の最終試験を終えた。彼と出会って早6年。この6年間お互い苦しんできた。出会った20歳の時、まだ私は大学2年生だった。海外の大学でひとり、苦しんでいた。勉強についていくのも、人間関係、将来も悩んでいた。一方、その頃、彼はちょうど入学前で、医者になること、人を助ける仕事に就くことに誇りをもち、大学で沢山勉強して早くみんなから信頼される医者になりたいと意気揚々と語っていた。そんな彼が眩しかった。正直、眩しいだけではなくてそんな彼に劣等感を感じた。私は、クラスメイトについていくだけで精一杯で、エッセイ1本仕上げるだけに他の人の何倍も時間をかけていて、なんて自分は出来ないんだろうと、自責の念に駆られた。彼が入学して数ヶ月後、日々夜遅くまで勉強していた彼を見るだけで、隣で勉強するだけで、「なんで彼はこんなに頑張っているのに私は何も出来ないんだろう」とさらに自分を追い詰めた。そんな中で、結局、メンタルが挫けながらも、彼のサポートもあり私は、大学院まで進んだ。私は研究者になりたかった。でも、修士課程で燃え尽きてしまった。このままならば、自分自身を保つことが難しいと思って、博士課程には進まなかった。そして日本で就職した。就職してもそこそこに頑張った。そして今に至る。結局、私は挫折したのだろうか。彼が必死で5年間で医学部を走り抜けた間、果たして私は何を成し得たのだろうか。

彼はこの5年間、人一倍勉強して、優秀な成績を修め、沢山の論文を執筆し、学会に出ていた。でもその過程で、メンタルを崩しがちになった。これまであんなに医学に対して情熱があった彼が、医局内の政治的な問題や医学部のシステムに対して
不信感を抱き、今はただただ早く卒業して、ゆくゆくは医者ではない仕事をしたいと言っている。私は、彼が医者になろうが、何をしようが、彼がより自分自身に、自分の生活に満足できるのならば、何でもいい。

お互い5年間のうちに目指すものも、挫折も苦労もあった。そんな中、遠距離でも支えあった。彼の辛い日々を知っているからこそ、お疲れ様と言いたいし、ゆっくり休んでほしい。身体を、心をもうこれ以上酷使してほしくない。お互いもうボロボロな気がする。この先5年で、私たちは社会にもまれもっとボロボロになっていくのだろうか。だとしても、二人で生きていきたい。

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