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台風2020年第10号これから起きそうな事(主に素人の感想 9/4夕方)

  以下は何かを警告する意図を持っているものではありません.聞かれる事が多くなってきたので,個人的な感想としてメモとして書いているものです.私は風水害について研究はしていますが,水とか空気とか土とか波とかの物理的メカニズムについては小学生レベルですので,よく分かりません.犠牲者の発生の仕方などは多少分かります.

台風の強さ

 台風10号,9月4日夕方時点の,気象庁「令和2年 台風第10号に関する情報 第25号」をみると,かなり強い勢力を保ったまま(中心気圧がかなり低いまま,というくらいのつもりです),6日から7日にかけて九州西方を通過していきそうですね.

 最近台風が激化している,とよくいわれますが,実際には1990年代後半以降,日本付近にはそれほど強い(中心気圧の低い・中心付近で風が強い)台風は接近・上陸していません(気象庁「中心気圧が低い台風」).台風の激しさは,強さだけでは比較できず,「大きさ」(強い風が吹く範囲)もありますし,雨の量の大小や雨による被害の起こりやすさは,強さや大きさと必ずしも一致しませんから難しいところですが,いずれにせよ,久しぶりの強い台風ではありましょう.

暴風が怖そう

 この台風,まずは暴風が怖い感じがします.上記の気象情報によると,九州南部でも平均風速40から50メートル,瞬間風速55から70メートルくらいのようですね.私は風速についての相場観があまり自信がないのですが,気象庁の「風の強さと吹き方」を参考にするとよいのでしょうね.この表だと気象庁の言葉では「猛烈な風」で,一番強い階級に当たりますね.平均風速と瞬間風速はよく混同されて,大きい数字を見せたい人は特に説明なく瞬間風速の値を使ったりするような気がしますね.どちらの数字なのか,確認した方がいいでしょうね.そういえば気象庁の会見を見ていたら,「瞬間風速60メートルまでしか書いてなくて,80メートルだとどうなるか分からないじゃないか」みたいな事を聞いていた人がいましたが,そんなの一番上の階級なんだから,それよりひどい事になると考えればいいじゃないか,と思いました.

 さてそうした暴風が吹くとどんな被害が出るのか.最近数十年間,日本国内では暴風(竜巻は別です)によって住家が倒壊して犠牲者が出るケースは確認できません.無論,老朽化した空き家や物置のような建物が倒壊するケースはよくありますし,今回何しろ風が強そうですから,風で家屋倒壊は絶対にないとまでは言えませんが,どちらかといえば可能性は低めでしょう.むしろ可能性として高そうなのは,暴風の中屋外で行動中に,転倒,転落,飛来物に当たるなどして死亡するケースではないかと思います.このあたりは下記の記事にまとめました.

 暴風で家屋が倒壊には至らないものの,屋根が飛ばされるといった被害は十分あり得ます.また,樹木や電柱が倒れるといった事はかなりの規模で見られるかもしれないと思います.この結果,かなり広い範囲で,数日以上の長さで停電が続く可能性があると思います.電気は様々な社会インフラの基本ですから,たとえば水道管自体が損壊しなくても,ポンプが停電によって止まる事でマンションなどが断水するといった影響もあります.倒木や,土砂災害などにより道路が通行できず,山間部などで集落の孤立が長期化するといった可能性もあるかもしれません.なお,暴風による被害やその影響については,私はまるっきり素人です.

高潮も心配

 中心気圧が低く,風も強そうなので,高潮による被害も考えられます.高潮はごく雑に言うと津波みたいなもので,海岸付近の低い土地が,本格的な洪水に見舞われるような被害を受ける,といったイメージです.高潮による犠牲者は20年近く発生していませんが,単なる偶然だと思っています.このあたりは,下記の記事にまとめました.高潮が,具体的にどこで特に要警戒となるかは予測がなかなか難しいようです.また,満潮時刻に当たるかどうかでも,影響が大きく変わってきます.九州一円の海岸付近,特に湾状の地形のところでは要注意かと思います.なお,波や海についてもメカニズム的な事はまるっきりの素人です.

当然洪水や土砂災害もあるでしょう

 台風ですから,当然雨もたくさん降ります.台風10号の降水量の予測は今後変化していくと思いますし,降水量は,その数値的な大小だけで影響の大きさを議論できませんからなんとも言えませんが,夏場の降水量の多い九州地方としても,かなり多めの量が予想されてきているようで,かなり注意が必要でしょう.降水量という数値の読み方については,下記も参考にしてください.

 雨によって生じる現象は,洪水や,土砂移動現象(がけ崩れ・土石流など)です.洪水では,家屋が流失する事は,堤防決壊箇所や河川のすぐ脇など限定的ですが,浸水は広範囲にわたって生じる事も考えられます.浸水だけで家屋が流失する可能性は低いですが,1階が水没するくらい(周りの地面から2~3メートルくらい)になると,平屋にいる方や,2階に上がる体力が十分でない方などは犠牲になる場合があります.また,浸水だけでも,屋外にいると人や車は簡単に流され,死亡に至る事があります.土砂災害の場合は,家屋全体や一部が倒壊する事が珍しくありません.洪水,土砂災害による人的被害の発生については,下記の記事を参考にしてください.

洪水・土砂災害は主に「起こりうる事が・起こりうるところで」

 洪水,土砂災害による犠牲者は,その多くが,「起こりうるところ」で発生しています.予想もつかないところで犠牲者が続発しているわけではありません.ハザードマップを確認し,自宅や生活圏で,どのような災害が起こりうるかを知っておく事が重要でしょう.ハザードマップで「色が塗られているところ」では,基本的に何らかの被害が起こり得ますが,「色が塗られていないところは安全」とも言えません.とはいえどこでなにが起こるか分からないと言う事もありません.

 洪水に関しては,特に中小河川でハザードマップ上は色が塗られていない事がよくあります.色が塗られていなくても,川岸と同じくらいの高さであれば,洪水の可能性はあると考えていいでしょう.土砂災害については,住家のない場所は危険箇所に指定されません.例えば山間部の斜面沿いや谷筋などは,色が塗られていなくても,土砂災害の可能性はあると考えた方がいいでしょう.洪水,土砂災害のハザードマップはともに,あまり細かく見過ぎる事は適切でありません.色が塗られているところのすぐそばなどでは,念のため注意した方がいいでしょう.このあたりは,下記の記事も参照してください.

水害時 避難イコール避難所Go! だけ,ではない

 「避難」とは「難を避ける事」であり,「避難所へ行く」ことは,その手段の一つに過ぎません.それぞれの状況に応じて,多様な避難のあり方を考えておく事が必要でしょう.このあたりは大変長くなりますので,下記をご覧下さい.

 なお,「今私たちは何を準備すれば?」みたいな事はよく分かりません.自分のいる場所付近でどのような災害が起こりうるかを把握したら,その後どのように備えるかは,人それぞれです.


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牛山素行
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