ポカリで回復痛
どんな時もスマートでありたい。
しかし、スマートを追い求めるごとにスマートから遠のいていく。
その日もそうだった。
「ラーゲリより愛をこめて」を見終え、顔から滝のように流れる涙の水分補給を、大好きな炭酸水で補給する。
我が家の炭酸水は、ソーダストリームで自家製造している。
食事前、焼酎のソーダ割り、ハイボール、ワインや日本酒の和らぎ水など、あらゆる場面で炭酸水が大活躍だ。飲んでるのは僕だけだが。
炭酸水メーカーを導入してから、
資源ゴミの量が減り、飲み残しの炭酸水をシンクに流す量も減り、買い物時の総重量が軽くなり、さらには単価まで下がった。頭も下がる。
ついに、我が家はペットボトルから解放され、(自称)スマートな生活を手に入れたのだ!
さようなら、ペットボトル!
これまでありがとう、ペットボトル!!
そんなある日、思わぬ事件が起きたのである。
その日、娘の小学校から通達があった。
ちなみにただの小学校ではない。
Mrs.GREEN APPLEのあのメンバーが通っていた小学校からの通知である。
到底無視できない重大案件なのである。
では、その通知とは一体何か。
工作に使用する『500ml』のペットボトルを調達せよ(3本納品)⭐︎2
報奨金0z
生息場所 コンビニ、スーパー、自販機etc…
通知というか、もうクエストだった。
それも駆け出しクエストである。
本来、⭐︎2のクエストなどほぼチュートリアルのようなものだ。
しかし、キーアイテムを捨てたとならば話は別だ。
なんと、廃棄したペットボトルこそがクエストアイテムだったのである。
FF、ドラクエと違い、現実では『だいじなもの』を捨てることができる仕様である。それにより、詰む可能性すらある。
なんてことだ、我が家はスマート家族になったはずなのに…。
意図せず、ヒトカリイコウゼとなったのである。
35度オーバーの真夏日にヒーヒー言いながら、近所のコンビニ繰り出す自分。
ス、スマート生活はどこに、、、。
しかし、ここでまた予期せぬ壁にぶち当たる。
ないのである。ペットボトルが。
立ち寄ったコンビニエンスストアの飲料コーナーで愕然とした。
確かに、ペットボトル飲料自体はところ狭しと並べられている。
しかし、クエストアイテムの『500mlのペットボトル』がないのだ。
理由は推しているべし。
『世はまさに大容量時代』なのである。
お茶系ペットボトル 600ml〜
炭酸系ペットボトル 580ml〜
ミネラルウォーター 540ml〜
どれもこれも、お得な容量で競い合っている。
まさかのミネラルウォーターでさえも500mlを優に超えてくる。
様々な価値観が交わる『大容量時代』において、500mlという杓子定規な容量はむしろ絶滅危惧種だ。
ペットボトル界の「多様性」も日進月歩なのである。
しかし、、やはりこれは⭐︎2の難易度ではない…。
アカハネさんのお宅は調達できたのだろうか。
いまや、『500mlジャストのペットボトル』を見つけ出すのに比べれば、
写輪眼を持つクルタ族、古代種セトラ、はぐれメタル、マスターボール、石仮面、トエル・ウル・ラピュタの末裔を探すほうが容易なのではないかと思う。
なんて、そんなわけもなく。
無事に500mlのポカリスエットを3本ゲットできたのであった。
なんだかんだで、ポカリスエットはブレないのである。きっかり500mlのままだ。
さて、こうして無事にペットボトル3本を手に入れたわけだが、話は続く。
ここでさらに、新たな問題が浮上したのである。
『オーバーリカバリー問題』である。
ポカリといえば、現代においてのエリクサーである。
いやエリクサーは言い過ぎだとしても、エクスポーションくらいの効果はある。
東方では賢者の石と呼ばれるとか呼ばれないとか。
お酒を嗜む者なら、誰しも一度は二日酔いになったことがあるだろう。
ひどい時は泥酔して、電車とホームの間のわずかな隙間に体を落としかけたこともあるかもしれない。ご多分に漏れず、僕もその一人だ。
そんな二日酔いをも癒してしまうポカリを、いやポカリ様をポーションと呼ばずして何と呼ぶか。
まさに、リリスが産んだ文化の極みなのである。
しかし、ここからが問題なのである。
ポーションは傷ついた体を癒すものだ。
こちとら、基本は家から出ない、日光に晒されない、冷暖房完備の座敷童のようなHPフルの人間には無用の長物なのだ。
半端な覚悟で飲もうものなら、オーバーキルならぬ、オーバーリカバリーになってしまう。
オーバーリカバリーは太る。つまりスマートではないのである。
だから仕方がないのである。
今夜も、飲みに繰り出すのはポカリ様を安全に消費するための正当な理由なのだ。
オーバーリカバリーを阻止すべく、あえて体にベロベロに酔っ払いHPもMPもLPも瀕死にするためにアルコールを注ぐ儀式なのだ。
かくして、ポカリ様消費のために瀕死になるべくアルコールを飲み、
二日酔いにまたポカリ様補給という堂々巡りとなっているのが現在だが、
それはまた別のお話である。
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