見出し画像

【ネタバレ注意】FEエンゲージ初見ルナクラ完走した感想·シナリオ編【ファイアーエムブレムエンゲージ】

シナリオ総評

 テキストや世界観描写は稚拙だし、キャラはほとんど空気だし、過去作経験済みだと既視感のある展開ばかり(これに関してはお祭りゲーなのでわざとかもしれないが……)だし、話が長いし、シリアスシーンで何故か笑わせに来るしと残念な部分は多い。多すぎる。
 けどシナリオ自体は単純明快すぎるもののリュールの物語としては筋が通っており悪くなかったと思う。ドラクエ系の典型的JRPGと思えば。人々の信念が、苦悩が、葛藤が交錯する戦争ドラマだと思ってはいけない。まあ覚醒ifのせいでハードル下がりすぎてたのは否定できない。
 逆にストーリーが高評価を受けていた風花雪月も脚本や展開は割とガバガバ要素多かったけど(闇うご倒さずED突入の紅花とか蒼月の進軍経路とか使い回され過ぎている銀雪翠風とか毎回修道院に帰って月末だけ戦争するところとか)、テキストのクオリティや世界観描写の緻密さ、作品全体の暗さというか闇の深い雰囲気と戦争というテーマの噛み合わせで上手く誤魔化せていたところはあると思う。シナリオ100点道徳0点は言いたいことはわかるが言い過ぎ。風花無双はゴミだったしコエテクが必ずしも有能って訳でもないんだよなぁ……。

評価点

 いいところは、いい。当然の評価を捻じ曲げてまで否定論に固執するのは愚か者のやることだ。

主人公がちゃんと主人公してる

 上でリュールの物語としては筋が通っていると書いた通り、主人公がちゃんと主人公。というのも最近のFE主人公はアクアの言うこと聞いてるだけのカムイや教え子の保護者的立ち位置のベレトス(銀雪はちょっと違うけど)という風に自発的な行動が少ない主人公が続いていたので、きっかけは母の遺言とは言えしっかりと自分の意思で行動し続け、敗走と再起、ヴェイルとのあれこれを経て精神的にも成長を見せたリュールは好感度が高い。
 ただ不満点にも書いたけど中盤以降は自立しすぎててワンマン進行になってるのでバランスが大事なんだなと。難しいわ。

終盤の激アツ展開

 22章あたりの展開は正直今思えばノリと勢いと声優(特にヴェイル)の演技力で押し通られた感は否めないんだがやってる時はめちゃくちゃ盛り上がった。ルミエルの指輪はジェラルトの指輪と同じでその内支援Sに使うんだろうなあ、位にしか思ってなかったので度肝を抜かれてしまった。唐突感はあるがリュールもまたFE主人公の1人であるという事実こそが最大の伏線だったのは素直に感心した。……覚醒の主人公?ルキナですが何か?

戦闘会話

 戦闘会話のクオリティは高いのが多い。やはりというか戦闘会話にしては話が長い傾向にあるが、それを不快に感じさせないだけの内容がある。これが書けるなら本編だってもっと……と思わずにいられない。
 ただ紋章士外伝の戦闘会話は本気の殺し合いではないことが前提であるにもかかわらずクラシックだと負けたら普通に戦死するので言ってることとやってることが矛盾しちゃってるのが残念。

絆会話

 内容は暁の支援会話に毛の生えた程度の薄さだが全ての組み合わせでフルボイス会話を用意したということ自体が偉すぎ。多分ここに工数かけすぎて散策会話とか雑なんだろうなと思う。どちらを選ぶべきかは難しいけどせっかく過去作キャラがいるお祭りゲーなんだからこちら優先という判断はわかる。

過去作リスペクト

 覚醒やFEHで何度も炎上してる手前ISへの信頼はあまり無いが、何だかんだ過去作リスペクトしようという気概は感じる。紋章士の性能は過去作の特徴をかなり再現しようと努力したことが窺える。マルスは無理だったみたいだけど。
 11章で加入する紋章士はリンとルキナだが、リンは海外勢にとってのマルス(最初の主人公)であり、ルキナは言わずもがな新世代のマルスである。物語の節目にこの二人を持ってきたのは偶然ではないだろう。ミカヤが盗賊とセットだったりベレトが学生とセットだったりカムイが再行動とセットだったり、この辺の組み合わせも知っていればニヤリとできる。いや、まさか偶然なんて事は……。
 紋章士外伝は原作マップの再現だがこの再現度がかなり高い。シグルド外伝ではちゃんとユリウスとイシュタルがいたり、とあるマスに女神像埋まってたり(さすがにライブのうでわではない)。リーフ外伝では異常に強いロングアーチや城門のジェネラルが装備できないのにメティオと杖持たされてるのに笑ってしまった(原作ではバロンという魔法が使える重装兵が陣取っていた)。あとアイク外伝も最初の内はめちゃくちゃ再現度高いのだが途中で急に原作無視の初見殺しに走るので許せない。絶望そして絶望。

不満点

 そう、ですか。今作も……「失敗」だったのですね。

世界観描写が粗雑

 発売前に公開されてた情報で覚悟はしていたが……ひどい有様です。やっぱり前作がその辺全振りだったのもありどうしても目立つ。
 個人的に一番気に入らなかったのは、イルシオンがなぜソンブルを信仰してたのか最後まで謎だったこと。これ、覚醒のペレジアがなぜギムレーを信仰してたのか最後まで謎だったのと全く同じで、10年前から何も進歩してないのが辛すぎる。
 1000年もあれば神竜王を中心とした世界秩序に不満を持つ奴が出てくるのはわかるし、セピアらソンブル派の残党が邪竜信仰を広める余地もあるだろうが、そのあたりの描写が一切ない。そもそも水面下で広まっているだけならまだしも、ルミエル現役時代に指輪も託されている状況で国家ぐるみで公に邪竜信仰しても看過されてるのが意味不明。
 信仰対象となっているソンブルも1000年前の時点で実子すら駒扱いの畜生でしかないし全然ありがたくない。実際復活したら国王食うわ国民食うわでイルシオンに害しかもたらさないし。なんでこんなヤンホモストーカーオタクおじさん信じてんのお前ら?ついでに言えば王の血で復活する理由もさっぱりわからんかったな。ifでハイドラがガロン食ってパワーアップしたのは王族は神祖竜の血を引いてるからって設定あったけど今作の王族にそういう設定ないよね?
 邪竜教がロプト教団とか闇うごみたいな地下組織で、ハイアシンス王が個人的にその強大な力に魅入られて道を踏み外したとかなら全然わかる。その設定でもせいぜいブロディアの侵攻の口実が減るくらいでほとんど本編に影響無いし。国家ぐるみで邪竜信仰って設定が本当に要らない。
 ブロディアの存在も割と謎。エレオス大陸は1000年間ルミエルの影響下で大きな戦乱なくやってきたらしいのに武力を国是とする軍事国家って何?モリオン王はイルシオンに頻繁に侵攻してたようだしヴェルダンやパルミラみたいな侵略国家ポジにしか見えないのに普通に味方なのもよくわからん。加入タイミング的に仕方ないけど武力のブロディアって言う割にはやたら弱いし。
 後は漫画でリトスに一般国民がいることが判明したけどゲームには一切出てこなかったね。終盤のリトスはソンブルに乗っ取られるけど国民どうなっちゃったんでしょうね。
 昔なら村や民家に訪問して話を聞いたりできたし、風花でも修道院に来る行商人などの一般人と会話する機会があったから客観的な戦争の状況とか民が何を思って乱世を生きているのかってことを知れたけど、今作は序盤の平和なフィレネくらいしか一般人と接触できる機会が無いからいくら王族組が民がどうこう言ってても全然実感湧かない。こういうところが世界観の薄っぺらさに繋がっていると思う。
 ストーリーに組み込めないなら風花雪月みたいにソラネルに図書館作ってテキストだけ置いといてくれればよかった。でもテキストや設定自体のクオリティが低いと意味がないのか……。

テキストが稚拙

 神竜様ファンクラブとか言ってる時点で最初からわかってたけど、テキストのノリは寒い。ふざけたノリのテキスト自体は加賀時代からあるし、よろぴっぴとかウェーイみたいなのが単発でちょくちょく挟まってくるのは許せる。ジャンピング土下座もクソキツいけどはじめからギャグやろうとして滑ってるだけだからまだ良い(もちろん無い方が良い)。よろぴっぴから連続で来るのでダメージは大きいが。
 ふざけてる場合じゃないシリアスシーンでも間抜けなセリフが出てくるのが本当にきつい。色々あるけど代表例として「友達ではありません😡」はいくらなんでも擁護不可能。あとエンディングの「エンゲージしよう。」も幕引きの一言として全然パッとしなくて最後の最後に盛り下げられた。
 よく叩かれてる「返してください😭」はクッソ情けないけど私も同じこと思ったからまだギリギリ許せるし、一度はへたり込んだリュールが再び立ち上がって叫ぶ「みんなを返してください!」は折れない心と尽きない闘志を感じて実は結構好き。その頃ヴェイルは「欲しかったんですよねぇマルス、シグルドも!」でFEHプレイヤーの笑いを誘っていた。あのムービーはなぜリュールが持ってる竜の時水晶をヴェイルが起動できたのか、それをどう使って指輪を盗んだのか説明が無さすぎて意味不明だったがそれはテキストとはまた別の話。まさか本当にお喋りしてる隙にこっそり盗ったんじゃないよね?
 あとifからだけど王城兵とかいう謎の造語出してくるのやめて欲しい。騎士とか近衛とかじゃダメなんですか?ソルムに至ってはそもそも仕えるべき王女王子がほとんど王城にいないし。
 ちなみに前作に比べるとテキスト量も少なく、ソラネルの散策会話や戦闘後の戦場会話は汎用ばかりで声もなし、とかなり残念な出来だがこれに関しては風花雪月が狂っていたと言わざるを得ないところもある。何にせよキャラゲーとしての作りは完敗。

空気キャラが多い

 シナリオ進行は良くも悪くもリュールとヴェイル中心で他のキャラは影が薄い。
 リュールに関しては意外な程芯が強く、物語の主人公として行動原理に筋が通ってたし自発的に行動するから良いんだけど、それに仲間がついてくる理由付けが弱い。
 参謀役が不在なのも良くない。序盤はマルスがその役目かと思えば離脱するし後釜のリンルキナは加入章以外では特になにも話してくれない。そのせいで基本的にリュールが一人で方針を決めて他のキャラはただのイエスマンになっているのが空気化に拍車を掛ける。主人公に十分な実力と信頼と覚悟が備わった終盤なら無条件全肯定でも違和感ないけど。
 紋章士でも王族でもいいから、ドリアスアウグストやティアマトセネリオのように対照的な視点や立場から意見させて最終的な決定は主人公が下す形にすればかなり仲間の空気化を抑えられたと思う。
 このせいで王族すらシナリオ上重要なのは再起の契機となったアイビー組くらいで他はせいぜい道案内しか役割が無く、基本的にリュールの後ろで突っ立ってるだけだから最悪いなくてもいい。
 全てのキャラに章ごとの専用散策会話が用意されててストーリーでの出番もある風花雪月の方が異端?そうだった…私も忘れてはいない…忘れてはいないんだがそれでもやっぱり比べちゃうんだよなぁ……。

既視感のある展開が多い

 もう序章からどっかで見たような演出や展開が多すぎる。ああ、覚醒の断章ですねと。
 ママが出会ってすぐ死んで終盤で復活させられてボスになるのもハイハイifですねって感じ。王族一人に従者二人の構成もそのまんまifだし。10章までの展開が覚醒と似すぎてて全く先に期待できないのが本当に勿体ない。これはお祭り作品だからあえて過去作に寄せてると言うよりは本当にライターの引き出しが少ないだけだと思うね。
 展開に捻りがないので先を読める。これがいいか悪いかは人によるだろうが、炎帝がエーデルガルトであることすら見抜けなかった私でさえ、リュールが元邪竜なのは3章のルミエルの遺言で察したし10章でソンブルがリュールと同じ呪文で紋章士を顕現した所で確信できた。だから20章まで来て衝撃の事実みたいに言われても知ってましたとしかならない。まあわかりやすいとは言えちゃんと伏線張って回収してるだけ良いと言えば良い。リュールが紋章士になるのは全然読めてなかったので本当は偉そうな事言えないんだけど。
 異形兵は覚醒の屍兵とほぼ同じものだがこういう概念を使い回すのは許せる。過去作でも竜族とか聖痕とか神器とか、呼称や細部や背景は異なれど大体同じような概念が使い回されてきたし。

話が長い

 敵との会話シーンが冗長。特にセピア、お前だよ。出会うたびダラダラ長話しやがって近所のおばさんかよお前は。リュール達もなんで敵のおばさんの立ち話に付き合ってんだよ。武器を構えて間合い取りながら簡潔に話すなら良いけどお互い棒立ちでお喋りしてるし。重要なこと全部セピアに喋らさないで紋章士にその役割もっと割り振れば毎回長話せずに済んだろうに。あのソンブル様ですら終章で急に長々自分語り始めるから緊張感に欠ける。
 看取りシーンも話が長い。まあ普通はそのキャラの最後の出番だからちょっとくらい長くても許せるんだけど、問題は同じキャラが2度3度死ぬからそのたびに見せられること。ルミエルは物語の最初と最後だからまだいいが、リュールは21章クリアで死に、すぐに回想でまた死に、22章クリアでまたまた死ぬのでくどすぎる。わしはもう 死にたくないのだ わかってるのか おい!
 あとセピアとグリがクソ長い話の末にやっと安らかな感じで息絶えたのに、次の章でさっそく過去のセピア出すのはさすがにセンス無いと思った。魔道具作った動機の補完したかったんだろうが、そういうところこそ死に際の長話の中で匂わせるだけでいい。セピアの生い立ちは既に語られているんだし。
 ソンブルの最期もなんかぶつぶつ喋って勝手に満足して綺麗な感じで消滅したけど、それでええんか?その首を犠牲となった母に、民に、同胞に捧げなくてええんか?まあ終章まで来たリュールはもう既にルミエルの無念を晴らすためだけに戦ってるわけじゃないのはわかってるけど、やっぱり最後は自分の手でケリつけて終わりたかった。

シリアスシーンで笑える

 テキストや演出のせいで真面目なはずなのになんか笑えるシーンが多い。特にヴェイルが出演してるムービーは大体どこかに笑いどころがある。欲しかったんですよねぇは言うに及ばず、唐突にかめはめ波撃ったりあの細腕で船から遠投かましたり角へし折ったり。リュール死亡シーンはヴェイルの迫真の演技の後ろで謎にヴァンドレとアルフレッドが棒立ちしてたりソンブルがちょこんと座って待ってたり。異形ルミエルの動きと演技も急にミュージカルみたいなノリでシュールな上リュールもあっさり扉壊して乱入してくるし。確かに今作は鍵なくても扉破壊して開けられるけどさぁ……。
 まあ不快という程ではないしネタに昇華できる余地もあるけど、本気でシリアスシーン作ろうとしてアレができたんだったら残念だなぁ……。
 これは何のことかわからない人は読まなくていい話なんですけど、わざわざシグルドとの会話でリュールに「やはりそうでしたか」って言わせるのやっぱりわかっててやってます?狙ってないならいいんですけど……。

DLC周りの処理が甘い

 DLCは後付けだろうから仕方ないのかもしれないけど、散々お世話になっているにもかかわらずマルス外伝でチキの話題が出ても知らなかったように振る舞うリュールはさすがに違和感ありすぎた。
 もっと雰囲気ぶち壊しなのは22章で、ここでは紋章士を邪竜の力で顕現しているため真っ赤な上に口を利けないはずなのだがDLC腕輪でエンゲージ技+を使うと急に元に戻ってしまう。11章もそうだが、本来紋章士無しで開始することが前提のマップということもありまじで白ける。縛ろう。

マルス「ああ、チキ!(突然の爽やかイケボ)」

残された謎

 わからないまま終わったことも多いので考察する。いや、ほとんど妄想。まあこの辺の謎も邪竜の章で明かされるかも知れないので気長に待ちましょう。

OPムービーの顔芸

 赤リュールの凶悪なツラ結構好きだったんだけど本編で公開された過去のリュールは死にたくないから親父に従ってるだけで根は善良っぽく、そもそも感情を押し殺して生きてるのであんな顔しそうにない奴だった。詐欺では……?
 無理矢理考察するなら、まだ兄弟が皆生きてた時代はあんな感じの顔でノリノリで破壊と殺戮を繰り返してたとか……?

序章

 覚醒の断章っぽいアレ。1000年前のリュールは真っ赤ヘアでタイマンでソンブル倒してたし、結局あの序章なんだったのかわからずじまいだった。神竜になりたいと思いながら眠りについた過去のリュールが本当にただ夢を見てただけだと思ってるけど知り得ないはずの王族4人出てくるのが本当にわからん。

礎の紋章士

 終章で急に出てきた存在。ソンブル様をヤンホモ(多分)ストーカー限界オタクに堕とした罪深き男(多分)。そりゃセピアじゃ抜けんわ。
 話聞いてる限り過去作キャラならアンリしか思い浮かばない。個人的には加賀昭三説が好き。
・ただ一人で戦い、ただ一人で野望を成し遂げた→IS脱退、裁判を乗り越えティアサガ発売
・異界の存在→当然現実世界はエレオス大陸とは別の世界
・焦我(koga)せ→加賀(kaga)と1字違いなので実質一致
・礎→言わずもがなFEシリーズの礎を築いた

エンゲージしよう。

 これも正直全然わからん。周回プレイしろってこと?それとも原作プレイしろってこと?何にせよメタ的なメッセージを込めているだろう事は察するけど……。


いいなと思ったら応援しよう!