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スキズ楽曲語り:Runners

トップ画像出典:https://straykids.jype.com/

文字どおり走りたくなる一曲
夜のランニングのお供に

 いつからだろう。癖の強さを求めてスキズを聴いていたはずなのに、決してタイトルを飾ることはない、かと言ってトリを務めるわけでもない、アルバムの真ん中あたりにひっそりと佇む、こういうタイプの楽曲を、無性に聴きたくなることが増えた。
 筆者というより、スキズが変わったのだろう。いや、これまで隠していたカードをちらつかせるようになった、と言うほうが正確か。とにかく、2024年の彼らが見せてくれた新たな一面のひとつとして、「疾走感」を語らずにはいられない。今回のRunnersを皮切りにStray Kids、Uと続けて扱うが、これらは言うなれば「疾走感3部作」といったところであろうか。

 Runnersは、スキズにしては軽く、それらしいキリングパートもない。ともすれば、単調の一言で片づけられてしまうかもしれず、なんというか、喉にクッと引っかかる「えぐ味」がないのだ。
 でも、それがよい。この軽さこそ、楽曲最大の魅力なのである。どんな気分にも不思議としっくりくるし、聴き終わった耳に残るあっさりした後味が心地よい。サビの"I won't stop running"そのままに、疲れを知らず走り続けることができるような気もしてくる。

 こういう楽曲は、深く語るためにあえて立ち止まることはしたくない。とはいえ、ここは、というポイントはいくつかあるので、あくまで手短に書き留めておきたい。
 まず入りのスンミン。エッジボイスの(半)母音は、もはや彼の十八番である。
 コーラスの"G-O-A-T"、これはどうやらヤギのことではなく、「史上最高(Greatest of All Time)」を意味するスラングらしい。
 ヴァース2は、フィリックスに続くチャンビンのラップといい、裏のベースといい、どことなく3RACHAを彷彿とさせる。
 コーラス2のラスト、ブリッジに入る直前のハンの"'cause we're the runners"。彼らしい突き抜けるような高音が痛快である。ブリッジのメロディアスな旋律も美しい。
 ハンの英語の発音がやはりどうしても好みである(とくに"running"と"stunning"の[ʌ]、"warnings"の[ɔːʳ])。
 全体的に、ハンとスンミンのキレがありながらものびのびした声質と歌いぶりが楽曲によく合っている。

 つんとした夜の冷気を肌に感じながら、人通りのすくない、ほとんど真っ暗な緑道を駆け抜けたくなる、そんな一曲だ。

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