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スキズ楽曲語り:TOPLINE (Ft. Tiger JK)

トップ画像出典:https://straykids.jype.com/

圧倒的益荒男振り
終わるころには満身創痍

 いまから思えば、TOPLINEはWalkin On Waterの前身曲だったのかもしれない。無意識のうちに手を掲げバウンスしてしまうようなバイブス、3RACHAの合唱、ハンから始まる歌い出し、衣装等々、類似点は枚挙に暇がない。

 ただ、TOPLINEのほうにはメロディアスな要素が比較的多く残っており、それこそが楽曲の魅力の一翼を担っている。
 オルゴールの音色がメロウなプリコーラスは、1番と2番とでメロディが変わっているのが憎い。探るように音程を上げていく前者と、一番高いところから下りてくる後者との対比がおもしろく、音域によってスンミンの声の照度が変わってくるのも分かる。
 プリコーラスのリノはいまにも消えてしまいそうな儚さを帯びているが、コーラスでは打って変わって、がなるような声色になる。このギャップに致命傷を負わされた無数のステイの回復を願うばかりである。かくいう筆者も、コンサートの度に「傷」が深まるばかりで一向に回復の兆しが見えない。
 ところで、バンチャンが専売特許を持っている"'Cause we don't give a ****"の ****部分が気になって夜も眠れないのは筆者だけではないだろう(おそらくfから始まる例のワードだろうが)。

 さて、この楽曲を語るうえで欠かせない要素がある。お察しのとおり、ラップである。
 チャンビンの"애초에"の硬さに初っ端から吃驚させられるのだが、息切れをするにはまだ早い。得意の両唇破裂音で連打された後、"필요 없지"の裏声にとどめを刺されるまで倒れるわけにはいかない。
 なんとか立ち上がったところで、息を吐く暇もなくヒョンジンが追い打ちをかけてくる。彼のパートは直前のチャンビンほどの激しさはないものの、なにか粘着質の毒のようなもので絡め取られるようなこわさがある。
 ヴァース2ではTiger JK氏が登場するわけだが、面構えが違う、というのはこういうことかと思い知らされる。3RACHAのHEYDAYで崇められているだけあって、そのラップから滲み出るカリスマ性は圧巻である。細かいことだが、パートが始まる直前に一瞬ラッパーのソロカットが入るMVの演出にも、個人的に拍手を送りたい(BLACKPINKのShut Downもご参照ありたい)。
 Tiger JK氏の後ろでカウントを取っているハンの愛くるしさに絆されていると、不意打ちの"Look at me now"をもろに喰らってまた重傷を負う。一際テンションの高い彼の声と、開口音でライムを踏む(語末の母音と子音をかなり軽く、もしくは落としているので、"deny"はディナ、"satisfied"サティスファと聞こえる。"why"、"top"も同じ要領)からかどこか馬鹿にしたような表情、こちらを見下ろす構図が絶妙にマッチして、わたしたちを滅多打ちにする。
 ヴァース1よりも威力の上がったヒョンジンに尻尾を掴まれ、逃亡もままならない。ゆとりのあるリズムかと思いきや、"뒤에서"から急に刻みが細かくなり、一気に追い詰められる。

 素知らぬ顔で"Bom, digi-digi-bom, bom, bom, bom"を楽しんでいたフィリックスが、アウトロでゆらりと腰を上げる。イントロのメロディに乗せたこのパートでは、あえて連音化を丸無視し、一語一語区切るように発音している。もっとも、こんなところで滑らかに歌われても困る。このぶつ切り感がここでは大正解なのである。
 それにしてもフィリックスのお顔が可愛すぎるのだが、戦場に舞い降りた天使かなにかなのだろうか。


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